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トラック始動装置のセルモーターとは?主な故障原因や故障発生時の対処法、修理相場を大紹介!

トラック始動装置のセルモーターとは?主な故障原因や故障発生時の対処法、修理相場を大紹介!
大きなトラックを走行させるためには、大出力エンジンが必要となるためトラックには大排気量のエンジンが搭載されています。エンジンを始動させるためには、クランク軸を回転させ燃焼室内を高圧に圧縮するクランキングを行う必要があり排気量が大きくなるほどクランキングの負荷は大きくなります。
トラックのエンジン始動には非常に大きなトルクが必要となりますが、強力なトルクを発生させるセルモーターを搭載することでキーを捻るだけで簡単なトラック始動が実現されています。トラックのエンジン始動装置セルモーターの仕組みや主な故障原因、故障発生時の対処法や修理費用目安などを紹介します。

トラックのエンジン始動に欠かせないセルモーターとは?

トラックのエンジン始動に欠かせないセルモーターとは?

トラックはエンジンの稼働で動力を得ますが、エンジンを始動させるためにはクランク軸を回転させ燃焼室内で吸気・圧縮するクランキングを行う必要があります。クランキングに必要なトルクは排気量の大きさと比例して大きくなり大排気量エンジンを搭載するトラックのエンジン始動には非常に大きなエネルギーが必要となります。

トラックのエンジンをクランキングして始動させるのがセルモーターと呼ばれる装置で、イグニッションキーやエンジンスターターボタンと連動し直流電力で駆動します。セルモーターの動力はバッテリーから供給される電力で、多くが直巻整流子電動機を採用しています。

セルモーターの名称は和製英語で英語ではStarter(スターター)・Self starter(セルフスターター)・Starter motor(スターターモーター)などと呼ばれます。

自動車創成期のエンジン始動は手動で行われた!

製造技術が未熟であった創成期の自動車にはセルモーターが搭載されておらず、スターター・ハンドルやクランキング・ハンドルと呼ばれるクランク棒を使用して人力でエンジンをクランキングさせて始動していました。

小型エンジンはハンドクランクでもエンジンを始動させることができますが、大排気量エンジンの大型トラックなどはクランキング動力を発生させる小型エンジンを起動させトラックのエンジン始動を行うケースも存在しました。

ハンドクランクは体力と高い練度が必要なうえ、操作を誤るとケッチンと呼ばれるクランク棒の逆転運動が生じ骨折事故が絶えなかったことから、セルモーターの開発が行われ1960年代に広く普及しました。

トラックのキャビン内の収納ボックスがグローブボックスと呼ばれるのは、ハンドクランクを行う際に着用した厚手の革製グローブが収納されていたことが語源であると言われています。

トラックのディーゼルエンジン始動には強力な力が必要となる!

低速トルクが高い特性を持つディーゼルエンジンは多くのトラックに採用されていますが、ディーゼルエンジンはガソリンエンジンのように点火プラグを使用せず、高圧の燃焼室内に軽油を噴射し自然発火させ燃焼させるため圧縮率が高く設定されています。

ガソリンエンジンよりもディーゼルエンジンのクランキングに必要となるトルクは非常に大きくなるため、ディーゼルトラックにとって高出力のセルモーターは必要不可欠な重要パーツに位置付けられると言えるでしょう。

トラックのエンジンがかからない!セルモーターの主な故障原因とは?

トラックのエンジンがかからない!セルモーターの主な故障原因とは?
トラックに搭載される大排気量のディーゼルエンジンは始動時に非常に大きなクランキングトルクが必要となる始動し難いエンジンですので、セルモーターの故障は避けて通りたいものです。

セルモーターの主な故障原因を掴むことは「トラックのエンジンがかからない!」と言う厄介なトラブル回避のカギとなりますので、セルモーターの主な故障原因を紹介します。

ギアのかみ合い不良やカーボンブラシの摩耗でセルモーター故障が生じる

セルモーターには直結式とも呼ばれるピニオン摺動(しゅうどう)式とアイドルギヤ(減速ギヤ)やプラネタリギヤ(遊星ギヤ)でモーターの回転数を落としトルクを稼ぐレブリダクション式の2つに大別されます。

トラックに搭載されるセルモーターはレブリダクション式のセルモーターですが、ギアのかみ合い不良が生じるとセルモーターが一時的に機能しなくなるトラブルが発生します。

またモーターに組み込まれたカーボンブラシは、使用と共に摩耗する消耗パーツですので、カーボンブラシの摩耗が進むとセルモーターが起動しなくなるトラブルが発生します。

セルモーターよりもバッテリーの電力不足が始動トラブルの原因となる

セルモーターに電力供給を行うバッテリーが弱ってくるとセルモーター自体が故障していなくてもセルモーターが起動できなくなります。実はトラックの始動トラブルのなかで最も発生率が高いの、が電力供給不足によるセルモーターの起動不良で、バッテリー上がりの状態に陥ったトラックはセルモーターを使用してエンジンを始動させられなくなります。

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セルモーターが故障したトラックは動かない!リカバリー手段は?

セルモーターが故障したトラックは動かない!リカバリー手段は?
エンジンを始動させるセルモーターが故障すると、イグニッションキーを捻ってエンジンを始動させられなくなってしまいます。現在トラックにはハンドクランク用のクランキングレバーが搭載されておらずエンジン始動手段はセルモーター限定だと思いがちですが、ミッションシステムによってはセルモーターを使用せずにエンジンを始動させられるケースも存在します。

ミッションシステムでセルモーター故障時の対処法は異なる

既にふれたとおりセルモーターの故障やバッテリー上がりでエンジンが始動不能となった場合でも、トラックのミッションシステムによってはセルフリカバリーでエンジンを始動させられるケースが存在します。

しかしトラックのミッションシステムによってはセルフリカバリーできるタイプとできないタイプに分類されますので、ミッションシステムごとの対処法を紹介します。

MT(マニュアルトランスミッション)のトラックの対処法

クラッチとシフトノブをドライバーが操作しながら任意のギア段に変速するマニュアルトランスミッションを搭載しているトラックの場合、セルモーターが故障しても「押し掛け」でエンジンを始動できる可能性があります。

押し掛けはニュートラルポジションの状態で道路の傾斜や他のトラックに牽引してもらい走行し、ある程度スピードが乗ってきたタイミングで5速などの高めのギア段でクラッチを繋ぎエンジンを始動させる方法です。

積み荷を積載している状態のトラックでは現実的ではありませんが、空荷の状態であればセルフリカバリーの可能性が望めます。

AT(オートマチックトランスミッション)のトラックの対処法

ドライブにセットすれば自動変速してくれるオートマチックトランスミッションは非常に便利なシステムですが、ATは押し掛けができませんので牽引などで整備工場までトラックを搬送する必要があります。

しかしセルモーターの起動不良がバッテリーの電力量不足で発生している場合は、救護車両のバッテリーからブースターケーブルで電力供給を受けジャンプスタートでエンジンを始動させられるケースが一般的です。

セルモーターは頑丈なパーツ!故障の発生率は限りなく低い?

セルモーターは頑丈なパーツ!故障の発生率は限りなく低い?
トラックのエンジン始動装置であるセルモーターは、エンジン始動に関わる重要パーツですので高い耐久性を持つものが使用されています。製造技術の向上で現在は高い精度と剛性を併せ持つセルモーターが製造され搭載されていますので、トラックのセルモーター自体が故障するケースは非常に稀だと言えるでしょう。

また起動時に大きな負荷がかかるセルモーターですが、始動装置であることから使用頻度が高くないこともセルモーターの故障発生率が高くない理由の1つに挙げられます。

セルモーターの使用頻度は決して高くない

大排気量のディーゼルトラックのエンジン始動を行うセルモーターには特に高い負荷がかかりますが、トラックのエンジンは1度始動すると比較的長時間稼働し続ける傾向にあるためセルモーターの使用頻度はあまり高くありません。

しかし環境問題対策として自動アイドリングストップ機能が搭載されているトラックの場合は、頻繁にセルモーターを起動させるため使用頻度が高くなりセルモーターの経年劣化や老朽化速度が早くなるといえます。

トラックのセルモーター修理費用の目安額は?

セルモーターの修理は通常アッセンブリー交換が行われるので、セルモーターのトラブルは交換修理で対応するのが一般的です。トラックに搭載されるセルモーターは高出力で高い耐久性が求められるため、乗用車のセルモーターと比較すると高額となる傾向にあり新品交換で60,000~80,000円程度の費用が発生します。

しかしセルモーターにはリビルド品も存在するため、リビルド品のセルモーターに交換すれば新品の半額近くでセルモーター交換を行えるケースも存在します。

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セルモーター故障はトラックの経年劣化が進んだ目安となる

トラックのエンジン始動を行うセルモーターには高い負荷がかかりますが、セルモーターが高い剛性と耐久性を持つパーツであることや、使用頻度が高くないことなどから寿命の長いパーツだと言えます。

耐用年数が長いセルモーターに故障が発生すると言うことは搭載トラックの使用歴が長いことを意味し、トラック自身の経年劣化が進み老朽化していることが予想されます。

経年劣化が進行したトラックは散発的な故障発生が予想される!

経年劣化が進行したトラックは散発的な故障発生が予想される!
トラックの老朽化が進むということは各搭載パーツの経年劣化が進行し使用限度に達するものが出現し始めると言うことを意味します。五月雨式にパーツ交換を要する部分が出現するとトラックの運行計画を立てるのが非常に困難になりますので、老朽化したトラックはコントロールが非常に難しい状態に陥っていると言えるでしょう。

セルモーター故障を修理しても老朽化したトラックのリフレッシュは行えない

セルモーターのトラブルが発生した場合は、当然セルモーターの交換修理で改善策を講じますが、老朽化したパーツのなかでセルモーターだけがリフレッシュすることになり他のパーツの経年劣化は進行し続けます。

トラックはどこか1つのパーツが不具合を起こしても運行に支障をきたすため、トータルバランスを高めに調整しておくことが重要となります。対処療法的に不具合の生じたパーツを交換して老朽化したトラックを維持し続けることは、費用対効果が低くリスクの高い運行方法だと捉えべきでしょう。

老朽化したトラックの乗り換えは中古トラック販売店の利用がおすすめ!

セルモーターに不具合が生じるほど経年劣化が進んだトラックは乗り換えるのが最も効果的な対処法だと言えますが、トラックの乗り換えコストは決して小さなものではないため二の足を踏んでしまいがちです。

そこで提案したいのが中古トラック販売店を利用した「良質な中古トラックへの乗り換え」です。現在の中古トラック市場には実にさまざまな車両区分・ボディタイプ・搭載架装・コンディションの中古トラックが大量に流入しているため、中古トラック販売店では予算に合わせて希望のトラックを選び出すことが可能です。

セルモーターの不具合や故障でエンジン始動不能のトラブルに陥る前に、良好なコンディションの中古トラックへの乗り換えを行い安全で快適なトラックライフを送ってみてはいかがでしょうか?

まとめ

トラックのエンジンを始動させるセルモーターは決して大きくはないパーツですが、高負荷な大排気量ディーゼルエンジンをクランキングさせるパワフルなパーツでもあります。セルモーターが故障するとトラックはエンジン始動が困難となりますが、万一セルモータートラブルに遭遇した場合は次に挙げる3つのポイントに留意して対処してください。

  • 空車のMTトラックは斜面や牽引で推し掛け始動が可能
  • 押し掛け不能なAT車もジャンプスタートで始動できるケースも
  • 老朽化が原因の故障対策は中古トラックへの乗り換えが効果的

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