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【新春座談会】欧州に見習うところの多いトラック産業と顧客の関係

The_TRUCK_2016年2月号表紙

月刊ITV 2016年1月号

発行:平成28年12月1日
発行所:(株)日新(HP)
執筆:大西徳・井上元・岡雅夫・鈴木純子・中田信哉・西襄二・橋爪晃
表紙・レイアウト:望月満
記事&編集:横路美亀雄・於久田幸雄

【新春座談会】欧州に見習うところの多いトラック産業と顧客の関係

日本のトラックに新たな世界観

世界に広がるテロの脅威、シリアからの難民受け入れに揺れるEU諸国、水爆実験など暴走を続ける北朝鮮、ASEAN諸国の経済統合など世界情勢が混沌とする中で幕開けた2016年、国内ではトラックのドライバー不足が深刻の度を深めている。規制緩和の物流二法施行以来、競争が激化して経営環境が悪化しているトラック運送業界は、ドライバーへの待遇改善のためにも、運賃の適正化が大きな課題となっている。また、長期的には国内市場の拡大が見込めないトラック産業界は今後どのような方向を目指すのか、トラックの国際ジャーナリストとして活躍中の西襄二氏(物流研究所代表)と車体産業に詳しい井上元氏(元日本フルハーフ)に忌憚の無いところを伺った。(1月8日、本誌事務所にて、秋林路)

インタビューチーム…ザ・トラック

(左)西襄二氏(物流研究所代表)/(中央)井上元氏(元日本フルハーフ)/(右)本誌・秋林路

トラック燃料は今後も軽油

□秋林路 年明け早々でまだお屠蘇気分も抜けないところお集まり頂き有難う御座います。トラック専門誌として、今年そして近未来のトラックを展望する意味で、新春座談会を企画した次第です。井上さんは昨年欧州のトラック展示会を見て来られました(34P参照)し、西さんはトラックジャーナリストとして、世界のトラックメーカーに精通しておられます。この時期、将来を展望するに当たっては、世界の動きが極めて重要ですので、ご両者に出席をお願い致しました。国内につきましては、昨年一年関東のトラック協会長を訪ねた経緯がありますので、少し私の意見も加えさせて頂きたいと思います。
テーマは幾つかに分けて進めますが、まずCO2削減とも関係のある燃料問題から入ります。最近は米国のシェールガスが話題になっていますが、このところ石油価格も大きく値下がりしています。この辺り西さんはどのように見ておられますか。

■ 西  私ごとで恐縮ですが、最近、生涯最後になるかも知れないマイカーをディーゼル車に替えまして、暮れに軽油を満タンにしたところ、セルフスタンドで1ℓが89円でした。これは10数年来の安値です。数年前にダイムラーが欧州のトラックメーカーを代弁して、「大型トラックの燃料は将来とも軽油だ。軽油は将来にわたって大型トラックのために大事に使うべきだ。」と発言していますが、ディーゼル車の環境対策は大きく進んでいます。特に私が注目しているのはマツダが開発した“SKYACTIV Dスカイアクティブディーゼル”です。この小排気量向け技術が今後大型トラックにも拡大してくるのかどうか。いすゞ自動車は中・小型トラックで、性能は従来のままで圧縮比を下げるエンジンを開発していますが、これは明らかにマツダが開発した技術を応用していると思われます。それが、今後10~13ℓの大型トラックエンジンにどのように影響してくるのか、注目して行きたいと思います。この基本技術の開発によって、後処理装置への負荷が軽減されますので、相対的にコストを引き下げることにも貢献します。

□秋林路 ダイムラーが大型トラックは将来にわたって軽油を燃料とするというのは、低回転高トルクのディーゼルが大型トラックに向いているという意味ですか。

■ 西  その通りです。大型のエンジンについては、中・小型にみられる代替燃料方式が画期的には応用できないという見通しを持っているのだと思います。ただ、国内外で天然ガスの使用を推進する動きもありますので、全くダメという訳ではなくて、大勢としては軽油が主力であり続けるという事だと思います。

□秋林路 米国のシェールガスは大型トラックの燃料にも大きな影響を与えているようで、欧州でもCNG、LNGが普及しているニュースが伝えられていますが、欧州のトラックメーカーは今後とも軽油が中心とみているのですね。

■ 西  常温で液体、容積当たりの発熱量が高いなど、軽油は使い勝手が良いという事だと思います。国内ではUDトラックスが日産ディーゼルの時代から大型CNG車の開発に取り組んで来ましたが、傘下に入ったボルボとの関係では、必ずしもその開発を継続する考えはないのではないか、と思います。運用が域内に限定したトラックやバスなどは環境に優しい天然ガスに代わるとしても、長距離運行のトラックは軽油という事だと思います。

□秋林路 井上さんは昨年も精力的に海外展示会を見に出掛けられましたが、この点をどのように見ておられますか。

■井 上 私の場合は元々トラックメーカーの視点ではないので、専門的な話は出来ませんが、負荷の大きい大型トラックについては、軽油かなと思います。日本の乗用車は世界に冠たるものがありますが、大型トラックは国内の全需が世界第2位のボルボの販売台数に達しない位ですから、スカイアクティブを応用したエンジンを日本のトラックメーカーが開発することはコスト的に難しい。世界的にはベンツやボルボ、スカニアといった生産量の大きいメーカーには太刀打ちできないのではないかと思います。

□秋林路 エネルギー転換という意味では電気も考えなくてはなりません。電気はモーターを回して動力を得ますが、新幹線をはじめとする鉄道車両はモーターですから、電気だから力が弱いという事ではないと思います。ただ、乗用車もEV量産車が発売されて暫くたちます。シェアは伸びていませんが保有台数は徐々に増加しています。その背景には充電機など電気の供給の問題やバッテリー性能の問題などがあります。しかし、技術は高度化します。水素を使用する燃料電池自動車にも国は期待していますが、トラックのEV化はどのように見ているのですか。

■井 上 これも私見ですが全需が少ない国内トラックメーカーは開発コストの面で大変でだと思います。

□秋林路 ただ、大型4社で国内を賄う時代は終わっています。これからはTPPで国際市場がフリーになるし、ASEANの経済統合も現実のものになっています。こうなると過去のマーケット(国内)だけに目を向けていたのでは、世界戦略に置いてき堀を喰らうことになります。スウェーデンのような小さな国でも世界に冠たるボルボ、スカニアを輩出する例がありますから、日本だからダメとは言い切れないと思います。本誌の関係で昨年9月に開催したタイトラックショーでも、いすゞ自動車、三菱ふそう、日野自動車はASEANに大きな期待をもって出展しています。

■ 西  これまで大型4社と言われていた国内メーカーも、内2社は海外の論理で動かざるを得ない状況です。残り2社がこの先も個別にやるのか、それとも協力体制がより強くなっていくのか、ASEANの動きと並行して国内2社の動向が注目されます。ご存知の通りバスは既に生産が一本化(ジェイ・バス)されていますが、トラックもそういう方向もあるのかな、と思います。ただ、その時期については、暫く個々に努力して存在価値を高めて、しかる後に協力体制に移るのか、ここ2~3年は注目したいと思います。

□秋林路 近未来的には中国トラックメーカーの存在も注視しなければなりません。国内需要が大きいので開発スピードも早いし、既にIAAにも出展して欧州市場も窺っています。そういう動きの中で日本メーカーはどうするのか、という事ではないでしょうか。

■ 西  日野自動車の動きを見ていますと、大型では国内トップだけれども、小型は弱い。だから「トントントンヒノノ2トン…」とコマーシャルして、小型に力を入れています。これも小型に強いいすゞを意識した戦略だと思いますし、世界を見据えて、国内2社が協力関係に移行せざるを得なくなった時の力関係も考えているのではないかと思います。

水素供給用トラック…ザ・トラック

水素供給用トラック

どう進むのか、トラックの自動運転

□秋林路 環境のテーマがやや“国際化”に移行してしまいました。環境はエンジンと関係が深い訳ですが、安全は走る、曲がる、止まるといった操縦性や車体機能、更に道路などインフラとの関係もあります。
自動運転は既に大型車での走行実験も始まっていますが、センサーや位置情報の高度化とも深く関わってきます。この点はどのように見ておられますか。

■ 西  トラック産業では基本構造についての革新的な開発は少なくなっていますから、今後は“安全”が一番のキーワードになると思います。ただ、自動運転という世界では国内ユーザーはまだ関心の外だと思います。

□秋林路 自動運転は既に世田谷でタクシーのテスト運行が始まるようですから、技術的には成立していると思います。トラックで自動運転が俄かに始まるとは思えませんが“安全”では人間の判断ミスをカバーする可能性があります。理論的には車間を詰めた隊列走行も可能ですから、安全プラス輸送効率のアップも期待できます。ユーザーが関心を示すのは実用化のメドが立ってからかも知れませんが、メーカーは開発の段階にあるのではないでしょうか。

■井 上 そういう意味では海外のトラック展示会を見ても、内容はイノベーション(新しい車への革新)の対象がセフティ(安全性の追求)に移っているように感じます。

□秋林路 ボルボやベンツが日本のトラック市場に進出してきた時の記者会見で非常に印象的だったのは、商品説明で“安全”を第一に置いているという事でした。例えば、キャブデザインも衝突した際にドライバーへのダメージを最小限にする構造と形状であったり、ドアも横からの衝撃に強い構造にしてあるとか、ドライバーの安全が第一であることを強調していました。当時の日本車は“稼げるクルマ”がキャッチフレーズで、第一は軽量化であり、空力性能の向上で燃費効率向上といった事でした。“安全”については対人、対物が中心でしたので、外国車がドライバーの安全にもの凄く力を入れていることに驚いたのです。
現在の“安全”は当時よりも大きく変わって、事前情報で危険を回避する方向に進んでいるように思います。例えば、車両は自身が電波を出すし、歩行者の大半は携帯電話をもっているので、周りに電波を発信することは可能です。信号などインフラ情報の発信も簡単です。この見えない電波を個々の車両が受信しながら適正スピードで走行すれば交差点での出遭いがしらの衝突や飛び出し事故も激減するに違いありません。
ロボットは今、人工知能が人間の能力を超える段階に来ているので、ロボットの人間化が話題になっていますが、自動車もやや同じ方向を辿っているのではないかと思います。中でもトラックは走行する道路が限定的であったり、トラックターミナルなど物流施設もありますので、集中管理も容易です。国の方針が固まれば乗用車よりも先行出来るのではないかと思うのですが…。

“ 安全 ”に貢献する自動運転…ザ・トラック

“安全”に貢献する自動運転

■ 西  自動運転は乗用車でどんどん技術開発が進んでいる訳ですが、その中で何をトラックに取り込むべきか、その機能をユーザーが受け入れるのか否か、という事だと思います。トラックにも既に危険を回避する一定の機能は組み込まれていますが、ステアリングを自動で動かすレベルまで開発は進んでいるけれども、実用化はしていません。
先般本誌でも述べましたが、2020年には第二東名が開通します。その頃には小牧と厚木間でトラックの一定の自動運転が実用化するのではないかと見ています。
当初の第二東名構想では、中央分離帯寄りの車線に無線設備を埋設して、路車間で交信しながら隊列走行する計画になっていました。ところが、現在は車車間のセンサー機能を高めることによって、隊列走行できるのではないかという形に変わってきました。これが2020年に向かっての大きな動きではないかと思います。これもコストとの兼ね合いですが、一定限度のものであれば、国が補助金を出して普及促進を図ることになるのではないかと思います。そういう意味ではこの数年は注目に値すると思います。

□秋林路 当初の無線設備を道路に埋設する方式だと走行できる道路も限定されますが、衛星が発信する電波も活用するのであれば、第二東名に限らなくても良いという事になるのでしょうか。

■ 西  理論上はそういう事ですが、在来道路は色々な車両が使用しているし、障害物もあります。先ずは高規格道路で実用化になるのではないかと思います。ただ、その時までには安全に対する責任を誰が負うのか、法律を見直す必要が出てきます。

■井 上 “安全”という切り口ですが、視点を少し変えると、全く違う見方が出来ます。例えば事故を回避したいのなら、トラックを走らせなければ良い。日本は日中でも大型車が街中を走りますし、路上でも荷捌き駐車をしているトラックがあります。あるいは学童の列に車が突っ込んで死者が出る。技術によって危険を回避する前に、事故が起きない仕組みをつくることも大事なのではないかと思います。

□秋林路 それは都市計画にも関係する話ですね。例えばビルを作る時には地下に荷捌き場をつくる事を義務付けるとか、市街地の道路には一定の区間で荷捌きの出来る切り込みをつくるとか…。ロンドンの街中を歩くと、建物に看板はないし、タクシーもバスも街の景観に配慮した色や形になっています。これは国の文化レベルとも大きく関係します。

■井 上 元石原都知事は、ディーゼル車の排ガス規制を強行しましたが、PM 公害の削減に悩む北京で、ひとつの対策として車を走らせない例にあるように、都市の空気はキレイになります。そういう意味では、環境も安全も大局的に見た対策も求められていると思います。 私は以前、北海道で勤務したことがありますが、ドライバーさんが厳しい真冬の寒さの中、トラックの上で幌掛けの作業中に転落、怪我をする事故が頻繁に発生していました。一方、欧州では高所での作業は禁止されているので事故は起きない。つまり事故が起きない環境をつくることが出来れば事故は起きない訳です。

3軸トレーラー…ザ・トラック

3軸トレーラー

国内のトレーラは大幅に緩和された…ザ・トラック

国内のトレーラは大幅に緩和された

□秋林路 それは当然の話ですが、安全に寄与する技術を開発しなくても良いという事ではないですね。これは、ハードとソフトの関係ですから、どちらが欠けても良いというものではないと思います。

■井 上 日本の物づくり、特にトラックについては、軽自動車から集配用ライトバン、ワンボックス、2トン、3トン、4トン、6トン、8トン、10トン、10トン超のトラック、トレーラまで、それぞれのメーカーが沢山のバリエーションを生産しています。このような体系で輸送をしているのは、世界中で日本だけです。トラックに関して、日本車が良いと評価して買ってくれるのであれば良いのですが、今や世界の顧客は誰も見向きもしません。確かに、このような物づくりをすれば全量が増えて国のGDPは上がるかも知れませんが、環境には悪いし安全も確保できません。少量多品種なので一台当たりのコストは高いものになってしまいます。では、海外の中古トラックが日本に入ってこれるか、それも法の壁があってムリ。世界の常識に目を転じれば、日本のユーザーは海外の優れた中古車両も購入することも出来ないし、選択も出来ません。一番可愛そうなのは日本のトラックユーザーだと思います。

□秋林路 私がユーザー取材の中で聞く声も、高いものを買わされているという意識が強いですね。メーカーには国が要求する基準を満たすためには、これだけのコストがかかるという理屈がありますが、世界の趨勢からすれば可笑しいという事ですね。
ご存じの通り、日本と韓国と中国は国際物流の点では一貫輸送で合意しているし、新任の藤井自動車局長(国交省)も私との対談の中でその重要性を強調しています。日本も国際間の一貫輸送が活発になれば、日本の常識が世界の常識と同じでないことが分かってくるのではないかと思います。

■ 西  現状で申しますと、日本の大型トラックは国際競争力に乏しいと言わざるを得ません。また、今後も日野といすゞが急速に世界市場で飛躍的に地位を向上させられるとは思えません。ただ、中・小型車については欧州に強力メーカーが見当たらないので、競争力を発揮する余地は大いにあると思います。

大型トラック世界 2位のボルボグループの旗艦車FH型…ザ・トラック

大型トラック世界 2位のボルボグループの旗艦車FH型

顧客に“感謝”を伝える欧州の展示会

□秋林路 国際市場にどう立ち向かうのかという事ですが、現状認識だけで将来を決めつけるのは間違いだと思うし、ASEANを始めアジアのトラック市場も変化してくると思います。その市場に対してマーケットインすることが出来れば、日本の大型トラックも国際競争力を発揮する時代が来るのではないでしょうか。
今年10月に開催する『2016NIPPONトラックショー』も海外から多くのバイヤーが来れば、国内に刺激を与えることになるし、それがこれからのトラックショーの役割ではないかと思っています。

■井 上 欧州のトラック展示会を見て感じるのは、イノベーションを発表することよりも、顧客のお持てなしに重点を置いているように感じます。乗用車に比較してトラックの技術やデザインはそんなに早く変わるものではありませんから、毎年新車やモデルチェンジを発表できません。しかし、ユーザーは大切にしなければなりません。だから、交通費を使ってわざわざ展示会に足を運んでくれるユーザーに日頃の“感謝”のお礼にワインやスナックを振る舞っておもてなしをします。その点は日本の展示会と大きく異なるように感じます。

□秋林路 トラックショーを初めて30余年になりますが、近年展示内容がマンネリ化しているのはそういう事だと思います。今年の『2016NIPPONトラックショー』はその殻を破る為に、先ずユーザーに問題提起して、来場を促している訳ですが、果たしてトラックメーカーがその期待に応えることが出来るのか否か、約半年後には回答が出ると思います。

■井 上 日本のトラックユーザーが可愛そうだと申し上げたのは、フレキシヒセリティ(柔軟性)あるいはプラティカル(実際的)という事が法規制も含めてトラック輸送にあっても良いのではないかと思うからです。例えば、お金のないユーザーは中古車を買いたい。欧州はどこの国でも中古トレーラを幾らでも買える。ところが日本の法規は車幅を2.5mに制限しているので欧州の中古トレーラが欲しくても持ち込めません。日本が輸送面で国際競争力をつけようとするなら、法規的にも世界に合わさないと同じ土俵には立てないと思います。

□秋林路 それは、これまで日本の保護政策があったからでしょう。大型トラックの規制緩和も国際物流で海上コンテナが入ってくるから否応なしに変えたのであって、積極的な改正ではないですよね。これは黒船と同じなんだけど、TPPに代表されるように世界は経済活動の一元化に向かって動いている訳ですから、トラック基準でも日本だけ鎖国をやっている訳にはいかなくなる。その時代変化に対応出来るか否かで勝敗も決まってくるように思います。

■井 上 普通、開国すれば市場も開放されて、文明・文化が流入して国際化が進む。ところが日本のトラックは逆に鎖国に向かってる感じがします。日本のトラックは世界の誰も買ってくれないし、海外からは日本に入ってもこれない。つまり日本のトラックは世界から相手にされない国になっている。これは鎖国と同じです。

トラックショーの様子…ザ・トラック

(左)ユーザーに日頃の感謝を示す欧州の展示会
(中央)大型トラック初の全軸独立懸架サスペンション(VOLVO FH用)
(右)スカニアのLNG大型トラクタ

□秋林路 その点は、官主導でやる欧州と、民の様子を見ながら対応する日本との違いじゃないですかね。例えば、バンボデーの後部を絞り込むと空力特性が高まるので、省エネで環境に優しい効果がありますが、法律で全長が制限されているので有効荷台長を短くしなければならない。EUはこういうトラックを普及させたいので、国が全長を緩和しています。日本だと民に任せきりですから、国が率先して全長緩和なんかしないですよね。日本の常識が世界の常識と大きく異なっているので、鎖国状態になってしまうのではないでしょうか。

■井 上 グローバル化というけどその点はお先真っ暗な国に思います。

□秋林路 トラックに関する限り、悪しき“認可行政”が長かったので、政治や官が率先して改革するやり方が定着していないし、“お上ごもっとも”で不平不満の声が出ない国民性もあるのではないかと思います。

■井 上 民はあくまでも利益追求ですから、国際社会の中で日本のポジションを考えれば、国が率先して世界基準に合わせるべきでしょう。例えば、日本は車両の転倒角度が決められていますが、転倒するのはスピードとハンドル操作の関係ですから、ドライバーの問題です。静止しているトラックの転倒角を計っても意味ない。世界中こんな法律はありません。

■ 西  日本と欧州の違いという事ですが、EUは最低必要な事は法律で決めるけれども後は民の判断に委ねる考え方が強いのではないかと思います。

■井 上 戦後間もなくの法律を今もって運用しているのも可笑しいし、技術は時代と共に進化するので、臨機応変に対応する面があっても良いと思います。例えば、フェリー航走のトレーラは年間5000㎞位しか走らないのに、車検は一般のトラックと同じに義務づけられています。そういう点も臨機応変にやれば良いと思います。

□秋林路 やや悲観論が先行していますが、現状を批判するだけでは前進する力にはなりません。時代は進化している訳ですから、それに適合して進むべき方向を模索するべきではないでしょうか。

■井 上 欧州のトラック展示会を見てもそんなに新しい技術は感じません。しかし、来場したユーザーにはトラックメーカーのトップ自らが話しを聞き親切に応対しています。最初の頃はやや違和感を覚えましたが、それが欧州のメーカーからユーザーへのお持てなしです。日本でも接待費の費用対効果を含め、どのようにお客様に感謝の気持ちを伝えるのが効率的、効果的なのか考える時期と思います。

□秋林路 従来は全国に綿密な販売ネットワークがあって、個別に営業マンが訪ねて顧客対応していたので、コミュニケーションは保たれていました。ところが、最近はその販売体制を大きく変えたので、ユーザーとメーカーのパイプが切れかかっている。この点は多くのユーザーが口にしています。メーカーの中には「今更大型トラックを宣伝する必要は無い。」と言い切る担当者も居ますが、正直日本のトラックユーザーはメーカーに粗末に扱われていると思いますね。

■井 上 欧州は日本の営業マンのように夜の食事の接待などの交際費の使い方は出来ません。それなら展示会の時にはお客様や運転手のかたが交通費を使って来てくれているのだから、奥さんも子供さんも楽しく過ごせるようにお持てなしする。それが欧州の感謝を伝える姿じゃないかと思います。

□秋林路 最近、日本のユーザーはメーカーに対して不平不満が蓄積していることは間違いないですね。

■井 上 乗用車は既にインターネット販売する時代です。トラックも標準化してカタログ販売に移行しようとしている。じゃメーカーは何時顧客に感謝の気持ちを伝えるのか。その点、欧州の展示会は大きな役割を果たしていると思います。

並ぶトラック…ザ・トラック

ドライバー不足への対応

□秋林路 そういう意味でも日本のトラックショーはその役割を果たしていかなければならないと痛感しています。
ところで、国内トラックユーザーが今、最大の課題にしているのがドライバー不足です。これは少子高齢化に加えて業界自身が抱える問題があります。その第一が給料などの待遇面ですが、仕事の内容の割には優遇されていません。また、自動車を使う仕事に若者が魅力を感じなくなっている。いわゆる自動車離れですね。
既に昨年度は14万人のドライバーが不足する計算でしたが、実際にはトラックは動いています。この点を追及すると運送事業者は「労働時間、スピードなど制限内で走っていたら荷主の要求には応えられない。北海道の生鮮食品を東京の中央卸売市場のセリに間に合うように運ぶには違反してでも夜通し走り続けなければ間に合わない。イヤと言えば切られてしまう。ドライバー不足は違法でカバーしているのが実態だ。」と言います。これが更に進むと、その限界を超えてしまうので、現実問題として動かせなくなるトラックが出てきます。この問題にトラックメーカー、車体メーカーはどのように向き合えば良いと思いますか。

■井 上 トラックも市場変化に合わせて変わらなければならないと思います。例えば女性労働力に期待する時代ですから、女性を対象にしたトラックづくりを目指しているかというと、そんなニュースは殆ど伝わってこない。これはトラックメーカーがユーザーニーズをしっかりと受け止めていないという事じゃないでしょうか。

■ 西  日野自動車は女性ドライバーを活用する観点からステアリングホィールの太さとかシートなども研究しているようです。ただ別のメーカーであったようにただ外観をピンク色にするという事ではいけないと思いますね。

□秋林路 トラック運送会社の中にも女性オーナーの企業もあるのですが、基本的に女性の職場としての適正化が図られていないといいます。例えばトイレの問題にしても大きなトラックを横付けできる公共トイレが充分ある訳ではないし、ドライブインで仮眠しようとしても女性用の個室やシャワールームが無いとか…そういう状況で女性に働けと言われてもムリだといいます。では、トラックの中にそのような設備が出来ないかとか、子供さんを育てている女性ではムリなのかとか、トラックメーカーとしてもっと踏み込んだ研究をして欲しいと思います。

ニッサンと共同開発のルノーブランドの小型トラック…ザ・トラック

ニッサンと共同開発のルノーブランドの小型トラック

■ 西  そういう意味では女性を対象にしたトラックの開発は対象領域として早く成果を示すべきではないと思います。

□秋林路 ドライバー不足では高齢者を延長雇用する声もありますが、労働時間の問題もあります。

■ 西  以前、欧州でスカニアとボルボのディーラーを訪ねた時に従業員の勤務体制について伺ったのですが、そこは普段の日でも夜勤で顧客対応しているけれども、土日は工場を閉めるという事でした。つまり、サービス工場のエンジニアの働き方なんですが、週末は家族で過ごせるようにしているけれども、普段は夜間でもユーザーの要求に応える体制にしているという事です。日本は休日でも工場を稼働させていますが、ドライバーの勤務体制とサービス工場の勤務体制をマッチングさせることも考えるべきではないでしょうか。

■井 上 ドライバー不足だから女性や高齢者を使う、その為に必要なクルマ作りは当然進めなければいけませんが、その前にドライバー不足にならないようにドライバーの一回当たりの輸送量を増やして、輸送車両数を減らす。さらにドライバーが魅力を感じて集まってくる業界にしない限り、何時まで経ってもドライバー不足は続くのではと危惧します。

□秋林路 その魅力ある業界にするためにはお金が必要です。ところが物流二法で規制緩和をしてから、運送事業者は約4万から6万3000社に増えて、運賃の叩き合いで業界は混沌としているんです。荷主側から運賃を上げるとは言いませんから、運送業界から働きかけるしかないのですが、値上げを要求すれば切られる恐れがあるので、切り出す事が出来ない。そういう仕組みが流通構造として出来上がっているので魅力ある業界になれないんです。

■井 上 魅力ある業界というのはお金だけではなくて、働き方の問題もあります。今年の正月は他のデパートが福袋を用意して客集めしているのに、伊勢丹・三越グループは店を閉めていました。この見識は素晴らしいと思います。コンビニは365日24時間営業していますが、その為に物流業者も休む訳にいかない。確かに消費者には便利ですが、休むときには全てが休むようにしないと弱者への負担が大きくなります。

■ 西  ライバル関係にある同業企業が共同配送を導入する動きが出て来ました。車の積載効率が向上し、ドライバーの生産性が高まりますから待遇改善の源資も生まれる筈です。仕組みを変えてドライバー不足に対応する事例ですね。

□秋林路 我々報道関係では新聞休刊日というのがあります。新聞社が、新聞販売店の慰労・休暇を目的に新聞の発行を行わない日をあらかじめ定めているのですが、確かに国が休日と定めている日は一斉に休んだ方がいいですね。ただ、そういう体制にしているなら、それを支える人や業界がちゃんと報われるようにしなければいけないと思います。

ヨーロッパで静かに販路を広げているキャンター車…ザ・トラック

ヨーロッパで静かに販路を広げているキャンター車

■井 上 お金だけじゃなくて、働きたくなくても働かざるを得ない人達がいる。運送業界はそういう事になっているからドライバーが集まって来ないのだと思います。

□秋林路 まだ3Kのイメージが色濃く残っていますからね。そういう働き方を変えるために、乗り換え方式(目的地から来るトラックに途中でドライバーが乗り換えて、ドライバーはその日の内に出発地に戻るがトラックは目的地に届く方式)とか、トレーラのシステム運用などもあります。そういう事も含めて車両メーカーはユーザーの変化に対応するべきだと思います。この点を花見台自動車の能條社長は声高に主張していますが、大手のトレーラメーカーからは殆ど声が上がりません。トレーラシステムでは有効なダブルストレーラも過去に10年間無事故でテスト運行したのに、認可されないままになっています。ユーザーは国が認めていない車両は使えないものとして諦めていますが、メーカーにとっては商品ですから、国に対して使えるように働きかけるべきです。

■井 上 確かにそういう事も大事だと思いますが、社会のあり方として、休むときには休む。ヨーロッパの先進国では、生鮮食品のトラックを除いて日曜日は一台もトラックは走っていません。これは、日曜日はドライバーも休むという事を社会が認めているからです。そのようにしないとトラック運送は魅力ある職種になりません。

□秋林路 それは国の文化レベルを上げることにも通じるので、政治の役割も大きいと思いますが、運送は相手(荷主)のある話なので、流通構造を変えない限り改善は難しいでしょう。確かにドライバー不足は運転手に負担がかかっている点が大きいと思いますが、その前に運送業界が弱者の立場に置かれている事が問題です。

■井 上 要は便利さをキリなく追求するから、一方でしわ寄せがおきる。ワークライフバランスを考えればお金を儲ければ良い、便利なら良い、というだけじゃなくて我慢することも大切と思います。

トラックショーの様子2…ザ・トラック

2020年以降は国際社会への貢献がカギ

アメリカの標準的大型セミトトラクタ+トレーラ

アメリカの標準的大型セミトトラクタ+トレーラ

□秋林路 このドライバー不足は俄には解決しないので、今後色々な問題が出てくると思いますので注視していきたいと思います。
最後に、近未来について伺いますが、近年トラックメーカー各社は生産が追いつかない状況で、オリンピックの2020年までは好調に推移するのではないか。しかし、その先は予測がつかないと言われています。その点、どのように見ていますか。

■ 西  確かに2020年以降は予測がつかないと皆さん言ってますが、派手な公共投資による需要は大きく減少するでしょうが、都市の質を高める潜在需要は沢山あります。電線の地中化で電柱をなくするのも具体化の方向のようですね。ただ、将来的には人口減少に向かう国なので、国内需要が大きく伸びることは考えられない。漠然とした言い方になるけれども、国際的な市場に活路を求めて進むしか方法はないのではないかと思います。

□秋林路 私はASEAN統合がどう動いていくのか注目したいと思っています。ASEANは通貨まで統一することは難しいと思いますが、関税はフリーになって流通は活性化すると思います。既に日本のトラック・車体企業もタイなどに進出していますが、地域が発展するプロセスでは日本が貢献する分野もあるのではないかと思います。

■井 上 いろいろ悲観的な発言をしましたが、経済活動がある限りトラック運送は無くなることはありません。そういう意味ではトラック産業界は恵まれた業界だと言える訳です。ただ全体がシュリンク(縮小)する時代ですから、運送業界も新商品、新規顧客、新市場を開発して行くべきだと思います。特にTPPで関税障壁が取り払われた時に、輸送がどのように変わるのか、これも大きな課題だと思います。ただ明らかな事は、近隣諸国に負けない輸送システムを構築しないと、どこの国にも輸送コストで優る、勝てる国にはなれないと思います。

□秋林路 2020年以降については、高齢化した団塊世代がお荷物になって、少子化世代が日本を支える時代ですから、大局的には困難な時代だと思いますが、人口が減少する時代だから悲観的に考える必要はないと思います。トラック産業でお手本になるのはスウェーデンではないかと思います。私はボルボが日本に進出してくる時に、スウェーデン国王のスピーチを聞きましたが、あの国は国際社会に打って出るために国王自らトップセールスをしているのだと思いました。それは企業の海外進出に国運がかかっているからだと思いました。中東やEUの混乱、影響力の大きくなる中国、ロシアの再強国化、北朝鮮の制圧など、2020年以降は様々な問題が勃発して国際バランスが崩れる可能性があるので、日本も米国の傘下に甘んじる訳にはいかなくなる。憲法改正論議が高まりつつあるのも、その前兆ではないかと思いますが、アジアでリーダーシップのとれる国になる為には、抜本的な意識改革が必要だし、そのチャンスは必ず巡ってくると思います。

■井 上 要は改革“INNOVATION”を起こさないと何も変わりません。それを誰が何時やるのか、2020年以降の政権にかかってくると思います。

■ 西  最近、ヨーロッパ発でインダストリー4.0とか言われています。トランスポーテンション4.0があるのか分かりませんが、情報管理とトラックの取り回しと言いますか、そういう物の噛み合わせがより高度に進めば、サービスレベルを上げながらオペレーションできるので、働く人にもゆとりが出る。そういう仕組みが出来ることが望ましいですね。

□秋林路 そうですね。何時の時代もバラ色の未来が待っているかどうかは誰にも分からないし、産業革命以降でも世界は何度も大混乱に陥っています。人類はそういう歴史を繰り返して今日があるのだけど、宇宙進出であったり、コンピュータなど情報の高度化であったり、近代の技術も大きく変わっています。 こういう時代は過去になかったとか、人類が始めて経験する社会だとか、偉い先生方も色々な表現をするけれども、未来は誰もが始めての経験ですから、それをより確かな物にするために過去に学ぶ、温故知新が必要なのだと思います。 本誌の「日新」には、昨日と今日が同じであってはいけない、という戒めの意味があるのですが、今秋開催する『2016NIPPONトラックショー』も過去30余年開催した内容と同じであってはいけないと思っていますので、トラック運送そしてトラック産業の未来を切り拓く、新しい価値を追求したいと思っています。 本日は新年早々貴重なお話を有り難う御座いました。

33フィートフルトレーラ…ザ・トラック

2016年に入ってからアメリカで提唱されだした33フィートバントラック+33フィートフルトレーラ、または33フィートセミトレーラ+33フィートフルトレーラ(ダブルス)。議員立法で延長23m程度の連結車が走り出すかもしれない。

トラックユーザーNews…TheTRUCK 2016年2月号

北海道新幹線青函区間時速200kmに向け時間帯区分で貨物と共用走行へ。

中国国際商用車展覧会を開催(武漢)

テーマは『省エネ創新、未来を導く』トラック関係600社余りが出展、来場者は21,723人に。

話題のニュートラック新製品情報・新情報…TheTRUCK 2016年2月号

長距離輸送が可能な大型トラック「ギガCNG車」を発表 CNG車ならではの環境性能で環境負荷低減に貢献など