牽引免許(けん引免許)とは?費用・取得条件・日数・運転できる車両

牽引免許(けん引免許)は、トレーラーやキャンピングカーなど750kgを超える車両をけん引する際に必要です。
本記事では、牽引免許とは何か、その種類や免許取得の難易度、取得の流れや免許がいらない場合を解説します。近々、仕事で必要になる方はぜひご一読ください。
目次
牽引免許(けん引免許)とは?
牽引免許とは、自走しないトレーラーなどの車を牽引する際に必要な運転免許です。具体的には、車両総重量が750kgグラムを超える車を牽引する場合に必要となります。
車両総重量とは、牽引されるトレーラー本体の重量と最大積載量を合計したものです。
ただし、牽引する車両が大型自動車、中型自動車、準中型自動車、普通自動車、または大型特殊自動車のいずれかである場合に限られます。
750kg以下の車両は牽引免許は不要
原則として、被牽引車の車両総重量が750kg以下であれば、牽引免許は不要です。たとえば、荷物を運ぶための小さなトレーラーや、サイズの小さいキャンピングカー、重量の軽いボート用のトレーラーなどは、750kg以下であれば普通免許だけで牽引できます。
ただし、牽引車とトレーラーを連結した状態でのサイズが、道路交通法で定められた制限(全長12m以下、全幅2.5m以下、全高3.8m以下)を超えないことが条件です。アウトドアやレジャーでトレーラーを利用したい場合には、この750kgの基準を一つの目安にするとよいでしょう。
故障車の牽引も牽引免許は不要
車が故障して動かなくなった場合でも、一定の条件を満たせば牽引免許がなくても故障車を牽引することが可能です。たとえ車両総重量が750kgを超えていても、緊急時の対応として一般のドライバーが牽引できる例外が設けられています。ただし、免許不要とはいえ、いくつかの厳格なルールを守る必要があります。
たとえば、牽引ロープの長さは5m以内と決められており、ロープには0.3㎡以上の白い布を付けて目印にしなければなりません。また、牽引時の速度は時速30km以下に制限されており、高速道路での牽引は禁止されています。さらに、故障車に乗る人にも運転免許の携帯が求められます。安全に牽引するには、通常とは異なる運転操作が必要なため、ルールを理解し、慎重な対応を心がけましょう。
牽引免許は3種類
免許の種類 | 牽引免許(第一種免許) | 牽引二種免許 | 牽引小型トレーラー限定免許 |
免許の概要 | 公道を運転する際に必要な免許 | 旅客運送用の自動車を運転する際に必要な免許 | 車両重量が750kg~2,000kg以下のトレーラーを牽引できる免許 |
取得費用 | 教習所 = 10万円強 運転免許センター= 約6,000円 |
教習所 = 10万円強 運転免許センター= 約6,000円 |
教習所 = 10万円強 運転免許センター= 約6,000円 |
取得時間 | 教習所 = 最短12時間 運転免許センター= 数時間ほど |
教習所 = 最短12時間 運転免許センター= 数時間ほど |
教習所 = 最短12時間 運転免許センター= 数時間ほど |
牽引免許には、「牽引免許(第一種免許)」「牽引二種免許」「牽引小型トレーラー限定免許」の3種類があります。
これらは、牽引する車両の種類や用途によって区分されます。それぞれの牽引免許について解説します。
1.牽引免許(第一種免許)
牽引免許(第一種免許)は、一般的に「けん引免許」と呼ばれる最も基本的な免許です。750kgを超えるトレーラーやキャンピングトレーラー、大型のタンクローリーなどをけん引する際に必要となります。
公道でこうした分離型の車両を運転するには、この免許が必須です。業務や趣味でけん引車を使う人にとって、もっとも取得されている牽引免許です。
2.牽引第二種免許
牽引第二種免許は、旅客を有料で運ぶ牽引車両を運転するための資格です。代表的な例としては、トラクターに客車をつないだ観光用のトレーラーバスがあります。営業目的で人を乗せて走行するため、第一種免許よりも取得条件が厳しく設定されています。
ただし、トレーラーバスは現在ほとんど利用されておらず、実際にこの免許を取得する人は非常に限られています。
3.牽引小型トレーラー限定免許
牽引小型トレーラー限定免許は、車両総重量が750kgを超え2,000kg未満のトレーラーを牽引する場合に必要な運転免許です。主に中型サイズのキャンピングトレーラーやボートトレーラーを扱う人に向いています。
教習所では取得できず、運転免許試験場での受験が必要です。試験には牽引免許を持つ人が試験車両を運転して持ち込む必要があり、取得のハードルはやや高めです。
牽引免許の取得条件
牽引免許の取得条件は以下のとおりです。
項目 | 内容 |
年齢 | 満18歳以上で普通免許、中型免許、大型車免許、大型特殊免許、二種免許のうちいずれかを所持している方 |
視力 | 両眼で0.8以上、かつ、1眼で、それぞれ0.5以上であること |
色彩識別能力 | 赤色、青色及び黄色の識別ができること |
深視力 | 三桿法の奥行知覚検査器により、2.5メートルの距離で3回検査し、その平均誤差が2センチメートル以下であること |
聴力 | 10メートルの距離で90デシベルの警音器の音が聞こえるものであること |
運動能力 | 1.自動車等の運転に支障を及ぼす恐れのある四肢又は体幹の障害がないこと 2.自動車等の運転に支障を及ぼす恐れのある四肢又は体幹の障害があるが、その者の身体の状態に応じた補助手段を講ずることにより自動車等の運転に支障を及ぼす恐れが無いと認められるものであること |
(引用元:那須自動車学校「牽引免許の詳細情報」)
<あわせて読みたい>
大型トラック免許取得に必要な深視力とはいったい何?試験を合格するコツやトレーニング方法もご紹介!
牽引免許の取得方法3選
牽引免許を取得するにはまず「満18歳以上で普通免許・中型免許・大型車免許・大型特殊免許・二種免許」のいずれかを取得している必要があります。
牽引免許の取得には、まず満18歳以上であり、かつ普通免許、中型免許、大型車免許、大型特殊免許、二種免許のいずれかを既に取得していることが必須条件です。
この条件を満たしたうえで、牽引免許を取得する方法は下記の3つがあります。
1.教習所 2.合宿 3.一発試験 |
それぞれの取得方法について解説します。
1.教習所での取得の流れ
自動車教習所に通学して取得する方法は、個人のペースに合わせてじっくりと学びたい方におすすめです。
教習所に通い牽引免許を取得する場合の流れは、以下のとおりです。
1.指定の教習所に入学 2.適性検査・運転適性検査(視力・聴力検査など) 3.技能教習(最短12時間) 4.技能卒業検定 5.試験場での適性検査(視力検査など) 6.牽引免許証の交付 |
教習所で牽引免許を取得するには、最短で12時間の技能教習を受ける必要があります。試験は技能試験のみで学科試験はありません。
牽引免許の取得までの期間は、免許取得者の受講ペースに違いがありますが、最短6日間ほどで卒業が可能です。
2.合宿での取得の流れ
合宿を利用して取得する方法は、短期間で集中的に取得する方法ができるため、忙しい方や早く免許を取得したい方に適しています。
合宿を利用して牽引免許を取得する場合の流れは、以下のとおりです。
1.指定の合宿教習所に入学 2.入校式 3.適性検査・運転適性検査(視力・聴力検査など) 4.技能教習(最短12時間) 5.技能卒業検定 6.卒業式 7.試験場での適性検査(視力検査など) 8.牽引免許証の交付 |
基本的には、教習所に通学する時と流れは変わりません。
合宿免許の場合、所持免許の種類によって必要となる教習時間は異なりますが、最短で「5泊6日+免許試験場での免許書換1日」の計7日ほどで取得できます。
一発試験での取得の流れ
一発試験で牽引免許を取得する方法は、費用を抑えたい方に魅力的ですが、事前の十分な準備が求められます。
運転免許センターで牽引免許の一発試験を受け、合格するまでの流れは、以下のとおりです。
1. 技能試験 2. 適性検査(視力・聴力検査など) 3. 牽引免許証の交付 |
一発試験で取得する場合、技能試験と適性検査に合格すれば免許を取得できるため、1日で取得が可能です。
牽引免許の取得費用
牽引免許の取得費用は、取得方法によって大きく異なります。上記で解説した「教習所」「合宿」「一発試験」の3つの取得費用を紹介します。
教習所での取得費用
教習所の牽引免許取得費用の参考として、以下に小金井自動車学校の教習料金をご紹介します。
取得免許 | 所持免許 | 合計金額 |
牽引免許 | 大型・中型・普通免許 | 155,100円(税込) |
料金には「入所手付金」「教習料」「諸費用」「検定料(初回分のみ)」が含まれています。また、技能検定は規定時限数のみ保証、卒業検定は1回までの費用が含まれていますが、追加で必要となった場合は7,700円(税込)がかかります。
加えて、技能検定を当日キャンセルした場合はキャンセル料が7,700円(税込)かかります。
(参考元:小金井自動車学校「けん引免許」)
合宿での取得費用
栃木県にある那須自動車学校の合宿プランの日程によると、1日目は入校手続きと適性検査、加えて実技教習を2時間実施。2日目以降は毎日2〜3時間の実技教習をおこなう流れとなっています。そして6日目に卒業検定がおこなわれます。
合宿の牽引免許取得費用の参考として、以下に那須自動車学校の合宿料金をご紹介します。
取得免許 | 所持免許 | 相部屋の費用 | シングルの費用 |
牽引免許 | 中型・準中型・普通免許 | 135,300円(税込) | 146,300円(税込) |
上記の金額は、最短で卒業した場合の金額で、規定を超えた場合は追加で費用がかかります。
(参考元:那須自動車学校「けん引免許」)
一発試験での取得費用
埼玉県警察のウェブサイトによると、牽引一種免許試験にかかる費用は、以下の通りです。
免許の保有形態 | 申請手数料 | 車両使用料 | 交付手数料 | 合計 |
免許証 | 2,800円 | 1,750円 | 2,350円 | 6,900円 |
マイナ免許証 | 2,800円 | 1,750円 | 1,550円 | 6,100円 |
免許証+マイナ免許証 | 2,800円 | 1,750円 | 2,450円 | 7,000円 |
免許の保有形態により金額が異なり、最安で6,100円となっており、教習所や合宿と比べると費用面では大きなメリットがあるといえます。
(参考元:埼玉県警察「指定自動車教習所を卒業しないで牽引一種免許を受験されるかた」)
牽引免許の試験内容
牽引免許の試験は、第一種と第二種で内容や難易度が大きく異なります。それぞれの試験内容について紹介します。
牽引免許(第一種免許)試験内容
第一種牽引免許の試験では学科試験がなく、適性検査と技能試験が中心です。技能試験は100点満点からの減点方式で、70点以上で合格となります。
技能試験では、安全確認から発進、慣らし運転、指示速度走行、方向転換やバックでの車庫入れ、障害物回避、S字カーブ、踏切通過、交差点通過、停車といった項目が評価されます。
牽引二種免許の試験内容
牽引二種免許の試験は、旅客運送用であるため、第一種よりも厳しく設定されています。
まず学科試験があり、文章問題95問とイラスト問題5問の計100問で90点以上が合格基準です。ただし、現に他の種類の第二種免許を取得している場合は、学科試験が免除されます。
学科試験合格後に技能試験がおこなわれます。牽引免許(第一種免許)と同様の試験内容ですが、合格基準は80点以上と高めの設定です。また、各審査項目もより厳しく評価されます。
牽引免許の合格率
牽引免許の合格率は、牽引免許(第一種免許)と牽引二種免許で大きく異なります。2025年5月9日に警視庁が公開したデータでは、令和6年中のそれぞれの合格率は以下の通りです。
牽引免許(第一種免許) | 牽引二種免許 | |
受験者数 | 26,014人 | 1,548人 |
合格者数 | 21,099人 | 319人 |
合格率(%) | 81.1% | 20.6% |
(引用元:運転免許統計|警察庁Webサイト)
牽引免許(第一種免許)の受験者数は2.6万人を超え、合格率は8割以上と高い傾向です。これに対し、牽引二種免許の受験者数は、約1,500人と少なく、合格率は2割程度にとどまっています。
このデータから、牽引免許(第一種免許)は比較的取得しやすい一方、牽引二種免許は難易度が高いことがわかります。
牽引免許に関するよくある質問
最後に、牽引免許に関してよくある質問とその回答を整理しました。牽引免許について不明点がある方は、免許取得前に解消しておきましょう。
お得に牽引免許を取得する方法は?
牽引免許の取得を考えている方にぜひ知っておいてほしいのが、「教育訓練給付金制度」の活用です。これは雇用保険に一定期間加入している人が対象となる制度で、厚生労働大臣が指定した教習講座を修了すれば、教習費用の最大20%(上限10万円)がハローワークから支給されます。
給付対象には条件があり、在職中であれば原則として雇用保険に1年以上の加入、離職中であれば離職後1年以内であることが必要です。また、過去に制度を利用した人は、前回から3年以上経過している必要があります。補助の対象となるのは入学金や受講料のみで、検定料や交通費などは含まれません。なお、この制度が使える教習所は限られているため、事前に確認しておきましょう。
牽引免許に合格するコツは?
牽引免許を取得するには、通常の車両とは異なる運転感覚や技術が求められます。まず大切なのは「車幅感覚」を身につけること。特に左側の感覚をつかむのが難しいため、サイドミラーを使って被牽引車の動きを常に確認しましょう。
次に「右左折時の巻き込み対策」が重要です。牽引車は内輪差が大きく、歩行者や自転車を巻き込むリスクがあるため、カーブでは大回りを意識し、後輪の軌道に注意を払いながら走行します。
試験の難関とされるのが「バック操作」です。普通の車と違い、牽引車は連結部分があるため、逆方向に動く感覚に戸惑いがちです。バック時は焦らず、小刻みにハンドルを切りながら、トレーラーの角度を維持することが大切です。
また、実技以外でも「法規や安全運転の知識」は欠かせません。筆記試験対策として模擬試験を活用し、苦手分野を把握しておくと良いでしょう。
牽引免許を取得するメリットは?
牽引免許を取得する最大のメリットは、仕事の幅が広がり、収入アップが期待できる点です。特に運送業界では、トレーラーやタンクローリーなどのけん引車両を扱える人材は貴重とされており、求人の幅も広がります。
トレーラードライバーは高収入が見込まれる「花形職種」とされ、昇進や好条件の転職につながるケースもあります。
また、けん引免許を持っていれば、大型のキャンピングトレーラーやボートトレーラーの運転も可能になるため、レジャー用途でも大いに活用できます。趣味と実益を兼ねて取得する方も少なくありません。
さらに、けん引車両の運転には高度な操作技術が求められるため、免許取得を通して運転スキルが磨かれ、安全運転への自信にもつながります。運転経験を積むことで、プロドライバーとしてのキャリアアップにも大きく貢献します。
牽引免許が必要な職種にはどんなものがある?
牽引免許を活かせる職種は意外と多く、特に物流や建設、特殊輸送の現場で重宝されています。代表的な職種を以下の表にまとめたので、参考にしてください。
職種 | 特徴 |
トレーラー運転手 | ・鉄鋼や木材、粉体などの大型荷物を長距離輸送 ・大型免許との併用が必要なこともある |
海コンドライバー (海上コンテナ輸送) |
・港から倉庫などへコンテナを運ぶ仕事 ・クレーンでの荷下ろしが多く、肉体労働は比較的少ない |
タンクローリードライバー | ・液体・気体などを運搬するタンクローリーをけん引 ・危険物取扱者や高圧ガス移動監視者などの資格が必要になる場合もある |
トレーラーハウスの輸送ドライバー | ・移動式住宅(トレーラーハウス)を製造元から設置場所まで運搬 ・特殊車両扱いとなるため、夜間輸送などが中心 |
高圧ガス輸送ドライバー | ・高圧ガスを専門のタンクローリーで運搬 ・精神的な緊張感はあるが、荷下ろしの負担は少ない |
建設機械の運搬ドライバー | ・クレーン車やブルドーザーなどの大型機械をトレーラーで現場に運搬 ・建設業界では需要が高い |
農業・林業作業用車両の運転手 | ・トラクターなどで農機具や作業車をけん引する作業 ・農業従事者にも牽引免許が役立つ場合がある |
どの職種も、牽引免許に加えて大型免許や専門資格が求められることがあるため、事前に確認しておくと安心です。自分の興味や働きたい分野に合わせて、どの種類の牽引免許が必要かを確認しておくと良いでしょう。
まとめ
牽引免許の種類から取得方法、試験内容、取得条件、そして取得費用までを詳しく解説しました。牽引免許の取得を検討されている方は、ぜひ本記事で紹介した情報を参考に、ご自身に合った方法で取得を目指してください。
-
- 牽引免許は、750kgを超える被牽引車を牽引する際に必要となる免許
- 750kg以下の牽引や、緊急時の故障車のけん引には免許が不要な場合もある
- 第一種、第二種、小型トレーラー限定の3種類があり、用途によって使い分けられる
- 免許取得には、教習所への通学、合宿、一発試験の3つの方法があり、それぞれ費用や期間が異なる
- 難易度が高い第二種免許は、合格率が低い傾向にあるが、実際にこの免許を取得する人は限られている