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トラックのオーバーハングとは?意味や内輪差との違い・事故を防ぐための運転のコツを解説

トラックのオーバーハングとは、車輪の中心を基点として前輪および後輪から外側に伸びる車体の部分を意味する言葉です。トラック運転時には、このオーバーハングを常に意識した運転が求められます。
車体から大きくはみ出す部分だからこそ、少しの不注意で予期せぬ事故につながるおそれがあるのです。
この記事では、実際の事故事例を用いながらオーバーハングが原因の事故を防ぐコツを紹介します。他にも、トラックのオーバーハングの詳細や、トラックの種類ごとに定められたオーバーハングの長さの規定も、あわせて解説します。

トラックのオーバーハングとは


トラックのオーバーハングとは、車輪の中心を基点として前輪および後輪から外側に伸びる車体の部分を指します。普通車にも存在しますが、主にトラックやバスなど車体の長い車に対して使われる用語です。
前輪から前バンパーまでの、車両の前部分は「フロントオーバーハング」、後輪から後バンパーまでの後部分は「リアオーバーハング」と呼びます。オーバーハングの長さは、トラックが曲がる際に車体がどの程度道路をはみ出すかを把握するための指標となります。

オーバーハングの規定


自由に伸ばせるリアオーバーハングには、長さの規定があります。
具体的には、次の3つのトラックで規定の長さが異なります。

  • 積載物が車体からはみ出すおそれがある平ボディのトラック
  • 箱型のボックスがついていて積載物が車体からはみ出すおそれのないバンボディのトラック
  • ナンバープレートが4か6からはじまる、軽トラックや小型トラックなどの小型貨物車
平ボディトラック ホイールベースの2分の1以下の長さ
バンボディトラック ホイールベースの3分の1以下の長さ
小型貨物車 ホイールベースの20分の11以下の長さ

ちなみにトラックのオーバーハングに関する規定は、国土交通省の「道路運送車両の保安基準」において、以下のとおり設けられています(第18条第1項第3号)。
最後部の車軸中心から車体の後面までの水平距離は、告示で定める距離以下であること。ただし、大型特殊自動車であつて、操向する場合に必ず車台が屈折するもの又は最高速度三十五キロメートル毎時未満のもの及び小型特殊自動車にあつては、この限りでない。
(引用元:道路運送車両の保安基準)

上記でいう告示とは「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示」のことです。
具体的には以下のように定められています(第22条第6項)。

自動車(ポール・トレーラを除く。)の最後部の車軸中心から車体の後面までの水平距離(空車状態の自動車を平坦な面に置き巻尺等を用いて車両中心線に平行に計測した長さをいう。以下同じ。)に関し、保安基準第18条第1項第3号の告示で定める基準は、最後部の車軸中心から車体の後面までの水平距離が最遠軸距の2分の1(物品を車体の後方へ突出して積載するおそれのない構造の自動車にあっては3分の2、その他の自動車のうち小型自動車にあっては20分の11)以下であることとする。
(引用元:>国土交通省「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示」)

内輪差との違い


オーバーハングと類似する言葉に、内輪差があります。それぞれの意味の違いは、次のとおりです。

  • オーバーハング:タイヤの中心から車体のはみ出し部分を指す用語
  • 内輪差:トラックが曲がる時の、前輪と後輪の軌跡の幅の差を指す用語

内輪差とは、車両が曲がる際に前輪と後輪がたどる軌跡の差のことです。簡単にいうと、車両がカーブをするとき、前輪が通る道よりも後輪が内側の道を通る現象を指します。車両の長さが長いほど、内輪差は大きくなるという特性があります。

トラックサイズ別オーバーハングの目安

自由に伸ばせるリアオーバーハングの長さは、トラックのサイズによって変化します。
下表に、トラックサイズ別のオーバーハングの目安をまとめました。

トラックサイズ リアオーバーハングの目安 注意点
大型 約100cm〜120cm 繊細な運転技術と注意深さが求められる
中型 約60㎝~100㎝ ロングタイプや重量増加型のトラック運転時は特に注意する
小型 数cm〜数十cm 長尺物を載せる場合は注意する

なお、フロントオーバーハングの長さについては、トラックサイズの違いでそれほど変化がないため省略しています。

ここからは、トラックサイズごとのオーバーハングについて詳しく解説します。

大型トラック(車両総重量11トン以上、最大積載量が6.5トン以上)


大型トラックのリアオーバーハングは、約100cm〜120cmと非常に長く、曲がる際に車体の外側が突き出しやすくなります。そのため、右折・左折の際や、駐車場からの発進時に後部が障害物に接触するリスクが高いです。また、壁や隣の車との接触事故が起こりやすいとされています。

車体が大きい分、周囲の状況を把握するのも難しくなるでしょう。安全運転のための対策として、大型トラックならではの挙動をよく理解したうえで、繊細な運転テクニックやしっかりと周囲を確認する注意深さが求められます。

中型トラック(車両総重量5トン〜11トン、最大積載量6.5トン以下)


中型トラックのオーバーハングは、60cmから100cm程度で、それぞれのトラックによって大きく変わります。例えば、ロングタイプや重量増加型の中型トラックは、後輪から車体の後端までの距離が長いため、オーバーハングも自然と大きくなります。

車体が60cm以上道路からはみ出ると、他の車両との接触リスクが高まります。そのため、中型トラックを運転する際もオーバーハングに注意を払う必要があるでしょう。

中型トラックの運転には、高度な技術と周囲の状況を確認するための徹底した安全対策が欠かせません。

小型トラック(車両総重量5トン以下、最大積載量3トン以下)


小型トラックは、後輪から車体の後端までの距離が比較的短く、オーバーハングがほとんどありません。車体の一部が数十cm程度はみ出すことはあっても、小型トラックの幅が狭いため、車線からはみ出ることは稀でしょう。したがって小型トラックの運転時は、オーバーハングを特に気にする必要がありません。

ただし、荷台に長い物を積んで運搬する場合は例外です。なぜなら、オーバーハングと同様に車体からはみ出た部分が長くなるためです。接触事故のリスクが高まるため、はみ出た荷物を常にミラーで確認しながら運転することが求められます。

オーバーハングの事故事例

トラックのオーバーハングが要因となって発生した事故事例を4つ取り上げます。それぞれの事故状況や対策のポイントを把握しておき、事故を未然に防ぎましょう。

トラック左折時のオーバーハングによる事故

(引用元:TRUCK BIZ)
交差点でよくある事故に、左車線に位置するトラックが左折を試みる際に、右車線を直進または右折しようとする乗用車と衝突する事例があります。この事例では、トラックが左折する際に右側後方の確認を怠った結果、乗用車と接触しました。

また、トラックのリアオーバーハングがセンターラインを越えたことが事故の大きな要因となっています。このような事故を防ぐためには、左折時に、隣車線の後方もサイドミラーで確認しなくてはなりません。さらに、直進もしくは右折を試みる乗用車が完全に通過するまでは、左折を待機しましょう。

トラック右折時のオーバーハングによる事故

(引用元:TRUCK BIZ)
交差点でトラックが右折する際に、直進または左折待ちの乗用車と接触するという事故事例もあります。この事例では、右折時にトラックのオーバーハングがセンターラインを大きくはみ出し、結果として左車線の乗用車と接触しました。

折時と同様に、右折する際もサイドミラーを利用して後方の通行車両を十分に確認することが必要です。安全に右折するためには、確実に後方の車両が接近していないことを確かめてから曲がることが求められます。

トラック発車時のオーバーハングによる事故

(引用元:TRUCK BIZ)
次に取り上げるのは、トラック発車時にオーバーハングが柵などに接触する事故です。この事故は、歩道に非常に近い場所で、トラックを停車させている際によく発生します。発車時にハンドルを大きく切ると、歩道の柵や電柱、郵便ポスト、公衆電話ボックスなどに接触してしまうのです。

そのため、発車時は周囲に十分注意を払い、ハンドルを大きく切ることは避けるべきです。また停車しているトラックに、歩行者や自転車、オートバイが接近している場合は、通過するまで待ってから発車しましょう。

狭隘道路をすれ違う際のオーバーハングによる事故

(引用元:トラックバスのすすめ)
※狭隘道路(きょうあいどうろ)とは・・・幅員が4M未満の狭い道路のことをいう。道幅が狭いために、道路としての十分な役割が果たされていないため生活に支障が出ている道路

狭隘道路のすれ違い時にハンドルを切り込んだところ、反対車線の右後ろに位置する乗用車に接触した事故を紹介します。画像ではバスが写っていますが、トラックでも同様の事故が発生するリスクがあります。

この事故を回避する方法としては、停止したり減速したりして、対向車に先に行ってもらうことが大切です。道が狭くて大きくハンドルを切り込む必要がある場合は、特にこの対処法が効果的です。また、バックカメラで当たらない位置にいることを確認してから切り込むことも求められます。

トラックのオーバーハングによる事故を防ぐためにできること


事例を踏まえて、トラックのオーバーハングによる事故を防ぐためにできることを7つ紹介します。

内輪差を意識して運転する

トラックはボディが長いことから、普通車に比べて曲がる際の内輪差が大きくなりやすいです。特に左折時には、内側にある後輪が縁石・歩道などに乗り上げるリスクが高まるため、慎重な運転が求められます。

普通車のように急な小回りをすると、事故を引き起こす可能性があるので避けるべきです。

曲がる時は左右両方のミラーで目視する

オーバーハングによる事故を防ぐためには、ミラーを使って周囲を確認することが非常に重要です。特に左折時には、左側のミラーをチェックしながら、後輪が縁石に触れたり、歩道に乗り上げたりしていないか注意深く確認しましょう。

また、曲がる際にリアオーバーハングが道路からはみ出して後続車や対向車と接触しないような対策も必要です。運転席側のミラーで、リアオーバーハング部分を確認しつつ慎重に曲がるようにしましょう。

左折時は道路の左側に寄せる

トラックで左折する際は、できるだけ道路の左側に寄ることで、車線からのはみ出しを軽減できます。これと同時に、ミラーが障害物に接触しないように、車の前部がはみ出すフロントオーバーハング部分にも注意しながら慎重に曲がりましょう。

右折時は徐々にハンドルを切る

右折する際は、ハンドルを回す速さとタイミングにも注意が必要です。普通車と同じ感覚でいきなりハンドルを回すと、内輪差により反対車線で信号待ちしている車と接触するリスクがあります。

とはいえ、ハンドルの回転を遅らせすぎると、フロントオーバーハングによって電柱・標識にミラー・車体などがぶつかるおそれがあります。広い道から狭い道に入る際には、正確かつ徐々にハンドルを切っていくことが重要です。

トラックのオーバーハングについてよくある質問


最後に、トラックのオーバーハングに関してよくある質問と回答をまとめました。

オーバーハングの測り方は?

フロントオーバーハングの長さは、前輪の中心から車両の最前部までの水平方向の距離を測定することで計算できます。同じく、リアオーバーハングの長さも、後輪の中心から車両の最後部までの水平方向の距離で測定します。

2トントラックのオーバーハングは何センチ?

2トントラックは、車両総重量5トン未満・最大積載量2.0トン~2.9トンの小型トラックに分類されます。そのため、オーバーハングはわずか数cm〜数十cm程度です。

トラックのオーバーハングによる事故の過失割合は?

オーバーハングによる事故には、基本の過失割合がありません。実際には過去の判例をもとに、オーバーハングがどの程度であったか、事故を回避できた可能性などを双方で話し合って、過失割合を決定します。相手方の主張する過失割合を受け入れる前に、一度弁護士に相談することが望ましいです。

まとめ

オーバーハングは、トラックの運転において欠かせない知識の一つです。車体から大きくはみ出す部分だからこそ、オーバーハングをしっかりと意識して運転することが求められます。実際の事故事例や、オーバーハングの事故を未然に防ぐ方法を事前に確認しておき、安全運転に努めましょう。

  • トラックのオーバーハングとは前輪および後輪から外側に伸びる車体の部分
  • リアオーバーハングには、バンボディ・平ボディ・小型貨物車によって規定の長さに違いがある
  • 事故事例では、ミラーの確認不足、オーバーハングが車線をはみ出したことによる事故が多い
  • 事故を防ぐには内輪差の把握とミラーによる隣車線の目視が必須

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