日野自動車株式会社 新任社長 小木曽 聡氏 豊富を語る

月刊ITV 2021年8月号

発行:令和3年8月1日
発行所:(株)日新(HP)
執筆:大島春行・大西徳・伊藤慎介・井上元・岡雅夫・佐原輝夫・鈴木純子・中田信哉・西襄二・宮代陽之・谷田裕子
表紙・レイアウト:望月満
記事&編集:横路美亀雄・於久田幸雄

日野自動車株式会社 新任社長 小木曽 聡氏 豊富を語る-業界人事研究-

日野自動車株式会社は、2021年 6月24日に定時株主総会を開催し、提案された新役員が承認された。引き続いて開催された取締役会において代表取締役ほかの役員が選定されそれぞれ就任した。
新代表取締役社長には小木曽聡氏が就任し、これまで代表取締役社 長であった下義生氏は代表取締役会長に就任した。

新社長のプロフィール

新任の小木曽聡(おぎそ さとし)代表取締役社長は 7 月 2 日午後 2 時から、単独で所信表明と記者団との懇談形式で質疑応答に臨んだ。新型コロナ禍 が継続している最中であり、オンライン方式で行われた。


前任社長で今回代表取締役会長に就任した下義生 氏が日野自動車生え抜きの経歴で注目されていた が、新任の小木曽社長は再前と同じく大株主のトヨタ自動車からの派遣人事となった。


さて、当日の小木曽新社長はノーネクタイのくだけた服装で画面に登場した。
職歴の紹介では、1983 年にトヨタ自動車にエンジニアとして入社し、乗用車部門で実績を積んだ後 に 1993 年にプリウス車、アクア車、ハイブリッド電動車などの開発と円熟化にチーフエンジニアと して係わってきた。2015 年にはトヨタのティア 1 サプライヤーの一つであるアイシングループのアド ヴィックス株式会社に出向して同社の社長に就任。2018 年にトヨタに帰任してCV カンパニーのプレジデントに就任して商用車の世界での経験を積んだ後、今回の人事となったもの。アドヴィックス社は ブレーキ系統の部品及びシステムで商用車とも関係 が深いので、乗用車と商用車の双方全般に造詣が深い人物といえよう。
しかし、物流・人流を担う本格的商用トラックとバスを担当するのは初めての経験となることを率直 に吐露した上で、今後の日野自動車を率いる抱負を述べた。

新社長就任に際しての抱負


次に予め用意されたスライドを利用して、就任に当たっての抱負を照会した。
「先ずは、社会の役に立つ仕事をしたい。そして、 お客様の立場に立って役に立つ仕事を心掛ける。」こう述べて抱負を分かり易く表現した。
具体的には、日野自動車が 2020 年に公表した2025 年向けた企業としての取り組み「HINO サステナビリティレポート 2020」(20、21 頁参照)で示されている目標があるが、これを引き継いでゆ く。これは心情としている好きな言葉の「出来ることをやるのではなく、やるべきことをやる」を実行
することに通じると力を込めて語った。
チャレンジ 2025 の中でも謳われているが、世界の大目標である「カーボンニュートラル」の問題については、多様なお客様の意見を汲んで進めてゆくつもリだ。


1 日の走行距離が 100㎞程度の一定地域内の配送用途の小型車にバッテリー電動車 BEV への転換を推奨し、地域間の移動に供する大型運行車には燃 料電池電動車 FCEV を推奨する、といったトヨタグループの一員としての立ち位置はあるが、カーボ ンニュートラルへ向けた回答はそれだけでは無いと するお客様の声があればそれも大切に扱いたい。
これまでの経歴で、商用車に関しては販社、そし て第一線で日野車を運用するお客様との直接の接点 は少なかった。従って、実質的に初めての経験となるトラック・バスの働く商用車の現場を訪ねてお客様の声に耳を傾けたい。
次いで、オンラインで参加していた記者団との質疑に移った。

記者団との懇談Q&A

(表 1)日野自動車の主たる提携先

□Q 提携先との関係はどうなるか

■A 基本的には現在の提携先企業との関係は引き継いでゆく。しかし、中身についてはお客様の声に十分な配慮を行って具体的施策は考えてゆきたい。
〈解説〉
・日野自動車の他の企業との提携関係は国内では親 会社のトヨタ自動車との関係を意識しつついすゞ 自動車と同じ目線で提携を強化していることが分かる(表 3)。一方、海外企業とはVW社及びVW傘下の大型商用車メーカーの独 MAN 社と瑞SCANIA 社グループである TRATON 社と〝戦略的協力関係〟にある。主として BEV、FCEV 分野に視点をおいた関係だ。
・いすゞ自動車は FCEV 分野で国内はホンダと提携関係にあり、海外勢とは VOLVO(トラック)との協力関係を 2020 年 10 月に表明し、この中で計画されていた UD トラックス社の全株式取得を2021 年 4 月に計画とおり完了し、完全にグループ内に組み入れている。

□Q 人口動態などを勘案して販社・サービス拠点対置をどう考えるか

■A 直近の国勢調査の側方を見ても、首都圏を初めとして都市圏への人口集中は続いている。日野として販社の再編も行っているが、お客様のフリート立地も注意深く見ながら今後も適切な対応を執ってゆきたい。

□Q FCEVトラックの展望についてお聞きしたい。

■A 大型長距離運航車の電動化には FCEV 方式が適していると考えて提案している。現在は乗用車のミライに搭載されているFC ユニットを複数搭載する設計で走り出しているのはご高承のとおり。

□Q 商用車の安全装備の強化・標準化について伺いたい。千葉県八街市でトラックによる痛ましい事故が発生したが、運転者の呼気からアルコール分を検知してインターロックを掛けるなどの安全装備の標準化が願まれるが。

■A 法規との関係もあるが、安全装備としては冒頭に述べた「社会に役立つ仕事」として積極的に考えたい。

□Q 架装メーカーとの関係をどう考えるか。

■A 2018 年以降、トヨタグループとしてダイハツを含めてトヨタ車体の製品企画に参画している。勿論、お客様の声を聞きながらその他の専業架装メー カーとの協力体制は強化してゆく。




□Q  商用車向けの専用燃料電池FCユニットは考えられるか

■A 車両の質量が乗用車 PC と商用車CVでは桁違いに違う。従って、要求特性も異なるところは充分考えられる。しかし、現時点ではミライ車用ユニット を応用して対応するのが日野の企業としての方針だ。これは個人的見解だが、商用車向けの専用設計FCも将来はあるかもしれない。これもお客様の目線で考えてゆきたい。

□Q  ラストワンマイルを届ける軽自動車の商用車について取り扱いなどをどのようにお考えですか。

■A ・CJPT という枠組みで電動化の協業をいかにしてゆくか、全体のラインナップをどうしてゆくか、グループとして々連携をとってゆくかという会話は 2018 年からずっとしてきている。
・軽自動車についてはダイハツさんのカテゴリーなので連携をとって進めてゆく。
・日野としては先日、日野デュトロ Z EV を公表した。お客様と一緒になって使い勝手の良いラストワンマイルの形を検討した成果です。

「HINO サステナビリティレポート2020」1/ 2

□Q  つながる車(コネクティッド)のシステムフォーマットについて伺いたい。

■A 日野車のお客様はいすゞ車のお客様でもある事例が多い。こうしたお客様からは、日野が提供 するオンライン機能を組み込んだ車両・運行管理システムといすゞが提供する同様なシステムにプ ラットフォーム上の共通性に欠けるところがあり、 同じ社内で車の銘柄別に異なるシステムを運用し なければならない不都合を指摘される声があるの で、先般、トヨタ、いすゞ、日野の3社間でシス テム統合に向けた協業体制を構築することに合意 し、新会社「Commercial Japan Partnership Technologies コマーシャル・ジャパン・パートナーシップ・テクノロジー」の設立で合意した
(2021年3 月)。これは商用車で今後充実させなければならない CASE*)への対応を通じて、お客様の不便を解消してゆく為の具体的施策です。
〈解説〉
・CASE はConnected, Automonous, Shared,Electic の頭文字を引いて、今後の自動車で必要な機能、即ちコネクティッド(動く車とリアルタイムで情報交換を可能とし管理レベルを飛躍的に向上させる事)、オートノマス(運転の自動化)、シェアー ド(所有形態に共有化も考慮する事)、エレクトリッ ク(電動化)を表す。

□Q  乗用車と商用車の違いをどのように考えているか

■A  先にも触れたが、最大の違いは質量の大きさが一桁ちがうことです。大きさも違う。加えてお客様の貨物を預かって輸配送するから、目配りしなけれ ばならない関係者も多い。

「HINO サステナビリティレポート2020」2 / 2

□Q  バイオ燃料による内燃エンジン車の継続使用したいというユーザーにはどのように対応するのか。

■A  商用車はお客様の用途やニーズによりさまざまな使われ方があり、各市場によってインフラ整備状況やエネルギー政策なども異なります。技術開発に当たっては、輸送距離、積載量、荷役作業性、用途、エネルギー・インフラ等、あらゆる要件を検討しており、社両の電動化だけでなく全ての可能性を検討しお客 様にとって実用的で役に立つ選択肢を提供します。

趣味は走ること
小木曽社長の趣味は、走ることだという。車で走 ることも自分の足で走ることもお好きだという。こ れは、仕事の上でもスピーディに事を進めることに結びついていると思います、と述べていた。

◇当日の 60 分という限られた時間内での抱負の表明、及び懇談を通じて、新社長・小木曽聡氏の飾ら ない人柄と謙虚な姿勢が印象的であった。今後の手腕とご活躍に注目したい。
筆者の個人的見解だが、向後の社長人事は日野出身者とトヨタ出身者が交互に選出される人事の可能 性を窺わせる。

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