トラックの低床とは?全低床、高床の寸法や違い|メリット・デメリット・用途を解説
低床車は、荷台の高さが抑えられた積み降ろし作業がしやすい構造のトラックです。低床トラックの他には「全低床」「高床」という種類があり、構造や用途によって適性が異なります。
本記事では、「低床」「全低床」「高床」トラックの違い、各タイプのメリットデメリット、寸法や価格の比較をまとめました。事業に適したトラックを選ぶ際に参考にしてください。
目次
低床トラックとは?
低床トラックとは、荷台部分の床面が通常のトラックよりも低い位置に設計された車両を指します。 一般的な高床トラックに比べて、積み降ろし作業がしやすく、重い資材や大型商品を扱う現場で利用されています。
低床トラックには、後輪に小径タイヤを採用することで車高を下げた「低床型」と、さらに車高を大幅に下げた「全低床型」があります。
なお、業界によっては「ローフロアトラック」や「ローキャブトラック」と呼ばれることもあり、用途や仕様に応じて使い分けられています。
中古トラックのことを調べていると時々出てくる、「低床」「全低床」「高床」というキーワードがあり、トラック荷台(トレーラー)の底面と地面の距離(地面からトラック荷台の床までの高さ)を表しています。
主に活躍するのは、以下の業種です。
・家具・家電配送業 |
荷台が低いため、フォークリフト作業の効率化や手積み作業時の作業負担軽減にもつながります。小型(2t〜3t)、中型(4t)、大型(10t以上)それぞれに低床仕様車が存在し、業務内容に応じた選択が可能です。
低床・全低床・高床トラックのメリット・デメリット
トラックの床面高さは、積載作業のしやすさや運搬効率に大きく影響します。 ここでは、低床・全低床・高床それぞれの特徴とメリットデメリットを解説します。現場に合ったトラックの選定時に参考にしてください。
低床トラックのメリット・デメリット
低床トラックは、通常のトラックよりも荷台の床面が低く設計されている車両です。 後輪に小径タイヤを採用するなどの工夫によって、荷台の高さが抑えられています。
また、次の方法を採用することで、荷台の高さを抑えながら一定の耐荷重性能を確保できます。
・後輪に小径タイヤを使用する(ダブルタイヤにして強度を確保) |
【低床トラックのメリット】 |
・荷物の積み下ろしがしやすく、作業負担が軽減される ・フォークリフト作業がスムーズにできる ・車体全高が抑えられるため、高さ制限のある現場にも対応しやすい |
【低床トラックのデメリット】 |
・小径タイヤのため、段差や悪路走行に不向き ・積載重量が制限される場合がある ・タイヤ交換やメンテナンス時に専用部品が必要となる |
低床トラックの最大のメリットは、作業効率の向上と労力軽減です。荷台が低く手積み・手降ろしの負担が減り、フォークリフトでの作業もスムーズになります。
さらに、高さ制限がある施設(立体駐車場・物流倉庫)への搬入にも適しており、現場対応力の高さが強みです。
低床トラックのデメリットは、快適な作業性を実現する一方で、路面状況への対応力や積載量に制約が出ることがあります。とくに建設現場など、未舗装道路を走行する場合は、慎重な車両選びが必要です。
全低床トラックのメリット・デメリット
全低床トラックは、車両全体の荷台フロアができる限り低く設計されたトラックです。「フルローフロア車」とも呼ばれ、軽量物の頻繁な積み降ろし作業に向きます。
次の方法で、全低床トラックはつくられています。
・後輪だけでなく、すべてのタイヤを小径のシングルタイヤにする ・リアサスペンションのセッティングを変更し、地上高を極限まで下げる ・床面全体をフラットにし、荷台の段差をなくす構造にする |
タイヤだけでなく、ホイールも小径にして、より低くしたタイプが多いです。
【全低床トラックのメリット】 |
・床面が最も低く、積み降ろし時の身体的負担が少ない ・台車やカゴ台車の使用が容易で、効率的な搬出入が可能 ・荷台全体の高さが均一で安定感がある |
【全低床トラックのデメリット】 |
・耐荷重性能が低い ・悪路や段差の多い現場には不向き ・選べる車種が限られる |
全低床トラックのメリットは、積み下ろし作業が多い物流や配送現場での導入に適しており、作業効率と安全性を大きく向上させる設計になっていることです。台車やロールボックスを使用するケースでは、特に効果的です。
全低床トラックのデメリットは、シングルタイヤ構造のため、同じサイズの高床トラックと比べて積載できる重量が制限されることです。また、タイヤ径が小さく地上高が低く、未舗装路や急な傾斜では走行安定性に不安が残ります。ほかにも全低床仕様は、特定の車種や架装に限定されているのもデメリットです。
高床トラックのメリット・メリット
高床トラックは、床面高が高く設定されたトラックです。大径のダブルタイヤを採用し、高い積載力と走行安定性を実現しました。 土砂・建材・機械などの重量物輸送に向いた構造です。
次の方法で高床トラックはつくられています。
・後輪に大径ダブルタイヤを採用する ・シャーシを強化し、床面の高さを保つ ・サスペンション構造を変更し、重積載・悪路走行に耐えられる仕様にする |
この設計により、高床トラックは強靭な積載性能と走行性能を備えています。
【高床トラックのメリット】 |
・耐荷重性能に優れ、重量物の運搬が可能 ・悪路や段差のある現場でも安定して走行できる ・長距離輸送にも適した構造で、車両寿命が長い |
【高床トラックのデメリット】 |
・荷台が高く、手積み・手降ろし作業が大変 ・フォークリフトでの積み下ろし時に段差ができ、作業効率が低下しやすい ・高さ制限のある施設に入れないことがある |
高床トラックのメリットは、高い荷台と堅牢な構造により重量物や長距離や悪路輸送で真価を発揮します。運搬効率と耐久性を重視するときに特に有効です。
高床トラックのデメリットは、積載力と走破性では優れるものの、荷役のしやすさや施設対応力では制約が生じます。導入時には、走行ルートや搬入先の条件も合わせて確認してください。
低床・全低床・高床トラックとの違いとそれぞれの特徴【一覧比較表】
低床・全低床・高床には、それぞれ異なる強みがあります。
・作業のしやすさを重視するなら全低床 ・バランスの良さを求めるなら低床 ・積載力と走行性能を重視するなら高床 |
「現場の特性」と「運ぶ荷物の種類」によって最適な床形状は変わります。本章では、低床・全低床・高床の特徴を一覧表にまとめました。検討時の参考にしてください。
【低床・全低床・高床の特徴一覧比較表】※いすゞエルフの2tクラス・標準ボディで比較しています。
低床 | 全低床 | 高床 | |
床の高さ | 約85〜95cm | 約70〜80cm | 約100〜110cm |
タイヤ構成 | ダブル小径タイヤ | シングル小径タイヤ | ダブル大径タイヤ |
積載量 | 約2t | 約2t (やや積載制限あり) |
2〜2.5t |
新車価格 | 約330〜360万円 | 約340〜370万円 | 約350〜380万円 |
中古価格 (5年落ち/5万km) |
約110〜150万円 | 約120〜160万円 | 約130〜180万円 |
向いている現場 |
・台車利用が多い現場 |
頻繁な積み降ろし | 重量物、建設資材、段差の多い現場 |
小型(2t・3t)の低床トラックの寸法
2、3トンクラスの小型トラックは、都市部や狭い路地でも取り回しやすく、配送や建設業などさまざまな現場で活躍します。 低床仕様の車両であれば、荷台の高さが抑えられているため、積み降ろしの効率を高めたい現場や人力作業が多い業務に適します。
ここでは、主要メーカーの代表的な小型低床トラックを例に、「全長」「荷台寸法」「床面高」などの目安を紹介するので参考にしてください。
いすゞ エルフ(2t・全低床仕様)
(引用元:いすゞ)
項目 | サイズ |
全長 | 約4.7〜5.2m |
全幅 | 約1.7〜1.9m |
全高 | 約2.0〜2.2m |
荷台内寸(長×幅) | 約3.1m × 1.6m |
荷台の床面高 | 約70〜80cm |
最大積載量 | 約2t |
日野 デュトロ(2t・低床仕様)
(引用元:日野)
項目 | サイズ |
全長 | 約4.9〜5.4m |
全幅 | 約1.8m |
全高 | 約2.1〜2.3m |
荷台内寸(長×幅) | 約3.1〜3.2m × 1.6〜1.8m |
荷台の床面高 | 約85〜90cm |
最大積載量 | 約2〜2.5t |
三菱ふそう キャンター(3t・高床仕様)
(引用元:三菱ふそう)
項目 | サイズ |
全長 | 約5.5〜6.1m |
全幅 | 約1.9m |
全高 | 約2.3〜2.5m |
荷台内寸(長×幅) | 約3.5〜3.7m × 1.8〜2m |
荷台の床面高 | 約105〜115cm |
最大積載量 | 約3t |
中型(4t)の低床トラックの寸法
4トンクラスの中型トラックは、積載量と作業効率のバランスに優れた車種で、建設資材や業務用機器の搬送など幅広い現場で重宝されます。 低床仕様を選ぶと、4トンの積載量を保ちながらも、降ろし作業の負担を軽減可能です。
ここでは、代表的な中型低床トラックの寸法を紹介します。
いすゞ フォワード(低床仕様)
(引用元:いすゞ)
項目 | サイズ |
全長 | 約7〜8.4m |
全幅 | 約2.2〜2.3m |
全高 | 約2.4〜2.7m |
荷台内寸(長×幅) | 約5.5〜6.0m × 2.1〜2.2m |
荷台の床面高 | 約90〜95cm |
最大積載量 | 約3〜4t |
日野 レンジャー(低床仕様)
(引用元:日野)
項目 | サイズ |
全長 | 約7.5〜8.2m |
全幅 | 約2.3m |
全高 | 約2.5〜2.8m |
荷台内寸(長×幅) | 約5.7〜6.2m × 2.2m |
荷台の床面高 | 約95〜100cm |
最大積載量 | 約3.5〜4.5t |
大型(10t)の低床トラック寸法
10トンクラスの大型トラックは、長距離輸送や大量の荷物を一度に運ぶ業務に欠かせない車両です。 低床仕様の車両を選ぶと、大量積載と積み下ろし効率の両立が可能です。ここでは、代表的な大型低床トラックの寸法をご紹介します。
いすゞ ギガ(低床仕様)
(引用元:いすゞ)
項目 | サイズ |
全長 | 約11.9〜12m |
全幅 | 約2.4〜2.5m |
全高 | 約3.0〜3.5m |
荷台内寸(長×幅) | 約9.5〜9.7m × 2.3〜2.4m |
荷台の床面高 | 約95〜105cm |
最大積載量 | 約9.5〜13t |
日野 プロフィア(低床ウイング車)
(引用元:日野)
項目 | サイズ |
全長 | 約11.8〜12m |
全幅 | 約2.49m |
全高 | 約3.5m |
荷台内寸(長×幅) | 約9.6m × 2.4m |
荷台の床面高 | 約100cm |
最大積載量 | 約12〜13.5t |
トラックのタイヤサイズ表示の見方は?
トラックの「低床」「全低床」「高床」に注目してトラック選びを進めていくと、タイヤサイズの表示を目にすることがあるかもしれません。このタイヤサイズ表示は、慣れていないと少し分かりづらいです。本章では、トラックのタイヤサイズ表示の一例を取り上げて、その見方を解説します。
(例)11R22.514PR
内容 | |
11 | 断面幅、つまりタイヤの幅。この例ではインチ表示となっている。 |
R | タイヤの構造を表す。R=ラジアル構造のこと。 |
22.5 | リム径。タイヤの内径。インチ表示。 |
14PR | プライレーティングと呼ばれるもので、タイヤの強度を表す。14PRのほかに、6PRや12PR、16PRなどといったプライレーティングがある。 |
低床トラックに関するよくある質問
低床トラックに関するよくある質問に回答します。
超低床トラックとは?寸法も教えてください。
超低床トラックとは、全低床トラックの中でも特に床面高を抑えたタイプを指します。明確な定義はメーカーによって異なりますが、一般的には床面地上高が70cm前後またはそれ以下のモデルを指すことが多いです。
◼︎参考寸法例(2t超低床タイプ・いすゞエルフの場合)
項目 | サイズ |
床面高 | 約65〜70cm |
荷台長 | 約3.1〜3.3m |
荷台幅 | 約1.6〜1.8m |
最大積載量 | 約2t |
超低床タイプは、荷台と地面の距離が非常に近く、台車やカゴ台車のまま積み降ろしできるのが特徴です。物流・宅配・食品配送など、頻繁な積み降ろしがある現場で、とくに効果を発揮します。
低床トラックをレンタルしたときの相場は?
低床トラックのレンタル料金は、車両の大きさや装備内容、レンタル期間によって異なります。 以下は2〜4トンクラスの一般的な相場目安です。
【車両サイズ 1日レンタル料金の目安 長期(1か月)の目安】
・2t低床トラック 約10,000〜15,000円 約100,000〜150,000円 ・3t低床トラック 約12,000〜18,000円 約120,000〜170,000円 ・4t低床トラック 約15,000〜22,000円 約150,000〜200,000円 ※料金は車種・地域・保険・付帯装備の有無によって変動します。 |
レンタルを検討する場合は、目的や期間に応じて複数社で比較してください。
低床トラックはフォークリフト作業に向いていますか?
低床トラックはフォークリフトでの積み降ろし作業に非常に適します。床面が低いため、フォークの持ち上げ高さが抑えられ、積み降ろしにかかる時間と労力を減らせるためです。
とくに全低床タイプでは、荷台と倉庫の床面との高低差が少なく、リフトの角度を最小限に抑えて作業できます。これにより、荷物の転倒リスクやリフト操作時の事故リスクを軽減でき、安全性の向上にもつながります。
ただし、トラックの荷台構造や架装の種類によっては、横からの作業ができないので、導入時には荷役スタイルとの相性を確認してください。
低床・高床トラックの購入は「トラック流通センター」
中古の低床・高床トラックを購入したいときは、トラック流通センターの利用がおすすめです。全国の在庫車両をオンラインで一括検索でき、希望の条件に合ったトラックを効率的に探せます。
掲載車両には、年式・走行距離・車検の有無・価格などの詳細情報を明記しており、比較検討のしやすさが強みです。
また、専門スタッフによるサポート体制も万全です。トラックの選定や購入に関する疑問にも丁寧にお答えしています。
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まとめ
トラックの「低床」「全低床」「高床」の違いや、それぞれのメリット、寸法、タイヤサイズ表示の見方を紹介しました。
全低床・低床・高床それぞれに特徴があり、積載量・走行性能・現場環境との相性によって、選ぶべきタイプが異なります。また、小型・中型・大型それぞれの低床仕様と寸法の目安を把握しておくことで導入後のミスマッチや制限を回避することが可能です。本記事を参考に、事業に適したトラックを選びましょう。
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- 低床トラックとは、荷台の高さが抑えられた構造で積み下ろしがしやすい車両
- 全低床と低床と高床は、床の高さ・積載量・悪路対応性に大きな違いがある
- 重量物が多ければ、高床が適し、軽量物・頻繁な荷役なら低床系が有効
- 荒れた路面・段差が多い場合は、低床トラックでは対応しきれない可能性がある