アスファルトフィニッシャーとは?価格・運転に必要な資格・メーカー・免許
アスファルトフィニッシャーは道路の舗装工事において、アスファルト合材を敷き均し、平らに仕上げる特殊な車両です。新車、中古車ともに価格幅が広く、用途や現場規模によって選び方が変わります。
この記事では、アスファルトフィニッシャーの概要や種類、価格、運転に必要な免許・資格について詳しく解説していきます。購入検討時の参考にしてください。
目次
アスファルトフィニッシャーとは?
アスファルトフィニッシャーは、道路工事においてアスファルト合材を敷き均し、平らに仕上げるための特殊な建設機械です。手作業では難しい広範囲の施工を短時間かつ高精度でおこなえるため、道路インフラ整備には欠かせません。
本章では、アスファルトフィニッシャーの基礎知識を紹介します。
1.特徴
アスファルトフィニッシャーは、アスファルト混合物を均一に敷きならし、高品質な舗装面を形成できる特徴があります。特にスクリードという装置により、舗装面の厚みや舗装幅を精密に調整することが可能です。スクリードは、加熱バーやプレートがあり、舗装するアスファルトの温度管理や、舗装幅の調整をおこないます。
また、操作システムの自動化が進んでおり、速度制御や勾配設定を自動でおこなうモデルも登場しています。日本で普及しているのは幅6メートル以下の小型タイプが多いですが、特殊な舗装では9メートルから12メートルにもなる大型の車両が使われることもあります。
走行方式には「ホイール式」と「クローラ式」の2種類があります。
ホイール式 | クローラ式 |
・タイヤで走行するため機動性が高い。 ・小型特殊自動車または大型特殊自動車としてナンバーを取得すれば公道を走行できる。 |
・キャタピラを採用している。 ・不整地や軟弱地盤、急勾配の場所での安定性や平坦性に優れる。 |
これらの特徴を理解し、現場の状況や作業内容に応じて適切なアスファルトフィニッシャーが選ばれています。
2.使い方
アスファルトフィニッシャーは、主に2名で操作します。車両の運転と、アスファルトの敷き均しをおこなうスクリードの操作はそれぞれ分担され、連携して作業を進めます。
次の手順で使用することで、均一かつ高品質な舗装が可能になります。
①合材の受け入れと分配 ダンプトラックが、フィニッシャー前方に接近し、ホッパーと呼ばれる受け入れ部にアスファルト合材を投入します。 ホッパー内にあるスクリュー状の搬送装置が左右均等に合材を分配し、施工幅全体に行き渡るようにします。 ここでの分配が偏ると敷き厚や密度が不均一になるため、オペレーターはホッパー内の残量や分配状態を常に確認します。 |
②敷きならしと前進施工 スクリードが、加熱と振動を使って合材を均一な厚さに広げながら、機械は一定速度で前進します。 オペレーターは、施工速度、スクリード高さ、温度を微調整し、路面の平滑性を確保します。この工程後、後続のコンパクターが路面を締め固め、最終的な耐久性と仕上がりを完成させます。 |
慣れないうちはスピードを落とし、少しずつ作業を進めてください。
3.仕組みと構造
アスファルトフィニッシャーは、主にエンジン、トラクター、ホッパー、スクリードの4つの主要パーツで構成されています。それぞれが異なる役割を担い、連動して動作することで、高品質な舗装が可能になります。
エンジン
エンジンは、アスファルトフィニッシャーの動力源です。機械の走行やスクリードの加熱と振動、搬送装置の駆動など、あらゆる機能に必要なエネルギーを供給します。
大型機では高出力ディーゼルエンジンが使われることが多く、安定したパワー供給と耐久性が重視されます。
トラクター
トラクターは、エンジンの力を駆動力に変え、フィニッシャー全体を前進させる部分です。また、オペレーター席や操作パネルもこの部分に搭載されており、施工速度や方向の調整もおこないます。直進性や安定性は舗装品質に直結するため、精密な制御が求められます。
ホッパー
ホッパーは、ダンプトラックからアスファルト合材を受け入れる受け皿の役割を果たします。
ホッパー内のコンベアやオーガが合材を左右に均等に送り出し、敷き均し作業に必要な供給をスムーズにおこないます。ここでの分配が均一でないと、路面の厚みにムラが出てしまいます。
スクリード
舗装面を均一に仕上げるための敷板です。
スクリードには0.8mから16mまで様々な幅があり、アスファルト合材が固まらないように加熱される機能も備わっています。
4.機能
近年のアスファルトフィニッシャーには、施工精度を高めるための次のような機能が搭載されています。
・レーザー ・GPSを利用した自動高さ調整システム ・スクリードの自動温度制御、 ・低騒音化エンジン ・排ガス規制対応の環境性能など |
これらの機能により、熟練オペレーターの経験に頼らずとも、一定品質の施工が可能になっています。
5.用途
アスファルトフィニッシャーは、主に道路工事の最終段階でアスファルト合材を敷き均し、平らに仕上げる際に用いられます。道路の基礎工事が完了した後に投入されるため、工事の終盤にその姿を見ることが多く、一般的にはあまり目にする機会がありません。
小型タイプは、歩道や狭小地、大型タイプは、高速道路や空港などの大規模現場に用いられます。工事の規模や用途に合わせた機種選定が重要です。
アスファルトフィニッシャーの新車価格・中古車価格
アスファルトフィニッシャーは、スクリード幅で価格が大きく変わります。
新車は、小型でも2,500万円台〜、中〜大型は4,000万〜8,000万円台が相場です。
中古車は、稼働時間や整備履歴で幅が出ますが、新車の半額以下まで下がる場合もあります。
下表にスクリード幅ごとの新車と中古車の相場をまとめました。
スクリード幅 | 新車 | 中古 | ||
5年落ち | 10年落ち | |||
小型 | 1〜3m | 2,500万〜3,000万円台 | 1,200万〜2,000万円 | 800万〜1,500万円 |
中型 | 2〜4m | 3,900万〜5,000万円台 | 1,800万〜3,000万円 | 1,000万〜2,200万円 |
大型 | 5m以上 (〜6m級含む) |
6,000万〜8,000万円台 | 3,000万〜4,500万円 | 1,500万〜3,000万円 |
高額な買い物となるため、新車中古を問わず、十分に情報収集して、予算とニーズに合った車両を選んでください。中古の機械を選ぶ際は、稼働時間や点検記録を確認しましょう。
アスファルトフィニッシャーの運転に必要な免許・資格
アスファルトフィニッシャーは特殊な車両のため、運転や操作には特定の免許や資格が必要です。ここでは、アスファルトフィニッシャーを安全に、そして効率的に操作するために必要な免許と資格について解説します。
1.車両系建設機械|運転技能講習
アスファルトフィニッシャーを操作するには、運転免許とは別に「車両系建設機械(整地・運搬・積込み用及び掘削用)運転技能講習」という資格の取得が必要です。
この講習は、コマツをはじめとした大手重機メーカーの教習所などで受講できます。講習を修了すると、修了証が交付され、機体質量3トン以上の車両系建設機械の運転作業に従事することが可能です。
この資格は、アスファルトフィニッシャーのスクリード操作(舗装作業)に必要とされます。 公道での運転には、小型特殊免許や大型特殊免許といった運転免許が必要となり、アスファルトフィニッシャーの大きさによって必要な免許が異なります。
【受講条件】 ・満18歳以上 ・自動車運転免許は必須ではないが、現場移動のために普通免許保有が望ましい |
【期間・費用の目安】 ・経験者:約2日間 ・未経験者:約3日間 ・費用:30,000〜50,000円程度 |
2.建設機械施工技士資格
アスファルトフィニッシャーの運転操作には、車両系建設機械(整地・運搬・積込用及び掘削用)運転技能講習の修了に加え、建設機械施工技士の資格も有効です。この資格は1級と2級があり、2級は学科と実地試験に合格することで取得できます。
学科試験では土木工学や建設機械の原動機、石油燃料に関する知識が問われます。実地試験ではアスファルトフィニッシャーを含む、ロード・ローダなどの車両系建設機械の運転操作に関する施工法を習得している必要があります。
2級建設機械施工技士の合格率は、第一次検定(旧学科試験)が約40%~60%前後で推移しており、第二次検定は、近年60%台から80%台を推移しています。
この資格を取得すると、アスファルトフィニッシャーの運転操作だけでなく、建設現場での施工指導や監督業務も行えるようになります。燃料や機械に関する深い知識が求められますが、より専門的な業務に携われるため、キャリアアップにつながる資格です。
【受講条件】 ・実務経験年数(学歴・資格により異なるが2〜8年) |
【期間・費用の目安】 ・受験料:約13,000〜15,000円 ・講習費用:数万円〜 |
アスファルトフィニッシャーのメーカー3選
アスファルトフィニッシャーは、道路舗装に不可欠な特殊車両であり、国内には複数のメーカーが存在します。
国内の主要メーカーとしては、住友建機、範多機械、キャタピラージャパンの3社が挙げられます。それぞれのメーカーは、多様なニーズに応えるために、様々なタイプのアスファルトフィニッシャーを開発・提供しています。
1.範多機械
(引用元:範多機械)
範多機械は、日本で初めてアスファルトフィニッシャーを国産化した老舗メーカーで、舗装機械分野のパイオニアです。都市部や狭い現場にも対応できる小型機から、高速道路や滑走路施工に対応する大型機まで幅広いラインナップを展開しています。
特に、小回り性能やメンテナンス性に優れ、部品交換や清掃がしやすい構造設計が特徴です。燃費性能の向上や環境規制への適合にも積極的で、地方自治体や民間舗装業者からの信頼が厚いです。
2.住友建機
(引用元:住友建機)
住友建機は、建設機械全般を製造する大手メーカーで、特に中型から大型のアスファルトフィニッシャーに強みがあります。高精度な敷き均し性能や直進安定性に優れ、長距離の道路舗装や広面積の施工に適しています。オペレーターの負担を軽減する電子制御機能や自動レベリング機能を搭載し、長時間の稼働でも均一な仕上がりを維持できる点も評価されています。寒冷地仕様や耐塩害仕様など、特殊環境に対応したモデルも揃うのも特徴です。
キャタピラージャパン
(引用元:キャタピラージャパン)
キャタピラージャパンは、世界最大級の建設機械メーカー「Caterpillar Inc.」の日本法人であり、耐久性とパワーに優れたアスファルトフィニッシャーを製造販売しています。特に、大型現場での高い生産性とけんろう性が評価され、世界中のインフラ整備に導入されています。
操作性にも優れ、視界の良さや人間工学に基づいたコントロールレイアウトにより、長時間作業でも疲れません。また、部品供給網がグローバルに整備されており、海外案件や長期プロジェクトにも対応しやすいです。
アスファルト フィニッシャーについてよくある質問
アスファルトフィニッシャーに関するよくある質問についてお答えします。
アスファルトフィニッシャーの操作は難しい?
アスファルトフィニッシャーの操作には、熟練した技術が必要とされています。特に、アスファルトを平坦に敷き詰めるには、一定の速度で均一な間隔でアスファルトを送り出す技量が重要です。材料の量や移動速度を誤ると敷きムラが生じ、平らな路面を形成できません。
通常、小型のアスファルトフィニッシャーでは1名、中型と大型では2名のオペレーターが必要とされており、運転手とスクリードマンが連携して作業を進めます。
近年では全自動フィニッシャーのような無人化技術も開発されており、将来的には作業員の削減も期待されています。
アスファルトフィニッシャーのメンテナンスはどのくらいの頻度で必要?
メンテナンス頻度は、使用時間や施工環境によって異なりますが、基本的には毎日の稼働前点検と定期的なオーバーホールが欠かせません。
アスファルトフィニッシャーは、常にアスファルト合材を処理するため、摩耗しやすい箇所が多いです。特に、ホッパーの底部にあるコンベアやスクリュー、ホイール式の場合はタイヤなどが摩耗しやすいです。
これらの箇所はこまめにチェックし、定期的にメンテナンスしましょう。アスファルトが付着した場合は清掃し、摩耗や緩みがないかを確認する必要があります。
アスファルトフィニッシャーの耐用年数はどれくらい?
アスファルト舗装の耐用年数は約10年を目安に設計施工されます。これは、アスファルトの特性上、ひび割れが発生してもすぐに大きな事故につながる危険性が少ないため、寿命が曖昧に判断されることも多いためです。
もし10年以内に舗装が破壊されるような事態が発生した場合は、補修作業をおこなうことで寿命を延ばせます。
地盤や交通量などの条件によっても寿命は変動しますが、基礎工事がしっかり行われている場合は長持ちする傾向にあります。
まとめ
アスファルトフィニッシャーは高額な建設機械ですが、その性能と施工効率は道路インフラ整備において欠かせない価値を持ちます。価格や維持費は決して小さくありませんが、正しい機種選びと資格取得、適切なメンテナンスにより、長期間安定した稼働が叶います。メーカーごとの特性や、新車と中古車の価格帯の違いを理解し、最適な1台を見つけてください。
-
- アスファルトフィニッシャーは道路舗装の敷き均し、仕上げ専用の建設機械
- サイズや年式により新車・中古車価格は大きく変動する
- 運転には車両系建設機械の技能講習が必須で、施工管理には資格が必要
- 範多機械・住友建機・キャタピラージャパンなどが主要メーカー