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トラックのアウトリガーとは?役割・種類・X型H型の違い・ユニック基礎知識

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アウトリガーは、車両の側面から地面に向けて張り出すことで、車両の重心を広げ、タイヤだけでは支えきれない大きな荷重を分散させる装置です。
本記事では、トラックアウトリガーの定義や役割、種類からユニック車についても詳しく解説していきます。

トラックのアウトリガーとは?

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トラックのアウトリガーとは、クレーンが搭載されたトラック(ユニック車)の左右に必ず設置されている装置のことです。クレーンで重たトラックのアウトリガーとは、クレーンが搭載されたトラック(ユニック車)の左右に必ず設置されている車体を安定させる装置です。アウトリガーは、車体の側面から張り出し、地面に接地することで、トラックの安定性を向上させます。これにより、タイヤへの負担も軽減され、安全な作業が可能になります。

アウトリガーの役割

アウトリガーの主な役割は、クレーン作業における車体の転倒防止です。クレーンが重い荷物を吊り上げる際、その荷重により車体が不安定になり、横転やタイヤのパンクを引き起こす可能性があります。そこで、アウトリガーは油圧の力で車体から左右に張り出し、地面に接地することで、車両の安定した足場を確保します。

これにより、車両の重心が広がり、荷重が分散されるため、安全かつ効率的な作業が可能となります。労働安全衛生法においても、クレーン作業時にはアウトリガーの使用が義務付けられています。

アウトリガーの構造

トラックのアウトリガー 24061403
アウトリガーは主に2つの油圧シリンダーで構成されています。横方向に伸びる「張り出しシリンダー」と、垂直に伸びて地面に固定する「油圧シリンダー」です。張り出しシリンダーを横に張り出した後に油圧シリンダーを地面に接地させることで、車両の安定性を確保します。
アウトリガーの設置位置は、その種類によって異なりますが、主にクレーンの横に搭載されるタイプと、クレーンの横に加え、後方の荷台にも搭載されるタイプの2パターンがあります。

トラックのアウトリガーは3種類

トラックのアウトリガー 24061404
トラックのアウトリガーには、次の3種類があります。

種類 特徴
1.リアアウトリガー アウトリガーが荷台の前方と後方に搭載されたタイプ
2.差し違いアウトリガー 張り出しシリンダーが長く、横方向に大きく張り出せるタイプ
3.ハイアウトリガー 縦方向に大きく伸ばせるタイプ

それぞれのアウトリガーの特徴を解説します。

1.リアアウトリガー

リアアウトリガー
(引用元:古河ユニック株式会社)

リアアウトリガーは、トラックの荷台前方と後方にアウトリガーが搭載されるタイプです。他の種類は、荷台の前方のみにアウトリガーが搭載され、地面を固定できるのは2箇所です。しかし、リアアウトリガーは前後4箇所を地面に固定できる点が大きな特徴です。
そのため、他のタイプよりも高い安定性を確保でき、特にクレーン車による高所作業現場で多く使用されています。

2.差し違いアウトリガー

差し違いアウトリガー
差し違いアウトリガーは、左右のアウトリガーが前後にずれて格納されるタイプです。アウトリガー差し違いタイプの特徴は、張り出しシリンダーが長い点にあります。張り出しシリンダーを長く張り出せることで、車体の安定性が向上するというメリットがあります。特に、不安定な場所での作業や、より重い荷物を吊り上げる際に、その安定性が最大限に活かされます。

3.ハイアウトリガー

ハイアウトリガー
(引用元:古河ユニック株式会社)
ハイアウトリガーは、アウトリガーが縦方向に長く伸びるタイプで、荷台に車両を積んで運搬する際に特に活用されます。ハイアウトリガーの特徴は、車体を大きく傾けて荷台が地面に隣接するようにすることで、重い車や重機などをスムーズに荷台へ載せられる点です。これにより、積載作業の効率と安全性が高まるメリットがあります。

アウトリガーX型H型の特徴・違い

クレーン車に用いられるアウトリガーには、X型とH型という2つのタイプにも分類できます。それぞれの違いを下記の表にまとめました。

X型アウトリガー H型アウトリガー
特徴 接地面積が広く、大型作業者に多いタイプ 張り出し幅の調整がしやすく、狭い現場や限られたスペースに用いられる
脚が出る方向 車体下部から斜め方向 車体に対して水平方向
設置場所 足場や障害物の下をくぐらせて設置できる 配管や縁石、低木などをまたいで設置できる

それぞれの特徴や違いについて解説します。

X型アウトリガーの特徴

X型アウトリガーは、アウトリガーの脚が車体から斜め前方にX字型に伸びるタイプを指します。このX字型に張り出す構造により、接地面積が広くなるため、クレーン車やトラックなど、大型の特殊車両において優れた安定性を実現しています。

また、車体下部から斜め方向に張り出す構造となっているため、設置場所によっては幅を取りすぎずに安定性を確保しやすい点が特徴です。また、足場や障害物の下をくぐらせて設置できるため、狭いスペースでも柔軟に対応できるメリットがあります。

H型アウトリガーの特徴

H型アウトリガーは、アウトリガーを張り出した際にH型を形成するクレーン車やトラックに搭載されるアウトリガーの種類です。H型アウトリガーは、アウトリガーを水平に張り出し、その下にあるジャッキを垂直に伸ばして接地させます。そのため、張り出し幅の調整がしやすく、安定性の高い設置が可能です。

また、配管や縁石、低木などをまたいで設置できることから、現場の状況に合わせた柔軟な対応ができる点も魅力です。
さらに、操作も比較的簡単で、設置に時間がかからないというメリットもあります。

アウトリガーの基本的な操作方法

アウトリガーの操作方法は、トラックによって若干の違いはありますが、基本的には以下の操作方法です。

1.PTOを入れる
2.アウトリガーを左右に伸ばす
3.アウトリガーベースを置く
4.アウトリガーを縦に伸ばす

各手順の詳細を解説します。

1.PTOを入れる

アウトリガーを使用する際、まずPTO(Power Take Off)を入れることが必要です。PTOとは、トラックのエンジンの動力を各種装置に分岐させるための機構を指します。アウトリガーの操作には動力の供給が必要であり、そのためにはPTOを最初に入れる必要があります。

PTOを入れるには、クラッチペダルを奥まで踏み込みながら、運転席にあるPTOスイッチを押します。PTOが入ると「カチ」という小さな音がするため、耳からも正常に作動したことが確認可能です。
PTOを作動させると、エンジンの横にあるシャフトが回り始め、それによって作動油ポンプが動きます。ポンプが動くことで油圧がアウトリガーに送られ、操作できるようになります。

2.アウトリガーを左右に伸ばす

アウトリガーは、スイッチを操作して左右に最大限まで伸ばすことが原則です。最大限に張り出すことで、車体の安定性が高まり、クレーン作業中の転倒リスクを軽減できます。アウトリガーを片側だけを伸ばすと車体が不安定になるため、両側を均等に伸ばすことが重要です。
ただし、作業スペースの制約により最大限に伸ばせない場合は、その張り出し幅に応じた荷重以下で作業をおこなう必要があります。

また、アウトリガーを左右に伸ばす際は、周囲に人や障害物がないか必ず確認し、安全を確保してから操作しましょう。

3.アウトトリガーベース(敷板)を置く

アウトリガーが地面と接する位置にアウトリガーベース(敷板)を置きます。アウトリガーベースは、地面の保護、車両の高さ調整、そして作業時の安定性向上という三つの役割を果たします。
また、クレーンによる荷重が一点に集中するのを防ぎ、地盤の沈下や損傷を抑制する効果もあります。

アウトリガーベースを設置する際は、アウトリガーがベースからはみ出さないように注意し、アウトリガーの底がアウトリガーベースの中央に来るように調整することが重要です。これにより、荷重が均等に分散され、作業の安全性が確保されます。
また、軟弱な地盤や傾斜地での作業では、通常より広いアウトリガーベースを使用したり、敷鉄板を併用したりして地盤を補強する必要があります。そのため、アウトリガーベースを平らで安定した場所で使用することが不可欠です。

4.アウトリガーを縦に伸ばす

アウトリガーを縦方向に伸ばす際は、車体が持ち上がり、タイヤの前輪が大きく浮き上がらない程度までさらに伸ばしてください。
前輪が浮き上がってしまうと、アウトリガーを支点に車体全体が不安定な状態となり、クレーン作業中に重心が変わった際に、シーソーのようにバランスを崩す危険性があります。反対に、アウトリガーの伸ばし方が不十分だと、荷台の荷物を降ろした後にアウトリガーが地面から浮き上がり、安定性が損なわれるため注意が必要です。

トラックのアウトリガーを設置する際の注意点

トラックのアウトリガーを設置する際は以下の5つの点に注意してください。

1.地面が不安定な時は敷板などで補強する
2.アウトリガーは左右方向に最大まで引き出す
3.坂道の場合は重心を考えて作業する
4.周囲に人がいないかチェックする
5.必要な資格・免許があるかを確認する

それぞれの注意点について解説します。

1.地面が不安定な時は敷板などで補強する

舗装されていない地面にアウトリガーを使用する際は、車体が不安定になるのを防ぐため、敷板などを用いて地面を補強することが重要です。
特に、柔らかい地面ではアウトリガーが沈み込みやすく、車が傾く原因となるため、重大な事故につながる危険性があります。
そのため、角材や鉄板のような強度のある敷板をアウトリガーベースの下に敷くことで、地面が不安定な状況でもしっかりとアウトリガーが支えられ、安全に作業を進められます。

2.アウトリガーは左右方向に最大まで引き出す

アウトリガーを横に張り出すとき、最大まで引き出すようにしましょう。張り出しが短いと車体を安定させられないため、荷物を吊り上げた時にトラックが横転するリスクにつながります。

狭い道路でアウトリガーを使用する際は、できるだけ道路の側面から離して、張り出せる距離を確保しましょう。

3.坂道の場合は重心を考えて作業する

坂道での作業は、車両の重心が偏りやすく非常に危険です。まず、車両を停める際は必ず前下がりの状態で駐車し、駐車ブレーキをしっかりかけたうえで、輪止めを坂の下側のタイヤに確実に設置してください。これにより、万が一フットブレーキを離しても車両が動き出すのを防げます。

作業は、基本的に坂の下方向に向けて楕円状の範囲でおこないましょう。上り坂に向かってブームを操作したり、前方で吊り上げたりすると、車両が前に傾いて倒れるおそれがあります。安全のためにもブームは後方に向けて使用してください。
また、アウトリガーを設置する際は、左右の地面の高さに差があることが多いため、必要に応じて角材などを敷いて車体が水平になるよう調整します。車両全体のバランスと安定性を常に意識しながら、安全第一で作業をおこないましょう。

4.周囲に人がいないかチェックする

アウトリガーを展開する際は、必ず周囲の安全確認をおこなうことが重要です。アウトリガーは車両の左右に大きく張り出すため、操作前に人が近くにいないかをしっかり確認しましょう。特に狭い現場では、気付かずにジャッキの可動範囲に人が入り込んでしまい、挟まれる事故が発生する可能性があります。

操作者以外が作業エリアに立ち入っていないか、十分に距離が取られているかを目視で確認し、安全が確保された状態で操作を始めるようにしてください。また、障害物の有無もチェックし、アウトリガーの正しい設置が妨げられないように注意が必要です。

さらに、アウトリガー設置前にクレーンのブームを動かすと、車両がバランスを崩して転倒する恐れがあるため、順序を守って慎重に作業を進めましょう。安全確認を怠らず、事故を未然に防ぐ意識が大切です。

5.必要な資格・免許があるかを確認する

ユニック車を操作するとき、事前に講習を受けたり、免許を取得したりする必要があります。必要な講習や免許は、吊り上げる荷物の重量によって異なります。
重量ごとに、操作に必要な条件をまとめました。参考にしてください。

荷物の重量 講習 免許
0.5t~1t未満 小型移動式クレーンの特別教育
1t以上5t未満 小型移動式クレーン運転技能講習
玉掛け技能講習
5t以上 移動式クレーン運転士免許

アウトリガーがあるユニック車を紹介

アウトリガーがあるユニック車
(引用元:株式会社タダノ)
クレーンとアウトリガーが搭載されたトラックは、総称して「ユニック車」と呼ばれています。ここでは、ユニック車の種類や特徴を紹介します。

ユニック車の種類

ユニック車は、主に次の3種類があります。

1.キャブバック型
2.ハイアウトリガー型
3.荷台内架装型

それぞれの画像や特徴を下記にまとめました。

キャブバック型

キャブバック型
(引用元:古河ユニック株式会社)

特徴 ・一般的なユニック車で、レッカーにも使用できる
・ギャブ(運転席)と荷台の間にクレーンが搭載されている

ハイアウトリガー型

ハイアウトリガー型
(引用元:古河ユニック株式会社)

特徴 ・アウトリガーを使って車体を持ち上げ、安定させた状態で作業をおこなえる
・ユンボなど小型の建設機械を積載したい時に活用される

荷台内架装型

荷台内架装型
(引用元:古河ユニック株式会社)

特徴 ・荷台の上にクレーンが搭載されている
・車両総重量5~8トンの小型トラック
・小回りが利くため、住宅が見周した市街地等の狭小地現場で活用される

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トラックのアウトリガーについてよくある質問

アウトリガーはクレーン車や高所作業車にとって重要な安全装置であり、使用時には様々な疑問が生じることもあります。ここでは、アウトリガーの後付けに関する質問や、後付けの際にPTOが必要かどうかといった、よくあるご質問にお答えします。

トラックのアウトリガーは後付け可能?

トラックのアウトリガーは、クレーンの有無にかかわらず後付けが可能です。既設のクレーンにアウトリガーを追加したり、既存のアウトリガーを新しいものに交換したりするケースもあります。
後付けの際には、車両の構造や積載量、作業内容に応じた適切なタイプのアウトリガーを選定することが重要です。
また、後付け作業には専門的な知識と技術が必要なため、必ず専門業者に依頼し、安全基準を満たした状態で取り付けることが義務付けられています。

アウトリガーの後付けはPTOが必要?

トラックにアウトリガーを後付けする際には、PTO(Power Take Off)の設置が必須です。PTOはトラックのエンジン動力を外部装置に供給するための装置であり、これがないとアウトリガーやクレーンが作動しません。
現在PTOが搭載されていないトラックの場合、まず自動車メーカーに依頼してPTOを増設します。その後、クレーン車やレッカーの後付けを専門とするメーカーに依頼し、アウトリガーを後付けすることで、安全な作業が可能になります。
アウトリガーには、アウトリガーベースやアウトリガーの格納ボックスなどさまざまな関連商品がありますが、これらの関連商品はご自身で後付けしたり交換したりすることも可能です。

ユニック車がアウトリガーを出すときにタイヤを接地させるのはなぜ?

ユニック車がアウトリガーを使用する際には、一般的にタイヤをわずかに接地する場合があります。これは、車体の安定性を確保し、タイヤへの過度な負担を避けるための措置です。タイヤは柔軟な素材で構成されているため、重い荷重がかかると変形する可能性があります。アウトリガーを適切に展開し、タイヤをわずかに接地させることで、車両の重心がアウトリガーに適切に分散され、車体全体の安定性が維持されます。これにより、安全なクレーン作業の実施に寄与します。

アウトリガーがあるトラックの代表例は?

ユニック車と呼ばれる、アウトリガーのあるトラックの代表例は、次の2つです。
■タダノ:カーゴクレーン
■古河ユニック:ユニッククレーン

まとめ

トラックのアウトリガー 24061409
アウトリガーは、ユニック車を安全に操作するために不可欠な装置です。クレーンを搭載したトラックに設置され、クレーン使用時の転倒を防ぐ役割を担っています。正しい操作方法と注意点を理解し、アウトリガーの役割を最大限に活かすことで、事故を未然に防ぎ安全な作業環境を確保できます。

  • アウトリガーは、車両の側面から地面に向けて張り出すことで、車両の重心を広げ、タイヤだけでは支えきれない大きな荷重を分散させる装置
  • アウトリガーには「リアアウトリガー」「差し違いアウトリガー」「ハイアウトリガー」の3種類がある
  • アウトリガーは、使用する手順を守り、地面の状況に応じた敷板を使用するなど、適切な設置をおこなうことが重要

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