パワステオイルが漏れるリスク|オイル漏れの症状・原因・修理・予防策

現在、国内で運行するトラックにはハンドル操作のアシスト機能である「パワステ」が標準装備され、トラックのハンドル操作性は飛躍的に向上しました。
本記事では、パワステのオイル漏れの主な症状と発生原因や予防策、オイル漏れ進行後に生じる危険性などを紹介します。
目次
パワステとは?(役割・種類)
パワステとは、パワーステアリングの略称で、ハンドル操作を補助し、運転の快適性と安全性を向上させる重要なシステムです。1925年にアメリカのOldsmobileに搭載されたのが始まりとされており、1950年代から乗用車に油圧式パワーステアリングが普及し始めました。
当初は、特に大型車やトラックなど、ハンドル操作に大きな力が必要な車両でその効果を発揮しましたが、最近ではどの自動車にもほぼ標準装備されています。
パワステの役割
車を運転する際に、パワステはステアリング操作を軽くする重要な役割を担っています。
具体的には、ステアリングギアボックス内でアシスト力を発生させ、ステアリングホイールからステアリングシャフト、ステアリングラック、そしてタイヤへと伝わる力を軽減します。
かつてパワステがなかった時代には、ステアリングギアボックスのギア比の工夫や、ステアリングの径を大きくすることで操作の負担を軽減していました。また、当時の車両は、現代のものよりも軽量で、タイヤ幅も細く、タイヤのグリップ力も低かったため、ハンドルを操作する際の負担が少なかったと考えられます。
パワステは2種類
パワステには、油圧式と電動式の2種類があります。それぞれのパワステの種類について解説します。
1.油圧式パワステ
油圧式パワステは、エンジン出力を利用して作動するポンプの圧力でハンドル操作のアシストをおこなうシステムです。
システム動力にエンジンを使用することから、エンジン停止中はアシスト効果を得られませんが、ハンドル操作は基本的にエンジン稼働時におこなわれるため大きなデメリットではないと考えられます。
また、エンジンとポンプを直接接続しない電動油圧式も存在します。この方式では、モーターがポンプを駆動するためエンジンのエネルギーを消費しません。ステアリングシャフトに装着されたトルクセンサーが操舵力を検知し、その情報に基づいてECU(電子制御ユニット)がポンプへ駆動命令を出し、アシストをおこないます。
2.電動式パワステ
電動式パワステは、電動モーターの出力でハンドル操作のアシストをおこなうパワステのシステムです。電動式パワステには、モーター出力で直接アシストをおこなうものと、主圧を介してアシストする電動油圧式の2つのタイプが存在します。
大出力を得るためには巨大モーターが必要であったため、トラックには採用されることが少なかったものの、技術革新やエンジン回転数の影響を受けず安定したアシスト力を得られることから近年採用例が増加しています。
パワステオイル漏れの原因
パワステオイル漏れは、トラックのハンドル操作に大きな影響を及ぼすため、未然に防ぐことが重要です。
オイル漏れの主な原因は、パワステポンプのオイルシールやホースの経年劣化、ひび割れなどが挙げられます。トラックに強い衝撃が加わることによって発生するケースもありますが、多くは部品の劣化によるものです。
これらの部品が劣化すると、オイルの密閉性が失われ、漏れが生じるリスクが高まります。定期的な点検と早期の部品交換が、パワステオイル漏れを防ぐための重要な対策となります。
パワステオイルが漏れると起こる3つのリスク
パワステオイルが漏れると、トラックの運転に主に以下の3つのリスクが生じます。
1.パワステが利かなくなる(機能が低下する) 2.車検に通らない(合格できない)可能性が高い 3.発火の危険性 |
パワステのオイル漏れによる、3つのリスクをそれぞれ説明します。
1.パワステが効かなくなる
油圧式パワステを搭載した車でパワステオイルが漏れると、ハンドル操作のアシストが弱くなるだけでなく、ステアリングギアボックスの部品がスムーズに動かなくなる恐れがあります。アシストが効かなくなったハンドルは非常に重くなり、思い通りに車を操作するのが難しくなります。
さらに、パワーステアリングは、路面からの衝撃がハンドルに伝わるキックバック現象を和らげる役割も果たしています。オイル漏れが進むと、まっすぐ走ることすら難しくなるでしょう。現代の車はパワーステアリングが正常に機能することを前提に設計されているため、たとえコンパクトカーであっても、パワーステアリングが効かない状態ではハンドルを回すのが大変になります。
2.車検に通らない可能性が高い
パワステオイルが漏れている場合、車検に通らない可能性が高くなります。車検の合否判定基準では、油脂類の漏れは不合格となるためです。
軽症のオイル滲み程度であれば車検に通ることもありますが、いずれ漏れに進行する可能性が高いです。
オイル漏れが確認された場合、ホースやポンプの修理や交換が必要となります。この状態の車では車検に通らないだけでなく、車の使用も危険なため、早めの確認と修理が必要です。
3.発火の危険性
パワステの油圧を伝えるホースは、エンジンルーム内を広範囲にわたって取り回されています。パワステオイルは、エンジンオイルと比較して引火点が低く、油圧ホースなどから漏れたオイルが、高温のエンジンや排気管にかかると火災につながる危険性があるため注意が必要です。
この火災は車が全焼する大規模なものになる可能性も十分に考えられます。そのため、車からパワステオイルが漏れている場合は、すぐに整備工場へ持ち込みましょう。
パワステのオイルが漏れたらどうすれば良い?
まず、パワステオイルの漏れを見つけたら、無理に運転を続けないことが大切です。漏れの原因としては、高圧ホースの接合部やシール部分の劣化が多く、ハンドル操作に負荷がかかったタイミングで突然発生することもあります。
漏れた状態で走行を続けると、ステアリング操作に支障が出たり、ポンプの焼き付きなど深刻な故障に繋がる可能性があります。安全のためにも、すぐにJAFなどのロードサービスを呼び、信頼できる整備工場に車を運びましょう。
普段から「かかりつけ」の工場を持っておくと、トラブル時にもスムーズに対応してもらえます。突然の修理依頼では部品の手配や順番待ちで時間がかかることもあるため、事前の整備体制が安心につながります。
パワステのオイル漏れを防ぐ手段
パワステのオイル漏れを防ぐには下記の2つの手段が有効です。
1.定期的なオイル交換 2.プロによるパワステチェック |
それぞれの手段について解説します。
1.定期的なオイル交換
パワステオイルの交換は、車検などの定期的な点検時でも見過ごされがちな場所です。しかし、油圧式のパワステシステムの場合、常にオイルが循環しているため、エンジンオイルと同様に劣化が進みます。
特にパワステオイルは、駐車時など停車した状態でハンドルを操作する機会が多いほど負担も大きいです。そのため、走行距離だけでなく、1年ごとの点検時に交換サイクルを設けることをおすすめします。
新しいパワステオイルは、油圧ポンプやシステム全体の性能維持に繋がり、長期的に見ると故障の予防にも効果的です。
2.プロによるパワステチェック
パワステポンプで発生した油圧を、ステアリングギアボックスに伝えるためのパワステホースは、エンジンの後方や下方に配管されているため、目視での確認が難しい箇所です。そのため、定期点検時に車をリフトアップして、専門家が普段は見えない角度から確認することが重要です。
プロの目でオイルの滲みなどを確認し、必要に応じて修理や交換をおこないましょう。これにより、突然のオイル漏れによる車両のトラブルを未然に防げます。特に、輸入車の場合は交換部品の手配に時間がかかる場合があるため、早めの確認と対応が大切です。
パワステオイル漏れの修理費用
パワステオイル漏れの修理費用は、漏れが生じた場所によって大きく異なります。
例えば、ホースの交換費用は1本あたり10,000円前後が目安です。
一方、ポンプの交換では50,000円から70,000円、さらにギアボックス全体の交換となると100,000円から130,000円程度の費用がかかります。
漏れの範囲や部品の劣化状況によって費用は変動するため、正確な見積もりは専門業者に依頼することが重要です。
パワステのオイル漏れは自分で修理できる?
パワステオイルの漏れは、状況によっては自分で修理できることもあります。軽度な漏れであれば、市販のオイル漏れ止め剤を使用したり、ホースバンドの締め直しをすることで改善する可能性があります。これらの作業は比較的簡単で、整備初心者でも対応しやすいでしょう。
しかし、ホースやパワステポンプなどの部品交換が必要な場合は、ある程度の技術と知識が必要になります。また、作業後には「エア抜き」という工程をおこなわないと、ハンドル操作に異常が出ることがあるため注意が必要です。
さらに、パワステオイルは高圧で噴き出すこともあるため、作業中にオイルが飛び散るリスクもあります。
少しでも不安がある場合や、漏れが広範囲に及ぶ場合は、無理をせず専門の整備工場に相談することをおすすめします。
パワステオイル漏れはトラック乗り換えのタイミング?
パワステのオイル漏れは、トラックの走行距離や使用年数が伸びるにつれて発生しやすくなるトラブルの一つです。
パワステのオイル漏れが発生したトラックは、パワステ以外の部分でも経年劣化が進んでいる可能性が高いため、他の部品の交換時期が間近に迫っていることが考えられます。
さまざまなトラブルが連続して発生し、整備工場へ持ち込む頻度が増加する可能性があることも念頭にいれておきましょう。
経年劣化の進んだトラックは維持管理が大変
経年劣化が進み老朽化したトラックは、交換や修理が必要なパーツが急増し、修理費用の負担が大きくなる傾向があります。また、燃費も悪化するため、ランニングコストが高騰する可能性も高いです。
運送業においては運行スケジュール管理が非常に重要ですが、不具合発生のリスクを抱えるトラックでは、安定した運航計画を立てることが難しく、事業運営にも悪影響を及ぼす可能性があります。
中古トラックへの乗り換えが効果的
パワステオイル漏れが発生したトラックの乗り換えには、中古トラックの選択が効果的です。中古トラック販売店では、完成した状態の車両が多数取り揃えられており、必要な装備を搭載したトラックを選べます。
また、中古トラックの中には即納可能な車両も多く、購入後すぐに利用できるため、迅速な乗り換えが実現します。中には、購入同日に納車されるケースもあります。
さらに、中古トラック市場には新車同然の未使用車から低年式の車両まで幅広く流通しているため、予算に合わせた選択肢が豊富に用意されています。
そのため、パワステのオイル漏れが確認された際には、中古トラック販売店で取り扱う車両のコンディションや価格を確認し、最適な乗り換えを検討することが可能です。
中古トラックの乗り換え購入は「トラック流通センター」へ
中古のトラックの乗り換え・購入したいときは、トラック流通センターの利用がおすすめです。全国の在庫車両をオンラインで一括検索でき、希望の条件に合ったトラックを効率的に探せます。掲載車両には、年式・走行距離・車検の有無・価格などの詳細情報を明記しており、比較検討のしやすさが強みです。また、専門スタッフによるサポート体制も万全です。トラックの選定や購入に関する疑問にも丁寧にお答えしています。
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もちろん、現車確認や試乗対応、ローン・リースの相談も可能です。与信に自信がない方にも、提携しているローン・リース会社をご紹介します。この機会にご検討ください。
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パワステオイル漏れについてよくある質問
ここでは、パワステオイル漏れに関してよく寄せられる質問について解説します。修理費用や交換時期に関する疑問を解消し、適切な対応を検討する際の参考にしてください。
パワステのオイル漏れを確認する方法はある?
パワステオイルの漏れは、自分でもある程度チェックできます。まずはエンジンを止めた状態で、リザーバータンクのゲージを見てオイル量を確認しましょう。量が規定値より少なければ、漏れの可能性があります。
次にエンジンを始動し、ハンドルを左右にゆっくり数回切ると、オイルが循環します。その後、再びオイル量を見て変化がないかを確認するとより確実です。また、ホースやパイプ、ポンプ周辺にオイルのにじみや汚れが見られることもあるため、エンジンルームを目視で点検してみてください。
駐車場にオイルの染みが残っている場合も見逃せません。さらに、ハンドルが重く感じる、異音がするなどの症状があれば、漏れが進行しているサインかもしれません。心配な場合は、無理をせず整備工場に相談すると安心です。
パワステオイル止め剤は効果ある?
パワステオイルの漏れ止め剤は、ゴム製のシールやパッキンが経年劣化によって硬くなり、わずかな隙間からオイルが滲んでいるような軽度の漏れに対して、一定の効果が期待できます。この止め剤は、パワステオイルに混ぜて使うことで内部を循環し、シール部分の弾力を回復させる働きを持ちます。
また、オイルの粘度を高めて漏れにくくする作用もあります。ただし、すべての漏れに効くわけではなく、ホースの破損や金属部分の劣化が原因となっている場合には、効果は限定的です。
止め剤はあくまで一時的な対処として利用し、根本的な修理が必要な場合は整備工場での点検・交換を検討することが重要です。漏れが進行する前に、早めの対処を心がけましょう。
パワステオイルの継ぎ足しはした方が良い?
パワステオイルの量が明らかに少なくなっている場合、一時的に継ぎ足すことは必要です。ただし、それはあくまで応急処置であり、根本的な解決にはなりません。オイルが減っているということは、漏れや経年劣化が進んでいる可能性があり、そのまま放置すると他の部品に悪影響を及ぼすおそれがあります。
継ぎ足しを繰り返すだけでは、古いオイルが混ざったままとなり、油圧の低下や異音、ハンドル操作の重さなどの不具合が改善されない場合もあります。パワステオイルは潤滑や冷却、密封といった重要な役割を担っているため、定期的な全量交換が推奨されます。特に古い車両では、補充だけで済ませず、一度しっかり点検してもらうことが大切です。
まとめ
パワステは、トラックのハンドル操作を補助する重要な機能ですが、故障するとハンドル操作に支障をきたし、事故につながる危険性があります。特にパワステのオイル漏れは、経年劣化が進んだトラックに多く見られる症状で、放置すると重大なトラブルに発展する可能性があります。そのため、オイル漏れが確認された場合は、安全かつ計画的な運行を維持するためにも、乗り換えを検討することをおすすめします。
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- 「ハンドル操作時に足回りからの異音」「以前よりハンドルが重くなった」「直進中にハンドルが取られるといった症状」が現れた場合は、パワステオイル漏れのサインの可能性
- 症状に気づいた際には、速やかにパワステオイルの量を確認し、漏れが確認された場合は修理または乗り換えを検討する
- パワステの修理費用は、ホース交換は1本あたり約10,000円、ポンプ交換は約50,000円から70,000円、ギアボックス全体の交換は約100,000円から130,000円が目安
- パワステのオイル漏れが発生したトラックは、その他の部品も経年劣化が進んでいる可能性が高いので、中古トラックの検討も視野に入れると良い