生コン車(ミキサー車)の仕組み|構造・サイズ・価格

生コン車(ミキサー車)は、コンクリートを工事現場まで運搬する特殊な車両です。本記事では、生コン車の仕組みや構造、価格までくわしく解説します。
生コン車(ミキサー車)とは?

生コン車(ミキサー車)は、コンクリートを工事現場まで運搬する特殊な車両です。最大の特徴は、荷台に搭載されたミキシングドラムが回転することで、生コンクリートが固まらないようにかき混ぜながら輸送できる点です。
現代の建設現場において、高層ビルから道路、橋梁まで、あらゆる建築物の基礎となる生コンクリートの供給に不可欠な存在になっています。
この章では生コン車の構造や用途、価格について、解説していきます。
1.生コン車の構造
生コン車(ミキサー車)の構造は、主に「ドラム」「ホッパ」「シュート」「水タンク」の4つの主要部分で構成されています。
それぞれの構造について紹介します。
【構造1】ドラム
ドラムは、生コン車の心臓部であり、ミキシングドラムとも呼ばれます。ドラムの内部には、螺旋状のブレード(羽根)が取り付けられています。
生コン工場から投入された生コンクリートは、ドラムを特定の方向に回転させることで、このブレードによって練り混ぜられ、材料の分離を防ぎます。
建設現場に到着後、ドラムを逆回転させると、ブレードが生コンクリートを排出口へと送り出す仕組みになっています。
走行中も常に回転させることで、生コンの品質を輸送時間中、均一に保つという重要な役割を果たしています。
【構造2】ホッパ
ホッパは、ドラムの後方上部に設置された、コンクリートを投入するための入り口です。漏斗のような形状をしており、生コン工場で製造されたフレッシュコンクリートをドラム内部へスムーズに流し込む役割を担います。生コンを受け入れる際、周囲にこぼれないようにするための重要なパーツです。
作業中は生コンが付着しやすいため、作業終了後には水タンクからの水を使ってきれいに洗浄する必要があります。この洗浄を怠ると、付着したコンクリートが硬化し、次回の投入作業に支障をきたす原因となります。
【構造3】シュート
シュートは、ドラムから排出された生コンクリートを、型枠などの目的の場所まで導くための樋のような装置です。ドラムの排出口下部に取り付けられており、作業員が手動で角度や向きを調整できる仕組みです。現場によっては複数のシュートを連結させて使用する場合もあります。シュートがあることにより、車両が直接近づけない場所へも正確に生コンを流し込むことが可能です。
また、シュートもホッパと同様に生コンが付着しやすいため、排出作業が完了するたびに、水タンクの水で洗浄し、コンクリートが固着するのを防ぐ必要があります。
【構造4】水タンク
水タンクは、主に車両の洗浄を目的として搭載されています。タンク内には通常150〜200リットル程度の水が貯蔵されており、ポンプで加圧することでホースを通じて高圧洗浄水として使用できます。
主な洗浄箇所は生コンが直接触れるホッパ、シュート、そして作業後のドラム内部です。これらの箇所に付着したコンクリートを速やかに洗い流さないと硬化して塊となり、車両の故障や積載量の減少につながります。運搬中の生コンクリートに水を加えることは品質を著しく低下させるため、原則として禁じられています。
2.用途
生コン車の最も重要な用途は、生コン工場で製造されたフレッシュコンクリートを、固まる前に建設現場まで運搬することです。
生コンクリートは、セメント、水、砂、砂利などを練り混ぜて作られますが、時間経過とともに硬化が始まります。
また、運搬中の振動で材料が分離し、品質が不均一になる恐れもあります。
生コン車は、ドラムを常に回転させて中身をかき混ぜ続けることで、これらの問題を解決します。JIS規格では、練り混ぜ開始から現場での荷下ろし完了までの時間を原則90分以内と定めており、この時間内に品質を維持したまま届けるのが生コン車の使命です。
3.活躍する場所
生コン車は、道路や橋、ダム、トンネルといった社会インフラの整備から、マンションや商業施設、オフィスビルなどの建設まで、あらゆる建築現場で必要とされています。
また、地震や災害からの復旧作業においても、コンクリートは欠かせないため、生コン車は被災地のインフラ復旧や建物の再建においても重要な役割を担っています。このように、ミキサー車は私たちの生活を支える基盤となる場所で幅広く活躍しているのです。
現場で生コン車と一緒に活躍する「ポンプ車」とは?
ポンプ車とは、生コン車が運んできた生コンクリートを、打設場所まで圧送するための建設機械です。生コン車のシュートだけでは届かない高層階や、建物の奥まった場所へコンクリートを送る際に使用されます。
作業手順としては、まず、生コン車をポンプ車に横付けし、シュートからポンプ車後部のホッパーへ生コンを排出します。
その後、ポンプ車がコンクリートを吸い込み、ブームと呼ばれる長く伸びるアームの先端まで配管を通して圧送し、目的の場所へ流し込みます。
このように、ポンプ車とは建設現場で連携して作業をおこなう、重要なパートナー関係にあります。
生コン車の価格
生コン車(ミキサー車)の価格は、車両のサイズやドラム容量、搭載するミキサー装置の仕様によって大きく変わります。
一般的に、最大積載量4トンの中型クラスで新車価格は約600万円前後、10トンの大型クラスでは約1,300万円が相場です。さらに、高性能ミキサーや軽量ドラム、排ガス規制に対応した最新モデルを選ぶ場合は、1,500万~2,000万円を超えることもあります。
一方で、中古車なら4トンクラスで300〜400万円前後、10トンクラスで500〜1,200万円ほどと、導入コストを大きく抑えることが可能です。
中古市場では年式や走行距離、ドラムの摩耗状態によって価格差が出るため、整備履歴を確認して信頼できる販売店から購入することがポイントです。用途や予算に合わせて最適な1台を選びましょう。
生コン車搬送時のポイント

生コン車は、積載したコンクリートの凝固や分離を防ぎながら運搬することが重要なポイントです。そのため、ミキシングドラムの回転方向と速度を適切に管理する必要があります。走行中や荷下ろし前には、ミキシングドラムを半時計回りに回転させ、常にコンクリートをかき混ぜます。
荷下ろし時には、ミキシングドラムを逆転させることで生コンクリートをスムーズに排出します。
この独特の構造と操作が、コンクリートを品質を保ったまま現場に届けるための鍵となるのです。
生コンの輸送はスピードも重要
生コン車での生コンの運搬では、スピード管理が品質維持のポイントとなります。生コンは出荷後時間が経つと硬化が進むため、施工現場に届くまでに品質を保つことが重要です。
日本工業規格(JIS規格)では、生コンを練り始めてから生コン車で現場に到着するまでの時間を1.5時間以内と定めています。
遅れると施工途中で生コンが足りなくなり、品質低下や施工不良につながることがあります。
そのため、生コン車の運転では安全運転を最優先しながらも、ルートや到着時間を計画して円滑に運搬することが重要です。現場との打ち合わせで待機場所を決めたり、GPSを活用して渋滞を避けたりすることで、生コンの供給を途切れさせず、高品質な状態で施工現場に届けられます。
生コン車による適切な運搬とスピード管理は、施工の仕上がりに直結する重要なポイントです。
【サイズ別】生コン車の種類

生コン車は、運搬量や現場の状況に合わせて多様なサイズが用意されています。
これは、建設現場で必要とされる生コンの量が多岐にわたるため、効率的な運搬を実現するためです。小型から大型まで幅広いクラスの生コン車が存在しており、現場のニーズに応じて使い分けられています。
【車両区分別】生コン車の車両寸法・積載容積
生コン車に積載する生コンは、セメント・砂・砂利・水などを混ぜて作られるため、非常に比重の高い積み荷です。比重が高いことから、最大積載量に対する積載可能容積が多くありません。
また、コンクリート工場で作られる生コンは現場によって原材料の比率が異なるので、1㎥当たりの重量が同じではなく、現場ごとに1㎥あたりの重量が異なるのも注意が必要です。
以下に、最大積載量別の車両寸法と積載容積をまとめました。
| 最大積載量 | 全長(目安) | 全幅(目安) | 全高(目安) | 積載容積 |
| 2~3t | 5,100mm | 1,800mm | 2,700mm | 0.8~1.3㎥ |
| 4t | 5,850mm | 2,160mm | 3,035mm | 1.6㎥ |
| 5~6t | 2,240mm | 3,200mm | 2.1~2.4㎥ | |
| 7~8t | 6,400mm | 2,300mm | 3,300mm | 2.8~.2㎥ |
| 10t | 7,900mm | 2,490mm | 3,700mm | 4.0~4.4㎥ |
| 11t | 9,100mm | 3,770mm | 5.0㎥ |
生コン車の運転に必要な資格や免許

生コン車(ミキサー車)の運転に必要な免許は、運転する車両の最大積載量や車両総重量によって決まります。それぞれの最大積載量や車両総重量によって必要な運転免許は、以下の通りです。
| 免許区分 | 最大積載量 | 車両総重量 |
| 準中型免許(5t限定) | 3.0t未満 | 5t未満 |
| 準中型免許 | 4.5t未満 | 7.5t未満 |
| 中型免許(8t限定) | 5.0t未満 | 8t未満 |
| 中型免許 | 6.5t未満 | 11t未満 |
| 大型免許 | 6.5t以上 | 11t以上 |
車両のサイズに合わせた運転免許を取得していれば、生コン車の運転が可能になります。しかし、生コンクリートを運搬する特殊性から、一般的なトラックとは異なる運転技術や注意点があるため、安全運転を心がける必要があります。
また、8ナンバーの特殊車両ですが、ミキシングドラムの操作に特別な資格は不要です。
生コン車についてよくある質問

生コン車(ミキサー車)を運転する際や業務で手配する際に、具体的なサイズに関する質問が多く聞かれます。特に、一般的な4t車や10t車がどのくらいの大きさなのか、トラックとしての幅はどの程度なのかといった点は、現場の搬入経路を確認する上で重要な情報です。
ここでは、そういった生コン車に関するよくある質問をまとめました。
生コン車の4トン車のサイズは?
生コン車の4トン車のサイズは、メーカーや車種によって異なりますが、一般的なサイズは以下のとおりです。
| ・全長:約5.85メートル ・全幅:約2.16メートル ・全高:約3.035メートル ・ドラム積載可能容積:約1.6立方メートル |
これらの車両寸法はあくまで目安であり、狭い現場での作業や道路を走行する際には、正確な車両寸法や旋回軌跡を把握しておくことが重要です。
10トン生コン車のサイズは?
10トン生コン車のサイズは、メーカーや車種によって異なりますが、一般的なサイズは以下のとおりです。
| ・全長:約7.9m~8.5m ・全幅:約2.5m ・全高:約3.7m~3.8m ・ドラム積載可能容積:約4.0立方メートルから4.4立方メートル |
ドラムの全容量は5立方メートルから8.7立方メートル程度まで幅があります。このサイズの生コン車は大型トラックに分類されるため、運転するには大型免許が必要です。
また、大型車両ならではの広い旋回半径を考慮し、走行や作業時には十分なスペースを確保する必要があります。
生コン4トントラックの幅は?
生コン車4トントラックの一般的な全幅は約2.3mですが、メーカーや車種によって異なり、ショートボディでは約2.17mのものもあります。生コンクリートを運搬する生コン車は、特殊な形状をしているため、幅員だけでなく、旋回時の軌跡にも注意が必要です。狭い道路や工事現場では、車両の幅を正確に把握し、安全な運行を心がけることが重要です。
生コン車の正式名称は?
一般的に「生コン車」と呼ばれる車両ですが、正式名称にはいくつか種類があります。
代表的なのが「トラックアジテータ」と「レディーミクスト車」です。
トラックアジテータは、運搬中も生コンクリートを絶えずかき混ぜる機能を持つ生コン車を指します。
一方、レディーミクスト車は、工場で作られた生コンクリートを現場まで安全に運ぶ車両です。日常では「ミキサー車」と呼ばれることが多く、荷台のドラムが材料を混ぜながら運搬する仕組みからその名が付きました。
どの呼び方の生コン車も、コンクリートの品質を保ちつつ現場に届ける重要な役割を果たしています。正式名称を理解することで、生コン車の種類や機能をより正確に把握できるでしょう。
生コン車を購入するなら新車と中古車どちらが良い?
生コン車を購入する際は、新車と中古車のどちらが現場に合うかを考えることが大切です。新車は最新の安全装置や排ガス規制に対応しており、長く安心して使える点が魅力です。また故障リスクも低く、頻繁に現場で使用する場合には安心です。
一方、中古の生コン車は購入費用を抑えられるうえ、納車が早くすぐに現場で使えるメリットがあります。ただし、年式や走行距離、ドラムやミキサー装置の状態によって品質が変わるため、信頼できる販売店から選ぶことが重要です。
現場の規模や使用頻度、予算に応じて、新車の安心感と中古車の即納・コストメリットを比較し、最適な生コン車を選びましょう。
まとめ
生コン車(ミキサー車)は、建設現場にフレッシュな生コンクリートを届けるために欠かせない特殊車両です。ドラムやホッパ、シュート、水タンクなどの構造により、運搬中も品質を保ちながら効率的に作業がおこなえます。車両のサイズや積載量に応じて免許が異なるため、安全運転や操作の理解も重要です。用途や現場条件、予算に応じて適切な生コン車を選ぶことが、施工品質と作業効率の両立につながります。
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- 生コン車は社会インフラの整備から、マンションや商業施設、オフィスビルなどの建設まで、あらゆる建築現場で必要とされている
- 生コン車は、車両後方から見て反時計回りで生コンのかき混ぜ、逆転すると排出する
- 生コン車の運転には特別な資格や免許は必要ない
- 現場ごとに1㎥の重量が異なり同じ工場の生コンでも重さが違う


