オルタネーター故障の前兆と寿命|役割・点検方法・修理費用・交換時期

オルタネーターは、エンジンの動力を利用して発電を行う重要な部品です。このオルタネーターが発電した交流電流は、整流器によって直流電流に変換され、車両の電装品に供給されます。
本記事では、オルタネーターの役割や故障の前兆、寿命や修理費用などについて解説します。ぜひ参考にしてみてください。
目次
オルタネーターとは?
オルタネーターは、車両の走行に必要な電力を生み出す発電機です。トラックで使用される電気は直流電流ですが、オルタネーターが発電する交流電流は、整流器によって直流電流に変換されてから車両に供給されます。
また、エンジンの回転数に応じて発電電圧が高くなるため、安定した電圧を保つために電圧の制御もおこなわれます。
かつてはエンジン出力のロスが大きい発電機でしたが、技術改良が進み、現在ではダイナモに代わってオルタネーターが搭載されています。その普及を後押ししたのは、シンプルな構造でありながら、アイドリング時の低回転から高速走行時の高回転まで幅広い速度に対応できる点です。これにより、車両の安定した電力供給を可能にしています。
オルタネーターが供給する電力は、次のような機器に使われています。
・ヘッドライトやブレーキランプなどの灯火類 ・カーナビやオーディオ機器などの電子機器 ・パワーウィンドウやパワーステアリングなどの装備 ・エアコン、ヒーターなどの快適装備 |
オルタネーターは、「走る」「止まる」といった車の基本機能だけでなく、快適性や安全性を支える重要な存在です。
オルタネーターの寿命とは?
オルタネーターは消耗部品であり、永続的に使用できるものではありません。エンジンの回転と連動して常に稼働しているため、内部のベアリングやブラシ、整流器、レギュレーターなどの部品が摩耗していきます。
オルタネーターの寿命を解説します。
オルタネーターの新品の寿命
オルタネーターの寿命は、走行距離で10万〜15万km前後、使用年数で7〜10年程度といわれています。
ただし、これはあくまで目安であり、使用環境やメンテナンス状況によって大きく変わります。たとえば、夜間走行が多く常にライトを点灯している車、電装品を多用する車は寿命が短くなる傾向です。
価格は、5〜10万円とリビルト品より高めですが、耐久性と信頼性を重視するのであれば、新品を選ぶメリットが大きいです。
オルタネーターのリビルト品の寿命
リビルト品とは、一度使用されたオルタネーターを分解して洗浄し、摩耗や劣化が進んだ部品を新品に交換したうえで再組み立てしたものです。
寿命の目安は、走行距離で 5万〜8万km、使用年数で3〜5年程度です。新品よりは、寿命が短くなりますが、その分コストを抑えられます。
ただし、主要部品をすべて新品に交換して組み直す「高品質リビルト品」の場合、新品と同様に10年または10万キロの耐久性を持つこともあります。信頼できるメーカーや整備工場の製品を選ぶことが、寿命を左右する大きなポイントです。
リビルト品は、2万円台から入手できることもあり、経済性を重視するユーザーに選ばれます。
ただし、製造メーカーやリビルト工場の品質基準によって当たり外れがあるため、購入時は「保証期間があるか」「どの部品まで交換しているか」といった点を確認してください。
オルタネーターの寿命に影響する要因
オルタネーターの寿命は、使用年数と走行距離だけで決まるものではありません。実際には、いくつかの要因が複合的に作用して劣化の進行を左右します。
代表的な要因を解説します。
走行環境
市街地走行が多い車は、信号待ちや低速走行が頻発し、エンジンの回転数が低い時間が長くなります。
その結果、十分な発電が行えずオルタネーターに負荷がかかりやすくなり、寿命が縮まることがあります。反対に、高速道路走行が多い車は発電効率が安定するため、寿命が延びやすいです。
電装品の使用状況
エアコン、カーナビ、オーディオ、大型の補助ライトといった電気を多く消費する装備を頻繁に使用している場合、常に大電流を発生させ続けることになります。これにより、オルタネーターに大きな負担がかかります。
特に近年は電子制御装置が多い車が増えているため、従来より寿命が短いです。
バッテリーの状態
オルタネーターはバッテリーに電気を充電する役割を持ちます。もし、バッテリーが劣化していると充電効率が悪くなり、その分オルタネーターが稼働します。
つまり「バッテリー不良」がオルタネーター寿命の短縮に直結します。
メンテナンス頻度
定期点検でベルトの張りや異音の有無を確認しておくことで、早期の不具合発見につながります。
例えば、ファンベルトの緩みや摩耗を放置するとオルタネーターに余計な負荷を与え、故障の原因になります。こまめな点検を怠ることで、寿命が縮まります。
オルタネーターが故障する前兆の症状
オルタネーターは車両の電力を供給する重要な部品であり、故障すると車両の運行に支障をきたします。
オルタネーターの故障は突然発生することもありますが、多くの場合、前兆となる症状が現れます。これらの症状を早期に察知することで、大きなトラブルになる前に適切な対処が可能です。どのような症状が前兆として現れるのかを解説します。
【症状1】警告灯の点灯
オルタネーターが正常に作動していない場合、最初に現れる可能性のある症状は警告灯の点灯です。
特に、エンジン始動後に車が走行し始めたにもかかわらず、バッテリーランプが消えず点灯したままの場合は注意が必要です。
これは、オルタネーターが発電や充電を適切におこなえていないサインであり、早急な点検
が推奨されます。ランプが点灯している状態での走行は、車の電装品への電力供給不足やバッテリー上がりの原因となる可能性もあります。
【症状2】エンジンがかからない
オルタネーターが発電できなくなると、バッテリーの電力だけで車を動かすことになります。
そのまま走行を続けると、バッテリーの電力が尽きてエンジンが始動しなくなる、あるいは走行中に急にエンジンが止まるといった深刻な事態につながります。
また、走行中にエンジンが突然停止したり、バッテリーを交換してもエンジンがかかりにくい場合は、オルタネーターの故障を疑わなくてはなりません。
【症状3】オルタネーターからの異音
オルタネーターから異音が聞こえる場合、それは故障の前兆かもしれません。
異音の種類によって原因が異なり、例えば「キュルキュル」という音はオルタネーターベルトの劣化や緩みが考えられます。ベルトは経年劣化で硬くなったり、ひび割れが生じたりすることで異音が発生することがあります。
また、「カラカラ」や「カリカリ」といった音はプーリーの摩耗が原因である場合が多く、プーリーの軸の劣化や不良によって回転がうまくいかずに異音が生じます。
さらに、「ウィーン」という高い機械音は、プーリーの軸受けであるベアリング劣化の可能性が高いです。
これらの異音を放置すると、オルタネーターが完全に故障し、最悪の場合走行中にエンジンが停止するなどの大きなトラブルに繋がりかねません。異音に気づいたら、早期に点検修理を検討してください。
【症状4】電気製品の異常
オルタネーターは車に電力を供給する重要な部品であり、その異常は様々な電気製品の不具合として現れることがあります。
ヘッドライトや室内灯の明るさが不安定になったり、点滅したりするなどの異常は、オルタネーターの故障の前兆である可能性が高いです。また、エアコンやオーディオの動作が不安定になったり、途切れたりすることもあります。
オルタネーターの点検方法
オルタネーターの不調を感じた場合は、精密な点検が不可欠です。
ここでは、主に整備工場でおこなわれる代表的な3つの点検方法を紹介します。
【方法1】オルタネーターの電圧測定
オルタネーターの電圧測定は、オルタネーターが正常に発電しているかを確認する上で重要な点検方法です。
1.マルチメーターを使い、バッテリー端子の電圧を測定します。 2.エンジン停止時はおよそ12.4~12.7Vが正常範囲です。 3.エンジン始動後はオルタネーターの発電によって13.5~14.5V程度に上昇しているかを確認します。 |
もし電圧が基準値を下回っている場合は発電不足、逆に15ボルトを超える場合は過充電の可能性があり、いずれもオルタネーターの故障を疑ってください。
【方法2】オルタネーターの電流測定
電圧測定後は電流測定をおこないましょう。オルタネーターの電流を測定する手順は、次のとおりです。
1.エンジン以外の電装品をすべてオフにします。 2.クランプメーターの電源を入れ、スイッチを直流Aに合わせてエンジンを始動してください。 3.オルタネーターのB端子にクランプメーターを接続し、エンジン回転数を2000rpm程度まで上げて数値を読み取ります。 |
この時、読み取った数値が30アンペア未満の場合は、オルタネーターの故障が疑われます。電流値が正常範囲内であれば、ランプの点灯などの異常が見られても安心です。
【方法3】オルタネーターチェッカーでの測定
オルタネーターチェッカーを使用すると、ボンネットを開けることなく手軽にオルタネーターの状態を確認できます。
この装置は、主にカー用品店やホームセンター、インターネットなどで1,000円から2,000円程度で入手可能です。製品によってはオルタネーターだけでなく、バッテリーの状態も同時にチェックできる機能を持つものもあります。
購入した際は、製品に付属している説明書をよく読み、正しい手順で測定してください。
【対処法】オルタネーターが走行中に故障したらどうする?
オルタネーターが走行中に故障すると、車の電力供給が途絶え、最終的にエンジンが停止して走行不能になります。
故障の兆候に気づいたら、速やかに安全な場所に車を移動させることが大切です。オルタネーターが完全に故障すると、バッテリーの充電ができなくなり、エンジンがかからなくなるため、思わぬ事故に繋がる危険性があります。
安全な場所に停車できたら、ロードサービスなどを利用してレッカー移動を依頼しましょう。無理に走行を続けると、さらに状況が悪化してしまいます。
また、応急処置としては、「ジャンプスターター」や「予備バッテリー」の利用が考えられます。ただしこれはあくまで再始動のための一時的な手段にすぎません。
オルタネーター自体の発電機能が回復するわけではないため、根本的な解決は難しいです。
オルタネーターの修理や交換にかかる費用
オルタネーターの修理や交換にかかる費用は、故障の程度や選ぶ部品によって変動します。
新品、リビルト品、中古品それぞれの価格帯と、実際にかかる費用の目安をまとめました。
部品代 | 工賃 | 合計費用 | |
新品 | 5万〜10万円 | 1万〜3万円 | 7万〜13万円 |
リビルト品 | 2万〜7万円 | 1万〜2万円 | 4万〜7万円 |
中古品 | 0.5万〜2万円 | 2万〜4万円 | |
修理対応 | 部分交換で数千円 | 0.5万〜1万円 | 1万〜2万円 |
新品のオルタネーターに交換する場合、部品代は軽自動車で4万円から5万円程度、普通自動車では5万円から10万円程度が目安です。 これに交換工賃が1万円から3万円程度加算されるため、総額で6万円から13万円かかることがあります。
一方で、費用を抑えたい場合は、リビルト品を活用する選択肢があります。 普通車向けのリビルト品は、約2万円で、トラックなどの大型車向けは、約3〜7万円程度です。
これに交換工賃を加えると、4万円からが目安となります。
リビルト品には保証が付いていることが多く、品質の面でも安心感があります。 中古品も選択肢にはありますが、品質が悪い可能性もあるため注意が必要です。
部分的な故障でオルタネーターベルトやベアリングの交換だけで済む場合、部品代は1,000円から3,000円程度と比較的安価です。しかし、オルタネーター本体の交換が必要となる場合は、費用が高額になる傾向があります。
修理や交換の際は、部品代に加えて工賃や、車が自走できない場合の出張費用やレッカー代も考慮に入れる必要があります。一般的には合計で2万〜5万円が相場です。JAF会員であれば20キロまでは無料で対応してもらえるため、費用を抑えられるケースもあります。
車両本体の買い替えは「トラック流通センター」へ
オルタネーターの故障が車両本体の買い替えを検討するきっかけになることもあります。トラック流通センターでは、平ボディやウィング車、ユニック車、ダンプトラックなど、様々な種類の中古トラックを取り扱っています。
多数の在庫車両があり、お客様の希望に合った中古トラックを見つけることが可能です。もし希望の車両が見つからない場合は、無料提案サービスも利用できます。ぜひトラック流通センターにご相談ください。
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オルタネーターの寿命についてよくある質問
オルタネーターの寿命についてよくある質問をまとめました。
オルタネーターのリビルト品の寿命はどれくらい?
オルタネーターのリビルト品は、中古部品を分解・清掃し、消耗部品を交換して新品同様の性能に仕上げた製品です。リビルト品の寿命は、新品のオルタネーターと同様に10年または10万kmが目安とされています。
しかし、車の使用状況やメンテナンス状況によって寿命は大きく変動する可能性があります。中には17万km以上使用できるケースも報告されています。
オルタネーターは走行中に常に稼働しているため、劣化したバッテリーを使用しているとオルタネーターへの負荷が増加し、寿命を縮める要因となることがあります。そのため、バッテリーの状態もオルタネーターの寿命に影響を与える重要な要素です。
オルタネーターのリビルト品の保障期間目安は?
リビルト品の保証期間は、部品の種類やメーカーによって異なりますが、一般的には6ヶ月から2年が目安とされています。
例えば、オルタネーターのリビルト品の場合、出荷日より2年間または4万キロの保証期間を設けているメーカーや、3ヶ月間を限度とするメーカーもあります。販売会社と協議の上、出荷(部品生産)会社が承認すれば、保証期間を延長できる場合もありますが、保管状態が悪い場合は延長が認められないこともあるため注意が必要です。
オルタネーター交換したのにバッテリーが上がってしまうのはなぜ?
オルタネーターを交換したのにバッテリーが上がる場合、原因はオルタネーター以外にあるかもしれません。
・バッテリー自体の劣化:寿命を迎えており、充電してもすぐに電力が失われてしまう。 ・電装系のリーク電流:車両の配線や機器から微弱な電流が流れ続けている。 ・取り付けや配線不良:交換時に端子の締め付け不足や接触不良がある。 |
こうしたケースでは、バッテリー診断や電装系点検を同時におこない、原因を特定することが重要です。
まとめ
オルタネーターは、車両に搭載された電装品を安定して動かすために欠かせない「発電装置」です。寿命は新品で10年、10万km前後、リビルト品で3〜5年が目安とされており、使い方や環境によって大きく左右されます。故障の前兆には、警告灯の点灯やエンジン始動不良、異音、電装品の不調などがあり、放置すれば走行不能や出費の増大につながります。
日常的な点検で電圧と電流を確認し、不具合は早めに察知しましょう。
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- オルタネーターの寿命は、走行距離10万kmから15万kmが目安。20万km以上使用できるケースもある
- オルタネーター本体だけでなく、発電用動力の供給ベルトは5万kmから10万km(3年から5年)、オルタネーター内部のブラシは10万kmが使用限度
- 修理費用は、ベアリングやベルトの交換で数百円から1万円程度
- オルタネーター本体の交換となると、新品で5万円から10万円程度、リビルト品で2万円から10万円程度の費用がかかる
- リビルト品は新品より安価で、平均で6ヶ月から2年の品質保証が付帯している