とことんブログ とことんブログ

【徹底解説】デリックの種類と特徴|クレーンとの違い・必要免許

デリックとは、建設現場や港湾などで重量物の吊り上げに用いられる機械装置です。クレーンと似ていますが、その構造や操作方法には違いがあります。
この記事では、デリックの基本的な知識からクレーンとの違い、様々な種類、そして操作に必要な資格や免許、玉掛け作業について解説します。デリック運転士を目指す方や、関連業務に携わる方はぜひ参考にしてください。

デリックとは?(特徴・要件)


デリックとは、荷物を動力を使って吊り上げる機械装置のことを指します。建設現場・造船所・鉱山・港湾の作業現場で幅広く使われていて、次の構造で成り立ちます。

構造 詳細
マスト(支柱) ・地面から垂直に立ち上がる主柱
・荷重の中心となる
ブーム ・マストに接続された傾斜したアーム
・荷物を持ち上げる角度を調整する
ガイロープ(張線) ・マストやブームを安定させるために引っ張るロープ
ウインチと滑車 ・巻き上げと巻き下ろし動作を担う駆動装置

クレーンと似た用途を持ちますが、デリックは基本的に「固定式」です。船上や掘削現場のような不安定な足場でも活躍することから、設置性や安定性を重視する作業に採用されています。

また、デリックは、荷を水平に動かせるタイプと動かせないタイプの2種類があり、吊り上げができる荷重は0.5トン以上と定められています。ただし、建設現場などでよく見かけるクレーンと比べるとその数は少なく、現在国内には200台程度しか存在しないとされています。

デリックとクレーンとの違い


デリックとクレーンは、どちらも重量物を吊り上げたり運んだりするために使用する機械ですが、構造や操作方法、安全規則、水平移動能力において違いがあります。
ここでは、それぞれの具体的な違いを解説します。

1.操作方法の違い

デリックとクレーンの大きな違いの一つは操作方法です。クレーンが油圧シリンダーやワイヤーを使用してブームを操作し荷物を持ち上げるのに対し、デリックは軸部分のマストからブームまで張られたワイヤーをウインチで操作することで荷物を巻き上げます。つまり、デリックはウインチによるワイヤー操作が中心となります。

2.構造の違い

構造上も、デリックとクレーンには違いがあります。

デリックは、トラス構造で組まれた鉄骨のマストやブームを基本構造とし、揚重(荷物を持ち上げること)に適した背の高いマストが地上に垂直に固定されています。このマストに支えられたブームが荷の真上に移動し、ブームに伝ったワイヤーロープで揚重します。

また、デリックはブームの操作とワイヤーロープを操作する原動機が別々に設置されている点も特徴です。一方、クレーンには油圧シリンダーが備わり、このシリンダーを活用してブームを操作します。

3.安全規則の違い

デリックとクレーンでは、適用される安全規則にも違いがあります。
デリックは、「据付型の揚重装置」として扱われ、以下の安全規則が適用されます。

・労働安全衛生法施行令 第13条(機械等の製造、設置基準)
・労働安全衛生規則 第185条〜(デリックの設置、使用基準)

要件の具体例は次のとおりです。

・設置には強度計算と安定性の確認が必要(設置台やガイロープを含む)
・毎日の点検記録の作成と保管が義務付けられる
・吊り荷の下に立ち入らせない措置が必要
・荷重の定格超過を防ぐための制御機構の整備

高所や不整地に設置する場合は、仮設構造物に準じた保護措置も必要です。一方クレーンは、「可動式の揚重装置」として、クレーン等安全規則が中心的な法令となります。
要件の具体例は、次のとおりです。

・始業点検や月例点検、年次点検の実施と記録保存
・操作資格(免許、技能講習)の取得者のみが操作可
・定格荷重、巻き上げ装置、ブーム長、旋回範囲の制限表示
・クレーン災害防止のための作業計画書作成

さらに、吊り荷の落下や接触事故を防ぐための作業指揮者の配置義務、玉掛け作業者との連携体制も求められます。

4.水平移動能力の違い

デリックとクレーンは、水平移動能力にも違いがあります。デリックは、基本的に吊り荷を上下させるための機械であり、水平移動能力は限定的です。ブームの角度を調整すると多少の移動は可能ですが、限界があります。

これに対しクレーンは、旋回機能や走行装置を備え、水平移動や位置の微調整に優れるのが特徴です。建設現場や物流拠点では、クレーンの柔軟な可動性が求められます。

デリックの種類|それぞれの特徴


デリックには、用途や設置場所に応じていくつかの種類があります。ここでは、代表的な種類のデリックとその特徴についてご紹介します。

1.ガイデリック


ガイデリックは、直立した1本のマストと、その根本部分のピンに結合されたブームで構成される種類です。マストの上部には6本以上のガイロープが張られ、その端はアンカーで固定されています。
操作は本体から離れた場所に設置されたウインチによって行われ、360度の旋回が可能です。機械の組み立てや材料置き場などで使用されます。

2.スチフレッグデリック


スチフレッグデリックは、1本のマストの先端に2本のステー(脚)が取り付けられている種類です。マスト部分にはマストよりも長いブームが取り付けられています。
巻き上げ、旋回、起伏といった操作が可能で、約240度まで動かせます。重量のある特殊な荷物の吊り上げに使用されることが多いです。

3.ジンポールデリック


ジンポールデリックは、1本のマストと3本以上のガイロープで支えられているシンプルな構造をしています。付属するのはウインチと揚重用のワイヤーロープのみで、巻き上げ作業のみを行います。
水平に移動する機能はありません。機械の据え付けや組み立てなどに使用されます。

4.鳥居型デリック


鳥居型デリックは、2本のマストと上部の横ばりによって鳥居のような形状を形成している種類です。
本体はガイロープによって固定され、数個の吊り具を組み合わせることで荷物の巻き上げや巻き下げが可能です。特殊な重量物を持ち上げる際などに使用されます。

5.その他のデリック

デリックには、上記以外にも様々な種類が存在します。特定の用途や作業環境に合わせて設計されており、それぞれ異なる特徴や能力を持ちます。

代表的なタイプは、次のとおりです。

デリックの種類 構造の特徴 適した用途・現場
二又デリック ・2本のマストをA字型に配置
・荷重を分散し安定性を高めた構造
大型設備工事、造船所、発電所などの重量物吊り作業
タワーデリック ・高さのある構造物上に設置され、垂直に荷を持ち上げる 高層ビルの建設と解体、煙突上部での作業
浮体式デリック ・水上に浮かぶ台船などに搭載され、船上荷役作業に使用 港湾作業、海上建設、浚渫工事
可搬式デリック ・軽量かつ小型で分解・再設置が容易
・設置地を頻繁に変えられる
仮設現場、狭所、突発的な吊り作業

デリックの操作に必要な資格・免許


デリックの操作には専門的な知識と技術が必要であり、安全な作業を行うためには関連する資格や免許の取得が労働安全衛生法によって定められています。
ここでは、デリックの操作に必要な資格や免許について、地上のデリックと船上のデリックに分けて詳しく解説します。また、荷物の取り付け・取り外しを行う玉掛け作業に必要な資格についてもご紹介します。

【地上】操作に必要な資格

地上でデリックを操作する場合、吊り上げ荷重によって必要な資格が異なります。

吊り上げ荷重が5トン以上のデリックの操作には、「クレーン・デリック運転士免許(限定なし)」が必要です。この免許を取得することで、すべての種類(床上運転式を除く)のクレーンとデリックを運転できるようになります。

一方、吊り上げ荷重が5トン未満の運転業務に従事する場合は、「デリック運転の業務に係る特別教育」を修了することで操作できます。特別教育は、免許に比べて比較的短期間で取得可能です。

【船上】操作に必要な資格

船の上に設置されたデリックを操作する場合、地上とは異なる資格が必要になります。これは、船上での作業には揺れなど地上とは違うバランス感覚が求められるためです。

具体的には、制限荷重が5トン以上の場合は「揚貨装置運転士免許」、制限荷重が5トン未満の場合は「揚貨装置の運転の業務に係る特別教育」が必要です。

これらの資格は、港湾での荷役作業などに従事する際に重要となります。

【玉掛け】作業に必要な資格

デリックやクレーンを使用して荷物を吊り上げる際は、フックに荷物を掛けたり外したりする「玉掛け」と呼ばれる作業が伴います。この玉掛け作業にも資格が必要です。

吊り上げ荷重が1トン以上の玉掛け作業には、「玉掛け技能講習」を修了しなくてはなりません。吊り上げ荷重が1トン未満の場合は、「玉掛けの業務に係る特別教育」を修了すると作業可能です。
玉掛けの資格は、クレーンやデリックの運転資格とは別に必要となるため、関連業務に携わる場合は双方の資格を取得しましょう。

クレーンの操作に必要な資格・免許


クレーンの操作にも、デリックと同様に資格や免許が必要です。クレーンの種類や吊り上げ荷重によって必要な資格が異なります。ここでは、クレーンの操作に必要な主な免許をご紹介します。
クレーン運転士を目指す方は、自身が操作したいクレーンの種類に応じた免許を取得する必要があります。また、クレーン作業における玉掛け作業には別途資格が必要です。

クレーン・デリック運転士免許(限定なし)

「クレーン・デリック運転士免許(限定なし)」は、吊り上げ荷重が5トン以上のすべてのクレーン(移動式クレーンを除く)とデリックを運転できる国家資格です。

この免許を取得することで、幅広い種類の揚重機械を操作することが可能となり、就職や転職でも有利になる場合があります。

クレーン・デリック運転士免許(クレーン限定)

「クレーン・デリック運転士免許(クレーン限定)」は、デリックの操作を除外したクレーン専用の国家資格です。内容は「限定なし」と同等ですが、あくまで「クレーンのみ」の扱いに限定されます。

「クレーン・デリック運転士免許(クレーン限定)」は、吊り上げ荷重が5トン以上のクレーン(移動式クレーンを除く)を運転できる免許です。
工場や倉庫などで使用される天井クレーンなどの操作に従事する場合に有効な資格です。

移動式クレーン運転士免許

移動式クレーン運転士免許は、原動機を内蔵し不特定の場所に移動できる吊り上げ荷重が5トン以上の移動式クレーンを運転するための国家資格です。

この免許を取得することで、トラッククレーンやラフテレーンクレーンなど、様々な現場で活躍する移動式クレーンの運転が可能になります。ただし、公道を走行する場合は、別途その車両に応じた自動車運転免許が必要です。

デリックに関するよくある質問


ここでは、デリックやクレーン、関連資格についてよく寄せられる質問にお答えします。

玉掛け作業とは、具体的にどのような作業?

玉掛け作業とは、クレーンやデリックのフックに荷物を掛けたり外したりする作業のことです。安全に荷物を運ぶために非常に重要な作業であり、資格が必要になります。

吊り上げ荷重1トン以上のクレーンやデリックによる玉掛け作業には玉掛け技能講習、1トン未満の場合は玉掛けの業務に係る特別教育が必要です。これらの講習を修了することで、安全な玉掛け作業に必要な知識と技術を習得できます。

クレーン・デリック運転士免許の難易度は?

クレーン・デリック運転士免許は国家資格であり、ある程度の難易度があります。合格率はおおよそ40〜60%程度です。
学科試験では、機械構造や力学、安全規則に関する知識が求められ、実技試験では運転操作の正確さや安全確認の徹底が審査されます。

デリックとホイストの違いは?

デリックとホイストは、いずれも荷物の吊り上げを目的とした機械ですが、構造や使用目的に違いがあります。

【デリック】支柱やブームを用い、大型や不規則な荷物を現場で吊り上げる据え置き式の装置。
【ホイスト】レールや天井に設置される移動型の巻き上げ装置。比較的小型の荷物を繰り返し吊り下げる作業に使われる。

デリックは現場ごとの対応力、ホイストは工場内での効率性に優れるという違いがあります。

デリックの耐用年数はどのくらい?

デリックの耐用年数は、構造や使用頻度、設置環境によって異なりますが、一般的には10〜15年が目安です。屋外での使用や塩害、風雨にさらされる環境では、より早く劣化する場合もあります。

税務上の法定耐用年数は「クレーン・デリック装置」として10年と定められています。適切にメンテナンスすれば、それ以上の使用も可能ですが、安全性を保つためには定期的な点検と交換が必要不可欠です。

>>新着トラックの在庫はこちらから

まとめ


デリックは、さまざまな現場で活躍する据え置き式の揚重装置です。種類ごとに構造や特徴が異なり、クレーンとは操作方法や安全規則の面でも違いがあります。

用途や環境に応じて最適な形式を選び、適切な資格を取得した上で安全に使用することが求められます。現場での作業効率と安全性を高めるためにも、制度や特徴を正しく理解し、業務に最適な一台を見つけてください。

  • デリックは、マストとブームで構成される据え置き式の荷役機械で、垂直方向の吊り作業で活躍する
  • クレーンとは構造、操作性、移動能力、安全規則に明確な違いがある
  • デリックには「ガイデリック」「ガイデリック」「スチフレッグデリック」「ジンポールデリック」「鳥居型デリック」などの種類があり、用途や設置場所によって選ばれる
  • 操作には「クレーン・デリック運転士免許」などの資格が必要で、荷重や環境により異なる

関連する記事

  1. 中古トラック販売のトラック流通センター
  2. とことんブログ
  3. 中古トラックの基礎知識
  4. トラックの種類やしくみ
  5. 【徹底解説】デリックの種類と特徴|クレーンとの違い・必要免許