セルフローダーとは？仕組み・使い方・人気モデルを解説｜免許や注意点も紹介

セルフローダーは、重機や建設機械などを運搬する特殊車両です。荷台前方が持ち上がり、後輪を支点にしてシーソーのように傾斜する独自の構造により、荷台後部を地面に接地させて積み下ろしをおこないます。

本記事では、セルフローダーの概要やセーフティローダーとの違いを解説します。さらにセルフローダーを扱う際の注意点や人気のモデル、よくある質問まで紹介します。

セルフローダーとは？

（画像引用元：TADANO）

セルフローダーとは、車両の荷台が傾斜してスロープになることで、重機や車両を自力で荷台に積み込み、運搬できる特殊車両のことです。荷台前方を持ち上げるジャッキ機能と、荷台後方を軸にしたシーソーのような動きをすることで、荷台を地面に接地させることができます。

これにより、自走が可能な重機や車両を、安全かつスムーズに荷台へ積載できる点が大きな特徴です。また、この機能により、積み込み作業時に別途クレーンなどの重機が不要になるため、作業効率が向上します。

セルフローダーの仕様

セルフローダーの基本的な仕様は、車両を積み込むための荷台と、荷台後方に取り付けられた「あゆみ板」によって構成されます。このあゆみ板が地面との間にスロープを形成し、重機などの積み下ろしを可能にします。あゆみ板には、手動で設置する種類や、油圧で自動的に作動する種類などがあります。

また、自走できない車を荷台に引き上げるためのウインチ（巻上げ機）や、クレーンを装備したトラックも存在します。ベースとなるトラックの大きさや架装によって様々な種類があり、運搬する対象物に応じた仕様の車が使用されます。

セルフローダーが活躍する場所

セルフローダーは、主に公道を自走できない重機や車両を運搬する場面で活躍します。例えば、建設現場へブルドーザーや油圧ショベルといった大型の建設機械を搬入搬出する際に不可欠です。

また、自動車整備工場やディーラーが、故障車や新車などを指定の場所へ運ぶときにも使用します。ベースとなるトラックの大きさや種類によって積載できる重量やサイズが異なるため、運搬する対象に合わせて車両が選ばれます。

中古車市場でセルフローダーを探す際には、どのような大きさや積載量の車を運搬するのか、具体的な業務内容を明確にしておく必要があります。

セルフローダーとセーフティローダーの違いとは？

セルフローダーとセーフティローダーは、どちらも車両を運搬するという目的は同じですが、荷台の構造に明確な違いがあります。セルフローダーはトラックの運転台ごと持ち上げて荷台を傾斜させるのに対し、セーフティローダーは荷台部分のみが後方へスライドして傾斜する仕組みです。

その他の違いは、下記のとおりです。

	セルフローダー	セーフティローダー
荷台構造	前方を持ち上げて傾斜をつくる	荷台を後方にスライドさせる
主な用途	重機・建設機械などの運搬	乗用車・精密機器などの運搬
積み込み方法	自走またはウインチ	スライド＋ウインチ
特徴	積載量が大きく、悪路にも対応	低い角度で安全に積み降ろし可能
使用現場	建設現場、整備工場、解体現場	自動車整備、販売、レッカーサービス

セルフローダーは「重量物、重機向け」、セーフティローダーは「車両輸送向け」という使い分けが基本です。

セーフティーローダーの特徴

セーフティローダーは、主に自動車や精密機械など、自走可能で傷つけたくない車両の輸送に向いています。荷台をスライドさせて地面とほぼ水平に近い角度で積み下ろしができるため、バンパーや車体下部を擦るリスクが少なくなります。

また、ウインチを使って非自走車を引き上げることも可能で、レッカー車や自動車整備工場などで多く採用されています。構造上、セルフローダーに比べて積み込み角度が浅く、作業時の安全性が高いのが特徴です。

レッカー機能も備えた「アンダーリフト付きセーフティローダー」や、新車・競技車両の搬送に適した「大型エアサス式」など、運搬する荷物や用途に応じたタイプがあります。

【メーカー別】人気モデル

セルフローダーは、各自動車メーカーのトラックをベースに架装メーカーが荷台を取り付けて製作されます。
走行性能や耐久性、整備性などのバランスが求められ、特に「日野」「いすゞ」「三菱ふそう」はセルフローダー分野で高い評価を得ています。

1.日野自動車

（引用元：日野自動車）

日野自動車は、トラックやバス製造販売に特化した商用車両専門メーカーです。特に中型トラックの「レンジャー」と大型トラックの「プロフィア」は、セルフローダーのベース車両として高い人気を誇ります。

モータースポーツの世界でも高い評価を得ており、世界一過酷なレースと言われるダカール・ラリーのカミオン部門に連続出場している実績もあります。同社の車両は、過酷な使用環境にも耐えうる信頼性と耐久性が特徴です。

1-1.レンジャー

レンジャーは、日野自動車が1964年から製造・販売している中型トラックシリーズで、同社を代表する人気モデルです。多様な特殊車両のベース車両として広く利用されており、その堅牢性と信頼性から、多くの現場で活躍しています。長年にわたり培われてきた技術と実績が、レンジャーの高い評価を支えています。

1-2.プロフィア

プロフィアは1992年に販売を開始した日野自動車の大型トラックシリーズです。1981年に発売されたスーパードルフィンがフルモデルチェンジした際に、新たにプロフィアというモデル名が加わりました。このモデルは、さまざまなボディタイプのベース車両として利用されており、高い居住性を実現していることで人気を集めています。長距離輸送や重量物の運搬など、多岐にわたる用途で活躍しています。

2.いすゞ自動車

（引用元：ISUZU）

いすゞ自動車は、ディーゼル技術において高い評価を得ている自動車メーカーです。2002年以降は国内向け商用車専門メーカーへと事業を転換しており、トラックやバスの製造販売に注力しています。

長年にわたる歴史の中で培われた技術力と信頼性により、いすゞの車両は過酷な使用環境下でも優れた性能を発揮します。

2-1.エルフ

いすゞ自動車が1959年から製造、販売している小型から中型トラックのシリーズが「エルフ」です。

多様なボディタイプのベース車両として広く利用されており、その信頼性と実績から、トラック市場で高い評価を得ています。長年にわたる歴史と培われた技術が、エルフの高い人気を支えています。

2-2.フォワード

フォワードは、いすゞ自動車が1970年から販売している中型トラックシリーズです。

1965年に発売されたTY型の後継モデルとして登場しました。エルフと同様に高い人気を誇り、幅広いボディタイプのベース車両として利用されています。その堅牢性と多様性から、多くの運搬作業や特殊車両のベースとして、いすゞ自動車の主要な車種の一つとして活躍しています。

3.三菱ふそう

（引用元：トラック流通センター）

三菱ふそうトラックバス株式会社は、2003年に三菱自動車から独立し、トラックやバスに特化した商用車専門メーカーとして設立されました。

三菱グループの高い技術力を継承し、車両の生産から販売までを一貫して手掛けているのが特徴です。

特に、セルフローダーのベース車両としても人気のある「キャンター」や「スーパーグレート」など、信頼性の高いモデルを提供しています。これらの車両は、国内外の物流や建設現場など、多岐にわたる分野で活躍しています。

3-1.キャンター

キャンターは、三菱ふそうが1963年から製造・販売している小型トラックシリーズです。2023年に誕生60周年を迎えました。その長い歴史の中でモデルチェンジを重ね、2020年には9代目となる現行モデルが登場しています。

多様なボディタイプのベース車両として広く利用され、高い知名度を誇ります。三菱ふそうの技術力と実績が凝縮されたモデルです。

3-2.スーパーグレート

スーパーグレートは、1996年に三菱ふそうが発売した大型トラックのシリーズで、TシリーズおよびFシリーズの後継モデルである「ザ・グレート」を引き継いでいます。現在販売されている2代目モデルは、7.7リットルと10.7リットルのエンジンを搭載しており、高い安全性能も備えているのが特徴です。

そのため、多くのユーザーからセルフローダーのベース車両として高い評価と人気を得ています。

セルフローダーの運転に必要な免許

セルフローダーを運転するためには、ベースとなるトラックの車両総重量や最大積載量に応じた運転免許が必要です。免許の種類は、普通免許、準中型免許、中型免許、大型免許に区分されます。

必要な免許を表にまとめました。

また、一般的なセルフローダーは、大型特殊の対象外です。
大型特殊免許が必要になるのは、ブルドーザーやロードローラーなど「特殊自動車」として登録された車両を公道で走らせる場合のみです。

免許の取得時期によって運転できるトラックのサイズが異なるため、所有している免許証の条件（「中型車は中型車（8t）に限る」など）を事前に確認してください。

ウインチの操作には資格が必要な場合がある

セルフローダーに装備されているウインチを操作して、荷の吊り上げ作業をおこなう際には、その能力に応じて特定の資格が法的に義務付けられています。

つり上げ荷重が1トン以上の移動式クレーンとしての機能を持つウインチを操作する場合、「小型移動式クレーン運転技能講習」を修了していなければなりません。

加えて、ワイヤーロープなどを荷に掛ける「玉掛け」作業を行う場合は、クレーンの規模に関わらず「玉掛け技能講習」の修了が必要です。

これらの資格は安全な作業の根幹をなすものであり、無資格での操作は法令違反となります。

セルフローダーを扱う際の注意点は？

セルフローダーを安全に扱うためには、特に積み下ろし作業時と走行時の両方で注意が必要です。作業時には、まず車両の後方に十分なスペースを確保し、平坦で安定した場所を選ぶことが基本です。積み荷である重機や車は、荷台の中央にバランス良く載せ、はみ出さないように積載します。

走行前には、これから通るルートの道路幅や高さ、橋などの重量制限を事前に確認し、通行に問題がないかを調べておくことも欠かせません。これらの基本的な注意点を守ることで、事故のリスクを大幅に減らすことが可能になります。

車両の後方に十分なスペースを確保する

セルフローダーで安全に積み下ろし作業するためには、まずは作業スペースを確保してください。

荷台を傾け、あゆみ板を地面まで下ろすためには、車両の後方にかなりの長さのスペースが必要となります。スペースが不十分な場所で無理に作業を開始すると、あゆみ板が壁や他の車両に接触したり、傾斜した荷台が架線に触れたりする危険があります。

また、周囲の交通や歩行者の安全も確保しなければなりません。作業前には必ず後方および上方の安全を確認し、平坦で地盤の固い場所を選んでから作業を開始するよう徹底します。

積み荷がはみ出さないように積載する

セルフローダーに車両や重機を積載する際は、道路交通法で定められた積載制限を遵守することが絶対条件です。

積み荷が車体の前後左右にはみ出す場合は、その寸法によって「制限外積載許可」の申請が必要になる場合があります。許可なく積載制限を超えて走行することは法令違反です。

また、荷台から大きくはみ出した積載は、車両の重心を不安定にし、カーブや段差で横転するリスクを高めます。積み荷は荷台の中央にバランスよく配置し、走行中の振動や衝撃で動かないよう、ラッシングベルトやチェーンなどで複数箇所を確実に固縛します。

走行ルートの道路制限を確認する

特に中型や大型のセルフローダーが公道を走行する際には、事前に走行ルートの道路情報を確認しましょう。

道路には、橋梁の重量制限、トンネルや高架下の高さ制限、狭い道路の幅員制限など、様々な通行規制が存在します。

これらの制限を把握せずにルートを進むと、途中で通行不能な場所に遭遇し、立ち往生したり、危険な後退を強いられたりする事態になりかねません。

事前に地図アプリや道路情報サイトを活用して、通行予定のルートに規制がないかを確認し、安全な運行計画を立てることが求められます。

中古車両を購入する際のチェックポイント

中古のセルフローダーを購入する際は、特殊な構造と高額な費用がかかることから、購入前の確認が非常に重要です。
車両区分や年式、最大積載量を確認するだけでなく、架装部分の動作状況や劣化具合、油漏れの有無、各部の溶接状態まで細かくチェックする必要があります。

また、足回りの車両軸数も、積載できる重機の重量や車両の安定性に大きく影響するため、必ず確認しましょう。これらのポイントを押さえることで、安全かつ長く使用できるセルフローダーを選べます。

1.ベース車両の状態をチェック

セルフローダーは特殊車両に分類されますが、ベースとなるのは一般的なトラックです。そのため、中古で購入する際は、年式や走行距離、エンジンやミッションの状態、フレームのサビや腐食、タイヤの摩耗具合など、通常の中古トラックと同様の項目を細かく確認することが重要です。

特に、エンジンの異音やオイル漏れ、足回りのガタつきは走行の安全性に直結するため、入念にチェックしましょう。

2.車両区分や年式

セルフローダーの最大積載量は、車両区分によって異なるため、購入前に確認が必要です。

また、年式が新しい車両は、エコカー減税の対象となる排ガス規制対応車両であることが多く、購入後の維持費に影響を与える可能性があるため、これらの点も考慮に入れることが大切です。

3.最大積載量

セルフローダーに搭載されている架装は重量があるため、一般的なトラックと比較して車両総重量に対する最大積載量が小さくなる場合があります。

車両区分のみを判断材料とすると、実際に運びたい荷物の最大積載量が不足する恐れがあります。購入前には必ず最大積載量の確認をおこなってください。

4.架装の状態や仕様

セルフローダーの機能の中核となる荷台の状態確認は、購入時にもっとも重要なチェック項目です。以下の点を順に確認すると確実です。

5.車両軸数

車両の軸数（タイヤが付いている車軸の数）は、車両の最大積載量や走行安定性に直接関わります。
一般的に、後輪が1軸の車両よりも2軸の車両の方が、より重い荷重を支えることができ、最大積載量も大きくなります。

大型車では、後輪2軸の「3軸車」や、前輪2軸と後輪2軸の「4軸車」などがあり、軸数が多いほど重機などの重量物を安定して運搬することが可能です。

ただし、軸数が増えると車体長も長くなり、小回りが利きにくくなるという側面もあります。運搬物の重量と、主な走行ルートや作業現場の広さを考慮し、最適な軸数の車両を選びましょう。

荷台の架装｜ボディメーカー2社

ここでは、セルフローダーやセーフティローダーの架装を手がける主要なボディメーカーを2社ご紹介します。
各メーカーは、それぞれ独自の特徴を持つ架装を提供しており、利用シーンや積載物に合わせた架装を選択できます。

フジタ

フジタ自動車工業株式会社は、1950年に創業して以来、トラック架装の製造販売を手掛ける老舗メーカーです。

運搬車両機器の研究開発においては業界トップクラスの実績を持ち、ダンプローダーやスーパーローダー、ライトスーパーローダーといった主力製品の改良に注力しています。長年の経験と技術力により、信頼性の高いセルフローダーを提供しています。

花見台

株式会社花見台自動車は、日本で初めてセーフティローダーの製作に成功した実績を持つメーカーです。

1972年に初代モデル「セフテーローダ」を発表し、その後も改良を重ねてきました。現在もセーフティローダーのトップシェアメーカーとして、常に研究開発に力を入れています。

セルフローダーについてよくある質問

セルフローダーは、重機や車両の運搬に欠かせない車両ですが、用途や免許、価格などについて疑問を持つ方も多いです。ここでは、よく寄せられる質問をまとめて解説します。

セルフローダーとトレーラーの違いは？

セルフローダーは、トラック型の一体構造車両で、荷台を傾けて積み降ろしができるのが特徴です。
一方のトレーラーは、けん引車（ヘッド）と荷台（トレーラー）を切り離して使用する分離構造です。

主な違いは、次のとおりです。

セルフローダーの積載量は？

セルフローダーの積載量は車両の大きさによって異なります。一般的には、小型で2〜4トン程度、中型で4〜7トン前後、大型で7トン以上が目安です。

フォークリフトなど軽量機械は小型で十分ですが、大型重機を運ぶ場合は車体剛性に優れた大型タイプが適しています。

装備内容によって実際の積載量が変わるため、購入時は必ず車検証や仕様書で確認しましょう。

セルフローダーの新車、中古車価格の相場は？

セルフローダーの価格は、ベース車両の大きさ、架装仕様、年式によって大きく異なります。
おおよその価格目安は、次のとおりです。

中古車を購入する際は、架装（荷台）部分の油圧系統や床板の状態、ウインチの動作確認を必ずおこないましょう。

セルフローダーはレンタルやリースができる？

セルフローダーは多くのレンタル会社とリース会社で取り扱いがあります。1日〜1週間の短期利用から、数か月〜数年の長期リースまで幅広く選べるケースがほとんどです。

・レンタル：必要な期間だけ借りる。短期の現場や臨時運搬に便利。 ・リース：中〜長期利用向け。月額費用を支払いながら使用し、保険・整備費込みの場合もある。

特に建設業では、繁忙期や現場の規模に応じてリース車を活用するケースが多く見られます。
リース契約では、積載重量や車両サイズの条件を事前に確認しておくとスムーズです。

まとめ

セルフローダーは重機や車両の運搬に特化した特殊車両であり、荷台が傾斜してスロープになることで、積み込み作業が容易になるのが特徴です。

用途や積載量に応じて小型〜大型までさまざまなタイプがあり、免許区分や使用上の注意点を理解しておくことで、より安全でスムーズな運用が可能となります。

• セルフローダーは荷台を傾けて積み降ろしできる構造の運搬車
• 公道走行には大型特殊免許ではなく、総重量に応じた中型・大型免許が必要
• 架装部分（荷台・油圧装置・ウインチ）の点検は購入前の重要チェック項目
• 積載量はおおむね小型2〜4t・中型4〜7t・大型7t以上が目安
• 日野・いすゞ・三菱ふそうなど、メーカーごとに特性や得意分野が異なる