1. 中古トラック販売のトラック流通センター
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  3. 【対談】小林幹愛 茨城県トラック協会 会長
  4. 【対談】小林幹愛 茨城県トラック協会 会長

    TheTRUCK2015年9月号18
    関東地方の北東部に位置する茨城県は、もとの常陸国全域と下総国北部にあたる。
    県の人口は約300万人で静岡に次いで全国第11位。政令指定都市を持たない県
    では最も人口が多いが30万人以上の都市はない。
    県北部は日立市・ひたちなか市で工業化が進むほか、太平洋や八溝山地のある緑
    豊かな地域を形成している。県中央部は水戸市に県庁が置かれ、小美玉市に茨城
    空港がある。県東部の鹿嶋市・神栖市では鹿島臨海工業地帯を形成して工業化が
    進み、県西部は関東平野の中央部にあたり、農業を中心とした内陸の地域となって
    いる。県南部は筑波研究学園都市や首都圏新都市鉄道つくばエクスプレスの整備で
    東京特別区のベッドタウンとしての開発が進められた地域である。
    県北部で人口が減少し、南部で人口が増加傾向にあるので、地域格差を解消する
    ため、2006年から5ヶ年計画で、鹿行・県南・県西の各地域を「南部広域連携圏」
    とし、県北山間・県北臨海・県央の各地域を「北部広域連携圏」に分けて施策を展
    開している。「南部圏」は、南関東との更なる連携を強める交通インフラに重点を置
    いた地域造り、「北部圏」は、北関東における物流拠点や先端産業拠点と、広域交
    通基盤の整備を目指している。圏央道の開通に伴って物流アクセスが良くなること
    から、企業進出が相次ぎ、関東圏の中でも最も経済の活性化が期待されている県
    でもある。
    今回は、一般社団法人茨城県トラック協会(以下、茨城ト協)の小林幹愛会長(五光
    物流株式会社会長)トラック協会の活動など伺った。
    トラック協会長インタビュー《茨城県》
    小林幹愛
    (五光物流株式会社会長)
    “人づくり”で
    トラック業界のレベルアプを
    弱者にしわ寄せが来ない
    運賃制度が急務
    TheTRUCK2015年9月号19
    一般社団法人茨城県トラック協会の小林幹愛会長
    秋林路 小林会長の五光物流は本誌の定期読者
    ですし、先進的な事業者として噂はかねがね耳にし
    ております。茨城ト協の会長にご就任なさったのは何
    時ですか。
    小 林 約5年前になります。ちょど東日本大震
    災(3・11)が発生した直後でした。飯泉博前会長は
    大変な指導力を発揮され、素晴らしい活動をなさいま
    したが、私は副会長の経験もなく就任して、恐縮し
    た次第です。
    秋林路 茨城は鹿島から日立まで沿海部に面して
    いますから、3・11の被害も甚大でした。
    小 林 はい、実際に被害に遭遇なさった会員も
    いらっしゃいます。ところが、突然のことでしたので、
    緊急物資輸送では初期活動が遅れてしまいまして、
    会長に就任して私の最初の仕事は被災地へのお見
    舞いや新たに緊急物資輸送の体制を構築する事でし
    た。そのために、流通経済大学矢野教授を座長に国・
    県・事業者で構成された特別委員会を立ち上げ検証
    し、今後の緊急輸送体制に繋げるように 致しました。
    秋林路 全日本トラック協会をはじめ、地方トラック
    協会は3・11を教訓にして、県や地方自治体との連
    携を強化するなど、災害への体制を一斉に構築され
    した。素晴らしい事だと思います。事業者さんの意
    識も随分変わったように思 います 。
    TheTRUCK2015年9月号20
    総合防災訓練トラックの日の清掃活動
    小 林 そうですね。皆さん熱心に取り組んでお
    られます。今後は訓練を重ねて、この体制に磨きを
    かける必要があると思っています。
    秋林路 今回の震災でトラック事業者さんはライフ
    ラインに関わる仕事をしていることを強く自覚されたよ
    に感じています。
    小 林 3・11は大変な被害をもたらしましたが、
    これを教訓として生かすことが我々の務めでもあり
    すし、国も国民も想定外の災害が起こえる事を自覚
    したと思います。
    秋林路 緊急物資輸送はこの業界の社会的使命
    ですが、環境問題も重要な課題ですね。
    小 林 そうです。当協会は13支部で構成され
    ていますが、道路の清掃作業など環境対策は地域
    に密着した活動が活発でありますが、今後は更に地
    域の産業祭などに、県内の主婦層に委嘱した輸送モ
    ニターからの提案により作成したマスコトキャラクター
    (はこ坊・あゆみちゃん)を活用し、トラック業界への
    理解を深めていく予定です。
    秋林路 地域によっては植樹も計画的に行ってお
    られます。
    小 林 この地域はもともと樹木の多い地域です
    ので、むしろそれを保全する活動に重点を置いていま
    して、地域によっては里山を守る活動に力を入れてお
    ます。
    秋林路 環境問題はCO
    削減も含め幅広いテー
    マですね。
    小 林 環境問題は、私は心の問題だと思ってい
    るんですよ。街を歩いていても、ゴミが落ちていれば、
    ちょいと拾ってゴミ箱に入 れるか、知らんふりするの
    か、その気持ちが大切です。
    秋林路 そうですね、神奈川県は日本で唯一喫煙
    に関する条例がありますが、私の知人で歩きながら
    禁煙場所で喫煙する人を見かけると必ず注意する人
    がいます。殆どが知らんふりしていますが、声かけす
    る勇気は気持ちの問題ですね。これは教育のあり方
    も関係すると思います。
    小 林 排ガス問題も石原元都知事の活躍で大き
    TheTRUCK2015年9月号21
    マナーリーダーカー出発式
    く前 進しました。以前、山梨の大会で「八ヶ岳倶楽部」
    を開設された土浦出身の柳生博さんの講話を聴きまし
    た。その時に「トラク業界がなぜ率先してこの問題
    に取り組まなかったのか。と指摘されましたが、その
    言葉は今も脳裏を離れません。
    秋林路 確かに石原さんがペットボトルに煤を入れ
    て振ってみせたパフォーマンスは強烈なインパクトがあ
    りました。トラック協会が率先して取り組んでいれば、
    確かに社会的評価は高かったと思いますが、当時の
    状況を考えると当事者ですから難しかったのではない
    かと思います。やはり政治家ならではの成果ではな
    かったかと思います。
    小 林 当協会は本部と支部単位で環境対策に
    取り組んでいますが、茨城ト協としてもっと大掛かりに
    やるべきか…どの様にやるか…悩んでいるころです。
    秋林路 地域密着も素晴らしいと思いますが、トラッ
    ク業界の役割を広くアピールする為には、マスコミが
    取材に来るらいの規模にすることも必要かも知れま
    せん。
    小 林 そうですね。トラック業界をもっと広く知っ
    て頂くことも大切ですね。
    秋林路 本誌は来年のトラックの日に合わせて千葉
    の幕張メッセで2016トラックショーを開催する計画で
    すが、その中でトラック運送に関係のある子供達に
    ラックに親しんで頂く『こどもトラックショー』を企画して
    います。この活動はNHKをはじめ広くマスコミにも
    取材を呼びかける予定ですが、この業界の役割を広
    く一 般に知って頂くことは大切です。
    小 林 それは良い企画ですね。子供の頃に体
    験したことは大人になっても忘れませんから、子供達
    がそういう体験をする機会があるのは素晴らしいと思
    います。
    秋林路 以前、トラック協会の青年部会長さんに
    インタビューした 時「自分の会社を息子に継がせたい
    と思うか」というアンケートしたところ、9割がNOの
    回答を示したと聞きました。これは実に悲しい状況で
    す。子供たちは親がトラック運送に従事していても、
    ラックに親しむ機会は意外に少ないので、何とかトラッ
    クショーがお役に立てないかと考えた次第です。
    小 林 親から子供への事業の継承は大切です
    が、その繋ぎのところに問題があるんですね。
    秋林路 確かに事業の継承は親子問題もあります
    が、物流二法の施行以来、事業者は無秩序に増え
    るし、運賃は下がる一方ですから、子供に同じ苦労
    をさせたくないという親の気持ちも解かります。
    小 林 事業者の努力だけでは乗り越える事が出
    来ない壁を打破するのは、やはりトラック協会の役割
    でしうね。
    秋林路 物流二法は国民の立場に立った法律で
    すから目的は間違っていないのですが、永年放置し
    ておくと弱者にしわ寄せがくる体質が出来上がってし
    まいます。その結果、適正運賃が貰えなくて、汗し
    て働くドライバーにも適正な給料が支払えない。その
    結果、若年層にも魅力の無い職業に陥ってしまったよ
    うに思います 。
    小 林 実は先般、茨城県もトラック輸送における
    「取引環境・労働時間改善協議会」が立ち上がり
    したので、私もその席で同じ発言をさせて頂きした。
    問題はその先です。つまり、 その 対策と手段を実行
    TheTRUCK2015年9月号22
    中央研修所での安全運転研修①中央研修所での安全運転研修②
    に移すには、相当の努力が必要となると思います。
    秋林路 結論ははっきりしていて、先ずは適正運
    賃を荷主に支払って頂くこと、それをドライバーの給
    料に回して待遇改善を図ることです。
    小 林 運賃は荷主さんとの取引の中で決まりま
    すから、その折衝が大切である事は分かっているの
    ですが、流通構造の問題があって難しい。やはり官
    の主導がないと、物事は動かないのではないかと思
    います。
    秋林路 ビールやバターなど小売価格を値上げす
    る際に、原料の値上がりが理由にされることがあり
    す。物価は様々な原価を積み上げて決まますが、
    運賃もその一つです。トラク運送業界が物流二法
    に加えて少子高齢化の波に曝されてドライバー不足
    に陥っている。給料を上げて待遇改善しなければドラ
    イバーは集まらない訳ですから、運賃を上げる正当
    な理由になります。ですから、運賃の負担は荷主で
    はなくて消費者ですから、その点を一般社会へも訴
    え荷主も協力するべきだと思います。
    小 林 理屈はそういう事なのですが、実際には
    荷主さんから運賃を頂くので、その理解がなければ
    運賃は正常化されません。
    秋林路 私はここで思い切って制度改革をやるべ
    きではないかと思います。取引の中で値上げを要請
    しても事業者の声はなかなか通りません。ドライバー
    不足で物流マヒが起きれば荷主も困るし、これは社
    会問題ですから、第3者の力が必要です。物流二
    法施行の前は元の運輸省が法定運賃を決めていま
    たが、それに代わる何らかの制度があれば、業界の
    存立が危くなるほど、運賃は悪化しなくなるのではな
    いかと思います。
    小 林 確かに法定運賃とか、基準運賃を制定
    するべきだという声が聞かれます。ただ、これも守ら
    れなければ絵に描いた餅になってしまいます。
    秋林路 適正運賃を金額で決めると、時代によっ
    て合わなくなる可能性がありますから、私は物価に占
    める運送費の割合を明確にして、それを荷主に守ら
    せる制度が良いのではないかと思っています。
    小 林 各荷主企業から、決算期には様々な必
    要経費が発表されますが、その中で一括した物流経
    費は大きなウェイトを占めており、目立った存在になり
    ます。この物流経費の中の運賃が低減できないか、
    物価の抑制と自社の利益確保のためには総合物流費
    を削減しなければならない、という事になって、荷主
    さんから運賃値下げの要請が来る訳です。
    秋林路 物価に占める物流費の割合が高くなるの
    は避けて通れない活動だからだと思うのですが、そ
    の中でトラク運送費が適正であるか否かは、ドライ
    バーの待遇も含めて検証されなければなりません。し
    かも、消費物価だけではなくて、原料や中間加工品
    などトラック輸送品目は多種多様ですから、一派一絡
    げという訳にはいきません。でも、ここを徹底的に検
    TheTRUCK2015年9月号23
    運転者技能競技会(実地試験)運転者技能競技会(点検競技)
    証すれば物流費に占める運賃の適正な割合ははじき
    出せるのではないかと思います。これを公正取引制
    度として決めれば荷主も守らざるを得ないのではない
    かと思います。
    小 林 そうですね。物流コスを下げる話しにな
    ると、どうしても我々トラック業界にしわ寄せが来るの
    が、これまでの通例です。それが弱者と呼ばれる所
    以なのですが、何とかしわ寄せが来ない制度が出来
    ない物かと思います。
    秋林路 物流二法が施行されて約25年になるの
    で、運賃の決め方にしても拠り所のない流通構造が
    出来上がって、弱者の声が通らなくなっているように
    思います。政治家や学識経験者などトラック輸送業
    者の立場で物が言える人材を育てることもトラック協会
    の役割だと思います。
    小 林 茨城県には流通経済大学という立派な大
    学があるのですが、そこで物流を学んだ学生さんが
    我々トラック運送業界に入る割合が少ないと聞いてい
    るが、折角物流を勉強した若い世代が、この地域か
    ら巣立つ訳ですから、荷主企業に行くのと同じ位の
    割合でこの業界にも来て欲しいと思う訳です。
    秋林路 学生の立場で考えると、荷主の方が安心
    感がある。少なくとも荷主企業よも給料が高いとか、
    警察官とか消防士のように社会的地位が確立されて
    いるとか、明確な差別化がないと学生もトラック業界に
    人生を賭ける気がしないのではないかと思います。
    小 林 そうですね、物流に携わるという意味で
    は同じ立場なのですが、待遇面は大きくかけ 離れて
    いる。ここが問題です。
    秋林路 やはり、イメージを含め社会的地位を引き
    上げることも大切です。
    小 林 そうです。そういう意味では我々事業者
    もただ物を運ぶだけでなく、流通センターなど物流領
    域まで事業を広げるとか、積極的な活動が必要です。
    秋林路 そうですね。トラク運送だけだと拠り所
    が“運賃”だけになってしまいますから保管、梱包、
    荷役、情報といった物流関連事業を組み合わせると、
    多彩な展開が出来るし、荷主に対して存在感をアピー
    ル出来ます。
    小 林 最近、そういう考え方で経営される事業
    者さんが多くなっています。我々は現場に詳しいの
    で、荷主さんが気づかない発見もあります。例えば、
    これまでは在庫ゼロを目指していましたが、ドライバー
    不足でトラックが調達できない等アクシデントが生じた
    場合の対策としての在庫が必要になるのではないか
    とか…。
    秋林路 3・11の際にも小さな電子部品が生産
    出来なくなって自動車の生産ラインがスップしました
    が、物流もフレキシブルに対応する体制が必要です。
    これも事業者さんの役割ではないでしょうか。時代の
    変化と共に物流も新しい要求が出て来ますが、どん
    な時代になっても「物流実務はお任せ下さい。と言え
    TheTRUCK2015年9月号24
    秋の交通安全に伴う街頭キャンペーンマスコットキャラクターのはこ坊・あゆみちゃん
    る業界になれば、若い人達に人気の職業になるかも
    知れません。
    小 林 その為には苦労を惜しんではいけませ
    ん。苦労をなさった事業者さんは会社も利益を上げ
    ておられます。
    秋林路 苦労が徒労に終わるようでは情けないで
    すよね。ところで、これは環境とも関係しますが、
    最近静脈物流とかリサイクル物流が話題になってい
    ます。
    小 林 これは大切な事です。物はメーカーから
    消費者に向かって流れますが、それに付随して回収
    しなければならない物が発生します。物流は血液と
    一緒で、一方通行であってはならないのです。容器
    であったり、使用済み製品であったり、回収しなけれ
    ばならない物は沢山あります。これも我々事業者の仕
    事です。
    秋林路 物は形を変えても存在しますから、それ
    を計画的に回収するとか、リサイクルすることで環境
    も大きく変わります。トラック輸送はインターネットが発
    達して、復荷が容易に確保できるようになりました 。
    静脈物流とやや似たところがありますね。
    小 林 ただ、これは入札制度が比較的多いで
    すから運賃は安いところに落札されます。運賃は安
    ければ良いという事になるので、ホントにそれで良い
    のか、私は少し疑問に思っています。
    秋林路 これは先ほどの運賃のあり方とも関係しま
    すが、金額だけが評価対象になれば、業界は崩壊
    してしまうのではないかと思います。物事には秩序を
    保つためには一定のルールが必要です。人間社会だ
    とモラルとか倫理といった事で、それを守る為に法が
    あります。インターネトによる復荷情報も、運賃を決
    めるルールがあれば、歯止めがかかるのではないか
    と思います。
    小 林 このように運 賃の 話しが 出来るようになっ
    たのも、ドライバー不足が表面化してからの事です。
    今こそ事業者が結束して荷主さんに理解を求めなけ
    ればならない時です。
    秋林路 私は運賃の正常化は2020年のオリンピ
    までが山場だと考えています。この機会を逃すとチャ
    ンスは暫く訪れないのではないかと…。
     ところで、本誌はトラックの“物づくり”に立脚して、
    40年余りトラックの変遷を見て来ましたが、最近ユー
    ザーとトラックメーカーの関係が少し変わって来たよ
    に思います。トラックは物を運ぶ道具ですから、積載
    を増やすとか、荷役を省力化するとか、創意工夫で
    物流が大きく変わります。ところが、最近双方にその
    TheTRUCK2015年9月号25
    事故防止教室労働問題セミナー
    熱意が感じられません。
    小 林 特殊車両を入れる、あるいは普通ボデー
    よりも手を掛けたトラックを導入するとコストが上がり
    すね。それでも、積載を増やすことが出来れば、生
    産性アップ になりますから、その分の運賃を要求する
    と、全額じゃなく半分にしょと言った形になるのです
    が、それも暫くすると元の運賃に戻されてしまいます。
    これでは、車両にかかったコストは全額運送事業者
    が負担することになってしまいます。それなら特殊車
    両はいらない、という事になります。
    秋林路 物づくりの技術は年々進化しますから、
    それが物流に活かされないのは不幸な事です。法律
    が変わればクルマの仕様も機能も変わります。例えば
    ラクタの駆動軸が11.5トンに緩和されてレーラは更
    に大量輸送が可能になったし、準中型運転免許が実
    施されれば新しいカテゴリのトラックが開発されること
    になります。それによってトラック輸送は大きく変わる筈
    ですが、その熱気が伝わって来ないのです。
    小 林 そこはトラックメーカーの販売体制の問題
    もあると思います。ディラーさんはトラックを買って欲し
    いというだけじゃなくて、もっと掘り下げた情報を我々
    に提供して頂きたいと思います。
    秋林路 トラックメーカーは物づくりに研究を重ねて
    いますので、情報はもっていると思いますが、ユーザー
    にそれを負担する力が無くなっているのでやや諦め
    の境地に陥っているように思われます。トラックの開
    発にもコストがかかりますので、ユーザーがそのコス
    トを負 担してくれなけ れば物づくりは出来ません。そ
    の元を辿れば運賃に関係します。つまり、運賃問題
    は事業者だけではなくてトラク産業界の問題でもあ
    るのです。
    小 林 実情はそういう事だと思います。ただ、
    我々事業者が運賃問題に取り組んでいるのと同じよ
    に、トラックメーカーも事業者に対して新技術を投げ
    かけて、共に発展する考えでないとダメです。
    秋林路 その点がとても大切だと思います。我田
    引水になりますが、2016トラックショーの開催意義もそ
    こにあります。ところで、本誌は今年から関東地区の
    トラック協会を順に訪ねているのですが、茨城県は圏
    央道の開通で物流事情が大きく変わるようですね。
    小 林 実は3・11から5年目になり、今茨城県
    は総合物流計画の見直しに入っていまして、先般そ
    の第一回会合がありました。そこでも圏央道の開通
    で物流が大きく変わることが話 題になりました が 、 や
    はり荷主さんも我々事業 者もトラックメーカーも一体に
    なって、これから先の物流をどうするか、真剣に考え
    なければならない時代になっていると感じました。
    秋林路 圏央道は西から東北に向かう車両も都心
    に乗り入れなて済むので大きな変化をもたらしています
    が、茨城は更に大きな変化が起きるのではないですか。
    TheTRUCK2015年9月号26
    交通事故・労働災害防止大会交通事故・労働災害防止大会
    小 林 経済効果では非常に期待されていま
    す。最近はどんどん企業進出が続いているし、物流
    施設も新設されています。茨城ト協としましても大いに
    期待していますし、人材も育成していかなければなら
    ないと思っています。
    秋林路 茨城は港もあるし、道路にも恵まれてい
    るので、産業立地として最適ですね。
    小 林 そうです。港は日立、常陸那珂、大洗そ
    して鹿島の4カ所。道路は圏央道、常磐道、北関
    東道それに東関東道があります。東京にも近いし、
    圏央道からアクアラインを経由して神奈川にも直結し
    ていますから、物流には柔軟に対応出来ます。
    秋林路 茨城ト協への期待も大きなるのではない
    ですか。
    小 林 現在の茨城ト協の会館は33年の歴史が
    ありますが、3・11で被害も被っているし、入り口が
    急勾配になっているので2トントラックも入れなくて不便
    を来しています。それで、この機会に現在の約5倍
    の敷地を確保して、研修センターも含めて新しい施設
    を建設する計画です。
    秋林路 今度、愛知県トラック協会も素晴らしい研
    修センターが出来ますが、会員の皆さんにとっては拠
    り所ですから、業界の発展に貢献することになると思
    います。
    小 林 私がこの研修センターに期待しているの
    は、会員事業者のドライバーや従業員への教育で
    す。それが結果的には他県から茨城に進出して頂く
    荷主さんへの貢献に繋がると考えています。
    秋林路 トラック輸送はとに人材が大事な事業で
    すから、基本は教育かも知れませんね。
    小 林 企業は人なり、と申しますが、特に我々
    運輸産業は労働集約型産業ですので、“人づくり”
    がこの業界の発展に繋がると思います。
    秋林路 茨城ト協としても、現在いろいろな活動を
    しておられますが、簡単にご紹介いただけますか。
    小 林 茨城ト協の事業としましては、事故多発
    県であることから、交通事故・労働災害防止対策に
    積極的に取り組んでいます。項目としては凡そ次のよ
    うなことで す。
    1.事故撲滅半減アクションプラン
     茨城県の事業用貨物自動車による第1当事者
    事故が多発県となたことから、平成26年秋に5ヶ
    年計画で全国平均10,000台当り、2人にする
    ため、「交通事故半減アクションプラン」を立て、
    運輸安全マネージメントの徹底、ドライブレコダー
    の6割装着、県警察本部や労働基準監督署、運
    輸支局などから講師を招き、事故防止講習会を本
    部と13支部毎に開催し、約11,000人からのド
    ライバーから安全宣言を関係諸官庁に提出し、事
    故防止に取り組んでいます。また、交通事故削減
    に取り組んだドライバーに対し、表彰する「交通事
    故防止コンクール」を実施しています。その他、
    TheTRUCK2015年9月号27
    平成26年度荷主セミナー原価意識向上実践セミナー
    運転者を対象に、ひたちなか市にある自動車安全
    運転センターで、宿泊しての安全運転研修を実施
    しております。
    2.「正しい運転・明るい輸送運動」の実施
     毎年全国的に実施している全日本トラック協会の
    「正しい運転・明るい輸送運動」も強力的に推進
    し、信頼される輸送体制の確立を目指しています。
    3.交通事故防止キャンペーンの開催
     各季の交通安全運動期間中には、会員事業者に
    対しポスターやのぼり等を作成配布し、事故防止の
    周知徹底を図っています。秋の全国交通安全運動
    時には、県内の常磐自動車道のSAにおいて、高
    速道路利用者に対し新米ドライバーの気持ちになる
    よう、新米を配布し、交通安全を呼び掛けています。
    4.運転者技能競技会等の開催
     運転者の法規の尊重と運転技能及び日常点検
    技術の向上を図り、交通事故防止に努めさせると
    ともに、誇りと社会的責務を自覚させるために、
    運転者技能競技会を毎年度実施し、全日本トラッ
    ク協会が開催する全国ドライバーコンテストで優
    秀な成績を収めた選手を、送り出し毎年上位成績
    を収めています。
    秋林路 先ほど、少し環境問題が出ましたが、こ
    ちらも力をいれておられるようですね。
    小 林 はい、環境問題対策としては、以下のよ
    うになります。
    1.省エネ運転講習会の開催
     課題となっている環境保全と燃料高騰対策のた
    めに、毎年、ドライバーに対して自動車メーカーの
    テストコースで実践的講習を開催し、環境問題へ
    の意識向上に寄与しております。
    2.低公害車導入・アイドリングストップ支援機器
    導入等助成
     年々と厳しさを増す環境対策のために、低燃費
    車両を導入と、アイドリングストップのために、車載
    用冷暖房機器を導入促進のために、助成制度を設
    け、温室効果ガスの削減にむけ取り組んでいます。
    秋林路 随分積極的な取り組みですね。
    TheTRUCK2015年9月号28
    流通センター事業に力を入れる五光物流
    五光物流の大型トラッ
    小 林 その他にも、貨物自動車運送適正化事
    業、災害時救援物資緊急輸送、輸送サービスの向
    上など、会員の皆さんのお役に立つ事業を幅広く展
    開しています。
    秋林路 新しい研修センターは大いに期待できま
    すね。ところで、小林会長さんの五光物流について
    少し伺いたいのですが、“五光”はどういうことで命
    名されたのですか。
    小 林 実は、この会社を始めた時に父と私と、
    私の弟(小林章三郎社長)を含めて5人でスターしま
    した。
    秋林路 なるほど、人を光に置き換えたのですね。
    “物流”と名付けられたのは?
    小 林 最初は五光運輸でしたが、平成3年に組
    織変更した際に五光物流に改名しました。既に倉庫も
    幾つかもって流通センターも経営していましたので、物
    流と命名したのですが、当時から荷主さんと一緒になっ
    て仕事をする考え方は持っていました。最近は、更に
    進んでリサイクル物流に事業を拡大しています。
    秋林路 会社を興す前も何かトラック輸送と関係が
    あったのですか。
    小 林 私の父が戦後間もなくからヤマト運輸さん
    の荷扱い所を委託営業させて頂いておりした。私も
    そこで昭和33年から働いていました。しかし、独自
    に運送事業をやりたいという事で昭和40年に会社を
    興すことになったのです。
    秋林路 なるほど、でも事業形態は創業当時とは
    大きく変化していますね。
    小 林 現社長が非常に熱心に新規事業の開発
    と営業を活発に行っていましたので、仕事の内容も大
    く変わってきました。現在は戸口から戸口への配送
    を基本に『GOKOSTEP20輸送システム』を確立して
    います。これは路線便では多すぎる、チャーター便で
    は積載効率が悪く、コストが高くなるといった場合に、
    複数の荷主さんの商品を当社でお預かりし、出荷す
    る商品を混載してより速く、より安く、より確実にお届
    けする広域直送システムです。
    秋林路 流通センターが大きな役割を果たしている
    んですね。
    小 林 はい、倉庫は最新鋭の物流施設と物流
    機器を揃えていますが、今後も拡充します。勿論、
    物流情報サービスシステムはお客様とのオンラインが
    確立しています。また、これから重要になるのが容器
    包装のリサイクルで、静脈物流にも取り組んでいます。
    秋林路 最近の新聞に掲載されていましたが、小
    型無人機「ドローン」の試験場を全国に先駆けてつく
    られたそうですね。
    小 林 これは新規事業の一環として、将来の可
    能性を模索するもので、日本UAS産業振興協議会
    さんと一緒に当社の敷地約3800㎡に“物流飛行ロボッ
    トつくば研究所”をつくり、ドローンの性能確認や飛
    行訓練を実施するものです。先般は白米4㎏を運ぶ
    実演を行いました。
    秋林路 ドローンは世界的にも注目を集めています
    が、また安全性や運用ルールなどに問題があると言
    TheTRUCK2015年9月号29
    小林会長が丹精を込めてつくり上げた200坪の庭園
    本誌・秋林路(左)
    われていますね。
    小 林 その為にも、どの程度まで大型化が可能
    なのか、用途開発や安全に飛行するためのルールづ
    りが必要ですので、研究対象として取り組んでいる
    ものです。
    秋林路 災害地や離島などへの物資輸送が出来
    るようになれば便利ですよね。でも一定の運用には一
    定のルールがないとラブルが起きかねませんから、物
    流飛行ロボットつくば研究所は大いに期待されます。
    小 林 ドローンも近い将来物流に使われる時代
    が来ると思いますが、当社は、総合物流を極めて荷
    主さんに喜んで頂ける企業を目指しておりますので、
    先進技術にも積極的に取り組んでいます。
    秋林路 素晴らしい企業理念ですね。最後に小
    林会長のスポーツや趣味について教えて下さい。
    小 林 スポーツは野球もゴルフも何でもやってき
    たのですが、極めるところまでいきません。私は、飲
    食も含めて相手様に合わせる考えですので、上手に
    なりません。(笑)
    秋林路 それは私も同じですが、相手合わせの生
    き方は、他人に言えない辛さがあります。
    小 林 それも苦労の内です。事業家は苦労しな
    ければいけません。(笑)
    秋林路 ご趣味は?
    小 林 これは趣味と言えるかどうか分かりません
    が、私は植物が好きですので、庭園づくりに 凝ってい
    ます。自宅は田舎ですが、300坪の敷地の内、200
    坪は石を配置し、樹木を植えて庭園にしています。
    秋林路 ご自分で設計なさるのですか ?
    小 林 勿論です。庭師とも相談しながらです
    が、石は筑波山麓の山の中で買い、樹木は樹木市
    場の会員となり、“セリ”により入手しました。石にも
    木にもそれぞれ個性がありして、その顔の良い所を
    引き出してやりながら自分の好みに合わせ、特に石は
    どっしりと“六”の形になる様に据え付けます。毎年
    少しずつ改造しながら40数年が過ぎ、やっと調和の
    とれた庭になりした。
    秋林路 それは凄いことです。確かに趣味を通り
    超しているかも知れません。
     茨城ト協も会館を移築して研修センターをつくること
    になれば、暫くご多忙と思いますが、トラック業界は
    大事な時期を迎えていますので、健康に留意してご
    活動下さい。本日は有り難う御座いました。  
    欧州新型商用車研究2題
    ターボリターダークラッチ(サプライヤーはVoith社)はドライバーにとってポケットサイズ(超小型)の小型トルクコンバーターということもできる。メルセデスが
    相当期間の独占使用権を獲得している
    TheTRUCK2015年9月号30
    メルセデスーベンツアロックス
    Mercedes-BenzArocs車編
    Mercedes-BenzArocs車AWD等が試乗用に集結
    最新の欧州の大型トラックHDTと軽量バン・トラックLCVを通じて新技
    術及び商品動向を紹介する。前半はルセデス-ベンツ(以下、MBとも
    表記)アロックスMercedes-BenzArocs車、後半はフォルクスワーゲン
    (以下、VWとも表記)キャディーCaddy車である。
    リポート・写真 
    スヴェ
    エリクリンドスラン
    翻訳・構成=
    西襄二
    [エンジン][摩擦板クラッチ][ターボリターダーカプリング][ギヤボックス]という構成は一
    種のトルコン搭載変速機と似たような運転操作が可能。記者は急登坂路を前進して一旦停
    車、ブレーキ操作を行わなければ後退してしまう場面でもアクセルを少し踏み込んでいれば停
    止状態を維持出来る。更にアクセルペダルを踏み込めば容易に発進することが出来た
    HADはあくまでも悪路面での短時間の駆動力補助機構である
    TheTRUCK2015年9月号31
     ダイムラーが建設用途トラック群20台
    の新製品を集結、デモを交えて報道陣に
    公開した。デモサイトはエルケンブレヒ
    シュヴァイラー、ドイツ南部の主要都市
    シュツッツガルトの近傍だ。今回の目玉は
    大型トラック〝アクロスArocs〟車に油圧
    駆動の前軸〝HAD〟を搭載したモデルだっ
    た。更に詳しく言えば、油圧駆動の前軸
    搭載車とトランスミッションに組み込んだミ
    トルクコンバーター(というかフルードカ
    プリングと言うべきかも知れない=訳者
    注=)の紹介である。
     HADは原木輸送用セミトレを牽引する
    4×2車にのみ追加された仕様である。
    従来、悪路を含む林業地では駆動力を確
    保する為に6×4、或いは8×8車が推
    奨されてきた。この〝常識〟を覆す切り札
    としてこの度紹介されたのが〝HAD搭載
    4×2アロックスArocs〟車だ。
     試乗車は全て自動化ギヤ変速機AMT
    〝パワーシフト3型〟を搭載していた。こ
    れが北米ではDT12型としてあちらの地
    域のブランド・フレートライナー車に組み
    込まれている。なお、比較の為に現行の
    通常仕様の6×4車、8×8車も準備さ
    れていた。
    ミニトルクコンバーター
     本誌特約記者のS-Eリンドストランドは油圧駆動前
    軸機構と共にダイムラーが一定期間独
    占使用権を獲得したフォイトVoith社の
    〝ミニコンバーター〟についても欧州最
    新事情としてリポートする。このミニコ
    ンバーターは極めて小型ながらその性
    能と威力にはHADを凌ぐ競争力強化
    の可能性を秘めている。
    HADが活躍する場面
     試乗会場で記者が最初に試したのは
    原木を積載した単車ダンプトラック6×
    4車で、後2軸間ディファレンシャル(以
    下、軸間デフ)を装備しておりこれをロック状態にして
    いた。コース内の急な上り勾配の未舗装路面でも確実
    な駆動力を発揮し問題なく走行できた。その後、試し
    たのは8×8AWD単車トラックで車両総重量は40ト
    欧州新型商用車研究2題
    勢揃いしたArocsのAWD(全輪駆動)車群。中央の白い4×2車にHADが装着されていた。左側の銀色塗装車は8×8、後列の黄色塗装車は6×4である
    TheTRUCK2015年9月号
    32
    ン。劣悪な路面状態のコースをしっかりと走破した。
     この8×8単車(リジッド)トラックにはダイムラー
    の名称で〝ターボリターダーカップリングTurbo
    RetarderCoupling〟を装備していた。これを試乗し
    た際、急な上り勾配で停車させ、ヒルスタートを試み
    た。ギヤセレクターはDポジションであっけないほど
    後退することなくスムースな発進が出来た。急な上り
    勾配で走行速度を緩めて一旦停車すると車はじりじり
    と後退を始める。これをアクセルペダルの踏み加減で
    停止させ再スタートさせることが簡単にできる。この
    間、通常のブレーキ操作は行っていない。これが従来
    の乾燥クラッチであったなら、半クラッチ接続操作でク
    ラッチが焼けて臭っただろう。
    あたかもトルクコンバーターの様に
    〝ターボリターダーカプリング〟の機能は、先ず、ト
    ルクコンバーターのように作用することだ。機構的に
    は、トラックのパワートレーン中でクラッチとギヤボッ
    クスの中間に組み込まれている。発進操作時の作動
    は、運転者が通常の操作を行うとクラッチが繋がりター
    ボカプリングは受動的に内部作動油の摩擦機能で動力
    を伝達し発進が行われる。又、この機構は流体リター
    ダーとしても機能する。制動馬力は(欧州内の表記に
    従うと)最大476hpに相当する強力なものだ。試乗
    車にはエンジンにジェイキブレーキJake-typeがくみ
    こまれているので、これも併用され強力な制動力が発
    揮される。
    リポート担当:本誌特約記者S-Eリドストラン
    TheTRUCK2015年9月号33
     この方式のターボリターダーカプリングはメルセデス
    のアクロス車にオプション設定されており、連結許容
    総重量250トンのアクロスSLD型重量級トラクタに
    は標準仕様として採用されている。
     このターボリターダーカプリングが他のダイムラー系
    重量級車(北米のフレートライナーFreightliner、ア
    ジアのふそうFUSOなど)にも設定されるかどうかに
    ついては未定だが、需要が強ければ採用される可能
    性は高いだろう。
    油圧式駆動力補助装置
     取材当日の最後に、この日の目玉技術であるHAD
    を搭載したAcrosの4×2セミトラクタとダンプトレー
    ラの連結車を試乗した。連結総重量GCWは40トン
    超であった。一般にこの仕様の連結車は舗装された良
    好な路面での走行を想定しているが、原木の積み込み
    や荷下ろし地点は未舗装で泥濘状態の路面であること
    も可能性が高い。そうした悪条件の路面は長くはない
    がこれが走破できないとこの手の連結車の用途と運行
    計画はかなり制約を受ける。こうした悪路面でAWD
    機能があれば多いに助かるわけだ。HAD
    はこうした場面での助っ人機能で走行速度
    が25〜30km/H迄の低速時に補助的に
    利用が可能。
    フランス発の技術を応用
     HADは4×2車のいざという場面での
    駆動力補強手段だが、油圧を利用する技
    術は今回の紹介事例が初めてでは無い。
    Acros車と競合するマンMANやルノー
    Renoultなどの各車には数年前から先例が
    ある。フランスのポクレインPoclain社と
    いうホィール式エクスキャベータ(掘削機)
    や農機のメーカーがフロントハブに内装す
    る油圧モーターを供給してきている。メル
    セデスの場合、従来の先例では油圧源とな
    るオイルポンプをトランスミッションのサイ
    PTOから駆動していたが、これをエンジン
    で直接駆動する方式としたことが目新しい。
     MAN車の場合、サイドPTOが接続さ
    れる状態でのみHADが作動するが、これ
    にはPTOを接続する事前の操作が必要である。そし
    て、MAN車ではHADに制動機能も発揮させる回路
    設計としている。
     一方、メルセデス車では発進時の駆動力補助として
    利用する以外、制動力補助には利用していない。油
    圧回路にファン付きクーラーを設けてボディ架装に支
    障を来さない場所に搭載している。
    がっつりテス
     記者は今回のHAD搭載車のテストでは意図した機
    能が有効であり、かつほぼメンテナンスフリーで長期
    間機能することが体験できた。メルセデスの担当者は
    この試乗会後に市販開始を明言。簡単なスイッチ操作
    で必要とする路面条件で素早く利用出来る実用性の
    高い装備として期待に応えるとしている。HADはダイ
    ムラーのPowershift3(AMT)と組み合わせて4×
    2、6×2、6×4駆動方式車に搭載される。エンジ
    ンは同社のOMシリーズの中から10.7−12.8リッ
    ルエンジンが該当し、出力では326hpから510hp
    をカバーする。
    欧州新型商用車研究2題
    CaddyRideのComfortモデルは乗り心地が素晴らしい。計器まわりは新規デザインで一新された(VW提供)
    VWのロゴ
    TheTRUCK2015年9月号34
    フォルクスワーゲン新型LCV
    Caddy&Transporter編
    大規模な試乗会企画
     VWの軽量商用車の改良・新モデルの発表も頻繁
    に行われている。今回はCaddy車の新モデルに加え
    T6と呼ばれるトランスポーターTransporter車の第
    6世代に当たる新モデルが同時期にメディア向けの試
    乗に供された。欧州中の大勢の記者達が対象なので、
    2週間に亘る日程で行われた。
     今回のCaddy試乗会の会場はフランスのマルセ
    イユ、Transporterの試乗会会場はスウエーデン
    のストックホルムであった。記者達は広域に飛び回ら
    なくてはならない。技術的には革新的新技術はなく他
    のモデルで実績のある仕様の採用相当の改良レベル
    である。
     CaddyとTransporterの双方とも、前後部の外
    観デザイン変更が施された。
     内装は計器類のデザインと安全装備の一層の充実
    が計られた。各種情報とアプリを映し出すモニター画
    面はドライバーが常用するスマホとの連携利用が拡充
    された。標準装備としてはEBS(電子制御走行安定
    機能)、非常ブレーキシステム、衝突事故後に制動機
    能を保持するシステム、などが挙げられる。
    Caddy車とTransporter車の歴史を辿ると
     VWのCaddy車はかつて〝ウサギさんピックアップ〟
    CaddyRideのComfortモデルは乗り心地が素晴らしい。計器まわりは新規デザインで一新された(VW提供)
    Caddyのスライドドアの開口幅は他社を含むこのセグメト車の中
    で最大である
    後部の2枚ドアは標準仕様で、90度と180度に開けることが出
    来る。後面のテイルゲートはガラスウィドウ付きかパネル仕様か選
    択可能
    TheTRUCK2015年9月号35
    欧州新型商用車研究2題
    VWのTransporter車は2種類のホィールベースが選べる(VW提供)
    T6の運転席(VW提供)
    TheTRUCK2015年9月号36
    の愛称で呼ばれていたことがある。1980に北米で発
    売され2年後にヨーロッパでも発売された。これまで
    に通算150万台生産されている。
     一方、広く愛好者のあるVWのミニバスは〝ブッリ
    Bulli〟の愛称でも呼ばれて1970年代に登場して以
    来凡そ65年経った。1950年のデビュー以来今日ま
    で、通算して実に1200万台が生産されている。
    試乗したTransporter新型モデル
     新型T6シリーズのボディは直前のT5モデルをほ
    ぼ踏襲している。車両総重量は2.6〜3.2トン、牽
    引能力は2.2〜2.5トン(トレーラ総重量)を許容して
    いる。(彼の地では小型トレーラを牽引するのは家庭用
    でも業務用でもごく普通のこと。=訳者注=)
     最大の変更点はフロントフードの内部で、Euro6
    初代モデルT1と並んだT6モデル(VW提供)
    T6の運転席まわりT6ピックアットラッ
    TheTRUCK2015年9月号37
    対応のディーゼルエンジンは一層洗練されたSCR
    (選択的NOx還元触媒システム)を搭載して直前モ
    デルと比較して15%の燃費改善を達成している。
    Transporterは複数仕様のトランスミッションが選択
    可能で、5、6速の手動式に加え、DSGダブルクラッ
    チ自動化ギヤミッションも選べる。殆どのモデルで4
    MOYION全輪駆動方式が選べる。
     T6型車の試乗コース中に設けられた昼食会場は
    ソーデルタルエのマリーナに隣接していた。ここへの
    道中、主催者(VW)の意図がMANと共に自社グルー
    プのScania社の大規模工場と研究施設がいやでも
    目に入るコースを選んだことを気付かせたものだ。
     現在はVWの傘下にあるScaniaだが、遡ると第
    二次世界大戦後にスウエーデンでVWのビートル、
    とLCV(小型商用車)の販売を行う地場の独立系メー
    カーであったのである。
    欧州新型商用車研究2題
    Scaniaの本社工場はスウエーデンの首都ストックホルム郊外のソーデルタルエに所在する
    TheTRUCK2015年9月号
    38
    TheTRUCK2015年9月号
    39
    火災事故研究
    室蘭港に向けて曳航される「さんふらわあだいせつ」
    (北海道テレビ提供)
    TheTRUCK2015年8月号
    40
    フェリー船上で
    発生した火災
    〈第1報〉
    大型カーフェリー「さんふらわあだいせつ」が8月1日17時15分頃、
    茨城県大洗港から北海道苫小牧港に向けて航行中の苫小牧沖南方約
    55㎞の海域に於いて車輌甲板から火災が発生した。冷凍車が関係し
    ていると報じられている・・・
    西襄二
    海水による消火活動を受ける「さんふらわあだいせつ」
    (北海道テレビ提供)
    右舷の一部に火災による焼損痕が認められる
    (北海道テレビ提供)
    TheTRUCK2015年8月号
    41
    はじめに
     関東地域と北海道を結ぶ海上交通は、北海道の
    農水産物の輸送経路として重要な役割を担ってい
    る。その中でもフェリー船はRO-RO機能(埠頭か
    ら船上のランプを使用して車輌が自走で上下船が可
    能)を備えた貨客船の一種であるが、乗用車の利用
    も可能である。
     トラックの場合、単車であればドライバーは船客と
    して目的地まで同乗するが、連結車であればトレーラ
    部分のみ搭載するヘッドレスの利用が一般的で、ドラ
    イバーを航海中に拘束することがない。今回の各種
    報道により火元と見られているトラックがどのような形
    態であったかは、本稿取り纏め段階(8月20日)で
    は発表されていない。
     本誌ではこの火災事故を重要視して真相を確認
    し、再発防止の観点からリポートする。今回はその第
    1報である。
    船長、乗客乗員全員の退船、
     避難を命令
     火災は車両第2甲板(Dデッキとも表記されてい
    る。船底に近い順に第1、第2・・と呼称されている)
    から発生したという。船内設備を使って乗員による消
    火活動が行われたが鎮火に至らず、大事をとって船長
    は乗客乗員全員の退船、避難を命令した。冷静な対
    応により付近を航行中のフェリーと海上保安庁の巡視
    艇などに乗客71名は全員無事救助された。他に船
    側乗員は23名がいたが、消火活動に従事していた
    二等航海士1名が行方不明となり他の22名が退船
    救助された。
     この大型フェリー「さんふらわあ だいせつ」(商
    船三井フェリー所属。以下、本船とも呼ぶ)は、全長
    190m、全幅26.4m、総トン数11,401トン、航海
    速力毎時25ノットの大型フェリーで、旅客定員154
    名、車両搭載最大数は乗用車62台、大型トラック
    160台である(商船三井フェリーによる)。
     問題の車両デッキに乗り込んでいた車の数だが、
    シャシー100台、トラック36台、乗用車24台、オー
    トバイ8台の計168台であったという(WebNEWS
    8月17日㈪夕刊による)。別のメディアではトレーラ
    の荷台部分が100台積まれていた、との表現もある
    (日本経済新聞電子版7月31日01:37版)。一
    般メディアが車両形態の呼称をいろいろ混用するのは
    今回に限ったことではないが、専門誌である本誌では
    続報で真相を明らかにする。
    消火に手間取る
     各種報道を総合すると、火災が確認されたのは苫
    小牧沖約55㎞の太平洋を航行中の7月31日17
    時15分頃のことで、乗員が見つけたとされる。火
    災発生後、「さんふらわあだいせつ」は現場付近で停
    船。乗員が消火に当たり、船上設備のスプリンクラー
    も作動したというが容易に鎮火しなかった。
     海上保安庁第一管区海上保安本部の巡視艇が接近
    火災事故研究
    黒煙が立ちこめる第2甲板(Dデッキ)内部
    (第1管区海上保安本部提供)
    TheTRUCK2015年8月号
    42
    して放水を開始する一方、主機を停止させて自力で
    航行出来ない本船をタグボートが曳航しながら消火活
    動は続けられたが、8月5日、完全には鎮火してい
    ない状態で室蘭港へ曳航された。接岸する前に液化
    炭酸ガスローリを台船にのせて本船に接舷させ炭酸ガ
    スを注入する方式で消火活動が始まったのが6日、
    それから4日後の8月10日に鎮火が確認されたと
    商船三井フェリーが発表している。発生から実に約
    10日を要したことになる。
     商船三井フェリーは、火災が発生した洋上での(海
    水)放水消火活動は、船体の過熱による損害を防ぎは
    した(延焼を最小限度に留める役割は果たしたが)
    のの鎮火させる効果はなかった、とも発表している。
    その理由として、フェリーの甲板構造は気密・水密性
    が高い(船外からの注水が火元に直接届く構造ではな
    い)ためとしている。多層の甲板間には火災延焼を防
    止する防火扉の設置もあり、今回はこれを閉じていた
    筈である。
     なお、海上保安本部は3日、船内のDデッキ車両
    スロープの近くで見つかった遺体は乗員の2等航海
    士織田邦彦さん(44)と確認した。織田さんは出火が
    確認された7月31日、消火活動に当たっていたが
    同日午後6時頃、同僚に無線で「黒煙がひどくなり、
    前がまったく見えなくなった」と言い残したのを最後に
    連絡がとれなくなっていた(読売新聞8月4日朝刊に
    よる)
    本格捜査進む
     第一管区海上保安本部は本船が未だ洋上にある時
    点で第2甲板(Dデッキ)内部の写真を撮影している。
    相当に煙っており鮮明ではないが画面右側にはトラッ
    クのバン型ボディの外面が写っている。火災発生が報
    じられた当初から、火元は冷凍車であると報じられて
    いたが、室蘭港内で炭酸ガス消火活動により鎮火が
    確認されて接舷・係留されて後、関係機関の現場検
    証が行われた。筆者の場合は電話による取材である
    が、当初は地元の室蘭海上保安部、室蘭市消防本
    部、北海道運輸局、北海道警察札幌方面本部などが
    関与した後、捜査の主体は海上保安本部に一本化さ
    れ、運輸局、国交省運輸安全委員会等の協力により
    今後の捜査が進められるということである(8月19日
    現在)。
     船内に搭載されていた車両は火元の第2甲板以外
    の車輌から順次下船を行い、8月20日現在、第2
    甲板の焼損の激しい3台を残して下船されたとされて
    いる。
    出火原因は
     乗員1名の犠牲を伴った今回の火災事故は、焼損
    の激しい3台のトラック(冷凍車が)絡んでいたとされ
    るが3台の内訳と夫々の損傷状態は8月20日現在
    では不明である。
     一般に、冷凍車は大別して単車と連結車に分類さ
    れ、陸上走行時の冷凍機駆動は、多くの場合、前
    者にあっては走行用または専用エンジン、後者にあっ
    ては専ら専用エンジン(いずれも内燃エンジン)による
    が、船上ではエンジンを停止して電動モーター(スタ
    ンバイ機能)で駆動される仕組みと決まりである。そ
    の場合の電源は船上の専用コンセントから
    給電される筈である。
     甲板(デッキ)内は一定の換気が行われて
    いる筈でもあり、通常、何処かが過熱する
    ことが無いように関係設備が機能する筈で
    ある。
     今回の出火の真因と延焼経路については
    今後の当局の捜査と調査を待たねばならな
    いが、トラックとその運用に関わる機関と関
    係者を読者とする本誌は、再発防止の見地
    から引き続き取材を続け続報をお届けする。
    (以下、続報に続く)
    TheTRUCK2015年8月号
    43
    大型フェリー「さんふらわあだいせつ」火災事故の経緯
    経過日
    2015年
    月/日(曜日)
    時刻事象(各種メディアの報道を総合)
    07/31㈮
    01:45大洗港出港。目的港は苫小牧港。
    17:15頃〜夜
    苫小牧沖約55㎞の洋上で出火を確認し停船。この時点の乗客は71名、
    乗員23名。搭載車両はシャシー(またはセミトレ)100台、トラック
    36台、乗用車62台、オートバイ8台。船内の消火設備と乗員による
    一次消火活動が行われたが鎮火に至らず、船長は乗客・乗員全員に退船
    避難を命令。19:20頃、海上保安庁のヘリコプターが本船の右舷側に
    煙がたなびいているのを確認。付近を航行中のフェリーと巡視艇などに
    救助され、同日夜、苫小牧港に全員無事上陸。消火活動に当たっていた
    2等航海士1名が行方不明に。船体は安定。
    1
    8/1㈯09:00頃
    海上保安庁特殊救援隊が本船に移乗、行方不明者の捜索を開始。船体は
    安定、油の流出無し。
    28/2㈰
    特殊救援隊が船底の機関室、及びその上の第1甲板(Eデッキ)を捜索。
    行方不明者は発見されず。Dデッキの船尾などを調べたが、煙による視
    界不良と高熱のため3時間で捜索を断念。
    8/3㈪15:00頃
    海上保安庁は巡視艇による消火活動を終え、ほぼ鎮火と発表。国交省運
    輸安全委員会の事故調査官は調査を続行。行方不明の乗員をDデッキ後
    部車両スロープ付近で発見。巡視船で室蘭海上保安部に移送御、家族な
    どにより2等航海士の織田さんと確認。
    8/4㈫正午現在
    本船の位置は苫小牧港から南南西約36㎞付近にあり、曳航を担う救難
    救助船兼引き船「航洋丸」(総トン数2,096トン)が現場海域で待機中。
    8/5㈬13:30本船は函館沖1.5㎞に到着。未だ鎮火していない。
    8/6㈭19:25
    室蘭港外で液化炭酸ガスローリー車を台船に積載し本船に接舷、同ガス
    注入による消火活動を開始。
    8/7㈮15:00消火活動継続中。
    8/8㈯消火活動継続。
    8/9㈰消火活動継続。
    10
    8/10㈪14:53完全に鎮火。室蘭港への入港許可出る。
    11
    8/11㈪14:05曳航を開始。
    12
    8/12㈬08:45室蘭港に着岸。
    13
    8/13㈭船内現場調査。
    14
    8/14㈮船内現場調査。
    15
    8/15㈯船内現場調査。
    16
    8/16㈰10:00頃
    船首側ランプウエイから安全確認を終え自走可能なトラックやシャシー
    などが次々と搬出を開始。
    17
    8/17㈪車両搬出継続。
    18
    8/17㈪車両搬出継続。
    19
    8/19㈬車両搬出継続。
    20
    8/20㈭正午現在Dデッキの火元付近の3台を残し、他の車両の搬出終わる。
    TheTRUCK2015年9月号44
    新シリーズ
    時代語る
    車体人
    ?
    ニーズに応じた特種車製造と
    ユーザー目線のボディ改造&修理
    半世紀の歴史に裏打ちされた技術と
    伝統で高い信頼性を確保
    特種架装とボディ修理の2本立て
    ニッチの中のニッチを目指して
     今月号は、特種と特装ボディのスペシャリ
    ストと知られる茨城県のヤシカ車体を訪問し
    た。HPのトップタイトルに「めずらしいト
    ラックを見かけたら、それはきっとヤシカ車
    体のクルマです」と表示されているほど特殊車
    体製造では優れたノウハウと大きな実績を持
    つメーカーである。
     本社工場は、常磐道の千代田石岡ICから約
    2㎞、電車なら常磐線石岡駅からタクシーで
    15分ほどの位置にある。都心からだと約1
    時間半ほどの場所になる。同社では、社長の
    星浩由氏と創業者で会長の星哲哉氏のお2人
    が忙しい時間を割いて待っていてくれた。
     同社は、星モータースとして1963年(昭
    和38)に横浜で創業したのに始まる。創業
    からすでに半世紀を経た歴史あるボディメー
    カーである。現在も顧客から高い信頼を得て
    いるのは、長年にわたり培ってきた「技術」
    「伝統」を今なお大切にする同社の基本姿勢が
    あるからであろう。参考までに、Webに掲載
    されている沿革の一部を抜粋しておく。
    ▽昭和38年2月:自動車販売・修理・コン
    テナ修理を目的に、有限会社星モータース
    設立(神奈川県横浜市)
    ニッチの中のニッチを目指すと、星社長星社長と創業者の星哲哉会長(右)
    TheTRUCK2015年9月号45
    ▽昭和52年2月:有限会社星モータースよ
    り分離独立し、茨城県石岡市に有限会社常
    陸車体を設立。
    ▽昭和62年10月:社名を有限会社セイワ
    車体に変更。
    ▽平成元年11月:資本金1000万円で株式
    会社セイワ車体に組織変更。
    ▽平成6年8月:株式会社セイワ車体より
    分離独立し、茨城県新治郡八郷町に株式会
    社ヤシカ車体を設立。
    ▽平成19年9月:千葉県白井市に柏サービ
    ス工場を開設。
    ▽平成21年8月:茨城県坂東市に坂東サー
    ビス工場を開設。
    ▽平成22年12月:茨城県牛久市に牛久サー
    ビス工場を開設。
    ▽平成24年10月:代表取締役星哲哉が
    代表を辞任し取締役会長に就任。専務取締
    役星浩由が代表取締役に就任。
    ▽平成25年6月:千葉県山武郡芝山町に成
    田サービス工場を開設。
    ▽平成26年5月:東京都港区新橋に東京営
    業所を開設。
     仕事の内容としては、特種と修理がメイン
    で、一般カーゴボディはほとんど扱っていな
    い。売上では修理が70%を占めているとい
    う。修理で取引のある顧客から特種ボディの
    話が来るケースも多いという。
    「茨城県は農畜産業が発達していて、牛肉
    や豚肉をぶら提げて輸送する食肉の懸垂車か
    ら当社の特種車はスタートしています。その
    後、いろいろなニーズに応じた車両を一品料
    理で製作してきました。東日本大震災が発生
    して、当社があるこのエリアも被災地区に指
    定され、その関係で防災関連の車両製作が優
    先的に来ました。特種関係は地元密着型でやっ
    てます」(星社長)
    月刊で発行している「ヤシカ通信」。最終ページには4コマ漫画や
    楽しい情報も満載だ
    TheTRUCK2015年9月号46
    新シリーズ
    時代語る
    車体人
    ?
     カーゴ系のボディ架装も扱わないわけでは
    ないが、大手のボディメーカーと比べると価
    格的に倍以上のコストがかかるため太刀打ち
    できないという。大きなウエイトを占める修
    理部門のために茨城県や千葉県に計4ヶ所の
    サービス工場を持つほか、最近になって東京
    営業所も開設している。
     修理部門は、地域のディーラーや運送会社、
    製造業から個人商店や畜産農家などの自営の
    方まで、各拠点が地域密着で行っている。そ
    れぞれ拠点の営業担当が、お客様のもとにス
    ピーディーにむかえる体制をとっている。
    「サービス工場は3〜4人ほどの規模です
    が、お客さんの利便性を考慮して設置してい
    ます。大きな修理の場合は本社工場に持ち込
    んで対応するスタイルになります。また、東
    京の新橋駅前のビルに設置した東京営業所
    は、特種部門のためです。どうしても、官公
    庁や大手企業からの発注をいただくためには
    必要なんです。東京に営業所を置いたことに
    より、知らなかった情報も入るようになりま
    した。茨城にいたのでは中央からの情報がな
    かなか来ませんからね」(星社長)
     それぞれのニーズに応じて架装する特種車
    は量産できる車両ではない。「ニッチの中の
    ニッチ
    で行く考えです」と星社長は話す。現状
    での悩みは「図面さえあれば現場で対応できる
    んですが、特種の場合は一台ずつ図面を作ら
    なければならないので、その部分がなかなか
    追いついて行かない」とのこと。 
    顧客が必要とするボディに改造
    タイ国からの実習生を受入れ
     特殊用途の特種車だけではなく、カー
    ゴ系でもニーズに応じた一品料理的な車
    両もある。同社ではそのようなケースに
    もユーザー目線で車両を開発し対応して
    いる。
     例えば、世話になっている顧客から
    「どっちも一緒に積みたい」という相談を
    受けたことがある。具体的には「いつも
    A社とB社の荷物を運んでいるけど、最
    近A社の扱う荷物が変わり、温度管理装
    置を付けないとならなくなった。でも、
    B社は温度管理しないで今まで通りで従
    来の料金で運んでほしいと言われた、と
    いう。A社もB社も届け先は同じ方向で
    出来れば一緒に積んで走りたいが、わざ
    わざ2便に増やすのは避けたい…。何と
    かいい方法はないだろうか?」という相談
    だった。
     この相談に対してヤシカ車体は「2分割
    ボディ」を提案した。車体前方部を温度管
    放射能の除染作業を行う特殊車両。当時、被災地域に指定されたこの
    エリアならではの車両でもある
    コンテナを積み替えることで1台でダンプ車、水タンク車、資機材格納
    車に変身する小型特殊多機能車
    酪農家のコストと労力を軽減させ良質な牛の生育を助けるために開発され
    た給飼車
    地域密着型として製作した土浦JAの移動販売車。商品棚、冷蔵ショー
    ケースなど必要な機能がそろっている
    TheTRUCK2015年9月号47
    理が可能なボディ、後方部は通常のボ
    ディの2分割構造とし、前後それぞれ
    単独で作動するウイングが架装されて
    いる。後方部分はウイングのサイド荷
    役に加え、後部観音も利用できること
    になる。通常のウイングを製作するよ
    りはコストはかかるが、2便で対応す
    る場合の経費増を考慮すると、結果的
    にはコスト軽減となり経費的なメリッ
    トが出ることになる。
     その他、運ぶ荷物の種類がこれまでの
    重量物から軽くかさばるものになった、
    という相談に対して、バンボディの荷台
    長を伸ばして容積をアップさせて対応す
    ることを提案したりもして
    いる。
     これらボディ改造のケースは同社が
    提案して実現したほんの一例に過ぎな
    い。ユーザー側の立場に立って、最適
    なボディを提供することが同社の持ち
    味なのである。
     また、工場の設備も充実しており、
    それらの設備機器を使ったサービスも
    展開している。そのひとつが、「重量・
    転倒角度の測定と証明」で、保有する
    ひょう量20トンの重量計1機と、ひょ
    う量20トンの車両傾斜角度測定器1
    機を利用し、有資格者の計量主任者が
    それぞれの証明書を発行している。
    その他、トラックボディー専用のシャ
    ワーテスターによる「シャワーテスト
    (雨漏れ点検)なども展開している。
     星社長は、昭和47年生まれで現在
    43歳になる。ボディメーカーの社長
    の中では若手の部類に入る。それだけ
    に頭脳も柔軟で、新しいものに果敢に
    取り組むチャレンジ精神も旺盛だ。特
    種車メーカーの社長としては適任かも
    しれない。大学時代に第2外国語に
    ユーザーの悩みをその技
    術力で具現化した2分割
    構造ボディのイージ図。
    製作コストはかかるが、結
    果的にはユーザーにメリッ
    トをもたらす車両になる
    TheTRUCK2015年9月号48
    新シリーズ
    時代語る
    車体人
    ?
    タイ語を選んだことがきっかけになり、タイ
    語にも精通している。「学生時代にバックパッ
    カーで、たまたまですがタイに長期滞在して
    いたことがあるんです」と話すが、現在タイか
    ら技能実習生2人を受け入れている。「リーマ
    ンショック以降受け入れをやめていたので、
    当社にとっては久しぶりの実習生です。3年
    間の実習を頑張りぬいて、将来のタイの発展
    に寄与できる人材へと育ってくれることを期
    待しています」と星社長は話す。さらにこの9
    月にはタイまで出向き、新たな実習生の面接
    をするのだと言う。その時に、タイ国で開催
    する「タイ国際トラックショー」にも来場して
    くれることを約束してくれた。主催者である
    筆者としては実にありがたい話である。
     同社のHPには「社長の裏日記」というペー
    ジがある。最後にその裏日記の一部を紹介し
    ておくことにする。(於久田)
    ▼批判者
     誰かが新しいアイデアを出すと、必ずその
    欠点やマイナスを挙げて反対する人間がい
    る。そういう人に「じゃあ、どうすればいい
    の?」と訊くと、たいていは「わからない」と答
    える。で、「じゃあどうして反対するの?」と訊
    くと、たいていの場合は「なんとなく」とか言
    いやがる。それじゃあ、ただの理念なき批判
    者じゃん!批判や反対をするときは、キチン
    と代案を出しなさい!
    ▼頂いたもの以上の何か
     自分が与えたものと相手から頂いたもの
    で、相手に与えたものの方が大きい場合にの
    み、次の仕事につながる。相手から頂くもの
    は基本的に「お代」だが、では自分は何を与え
    ることができるのか?会社の商品やマニュア
    ル通りのサービスだけではなく、そこにプラ
    スアルファの何かがなければ、なかなか相手
    から頂いた「お代」以上のものを与えていると
    は言えない。あなたはあなたなりの「何か」
    持っていますか?
    ▼遊び
     工学の世界で言う『遊び』とは、操作が実
    際の動作に影響しない範囲のこと。いちば
    ん身近なのは車のハンドル。あれ、もし『遊
    び』がなくハンドル操作がダイレクトに車の
    挙動と直結していたら怖くて運転なんてでき
    ない。これ、世の中にも言えると思う。細か
    なことにいちいち目くじらを立てて規制や規
    則でがんじがらめな昨今だが、も少し『遊び』
    があってもイイのでは?「この位イイじゃな
    いっ!」って許しあえる世の中の方が、気持
    ちよく過ごせると思う。何ごとも、適度な『遊
    び』は必要なのである。
    ■訪問企業データ
    会社名:株式会社ヤシカ車体
    本社所在地:〒315-0131
    茨城県石岡市下林3329-5
    Tel:0299-44-8844
    Fax:0299-44-1839
    メール:info@yashika-body.co.jp
    URL:http://www.yashika.jp
    主要製品:特殊車体・特装車・トラックボディー
    の開発・製造、ボディの修理・改造
    特別高度工作
    ブロアー車とウォーター
    カッター車の機能を1台
    に集約した大きな扇風機
    を背負った車両。煙や可
    燃性ガスなどを大型ファン
    で外に押し出すブロアー
    車と、水の力で鉄やコン
    クリートを切るウォーター
    カッター車の機能を備え
    ている。
    機動救助車
    災害や事故現場に駆け
    つけ特殊な装備で人命
    救助を行う特殊車両。こ
    の車は「レスキュー110」
    と呼ばれる警視庁機動救
    助隊に所属する機動救
    助車で、救助用資機材
    を積んでレスキュー隊員
    が現場へ駆けつける、機
    動救助隊の中核車両だ。
    資機材搬送車
    災害に合わせたコンテナ
    を適宜換装して現場に駆
    け付ける搬送用車両。
    大規模救助事故等の災
    害に対応するため、各署
    配置には配備されていな
    い特別な救助資機材を災
    害状況に応じてカテゴライ
    ズしコンテナに搭載する
    方式が採用されている。
    TheTRUCK2015年9月号49
    FTF検査測定車
    ガンマ線の被曝状況を
    スクリーニングするFTF
    (ファースト・トラック・ファ
    イバー)を搭載し、人体
    等から発する放射線量を
    すばやくモニタリングする
    ことで、体内に放射性物
    質が存在するかどうかを大
    まかに確認できる機能を
    備えている。
    タイヤサービスカー
    タイヤ販売業者のニーズ
    を盛り込んで開発された
    サービスカー。レスキュー
    のためのロードサービス作
    業のみならず、顧客へ出
    向いての出張作業のニー
    ズにも対応できる車両に
    なっている。店頭と同じ
    レベルの作業ができる機
    能を備えている。
    移動式ガスケット
     製作車
    ガスケットの加工製作を
    現地で行うことを可能に
    た車両。プラント配管継
    手などのシール材となるガ
    スケットの加工製作を現
    場敷地内で行える。プラ
    ト設備とエンジニアリン
    グを提供する企業向けに
    開発された作業効率アッ
    プを実現する車両。
    TheTRUCK2015年9月号50
    新シリーズ
    時代語る
    車体人
    ?
    枝肉懸垂運搬車
    『枝肉をベストな状態で
    運びたい』というユーザー
    ニーズから生まれた枝肉
    懸垂装置付きの大型冷
    蔵コンテナ車両。構造材
    の選定、フレーム構造の
    工夫、シャシーフレームの
    見直しなどを行い、法規
    をクリアしながら必要な庫
    内高の確保を実現させて
    いる。
    昇降床式家畜運搬車
    2段積みが容易で運べる
    家畜の幅も広げることを
    可能にした家畜専用の運
    搬車。上段に豚を積む
    際、これまでは専用のス
    ロープを用意したりテール
    ゲートを利用したりしてい
    たが、昇降フロアを搭載
    したこの車両ならその手
    間も不要となる。
    2段積みバイク運搬車
    たくさんのバイクを一度に
    大量に運べる2段積み運
    搬車。完成平ボディー車
    をベースに2段積み車
    両の艤装を行っているた
    め、鳥居や横根太床枠
    床板などをそのまま流用。
    そのため、より安価で、
    納期も短縮できるの魅力
    もある車両だ。
    TheTRUCK2015年9月号51
    会場のレジスレーションコーナー。なぜか、インド人向けのカウンター
    が特別設けられていた。しかも、ここだけカーペットが敷かれていた
    TheTRUCK2015年9月号52
     写真で見るタイの展示会。今月号は、2015年
    7月22日〜7月24日の3日間、バンコク郊外の
    展示会場IMPACTで開催されたAsiaColdChain
    Show2015(ACCS2015)を紹介する。
     ACCS2015は、コールドチェーンをテーマとし
    たタイ国で初開催となる展示会で、定温物流機器
    を中心にアジア・ヨーロッパ・アメリカ・日本など
    12ヵ国からの出展があった。主催は、会場である
    IMPACTになっていたが、実際にはインドのニュー
    デリーに本拠地を置く展示会主催会社のManch
    Communications(Manch社)である。後援団体と
    して、インドの冷蔵協会(FCAOI)、ブータン商工会
    議所(BCCI)、アンモニア天然冷媒の利用を推進す
    ドイツに本部を置くIIARインターナショナル研究所
    (EURAMMON)などが名を連ねていた。
     主催のManch社は、インドを中心に数々の展示
    会を扱っており、ColdChainShowもインド国内で
    は開催実績を持っている。同展は、冷蔵・冷凍輸送
    をはじめ、製造分野におけるコールド・サプライチェー
    ンを中心としており、輸送用冷凍ユニット、冷蔵・
    冷凍倉庫システム、関連の部品やコンプレッサーな
    どの機器類が展示されていた。主催者発表の来場者
    は、サプライチェーン企業、食品・医薬・園芸産業
    のメーカー、冷蔵倉庫会社、輸出入業者、輸送会社、
    政府機関となっていた。来場者数は現時点(8月5日)
    でまだ発表になっていない。
     ACCS2015の初日に取材訪問したが、会場は
    1ホールの半分の約3千㎡と狭く、どう見ても世界
    12ヵ国からの出展はなかったと思われる。会期中、
    大きなスペースを取ってセミナーやプレゼンテーショ
    ンなども実施されていたが、初日に確認した範囲で
    はその会場が満席になることはなかった。
     今月号では、輸送用冷凍ユニットを中心に定温輸
    送関連の展示物をカメラで追った。
    インドの展示会主催会社による
    タイ国で
    初開催の
    コールド
    チェーン展
    海外展示会レポート◇タイ・バンコク
    文・写真:
    於久田幸雄
    (本誌編集長)
    TheTRUCK2015年9月号53
    ■CTV-DOOL
    幅広いボディを扱うCTV-DOOLは冷凍車ボディ
    のカットモデルを展示していた。同社の正式名称
    はチョー・タヴィー・ドーラセン(ChoThavee
    Dollasien)で、タイ国内で最大級のトラックボディー
    メーカーである。タイの上場企業でもあり、トレー
    ラー、ミキサ、タンクローリ、空港作業車、側面開
    放車など扱い製品は多義にわたっている。通称名は
    「チョータヴィ」と呼ばれている。
    ■CarrierTransicold
    会場に入った正面に大きなブースを構えていたのが
    CarrierTransicoldである。トレーラ・大型車用エ
    ンジン搭載タイプの大型冷凍ユニットからピックアッ
    プ車向けの小型タイプまで幅広いバリエーションの
    製品が展示されていた。タイでもCarrierの冷凍ユ
    ニットを搭載した冷凍車をよく見かける。それだけタ
    イ国内のシェアは上位クラスなのであろう。輸送用
    冷凍ユニットで世界トップクラスのシェアを誇る米国
    キヤリア社だけのことはある。氷やドライアイスを利
    用した冷凍輸送が主流だった1940年にキヤリヤ社
    はトラック用冷凍装置を世に送り出している。今から
    75年も前のことである。それだけ、技術と実績を
    持つメーカーである。
    TheTRUCK2015年9月号54
    海外展示会レポート◇タイ・バンコク
    ■ThermoKing
    ThermoKingは、全世界で知られる輸送用冷凍機
    のブランドである。アメリカのインガソール・ランド社
    (IngersollRand)の一部門で、ミネソタ州ミネアポ
    リスに本社を置き、車載・コンテナ用冷凍・冷蔵装
    置において全世界で高いシェアを誇っている。主力
    商品は、輸送用冷凍・冷蔵装置とバス用空調機器で、
    その売り上げの75%はトラックやトレーラー用の冷
    凍・冷蔵装置が占めている。世界6ヵ国に9つの製
    造工場を持ち、800以上のサーモキングディーラー
    がパートナーとして全世界を網羅している。サーモキ
    ングの歴史は古く、1938年に猛暑のミネソタ州ミネ
    アポリスでトラック1台分の食料がだめになったと運
    送会社が嘆いたことから、当時の創業者らが世界初
    の冷凍冷蔵装置
    を作り上げたこ
    とから始まってい
    る。会場には、
    トレーラ用大型
    冷凍ユニットと小
    型車用のノーズ
    マウント式冷凍ユ
    ニットが展示され
    ていた。
    ■TOPPANFORMS
    日本からの出展として、トッパン・フォームズ㈱が高
    性能保冷材「メカクール」と専用の保冷ボックス「メ
    カクール・ボックス」などを展示していた。マイナス
    25℃からプラス18℃まで7種類のタイプがあるメカ
    クールは目的に応じた温度帯が選べる。展示されて
    いた宅配用2温度帯メカクール・ボックスは、冷蔵
    品と冷凍品を1つの保冷ボックスで配送できるもの。
    氷の上に食材などを載せて輸送されている現状がま
    だ残っているタイでは今後注目される製品のひとつと
    なるだろう。
    TheTRUCK2015年9月号55
    ■HwasungThermo
    タイ国でその販売を伸ばしている冷凍機メーカーが
    韓国のHwasungThermo社である。大・中型
    車用のノーズマウントタイプと小型車用のノーズマ
    ウントタイプの2種をメインに展示していた。同社
    は、韓国で最初のトラック冷凍システム・メーカー
    として1977年に設立されている。1981年には、
    現代自動車とKiaモーターに冷凍装置をOEM供
    給する企業に成長している。低価格で高性能な冷
    凍ユニットを扱うメーカーとしてASEANでもタイ
    を中心に高い評価を得ている。製品バリエーション
    も幅広く、ブースで聞いたところでは「タイ国内で
    は当社が輸送用冷凍装置をもっとも多く販売してい
    る」と話していた。
    THAIREEFERGROUP
    THAIREEFERGROUPは、運送、海コン、冷
    凍機販売・メンテナンスなど定温輸送を主体に幅広
    い事業展開をしている。グループは、Thaireefer
    Co.,Ltd.、ReeferExpressLtd.、Reefer
    InternationalCALtd.、SongklaReefer
    ServicesCo.,Ltd.、TRGEasternCo.,Ltd.、
    PetikemasTransportCo.,Ltd.、BoxsolPty
    Ltd.の7社で組織されている。こじんまりしたブー
    スだったが、輸送用冷凍機、バス用エアコン、海コ
    ン用冷凍システム、さらにコンプレッサー、エバポレー
    タなどの関連部品などが展示されていた。
    三次元重心検知システム
    TheTRUCK2015年9月号56
    三次元重心検知システムとは
    走行中のトラックの重心位置を
    ドライバーに知らせる
    三次元重心検知
    システムの
    普及で事故防止に貢献
    一般社団法人 重心検知協会
    TheTRUCK2015年9月号57
    センサーBOX&タブレッ
      東京海洋大学の渡邉豊教授が考案し
    た三次元重心検知システム(走行中の車
    両の重心を検知する装置)をトラック運
    送業界に普及させて事故防止に繋げる一
    般社団法人重心検知協会が発足、本格的
    に普及活動に乗り出している。トラッ
    クは貨物の積載状態がその都度変わるの
    で、重心位置も常に変化している。この
    重心位置の変化をドライバーが把握出来
    れば安全運転できる。
     トラックの横転は、路面の状態やカー
    ブの状況もあるが、ドライバーが車両の
    重心位置を把握せずに運転する事で発生する。
    この横転事故を無くすためには、リアルタイム
    で走行中の車両の重心を検知し、ドライバーへ
    伝える必要がある。そこで、東京海洋大学の渡
    邉豊教授が考案したの
    が三次元重心検知シス
    テムである。
     三次元で重心を検知
    する装置は、基本構成
    が3軸センサとタブ
    レット端末で構成され
    ており、車体を改造す
    ることなく搭載するこ
    とが出来る。装置のサ
    イズは手のひらに収ま
    る程度で、車両導入後
    に後付で搭載できる。
    三次元重心検知システ
    ムは3軸ジャイロ等を
    用いて、物体の振動周
    期を計算し独自のアル
    ゴリズムで重心点を計
    算するもの。
     自動車の車体はバネ
    やタイヤに乗っている
    構造なので、走行すれば路面からランダムな凹
    凸の影響を受け、水面上に浮く船と同じよう
    に、重心位置の移動が発生する。三次元重心検
    知技術は、重心位置固有の左右方向のローリン
    グ角速度の周波数(V)と上下方向の加速度の周
    波数(V)から、自動車の重心位置(L)を特定す
    る。この重心位置の変化が分かればカーブでの
    横転限界速度も分かるので横転事故を防止出来
    る。そのほか、この技術は、タイヤの空気圧の
    異常検知にも活用可能なので、トライバーが車
    両の状態を常に把握することに役立つ。
     一般社団法人重心検知協会の渡邉美彦専務理
    事は、「今後、全国のトラック協会に働きかけて
    三次元重心検知システムの普及に努めたい」
    語っている。一般社団法人重心検知協会の連絡
    先は下記の通り。
    一般社団法人重心検知協会
    (本部)〒248ー0011
    神奈川県鎌倉市扇ガ谷3ー2ー11
    電話 0467ー23ー9152
    FAX 0467ー23ー9152
    (越中島事務所)〒135ー8533
       東京都江東区越中島2ー1ー6
       (東京海洋大学内)
    TheTRUCK2015年9月号58
    ゲンケートジャパン
    コンサルティング
    井上 元
    (元日本フルハーフ㈱)
     戦後から間もない、いまのように美味しいお菓
    子がない頃、近所に自転車で引いたリヤカーが来
    ていた。リヤカーには大きな金籠が取り付けられ、
    (コメ)を籠の中で爆発させて作る粗末なお菓子
    を売っていた。今でいうコメで作った“ポップコー
    ン”のような食べ物のように記憶している。
     1914年、北米にある五大湖のひとつ、エリー
    湖まで「ボートを運んで欲しい」というお客の要望
    に応えて、デトロイトで鍛冶屋を営んでいたドイ
    ツ系移民のオーガスト・フルハーフと彼の12人
    の職人たちの手で、T型フォードで牽引する世界
    で初めてのトレーラが作られた。トレーラという
    と近代的な響きを感じるが、英語の辞書では“引
    かれる車両”の意味である。そのように考えると
    日本にも古くからたくさんの“引かれる車両”があ
    る。人が引っ張る“屋台”や“人力車”、馬や牛が
    引く“馬車”や“牛車”。昔、戦争に使用された“砲車”
    などもリヤカーやトレーラの仲間と言えるのかも
    しれない。
     リヤカーやトレーラなどの引かれる方式の車
    両は輸送効率の良い優れた輸送機器である。人
    が荷物を背負って運ぶ輸送方法に比べて、リヤ
    カーやトレーラなど牽引して台車を引く方法で
     最近、銀座の街を自転車でリヤカーを引いて荷物を集荷、配送する光景をよく見 か
    ける。リヤカーにはエコ配送システムと大きく書かれている。浅草の三社祭りでは体格
    の良い若者らが神輿の重さに顔を歪め、必死の形相で神輿を担ぐ横を、体格の良い
    外国人観光客を乗せて、車夫が人力車を軽快に引いて街を案内している。
     酒好きが日頃世話になる“おでん”や“ラーメン”の屋台は、古くから切り離し性が
    良いことから切り離した後、独立した車両、設備として広く利用されてきた。
     2011年に発生した東北大地震のあと、トレーラの切り離し性の良さを利用して、簡
    易ホテルや美容院、応接室、トイレなど海外で広く普及している、切り離し車両として
    のトレーラ利用が、ようやく国内でも広がっている。 
     少ない牽引力(人、馬、トラクタ)で大きな重量、容積の輸送を可能にするリヤカー
    は、牽引(トレーラ)方式の代表車両であり、リヤカーはこれからのレーラの課題や方
    向性を先見している。
    リヤカーが示唆する
    レーラの課題と方向性
    休憩時間
    TheTRUCK2015年9月号59
    トレーラ(牽引)方式なら子供でも大きな重量を運ぶことが可
    能。輸送効率の高いリヤカー方式
    トレーラ(牽引)方式の人力車は、車夫が乗客を乗せて軽快
    に観光地を案内する
    担ぐトラック)方式の神輿は、担ぎ手が苦しさに顔を歪めな
    がら神輿を前に進める
    1914年に製作された第一号のトレーラ。現在はフォード博
    物館(デトロイト)に展示されている。(提供日本フルハーフ㈱)
    世界初のトレーラを製作したデトロイトのオーガストフルハー
    フと12人の鍛冶屋職人たち。左上はフルハーフ創立者の
    オーガストフルハーフ(提供:日本フルハーフ㈱)
    は、使う力(馬力、人力)は同じでも輸送量は大
    幅に増やすことができる。
     人を背中に背負う方法では、人を一人を担ぐ
    のにも骨が折れる。しかし、牽引(トレーラ)方
    式の人力車は大柄な外国人を数人乗車させて、
    軽快な足取りで観光地を案内している。
     日本の夏祭りでは、担ぎ手が顔を苦痛に歪め
    ながら重い神輿を、必死に担いで前方に運ぶ。
    一方、牽引(トレーラ)方式のだし(山車)車は、
    重いだし(山車)を子供たちが、楽々と、笑顔で
    引いて行く。このような光景からも牽引(トレー
    ラ)方式の輸送がエネルギー効率、輸送効率に
    優れ、世界中で普及してる理由と判る。
     近年、荷主への罰則規定を含めて過積載への
    取締が厳しくなったことや、コンプライアンス
    経営(法令遵守)にもとずいた制限重量以下での
    定積載輸送、スピードリミッター装着(速度制
    限装置)による定速運行などの理由から、従来
    TheTRUCK2015年9月号60
    欧米ではワンボックスカーや乗用車で牽引する小型トレーラ
    が普及している
    トレーラ輸送は一人の運転手で単車トラックの約2倍以上の輸送が可能にな
    る。同馬力なので排出する排気ガス量は同じである(提供:(仏)ベナルー社)
    よりさらに荷物の滞貨傾向が強くなったこと
    で、単車トラックでの輸送から、輸送効率の良
    い牽引(トレーラ)方式への輸送の変化が求めら
    れている。
     1980年頃、ドイツの黒い森に降った酸性雨
    による森林資源の破壊、タンカー事故による油
    流失、資源リサイクル、PM2.5など大気汚染
    による地球環境破壊の問題も重要な社会テーマ
    になっている。環境問題への対応として、多く
    の企業ではISO14000(環境管理)認証を取得
    する活動も盛んに実施されている。 
     トレーラはトラックに比べ、同じエンジン馬
    力でも一人の運転手が運ぶ輸送量(重量、容量)
    は単車トラックの倍以上の輸送が可能になり、
    また、輸送量当たりの排出ガス量は単車トラッ
    クに比べ半分以下になる。東京都内の渋滞を見
    るたびに、国内でも諸外国のようにトレーラ利
    用が普及すれば、走行する車両台数は確実に減
    り、渋滞解消の一助になると同時に、空気中へ
    の排出ガス量も削減されることは間違いない。
     リヤカーやトレーラなどの牽引方式の車両
    は、環境問題への負荷が単車トラックと比べて
    少ないと言える。 
     日本を除くフィリピンや香港などの小さな国
    を含め、世界中でトラックよりトレーラ輸送が
    普及している理由は、外国ではトレーラが環境
    に優しい輸送車両であることに、理解が進んで
    いる証なのかもしれない。
     経済状況が不透明で運賃価格の上昇が望めな
    い時代に、車両の燃料費の削減は輸送業にとっ
    て経営上の重要な課題となっている。「中東で戦
    争危機」、「OPECの原油価格が上昇」「円安進
    行」の報道のたびに燃料価格は上昇する。燃費
    性の良い車両の選択を考えるときにもリヤカー
    は良いお手本になる。
     人やトラクタなど牽引する側への負担が軽く
    て沢山の荷物を運ぶには、自重が軽く、道路の
    上をタイヤの転がりが良い車両が望まれる。ご
    つい構造のリヤカーなんて見たことがない。リ
    ヤカーであるトレーラには今後、ボデー部だけ
    でなくフレームなどの強度部材にもアルミニウ
    ム材を採用し、軽量化を実現した車両に変化す
    るのであろう。
     ダブルタイヤ(複輪)を装着したリ
    ヤカーも見たことがない。リヤカー
    はすべてシングルタイヤ(単輪)が取
    り付けられている。欧州で普及して
    いるスーパーシングルタイヤを装着
    したトレーラは、ダブルタイヤを取
    り付けた車両に比べてタイヤ重量が
    軽くなるので、車両の燃費性が改善
    休憩時間
    TheTRUCK2015年9月号61
    オールアルミ製トレーラは車両重量が軽く積載量が多いので
    経済的な輸送を実現する。トラクタへの追随性も良いので
    運転手の疲労が少ない(提供:(仏)ベナルー社)
    スーパーシングルタイヤは重量が軽く、路面との摩擦抵抗が
    少ないので燃費性能が良い。軸数を増やすことで道路への
    負担重量も減り環境にも優しい(提供:(仏)ベナルー社)
    輸送効率がよく、環境にも優しいエコ輸送を実現するトレー
    ラ方式(牽引)によるリヤカー輸送。牽引フックは牽引車(自
    転車)の中央部に位置し、アクスルは後部の中央に取り付
    けたセンターアクスル仕様となっている(東京:銀座)
    される。 
     スーパーシングルタイヤをとり付けたトレー
    ラはダブルタイヤ装着のトレーラに比べると、
    装着するタイヤの本数は半分なので道路との摩
    擦抵抗が減り、燃費性能やタイヤの摩耗性も改
    善される。ゴム原料の使用量も少ないので環境
    にもやさしい。
     スーパーシングルタイヤを装着したトレーラ
    は、左右タイヤ間のトレッド寸法がダブルタイ
    ヤより広くなるので、車両の走行安定性も増
    す。トリプルアクスル(3軸)車に12本ものタ
    イヤを取り付けたトレーラより、スーパーシン
    グルタイヤを6本装着したトレーラの方が一
    見して軽快な走行を感じる。
     国内と異なり、燃費性、経済性、運行性能
    に優れたスーパーシングルタイヤをとり付け
    たトレーラが広くヨーロッパで普及している
    理由は、リヤカーに学べば当たり前なのかも
    しれない。
     ホイールの軽量化が可能になるので、米国の
    東海岸ではスポークホイールを装着したトレー
    ラも多く走っているが、リヤカーにスポークの
    リムが使用されてることを参考にしているのか
    もしれない。
     リヤカーのアクスル(車軸)は荷台のほぼ中央
    に取り付けられている。連結部は牽引する自転
    車のサドルの下にあり、自転車の後方部ではな
    い。センターアクスル型トレーラ(フルトレー
    ラ方式)もリヤカーと同様に、トレーラのほぼ
    真ん中にアクスルがとり付けられ、牽引するト
    ラックと連結するピンドルフックの位置は通常
    のドーリー型フルトレーラと異なり、トラック
    の最後部ではなく、トラック後部よりかなり前
    方に取り付けられている。
     リヤカーと同様に、センターアクスル型ト
    レーラは牽引トラクタへの追随性がよく、連結
    部分の間隔も短くできるので荷台の長さも大き
    くとれる。
     まさしくリヤカーはトレーラの教師のようで
    ある。
    TheTRUCK2015年9月号62
    ヨーロッパではトラック、トラクタ、トレーラはエアサスペンショ
    ン仕様に変更が進む
    連結間距離が短く、床面積が大きいセンターアクスルトレーラ。 一人の運転
    手で4個のJRコンテナ輸送を可能にしたセンターアクスル型コンテナトレーラ(苫
    小牧:㈲石田産業所有)
     経営者が車両の燃費性を重要視している一方
    で、外国人には国内で運転手がエンジンをかけ
    たまま仮眠したり、車両を離れてドライブイン
    で食事をする姿が常態化しているのは理解でき
    ないと言う。バスではアイドリングストップ車
    がどんどん普及し運行している。環境への配慮
    や、限りのある地球資源の無駄使いを減らす観
    点、経営に必要な正しい車両の燃費性能を把握
    するためにも、運転手には走行時以外のエンジ
    ン停止の励行が望まれる。
     駐車中にリヤカーの自転車ペダルを踏んでエ
    ネルギーを消費する人はいないのである。
     トリプルアクスル(3軸)や多軸アクスルを装
    着したトレーラの利用がヨーロッパや米国など
    の輸送先進国では普及している。アクスルの軸
    数が多くなると、1軸当たりの重量負担は軽く
    なるので道路を傷めない、道路にやさしい車両
    になる。多数軸のアクスルを装着したトレーラ
    は地球環境にはやさしい車両なのである。
     国内では高速道路の走行料金は装着されたア
    クスルの本数で決定される。2軸トレーラは1
    軸より、3軸トレーラは2軸アクスルを装着
    したトレーラより高額の走行料金が課せられ
    る。道路への重量負担が大きく、道路に厳しい
    1軸車が最も安い高速料金になってい
    る。道路を傷めない、路面にやさしい
    多軸のトレーラが高額な料金を課せら
    れるのは、地球環境の観点からはどう
    も合点がいかない。
     近年、トレーラを含めてエヤサスペ
    ンションを装着した車両の普及が著し
    いが、道路への重量負担がやさしいエ
    ヤサス車両の高速料金が減額されることも期待
    したい。
     フェリー運行を中心とする国内トレーラの走
    行距離は年間4000キロにも満たない。国内
    では一般的にトラックと比較してトレーラの走
    行距離は比較にならないくらい短い。それでも
    トレーラは年に一回の車検が義務付ずけられて
    いるので、アクスルを車検時には分解して整備
    する。牽引するトラクタ(牽引車)と牽引される
    トレーラ(非牽引車)では走行距離も使い方も全
    く違うのに、同じ車検期間、整備基準が求めら
    れている。総重量8トン未満のトラック車両
    の初回車検が2年間に延長されたのに、トレー
    ラが1年毎の車検を未だに続けているのは腑
    に落ちない。
     リヤカーはフレームが錆びたり、損傷したと
    きは部品を交換して修理するのでなかなか廃車
    にならない。錆びたトレーラのフレームを交換
    したり、傷んだアクスルを交換するのは、物を
    休憩時間
    TheTRUCK2015年9月号63
    リヤカーは非牽引車トレーラ方式)の先見性を発揮。輸送
    目的だけのリヤカーに付加価値は少ない
    ヤカーに架装をすることで付加価値の高い“おでん”屋台になる
    ジェトエンジンを採用して大きな発電を可能にした非常用電
    源゙トレーラ。災害時には被災地でトラクタと切り離されて緊
    急用発電装置として活躍する(提供:日本フルハーフ㈱)
    大事にする外国では当たり前であり、トレーラ
    の使用年数は長く、トレーラは車両寿命の長い
    経済的な輸送機器として扱われている。わが国
    ではトレーラの「初回登録時の打刻番号が消え
    ると車検が複雑、面倒になる」などの話は外国
    人が聞けば驚くであろう。
     フレームが錆びたら車両の安全性を保つため
    交換する。打刻番号が必要なら交換された新し
    いフレームに再度、打刻すれば済む。多数軸の
    トレーラでは痛んだアクスルだけ外して簡単に
    交換すればよい。資源の無駄使いを減らすにも
    トレーラの規制緩和が望まれる。
     トレーラはリヤカーと同じように、経済的で
    環境に優しい輸送機器なのである。
     リヤカーには切り離し車両として優れた利便
    性もあり、本来の運送だけを目的にしたリヤ
    カーの持つ付加価値は低いが、切り離し車両と
    して種々の設備を装置、架装することで、付加
    価値の高い車両になることもリヤカーは教えて
    くれる。
     フレームだけの単純なリヤカーに付加価値と
    して調理器具の設備を架装して、“ラーメン”
    や“おでん”の屋台として利用されるリヤカー
    は、営業条件の良い場所を選んで移動し、牽引
    部を切り離した後、屋台は切り離された設備と
    して、毎夜、営業を開始する。
     一部の大手スーパーの駐車場で冷凍トレーラ
    が切り離されて、小規模の冷凍倉庫として利用
    されている例を除き、国内ではトレーラの切り
    離し車両としての利用は未だ少ない。円錐型を
    したセメント輸送用トレーラを直角に立ててセ
    メントの簡易プラントとして利用したり、災害
    多発国のわが国でありながら、大型の非常用発
    電装置を搭載したトレーラも少ない。海外の原
    子力発電所や石油プラントでは、ジェット戦闘
    機のエンジンを利用した大きな発電装置を搭載
    する非常用電源トレーラも、1977年に発生し
    たニューヨークでの大停電以降、たくさん用意
    されている。
     外国のPKO(PieceKeepingOperation)
    部隊では厨房用(Catering)車両や、トイレ、
    シャワー施設、給水タンク車にも切り離し性に
    優れたトレーラが使用されている。輸送システ
    ムでの中継基地やストックポイントとしての一
    TheTRUCK2015年9月号64
    海水浴場での利用や、災害発生などの緊急時に活躍する
    トイトレーラ。トレーラの切り離し性の良さが発揮される(提
    供:㈱オーシャン)
    大勢の人が集まるイベント会場や競技場、ビール祭りに利
    用されるトイトレーラ(提供:日本フルハーフ㈱)
    イベント会場での野外映画、企業広告などにジャンボスクリー
    ンを搭載したトレーラが活躍する(提供:日本フルハーフ㈱)
    食堂、喫茶店(写真左)、美容室、居酒屋、公衆トイレ(写真右)など、全ての施設がトレーラを利用して構成された公園施設(千
    葉県木更津市 羽鳥野みなのば)
    時的な使用や、夏場の海水浴場の海の家や花火
    会場での発電装置、冬場のスキー場での利用な
    ど季節性が求められる利用にもトレーラは適し
    ている。
     災害発生時、被災地では使用期間や設置場所
    が不確定な救護施設や救難設備にも、エンジン
    点検などの日常整備が不要なトレーラが利便性
    を発揮する。
     単体のトレーラは長さ:12m、幅:2.5mの
    大きさがあるので、約30㎡の平面積を持って
    いる。移動用トレーラハウス、トイレ用トレー
    ラだけでなく、リサイクルステーションやイベ
    ント会場で活躍する大型スクリーン等々…切り
    離し車両の利便性を活かしたトレーラの利用は
    数え切れない。
             
     国内ではトレーラのイメージは、一度に大量
    に荷物を輸送することが可能で、高速で走行す
    る大型輸送車両のイメージで捉えられ、トレー
    ラの市場規模は小さいと考えられている。一
    方、海外では被牽引車であるトレーラ市場は大
    型輸送車両としてだけでなく、小、中型のトレー
    ラも多く利用され、さらには切り離し車両、付
    加設備として大きな市場を構成している。
    休憩時間
    TheTRUCK2015年9月号65
    2011年の東北大震災以降、宿泊所、事務所、応接室、美容院など被災地での利用から市場が拡大するトレーラハウス。優
    れたトレーラの切り離し性が国内でもようやく注目されている。製作中の被災地向けトレーラハウス(㈱オーシャン)
    切り離されクレープ販売に活躍する中型センターアクスル
    レーラ(東京:浅草)
     グローバルな時代に各国間での経済活動の円
    滑化が求められ、わが国でも欧州とのEPA(経
    済連携協定:EconomicPartnershipAgree-
    ment)、アジア各国とのFTA(自由貿易協定:
    FreeTradeAgreement)、米国を含めた環太
    平洋諸国とのTPP(環太平洋戦略的経済連携協
    定:Trans-PacificPartnership)などの関税
    障壁を取り除く交渉が進んでいる。国内の製造
    業を含む生産者、消費者からは他国に負けない
    販売価格の実現に、価格に大きな割合を占める
    輸送コストの削減が求められている。
     他国に負けない輸送コストの実現には運転手
    一人当たりの輸送量の増加、輸送量当たりの燃
    費の削減が求められ、その実現には“担ぐ”輸
    送の単車トラックでの輸送から、大きな社会問
    題となっている運転手不足への解決の助けとな
    り、その安全性から世界中で広く利用されてい
    る“引く”輸送方式の大きなリヤカー、即ちトレー
    ラ利用による輸送への変換が求められる。
     航空機は他の輸送手段に比べるともっとも安
    全な乗り物であるが、大きな航空機事故が起き
    るとテレビや新聞では大きな報道がされ、大変
    に危険な乗り物のように報道されてしまう。ト
    レーラも車両が大きいことから事故が発生する
    と、恰もトレーラは危険な輸送機器のように報
    道がされるが、トレーラは航空機と同様、輸送
    トンキロ当たりの事故発生件数は少なく、安全
    な輸送機器のひとつである。
     たくさんの荷物を積んだリヤカーの事故を見
    ることはないし、リヤカーはトレーラが安全な
    輸送機器であることを教示してくれる。
     リヤカーの単語は英語の辞書にはない。野球
    のナイターなどと同じ和製英語である。誰がつけ
    た名称なのか知る由もないが、屋台の“ラーメン”
    や“おでん”を食べながら酒を飲むたびに、リヤ
    カーの屋台が非牽引車両方式、所謂、トレーラ
    方式の利便性や課題、方向性を教えてくれる。
     今日も勉強のために切り離し車両(トレーラ)
    の屋台で“おでん”をツマミに酒を飲み、仕上
    げは屋台のラーメンでも食べましょう!…。
    リヤカーはトレーラの原点のように感じる。
    清水英次社長
    TheTRUCK2015年8月号
    66
      同社は昭和45年11月、「有限会社清水運輸」
    として創業しているが、現在は「清水運輸㈱」「㈱エ
    スユーロジ」「㈱エスユーコールド」「㈱エスユー物
    流企画」「㈱カーボディープリント」の5社で清水運
    輸グループを形成している。発足当初は、清水英次
    現社長の祖父が代表者であったが、間もなく父君の
    邦夫氏に引き継がれ、5年前に英次氏が3代目社長
    に就任している。
     先代は主にプラスチックの成形品の輸送に従事して
    いたが、英次氏が役員として入社以来、食品に切り
    替え、現在では250台の内、30台が定温輸送車と
    なっている。
     ホームページでは「貸切輸送から積合せ輸送まで
    お客様の物流ニーズに合わせたサービスを提供しま
    す。物流における豊富なキャリアとノウハウを配送に
    活かして、効率的な積み合せ配送できめ細かく対応し
    ます。また、全国を結ぶきめ細かなネットワークを形
    成し、チャーター便から、共同配送、積合わせ輸送、
    倉庫保管、貸切輸送、ルート配送など物流形態に合
    わせた輸送・配送・倉庫保管サービスを提供していま
    す。」と事業を紹介している。
     清水社長は大学卒業後約8年間、食品大手の物
    芸術性の高い
    ボデープリトで
    運送事業のイメージアップ
    ドライバーのリクルートに
    明確な効果
    清水運輸
    (埼玉県)
     写真や絵画などのデーターを車体に直接プリントするオートボディプンターで知
    られる㈱エルエーシーの長坂純一部長(国内営業部)から、「デザイン学校と協
    同でトラックの車体をデザインアップして、企業の知名度・イメージアップを図り、
    ドライバーリクルートに成功している運送事業者がある。」と聞いて、清水運輸
    ㈱に清水英次社長を訪ねた。物流二法の施行以来、自由化の波に晒されサバイ
    バルゲームを展開してきたトラック運送業界であるが、同社には車体に付加価値
    をつけることで、新たな運送経営に取り組む若手経営者の姿があった。
    埼玉県 羽生市役所 市長・清水社長
    志木市役所 櫻井副市長と清水社長
    清水運輸グループ
    TheTRUCK2015年8月号67
    流子会社に勤務、物流マネージメントを身につけ30
    歳で清水運輸に役員として入社、約10年余りは経
    営の立て直しに奔走、42歳で社長に就任、現在は
    社員と共に新たな運送経営を模索している。
     同社には『楽業偕悦(ラクギョウカイエツ)の社是
    がある。
    「同じ志を持った人たちが、共通の目的に向かって
    一致協力し、個人の生きがい・誇り・悦びを大切にし
    て、苦楽を分かち合いながら、悦びをともにしていく」
    という意味である。これは、清水社長がサラリーマン
    時代の会社で教えを受けて来た社是と先代が常日頃
    から口にしていたことをカタチにしたものである。
     創業から45年を経て、同社も高齢化が進み、苦
    楽を共にしてきた従業員もトラックを降りなければなら
    ない時期を迎えている。そこで、事業計画として立案
    したのがトラック運送に関連する付帯事業への進出で
    ある。
     先ず倉庫を建てて荷物を預かり、流通センター事
    株式会社エスユーロジ 袋田の滝
    株式会社エスユーロジ
    作業風景
    TheTRUCK2015年8月号
    68
    業を開始。高齢化した従業員は庫内作業に回す。ま
    た、荷主企業と折衝してフォークリフトなどの荷役作
    業一切も請け負う。パレタイズされた荷物の運送は手
    荷役がないので女性ドライバーを回す。燃料を使う仕
    事なのでガソリンスタンドの経営にも乗り出した。
     社員と一緒につくり上げた中期五カ年計画では、
    毎年ひとつずつトラックに関連した新規事業に乗り出
    すことになっており、着実に実行してきた。
     その新規事業で昨年からスタートしたのが“ボデー
    プリント事業”である。清水社長は、本誌が主催した
    東京トラックショーでエルエーシーが実演したオートボ
    ディプンターを観て、ボデープリント事業に乗り出すこ
    とを決断したという。
     同社がオートボディプンターを設置しているのは、
    ㈱カーボディープリント富士見工場(埼玉県富士見市
    下南畑928ー2)である。写真や絵画のデーターをセッ
    トすればバントレーラーのような大型車両も短時間で
    車体にプリントできるし、簡単に消すことも出来るの
    で、同じ車両に異なるデザインを何度でもプリントで
    きる。
     この“ボデープリント事業”を会社の知名度・イメー
    ジアップに活用したのは同社ならではの発想である。
    「車体には大きな壁面があるので、ここに芸術性に
    優れたデザインをプリントすれば人目を引くし話題性
    株式会社エスユーコールド 
    清水運輸グループ
    TheTRUCK2015年8月号69
    がある。同じ働くならあのデザイントラックを走らせて
    いる運送会社に入社したいという事でリクルート効果
    はアップする筈」と考えたのである。
     そこで、デザイン専門学校に声かけして生徒からデ
    ザインを募集、応募作品の中から優秀三作品を表彰、
    同社のトラックにプリントして走らせたのである。狙い
    はみごとに的中、この産学協同プロジェクトはマスコ
    ミも取り上げて大きな話題になった。
     また、この“ボデープリント事業”は大学だけでな
    く、県や地方自治体へも呼びかけて公共事業のPR
    にも活用している。「われわれ地域の運送事業者は全
    国でなくてもその地域に存在を知られれば良い。公
    共広告をプリントしたトラックを走らせれば、県や地
    方自治体が我々の存在を認知したことになるし、トラッ
    ク運送がライフラインを支える社会性の高い仕事で
    あることを知って頂く機会にもなる。と清水社長は胸
    をはる。
     清水社長はトラック協会の青年部に所属して、業界
    活動にも力を入れているが、この“ボデープリント事
    業”については「同業者でおなじ考えをもつ会社があ
    ればネットワークを組みたい。と更なる拡大を目指し
    ている。
     また、清水社長は「我々の“商品”(一番大切なも
    の)は荷主でもなければトラックでもない。社員とその
    家族です。」と言い切る。
    「今でも、自分の子供がトラック運送会社に就職し
    たいと言えば、あんな危ない仕事はやめときなさい、
    と反対する親御さんが多いが、トラック運送がなけ
    れば物は消費者に届かない。私たちの仕事は警察官
    や消防士と同じで、国民の生活を支えているのに、
    一般社会にはその認識が薄い。トラックに芸術性の
    高いデザインを施して走らせれば、この業界のイメー
    ジアップになる。とボデープリントの社会的意義を主
    張する。
     清水運輸は2年前から本格的にリクルート対策に取
    り組んでいるが、ホームページをデザイン変更した1
    年目には30名、ボデープリントを始めた今年は83
    名の増員に成功している。
     戦後間もなくスタートした会社の多いトラック運送業
    界は、現在3代目から4代目に世代交代している。
    インターネットやホデープリントをごく自然にリクルート
    に結びつけるのは若い世代ならではの発想で、この
    業界にも新時代が到来することを予感させる。
    (秋林路)
    TheTRUCK2015年8月号70
    ボデープリント施工事例
    清水運輸グループ
    TheTRUCK2015年8月号71
    TheTRUCK2015年8月号72
    ボデープリント施工事例
    清水運輸グループ
    TheTRUCK2015年8月号73
    TheTRUCK2015年9月号74
     全日本トラック協会は平成27年8月19日、キャピト
    ルホテル東急で開催された自民党トラック輸送振興議員
    連盟(細田博之会長)幹部会に、星野会長、坂本副会長、
    小幡副会長、福本理事長が出席が出席し、平成28年度
    税制改正・予算に関する要望書を手渡し、最重点要望事
    項について説明した。また、同幹部会に出席した、藤
    井直樹国土交通省自動車局長、森昌文国土交通省道路局
    長、岡崎淳一厚生労働省労働基準局長に対しても要望書
    を手渡した。
    ★要望書の内、税制改正関連についてはおよそ以下の通り。
    1.自動車関係諸税の簡素化・軽減の実現
    ⑴一般財源化により課税根拠を失った軽油引取税について
    旧暫定税率の廃止
    「税負担の公平」の原則に著しく反していることから、 少な
    くとも軽油引取税の旧暫定税率相当分を廃止されたい。
    ⑵自動車税における営自格差見直し反対
     自動車税の営自格差の見直しが検討されているが、営業
    車の負担を増やすことは交通安全・環境の観点から政策
    的に逆行するばかりでなく、国民生活のライフラインとして
    の機能を損ないかねないものであり、断固反対である。
    ⑶自動車税における環境性能課税(環境性能割)の軽減
     今後の自動車税における環境性能課税(環境性能割)
    制度設計にあたっては、営業用トラックについて課税の軽
    減を図るともに、現行のASV(先進安全自動車)技術
    を備えるトラックに係る自動車取得税の特例措置を維持さ
    れたい。
    ⑷自動車重量税の道路特定財源化
     自動車重量税については道路特定財源としての位置づけ
    を明確にされたい。
    公益社団法人 
    全日本トラック協会
    自民党トラック輸送振興議員連盟に
    税制改正・予算に関する要望書
    高速道路の利用率拡大が
    安全・環境を促進すると説明
    写真右から、赤澤亮正自民党トラク議連事務局長、衛藤征士郎同顧問、木村太郎同幹事長、野田毅同顧問、細田博之同会長、古屋圭
    司同顧問、片山さつき同事務局長代行、星野良三全ト協会長、坂本克己同副会長、小幡鋹伸同副会長
    TheTRUCK2015年9月号75
    2.法人実効税率引下げに伴う代替財源に係る中小企業
    への負担増大反対
     トラック運送事業者は99%が中小企業であり、その多くが
    赤字経営であるため、中小企業への負担増大を強いる税制
    改正は、国民生活を支えるトラック運送業界の存廃に関わる
    ものであり、断固反対である。
    3.優遇措置の延長
    ⑴自動車税(グリーン化特例)の延長
    ⑵環境関連投資促進税制(グリーン投資減税)の延長
    ⑶雇用促進税制の延長
    ⑷少額資産即時償却の延長
    4.トラック協会が運営する地域防災・災害対策関連施設
    等について固定資産税の軽減措置の適用
     トラック協会が運営する防災・災害対策関連施設、設備
    については、その公共的な役割に鑑み、固定資産税の軽減
    を図られたい。
    ★予算関連については次の通り
    1.高速道路料金の更なる引下げ
    ⑴大口・多頻度割引最大50%の恒久化
     大口・多頻度割引の最大割引率50%の措置は、平成
    27年度までとなっているが、トラック輸送が国民生活と経
    済のライフラインとしての機能を将来的にも維持し続ける
    ため、この最大割引率を恒久化されたい。
    ⑵長距離逓減制の割引区分及び割引率の拡大
    ⑶営業車用料金体系の創設
    ⑷深夜割引の拡充
    ⑸コーポレートカード利用の平日朝夕割引における大口・多
    頻度割引
    ⑹本四高速における割引の拡充
    ⑺首都高速における大口・多頻度割引、会社間乗継割引
    等の継続
    ⑻北海道の道路事情を勘案した料金の設定
    2.高速道路のSA・PAにおける駐車スペースの整備・
    拡充
     トラックドライバーは、改善基準告示など法令上の規制に
    おいて、連続運転時間4時間までや休息期間等が義務付
    けられており、これを遵守するためには一般道も含め休憩ス
    ペースが不足している。法令遵守及びドライバーの労働環
    境改善のためにも、SA・PAにおける駐車スペースの整備・
    拡充を早急に実施されたい。
    3.環境対策及び省エネ対策のための補助
    ⑴石油石炭税に係る「地球温暖化対策のための課税の特
    例」の引上げ
    ⑵天然ガストラックの普及に係る補助
    4.交通安全対策のための補助
    ⑴ASV(先進安全自動車)関連機器の導入に対する補助
    の継続及び増額
    ⑵運行記録計、ドライブレコーダ等運行管理支援機器の導
    入に対する補助の継続及び増額
    5.長時間労働抑制のための諸対策に係る補助・助成の
    拡充
     来年度以降、パイロット事業を実施し、長時間労働抑制
    に向けて、トラック運送事業者と荷主が諸対策を講じること
    しているが、長時間労働抑制が促進されるよう、中小企業
    に対する労働時間の短縮を支援する助成金の拡充等、諸
    対策に係る補助・助成の充実を図られたい。
    6.北海道〜本州間のフェリー等利用に対する補助・助成
    の創設
     本州のトラック運送事業者は、高速道路料金の各種割引
    等による恩恵を受けることができるが、北海道の事業者の受
    ける割引は限定的であるため、北海道のトラック運送事業者
    がフェリー等を利用する際、長距離の高速道路料金の引下
    げに相当する補助・助成を創設されたい。
    7.軽油インタンク新設に対する補助の継続等
     軽油インタンクの設置を今後も促進するため、燃料貯蔵設
    備の導入補助を継続されたい。また、経年劣化に伴う改修費
    用も膨大であることから、改修に対する補助を創設されたい。
    高速道路の利用は不可欠と強調…小幡副会長
     要望書説明後の質疑応答で全ト協の小幡副会長は、高
    速道路の利用について欧米と比較するなど、安全・環境の
    為にも利用率を上げるべきだとして、以下の通り説明した。
    「高速道路の利用率が欧米32%に対して日本が16%と
    言われている。約半分だ。もし日本が欧米並みに高速道路
    を利用すれば年間の死亡事故は約600人減るので4000人
    から3400になるし、負傷者は80万人から20万人に減少す
    と言われている。また、燃料の使用量は 450万㎘も減る。
    これは四国4県の年間使用量に匹敵する。従って、高速道
    路の利用率を上げれば環境問題も好転する。更に、全国に
    は一車線の高速道路がまだ多く見られるが、追い越しが出
    来ないのでこれは危険。日本の高速道路利用率が欧米に比
    べて低いのは使用料金が高いためと思われる。我々トラック
    運送事業者は高速道路を使用しないと労働時間も守れない
    し、ドライバー不足も解消しない。事故が減れば保険料も引
    き下げられる等好循環が期待できる。高速道路料金につい
    ては担当の立場から重ねてお願いしたい。
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    TheTRUCK2015年9月号76
    MEDiSTAR
     三井倉庫ホールディングスは、京
    都大学iPS細胞研究所の依頼を受け
    「再生医療用iPS細胞ストック」
    用の輸送容器「MEDiSTAR」を開
    発、6日に専用容器を使用したiPS
    細胞の輸送を実施した。
     再生医療用iPS細胞ストックは、
    健康な人の血液や皮膚からiPS細胞
    を作製し、品質の良い細胞を保存す
    るもの。
     あらかじめストックすることで、
    iPS細胞を国内外の医療機関や研
    究機関に提供し、iPS細胞から目的
    の細胞に分化させて再生医療に利用
    する。
     MEDiSTARは、液体窒素を充
    填し、マイナス180℃以下の状態
    で振動を抑える工夫が凝らされてお
    り、輸送過程では容器内の温度管
    理や輸送手順など諸条件をクリアす
    ることで、再生医療などの安全性確
    保に関する法律に適合した輸送サー
    ビスを実現した。
     三菱倉庫は、医薬品専門の運送子
    会社DPネットワーク(埼玉県八潮市)
    と、医薬品の流通過程での品質管理
    基準(GDP)に対応した新たな医薬品
    保冷配送サービスの構築に着手した。
     具体的には、温度管理機能の適格
    性が確認された医薬品専門車両を使
    用し、保冷医薬品(2〜8℃)をDP
    ネットワークの配送拠点から医薬品卸
    会社へ直接配送することにより、輸
    送途上の積替回数を減らし、温度異
    常のリスクを低減。温度モニター・
    レーサビリティ・センターを設置して
    輸送途上の温度を監視し、記録を保
    存する。
     加えて、医薬品輸送に関する教育
    訓練・認定システムを構築し、教育
    訓練の有効性を定期的に評価、結果
    を記録する。
     新たな保冷配送サービスの名称は
    「DP─Cool」。9月に首都圏近郊・
    京阪神地区でサービスを開始し、順
    次全国に拡大する。
     GDP(GoodDistribuionPract
    ice)は、輸送中の温度管理、機材
    の適格性の確認、従事者への教育な
    ど多岐にわたる高度な管理体制を求
    めており、既に欧州で導入されてい
    る。日本は、医薬品医療機器総合
    機構および47都道府県を対象に昨
    年7月、GDP GUIDEを主催する
    医薬品査定協定・医薬品査察共同ス
    キーム(PIC/S)に加盟している。
     三菱倉庫は、欧州各国で現地調査
    を行うなど、新たな配送サービスの
    研究を進めてきた。
    三井倉庫HD
    iPS細胞を輸送
    専用容器を開発
    新医薬品配送
    サービス開始
    9月から
    GDP準拠、専用車両で
    三菱倉庫
    提供:運輸新聞
    TheTRUCK2015年9月号77
    山内社長と森会長
    式典の様子
     日本通運の現地法人・韓国日本通
    運は、釜山新港熊東(ウンドン)背後
    団地の自由貿易地域(FTZ)「釜山グ
    ローバルロジスティクスセンター」の起
    工式を行った。来年2月完成予定。
     敷地面積3万3713平方メート
    ル、延べ床面積1万8700平方メー
    トル、鉄骨・鉄筋コンクリート造3
    階建て。
     東京オリンピック・パラリンピック
    競技大会組織委員会(森喜朗会長)
    は、ヤマトホールディングス(山内
    雅喜社長)と東京2020スポンサー
    シップ契約を締結し、10日に帝国
    ホテルで発表会見を行った。
     オリンピックのスポンサープログラ
    ムは4つの階層からなり、最上位の
    ワールドワイドオリンピックパートナー
    はコカコーラ、ブリヂストン、パナソ
    ニック、トヨタなど12社、その他国
    内向けのゴールドパートナーはキヤノ
    ン、ENEOS、NTTなど13社。
     オフィシャルパートナーはこれまで
    ANA、JAL、東京ガスの3社が
    締結し、今回のヤマトホールディン
    グスが4社目になる。同社の契約プ
    ログラムは「荷物輸送サービスカテ
    ゴリー」。宅配、貨物輸送、ロジス
    ティクス、通関、国内引越と専門的
     普通倉庫・定温倉庫・流通加工ス
    ペース・危険品倉庫を有し、
    釜山をハブ港として最終仕
    向地向け積み合わせ転送す
    るマルチカントリーコンソリ
    デーションの基地となる。
     起工式は7月24日に行
    われ、松井定雄釜山総領
    事、柳元澤通関局長、許成
    な引越、信書の送達を除くダイレクト
    メールなどの業務を担う。契約期間
    は2015年8月10日から2020
    年12月31日まで、活用領域は日
    本国内。
     山内社長は記者会見で「大会に向
    けての準備、大会期間中は競技用器
    具、設営のための機材、報道の機材
    などが東京中心に集まり、飲食店、
    小売店などの商業貨物が膨大な量で
    集中する。一方、通常の活動をする
    会社や周辺の住民が安心して
    快適な生活を支える物流も必要
    だ。私たちは荷物輸送サービ
    ス・パートナーとして、また、
    社会インフラ企業として、大
    会の円滑な運営はもとより、活
    性化する商業貨物の円滑な流
    通、通常の企業活動や日常生
    活の維持を両立すべく、進化
    した物流ネットワークサービスを提供
    し、万全の体制で臨みたい。当社は
    2019年に創業100年を迎える。
    大会を当社と日本の次に来る100年
    に向けてのイノベーション創造の機会
    として捉え、大会の成功、豊かな社
    会の実現に貢献していきたい」と決意
    を表明した。
     森会長は「オリンピックの運営は大
    変複雑で、28競技プラス新設の競
    技が東京だけでなく、埼玉、千葉、
    神奈川にも会場を分散し行われるた
    め、輸送の範囲も広がる。大会運営
    に必要な物品を時間までに必要な場
    所に届けなければならないという想像
    を絶する規模の物流計画が必要にな
    る。これをすべてヤマトホールディン
    グスが解決し、オリンピックの物流を
    坤釜山鎮海自由貿易区域庁長、日通
    からは杉山龍雄東アジア地域総括、
    内田敏郎執行役員らが出席した。
     新倉庫により、日通グループの韓
    国での倉庫は11棟、6万2313平
    方メートルとなる。
    釜山FTZで新倉庫起工式
    韓国日通
    トラックユーザーNews
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    TheTRUCK2015年9月号78
     近畿運輸局は、二酸化炭素(CO
    排出量削減をはじめとする交通に関
    する環境改善への貢献を評価し、佐
    川急便を交通関係環境保全優良事業
    者として表彰する。
     佐川急便は、天然ガストラックを
    国内普及台数の約21%に当たる
    4019台を導入するなど、低公害
    支えてほしい」と激励した。
     契約内容を説明したヤマトホール
    ディングスの丹澤秀夫上席執行役員
    は「2012年のロンドン大会では、約
    100万個の競技用の備品、全体で
    3000万アイテムに及ぶ荷物の輸送
    が発生したという。当社は羽田クロノ
    ゲートをはじめ、約700カ所の配送
     トラック運送業の人手不足が深刻
    化している。行政、荷主、事業者
    によるトラック輸送における取引環
    境・労働時間改善中央協議会が発
    足し、地方協議会が次々に立ち上
    げられて労働環境の改善に動き出し
    ているが、人手不足のツケは現在
    いるドライバーに回されており、ガ
    イドラインがまとまる4年先まで待
    つことはできない。
     若年労働者層に敬遠される3K職
    種の代表だと示す資料の1つに、厚
    車を積極的に採用。モーダルシフト
    も推進し、モーダルシフト全体で、
    2014年度は約11万㌧のCO
    削減させた。
     また、都市部でトラックなどを使
    用せず台車や3輪自転車などによっ
    て集配を行う「サービスセンター」
    全国約340カ所に設置、トラック
    拠点をフル活用して、多品種大量の
    備品をきめ細かく、かつ正確に輸送
    し、大会の準備と円滑な運営に対応
    していきたい」
    「既に全国100カ所余で展開して
    いるビル・タウンマネジメントソリュー
    ションのノウハウを競技会場や関連施
    設が集中するエリアに活用し、普段
    生労働省がまとめた「14年度脳・心
    臓疾患に関する事案(過労死)の労災
    補償状況」がある。全業種支給決定件
    数の約3分の1を「道路貨物運送業」
    が占め、前年度に続いてワースト1だ。
     昨年度の過労死認定の請求件数は
    全業種で763件、前年度より21
    件減って3年連続で減少はした。支
    給決定件数は277件で、こちらも
    前年度より29件減って2年連続で
    減少はしている。
     大分類でみると、請求件数が最も
    約1500台の使用抑制につなげて
    いる。
     これらの取り組みに当たっての独
    自天然ガス充填スタンドの設置、モー
    ダルシフト推進のための専用特急コ
    ンテナ列車の開発、サービスセンター
    向け3輪電気自動車に合わせた宅配
    便の集配専用ボディの開発なども評
    価された。
     表彰式は8月27日、大阪市中央
    区の大阪歴史博物館で、記念講演
    会と併せて開催する。
    と同じ物流インフラの維持、交通渋
    滞の緩和、CO
    削減や事故率軽減
    に貢献したい」
     さらに、「訪日外国人が手ぶらで周
    遊できるプラットホームを構築し、日
    本ならではの『おもてなし』の実現を
    物流パートナーとして取り組んでい
    く」と意気込みを語った。
    多かったのは「運輸業、郵便業」
    168件、次は「卸売業、小売業」
    126件、「建設業」97件の順。
    支給決定件数も「運輸業、郵便業」
    92件、「卸売業、小売業」35件、「製
    造業」31件の順。
     中分類では請求件数、支給決定
    件数ともに「道路貨物運送業」が最多
    で、職種では「自動車運転従事者」
    が最も多い。過労死全体の3分の1
    が自動車運転従事者という現実が突
    きつけられている。
     長時間労働を原因として、脳、心
    臓の疾患を患い、病状が進行して亡
    くなった人もいる。精神障害に関す
    る事案の労災補償状況は、請求件
    数が1456件で前年度より47件の
    増。支給決定件数は497件で前年
    佐川急便を表彰
    近運局
    提供:運輸新聞
    TheTRUCK2015年9月号79
    完成予想図
    度より61件増加した。
     業種別では、請求件数は「製造業」
    が245件で最も多かったものの、支
    給決定件数は「道路貨物運送業」
    41件が最多だった。支給決定理由
    には「悲惨な事故や災害の体験、目
    撃をした」(ひどい)嫌がらせ、いじ
    めまたは暴行を受けた」といったもの
    がある。
     こうした精神障害の前兆は身体的
    な変調に現れる。トラックドライバー
    の職業病の1つとして腰痛がある
    が、精神的な要因で起こっているケー
    スもあるという。腰痛以外にも、下痢
    便秘なども心身症といわれるストレス
    関連疾患(表)の前兆だったものもあ
    る。現有勢力を離脱させないために
    は、点呼の際のコミュニケーションの
    取り方の見直しが必要だろう。 
     日通商事は、タイ国プラチンブリ
    県ロジャーナプランチンブリ工業団
    地内に「AZLタイランドプランチン
    ブリ ロジスティクス・サポートセン
    ター」を7月に着工、来年2月に竣
    工する。
     施設規模は、3万444平方メー
    トルの敷地に、延べ床面積7540
     労働安全衛生法により、一定規模
    の事業場には産業医の選任が義務
    付けられているが、零細運送会社に
    は義務はない。産業医のいる会社で
    も、受診で悪い結果が出ると運転業
    務を外されるのではと心配して、受
    診しないケースもある。
     歩合制が敷かれているドライバーの
    給与体系が受診を拒む原因の1つで
    もある。実運送業者のドライバーは、
    低迷する運賃下で生活を維持するた
    め、元請業者のドライバーが1運行
    で稼ぐものを下請け以下の業者は2運
    行で稼いできた。荷主が十分な運賃
    を出していても、多層化する業界構
    造の中で取扱手数料として消えてい
    く。トラック業界の構造変革も急務だ。
     貨物自動車運送事業法施行以前
    は、運送免許取得には荷主の出荷依
    平方メートルの高床式建家で、
    合計12基のドックレベラー、
    15メートルの庇を配し、また施
    設内LED、スカイライ(天井
    から外光を取り入れる)、FRP
    (壁面からも外光を取り入れ)
    を採用する。
     ロジャーナ・プランチンブリ工
    頼証明が必要で、どの運送業者も直
    荷主を持っていた。これが不要になっ
    たことで下請け、孫請けの専門業者
    が生まれた。多層化で消える運賃を
    消えないようにすればいいのだが、
    中間にいる業者が既得権益を守ろう
    として運送業界自体が一枚岩になれ
    ない現状がある。
     取引環境・労働時間改善中央協
    議会や順次開かれている地方協議会
    は、物流が止まることは経済全体に
    とっても深刻な問題だと捉え、国土
    交通省、厚生労働省、経済産業省
    が荷主を巻き込み、取引環境を整え
    つつ、労働環境の改善を図ろうとし
    ている。手待ち時間削減を図るため
    の労働時間実態調査から着手し、4
    年かけて結果を出す構えだ。
     道路貨物運送業界挙げてこの厳し
    い労働環境を改善させなければ、次
    代を担う人材は入ってこないし、業界
    から去る人も続くだろう。底辺にいる
    実運送業者までを底上げするには、
    運賃アップや手待ち時間の短縮もさ
    ることながら、健康チェックなどの労
    務管理の見直しに加え、運送許可基
    準の見直しや多層構造の改善に向け
    た法改正も考える必要がありそうだ。
    タイに新LSセンターを建設へ
    日通商事
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    TheTRUCK2015年9月号80
    KO─SENKO物流センター
    業団地はバンコクから140キロメー
    トル、レムチャバン港から130キ
    ロメートル、南部経済回廊上に位置
    し、アセアン統合時のハブとして期
    待されており、近隣工業団地には数
    多くの日系自動車・半導体部品メー
    カーが進出している。
     同社は1996年、アユタヤに現
    地法人を設立して梱包事業をスター
    ト以来、7地区にロジスティクス・
    サポート拠点を整備。AZLタイラン
    ドは14年に設立している。
     今後はリース部門や南アジア地区営
    業開発部門の設置など、物流関連を
    中心にさまざまな事業を拡大していく。
     センコーが東アジア地域強化の
    一環として開設した韓国の「KO─
    SENKO物流センター」が、韓国国
    内および、日本と韓国、中国など東
    アジアでの物流サービスを拡大・強
    化する重要な拠点となっている。
     同社は中期経営4カ年計画
    (2013
    16年度)において、「Mov
    ingGlobal」をスローガンに、国際
    物流事業の強化と海外での物流セン
    ター拡大に取り組んでいる。
     海外の物流機能を強化させる重点
    地域として①東アジア②東南アジア
    ③中央アジア④北米─の4つを設
    定。東アジア地域は、中国・大連を
    はじめ、上海、青島、広州、香港
    など、沿岸部を中心に
    拠点を設置し、現地で
    の物流と流通加工の一
    元実施はもとより、中
    国国内・海上輸送・国
    内物流までを元受け管
    理している。
     KO─SENKO物流センターは、
    韓国・釜山新港の隣接地の「熊東(ウ
    ンドン)物流団地に建設。施設は、
    敷地約3万7000平方メートル、
    鉄骨造3階建て(倉庫部分は平屋建
    て)延床面積約1万9000平方メー
    トルの規模で、運営は韓国の現地企
    業との合弁会社「KO─SENKO物
    流」が担う。
     アジア諸国のハブ港としての機能
    を高めている釜山新港および釜山港
    は、アジア経済の発展により、世界
    5位のコンテナ扱い量を誇る貿易港
    に成長しており、アジア諸国の貨物
    が今後も集積する港として発展が期
    待されている。
     港湾内は関税などが減免される自
    由貿易地域(FTZ)に指定されている
    東アジアの物流拡大韓国も重要な拠点に
    センコー各社の国際物流戦略
     マルソー(本社=新潟県三条市)
    は、新潟西SCLを開設し、新潟共
    配センターをリニューアルオープン
    した。
     新潟西SCLは、手狭になった新
    潟緒立流通センターを移転。敷地面
    積3577坪、保管面積600坪。一
    部温度管理設備あり。同時に、新潟
    西部エリア3カ所に分散していた
    車両を集約し一元管理する。
     新潟共配センターは、賃借して
    いた物件を取得し、全面リニュー
    アル。敷地面積2510坪、保管面
    積3300坪。家庭用紙製品、加工
    食品など流通系の共同配送拠点と
    なる。
    ほぼすべての主要紙メーカーを一括
    管理する共同化を実現し、納品先で
    あるドラッグストア、スーパー、ホー
    ムセンターなどの業務効率化に貢献
    する。
    新潟西SCLと
    共配センターを開設
    マルソー
    提供:運輸新聞
    TheTRUCK2015年9月号81
    勝又一俊社長
    ほか、入港料の免除や低価格で土地
    が借りられるなど有利な条件が整っ
    ており、FTZの利点を生かし、アジ
    ア各国から釜山港に集積された部品
    や半製品を物流センター内で加工し
    て第三国へ輸出するサービスや、港
    湾荷役、韓国国内向け配送などにも
    サービス範囲を広げ、東アジア地域
    での業務拡大を目指す。
     SCEM(サプライチェーン・イベ
    ント・マネジメントシステム)による物
    流情報を着荷主への提案に生かすと
    いう、同社のIT(情報技術)面のサー
    ビスと併せて複合一貫輸送の充実を
    図る。
     カンダホールディングスが、ペガ
    サスパーセルサービスから譲り受け
    た国際宅配便事業を母体に、国際
    物流市場に本格的に参入して4年
    が経過する。
     狙いの1つは、グループ企業に
    よる国際一貫輸送体制(一気通貫)
    の構築を図ること。海外ベンダーか
    らの貨物を、ペガサスの海外パート
    ナーやフォワーディング機能、通関
    機能を生かして日本に持ち込み、カ
    ンダグループの国内物流につなぐ。
     さらに、国際事業の業容拡大(M
    &A、業務提携)および海外物流拠
    点の設置がある。2012年にペガサ
    スグローバルエクスプレス(PGE)
    タイ、PGE上海駐在員事務所を設
    立、13年インドネシアの首都ジャ
    カルタに駐在員事務所を開設。これ
    により、日本、中国、タイ、インド
    ネシアの4極を結ぶサービス体制を
    構築した。また、タイを起点とした
    隣接4カ国で部品調達物流の展開
    も進めている。
     昨年4月には、名古屋に拠点を
    置いて国際海上貨物の輸出業務を
    主に行っているニュースターライン
    とその子会社ベルトランスをグルー
    プ化した。
     国際部門の売上高は順調に拡大
    している。13年度64億5100万
    (シェア19.7%)、14年度83
    億200万円(同23.7%)で、中計
    最終年度である今年度は100億円
    (同28.6%)を目指している。
    「国際物流では後発だが、着実に
    事業拡大は進んでおり、わが社の重
    要な戦略分野に成長している。引き
    続き、業容拡大のための投資を行う」
    (勝又一俊社長)と話す。
     今年度の国際物流事業の重点施
    策は、まず主軸3事業(国際宅配・
    フォワーディング・オペレーション)
    の収益を拡大すること。14年度売
    上高は、宅配事業36億1千万円、
    フォワーディング事業28億2600
    万円、オペレーション事業16億
    3200万円、それに海外事業は2
    億3400万円となっている。
     国際宅配便事業は、営業拠点の
    新設、新規顧客の獲得、営業シス
    テムの活用、サービス品質・生産性
    の向上を図る。
     フォワーディング事業は、品質ネッ
    トワークを強化するため、CS部門
    のレベルアップ、宅配顧客・自社海
    外拠点の活用、アライアンスの再構
    築を図る。
     オペレーション事業の総合営業を
    強化するほか、現在宅配事業内で
    展開している海外赴任者向けサービ
    (海外赴任コンシュルジュ事業)
    強化のため、WEB発注システム(ペ
    ガサス・マート)の展開、新規顧客
    の開拓、さらにはグループが保有す
    る物流機能との連携を強化する。
    インドネシア現地
    法人の開設を予定
     海外事業部門の業容拡大につい
    ては、タイ現地法人の収益拡大の
    ため、フォワーディング・倉庫配送
    機能の相互活用による顧客拡大、
    流通加工やBUY‐SELLを含む高
    付加価値物流の取り込みを図る。
     さらには、インドネシア現地法人
    今年度
    国際売上100億円へ
    国内外でシナジー効果を
    カンダ
    ホール
    ディングス
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    TheTRUCK2015年9月号82
    中谷康夫社長
    「国際事業は好調に推移してお
    り、2016年度から始まる次期中期
    経営計画では、最終年度の18年度
    には国際の比率を現行の38%から
    50%を目指す」と話すのは日立物流
    の中谷康夫社長。
     同社の14年度実績は、売上高
    6771億800万円(前期比8.4%
    増)、営業利益211億9800万
    (同1.0%増)、経常利益216
    億1800万円(同8.3%増)、当
    期利益109億3200万円(同
    101.2%増)
     うち国際物流はネットワーク連携強
    化によるグローバル事業の拡大に取
    り組み、売上高2583億5400万
    (同20%増)、営業利益58億
    9700万円(同103%増)。そのシェ
    アは、28%、34%、38%と拡大
    傾向で推移している。15年度見通
    しは売上高6900億円(同2%増)
    で、うち国際部門は2680億円で
    シェア39%。次期中計の最終年度
    に当たる18年度にはシェア50%を
    目指す。
     15年度計画達成に向けて、国際
    部門では「フォワーディング事業強
    化」「グローバルアカウント開拓」など
    でグローバル収益力強化を図る。
     フォワーディング事業の強化で
    は、フォワーディング専任執行役を
    配置し、日立物流バンテックフォワー
    ディング社の社長を兼務し、戦略と
    事業運営の一体化を図る方針だ。
     また、フォワーディング事業戦略
    本部を設置し、グループ内組織の融
    合による戦略立案・推進機能の集約
    を行っている。
     同時に、事業軸での横串強化(事
    業計画・数値管理責任の明確化)
    新地域進出・ネットワーク整備による
    カバレッジを拡大する。
     さらに、海外フォワーディング事業
    の統合、新グローバルフォワーディ
    ング基幹システムへの変更、専任ナ
    ショナルスタッフによる営業チームの
    組成、スマートロジスティクスの新技
    術導入などにも取り組む。
     海外の3PL事業は、今年4月に
    オランダ(電動工具)5月に上海(建
    設機械用部品)で物流拠点が稼働し
    ている。重点施策は、自立分散型グ
    ローバル経営体制を確立すること。
     北米では、構造改革による北米新
    会社(統合会社)設立、自動車部品
    3PL事業の拡大・Non─Auto分
    野の拡大を図る。欧州では成長市場
    (トルコ発着)をベースとした西欧・
    東欧への事業拡大。アジアでは、
    3PL事業で既存アカウント事業拡大
    への対応と新規グローバルアカウン
    トの獲得と、東南アジアトラックネッ
    トワークの拡充。中国では、国内輸
    送事業の拡大・消費財(要冷品など)
    物流の拡大を目指す。
     同社のグローバルネットワークは、
    日本24社・364拠点・倉庫面積
    500万平方メートル・2万9970
    人、北米13社・46拠点・20万
    平方メートル・1996人、アジア31
    社・139拠点・67万平方メートル・
    8312人、中国他40社148拠点
    60万平方メートル・5215人となっ
    ている(15年3月31日現在)
    「3PL、陸運・倉庫、フォワーディ
    ングなど既存コア事業の強化・拡充
    を図るとともに、空白領域への進出
    など、新たなコア機能の創出にも取
    り組む」(中谷社長)と話している。
    国際比率50%目指す
    ォワーディング事業強化
    の開設を予定しているほか、海外新
    拠点開拓のためネットワークの活用
    やM&A、業務提携などに積極的
    に取り組む考えだ。 
    「当社のような中堅物流企業が生
    き残っていくには、ある程度の規
    模が不可欠。最低でも売上高は1
    千億円」(勝又社長)としており、少
    子高齢化で国内物流市場が縮小傾
    向にある中、成長をみせる国際物流
    は同社の経営戦略の大きな柱になり
    つつある。
    日立物流
    提供:運輸新聞
    TheTRUCK2015年9月号83
    開所式典の様子(中央左がハリス社長、右が長尾社長)
    共通ロゴイメージ
     国土交通省観光庁は、「手ぶら観
    光」サービス拠点の第1弾として全
    国47カウンターを認定するととも
    に、各拠点で共通ロゴマークの使用
    を28日から開始した。
     国交省では、訪日外国人旅行者が
    鉄道などで大きな荷物を持ち運ぶ不
    便を改称するため、宅配サービスを
    活用し、荷物を空港・駅・商業施設
    などで一時預かりを行い、空港・駅・
    ホテルなどに配送するなどの「手ぶら
    観光」を促進している。
     今回、物流事業者で
    認定を受けたのは、ヤ
    マト運輸(15カ所)、佐
    川急便(3カ所)、ケイ
    ティーシー(6カ所)
    JALエービーシー(8
    カ所)グリーンポート・エージェンシー
    (8カ所)。
    ヤマトなど
    手ぶら観光サービス
    拠点に認定
    観光庁
    エンス研究などで使用される試薬製
    品や機器パーツなどの日本国内にお
    ける物流業務を、ヤマトホールディ
    ングスの大型物流施設、羽田クロノ
    ゲート(CG)で21日から運用開始。
    開所式典にはヤマト運輸の長尾裕社
    長、日本BDのジョン・ハリス社長
    らが出席した。
     日本BDの主要製品であるフロー
    サイトメトリーシステム(自動細胞分
    離解析装置)用の試薬製品群は、こ
    れまで福島県の同社工場で一連の物
    流業務が行われていたが、今回、
    物流拠点を羽田CGに設置し、ヤマ
    トHD傘下のヤマトロジスティクスが
    ロジスティクス業務を、ヤマト運輸が
    配送業務を実施。
    輸入された試薬製品の検品、保
    管、ピッキング、梱包、発送をヤマ
    トグループが一括して行うこと
    で顧客は購入した製品を以前
    より早く受け取れるほか、宅
    急便ネットワークと連結した羽
    田CGでロジスティクス業務
    を運用することで、当日の発
    注締切時間の延長や、より迅
    速な緊急対応も可能になる。
    対象は約1万5000種。
     今後は国内輸送だけでなく
    海外に向けても、羽田CGや
    沖縄国際物流ハブなどのグローバル
    物流網を活用し、アジア地域内での
    物流業務効率化をともに検討してい
    くとしている。
    ヤマトHD
    試薬製品など15,000種対象
    日本BDの物流業務
    羽田CGで運用開始
    トラックユーザーNews
    トラックユーザーNews
    提供:運輸新聞
    TheTRUCK2015年9月号84
     カゴ台車の販売サイト「台車屋五
    常」を運営する五常(本社=千葉市)
    は、カゴ台車の新ブランド「俺のカゴ
    台車シリーズ」をリリースする。
    「俺のカゴ台車 H2000」は、高
    さが従来より300ミリ高くなり、積
    載効率を15%アップする。大手運
    送会社に規格外メーカー特注品とし
    て採用されていたが、誰でも1台か
    ら購入できる。
    「俺のカゴ台車 H1700ちゃぶ
    台付」(写真)は、カゴ台車背面フレー
    ムに跳ね上げ式中間棚が取り付けら
    れており、必要な時に棚を前に倒す
    だけで簡単に装着できる。
     どちらも耐荷重500キロ、自重約
    60㌔。特別価格で販売中。50台
    以上の注文でカラーを選択できる。
    姉妹サイ「台車レンタル特急便」
    購入前レンタルサービスも実施。
    「俺のカゴ台車
    シリーズ」リリース
    五常
    The TRUCK News
    Now
    TheTRUCK2015年9月号86
     日野自動車㈱は、フィピンで製造販売を行う合弁会社「ピ
    ピナス日野」を子会社化し、「日野モータースフィピン株式
    会社」(日野フィピン)に社名を変更した。
     日野はフィリピンにおいて40年以上にわたり、QDR(品
    質・耐久性・信頼性)に優れた製品ときめ細かなアフターサー
    ビスで日野ブランドの浸透を図ってきた。近年、フィピンの経
    済成長はアセアン主要国の中でも高い水準で推移しており、
    それに伴い商用車市場も拡大している。日野は、大きな潜
    在需要が見込めるフィピンを重要な市場と位置付けており、
    顧客の多様なニーズに応えるトータルサポート」を強化し、日
    野ブランドのさらなる浸透を
    図るため、現地パートナー
    ProfessionalManagers,
    Inc.(PMI)および丸紅㈱と
    の合弁会社であるピリピナ
    ス日野への出資比率を引き
    上げ、子会社化した。
     今後、市場の継続的な
    成長に対応するため販売
    体制を充実させていくととも
    に、トラック・バスのボディ
    架装事業を強化し、幅広
    いニーズにワンストップで応
    えて行くことになる。販売
    後のサポートおよびサービス
    においても、直営ディーラー
    を中心にトータルサポートを
    強化し、ユーザーのパー
    ナーとしてビジネスに貢献す
    る体制をよりいっそう充実さ
    せていくしている。
    ■日野フィリピンの概要
    ◇名称日野モータースフィ
    リピン株式会社(略称:日
    野フィリピン)(英文表記:
    HinoMotorsPhilippines
    Corporation)、◇本社・
    工場所在地:フィリピン共和国カランバ市カンルーバン工業
    団地、◇工場敷地面積:約57,000㎡、◇代表者:青木
    (日野自動車から出向)、◇資本金:900百万ペソ、◇
    出資比率:日野70%・丸紅20%、PMI社10%(従来:
    日野15%・丸紅15%・PMI社70%)、◇事業内容:車
    (大・中・小型トラック、バス)・コンポーネント・補給部
    品の輸入・組立・卸売・小売、トラック・バスボディ架装、
    ◇生産車種:中・小型トラックおよびバス、◇生産能力:
    約2,000台/年(1直)、◇従業員数:約210名(2015
    年7月1日時点)
    ピリピナス日野…日野自動車
    話題のニュートラック新製品情報・新情報
    日野自動車、フィリピン合弁会社を子会社化
    「日野モータースフィリピン株式会社」に社名を変更
    フィピンで販売されている日野トラッ(日野フィピンHPより)
    TheTRUCK2015年9月号87
     いすゞ自動車㈱は、2015年7月29日にSamarkand
    AutomobileFactoryLLC(サマルカンド・オートモビール・ファ
    クトリー=SAF)の株式取得に関する契約の調印式を行った。
     ウズベキスタンはいすゞにとって重要市場のひとつであり、
    今後も市場発展が見込めること、ウズベキスタン政府の協力
    もありSAF社との関係強化を図ることにしたもの。
     調印式には、アジモフ第一副首相、加藤駐ウズベキスタン
    大使、いすゞ細井会長他、約30人が出席した。調印式に
    参加した細井会長は対話の中で、「いす自動車のビジネスが
    ウズベキスタンの産業・経済の発展に寄与できるよう努力して
    いく」と述べた。
     いすは、ウズベキスタンにおいて2007年の本格販売開
    始以降、順調に販売台数を伸ばし、2014年には年間約
    4,000台の車両を販売している。将来的には年間10,000
    台規模の販売を目指している。
     日通商事㈱は、タイ国プラチンブリ県のロジャーナ・プラチン
    ブリ工業団地内に、「AZLタイランド㈱プラチンブリ・ロジスティ
    クスサポートセンター」を建設する。2015年7月より着工し、
    2016年2月竣工の予定となっている。
     同センターの施設規模は、30,444㎡の敷地に、延床面積
    7,450㎡(事務所等含む)の高床式建屋となり、各入出庫口に
    は合計12基のドックレベラー、15mの庇を配して、悪天候
    時にも安全かつ、さざまな車種車両の荷役作業を可能として
    ■SAFの概要
    ◇会社名サマルカンド・オートモビールファクトリー(Samarkand
    AutomobileFactoryLLC=SAF)、◇代表者:スリマン・ウ
    ラコフ(SuleymanUrakov)、◇設立日:
    2006年10月31日、◇所在地:ウズ
    ベキスタン共和国サマルカンド市、◇資本
    金:約25.5百万米ドル(約31.5億円)
    ◇株主:UZAUTOSANOAT58%・Asaka
    bank26%・伊藤忠商事8%、いすゞ8%、
    ◇主たる業務:商用車の組み立てと販売。
    いる。また、施設内LED導入、天井から外光を取り入れるス
    カイライト、壁換気口の一部にFRP材などを採用し、壁面か
    も外光を取り入れることで、日中の照明を省電力化し、環境
    にも配慮した施設となっている。
     建設予定地であるロジャーナ・プラチンブリ工業団地は、バ
    ンコクより東へ約140㎞、タイ最大主要港であるレムチャバン
    港から東北に約130㎞に位置し、近隣工業団地には数多く
    日系自動車・半導体部品メーカーが進出している。また、ベ
    契約調印…いすゞ自動車
    サポートセンター…日通商事
    話題のニュートラック新製品情報・新情報
    話題のニュートラック新製品情報・新情報
    いすゞの重要市場で今後の発展が見込める
    ウズベキスタンで
    SAF
    社の株式取得に契約調印
    タイに新ロジスティクス・サポートセンターを建設
    アセアン経済統合時のハブとしての発展に期待
    SAF社での累計20,000台生産式典
    ウズベキスタンSamAutoのHPウズベキスタンのいすゞ小型バス
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    Now
    TheTRUCK2015年9月号88
    ナム・カンボジア・ミャンマーをつなぐ
    南部経済回廊上にあり、2015年度
    末に実施が期待されるアセアン経済統
    合時のハブとしても、今後一層の発展
    が期待されている。
     日通商事は、1996年にタイ・アユ
    タヤに現地法人を設立し、梱包事業を
    スタートさせて以来、タイ国内でチョ
    ブリ、レムチャバンをはじめとする7地
    区にロジスティクス・サポート拠点を整備している。さらに、リー
    ス部門や南アジア地区営業開発部門の設置など、物流関連
    を中心としたさざまな事業を拡大し、今後も、アジア地区にお
    ける顧客の多種・多様化するニーズに応えていくしている。
    ■サポートセンター施設概要
    ◇名称:AZLタイランド株式会社プラチンブリロジスティクス・
    不足解消を支援するため、発電機の生産も行うことになる。
     ミャンマーは近年の急速な経済発展に加え、世界的な翡
    翠の産地であることなどから、中長期的な建設・鉱山機械
    の需要増加が見込まれている。コマツは1995年にヤンゴ
    ン事務所を設立して以来、同国において建設・鉱山機械
    の販売・サービスを行っており、今回のKMM開所で、ユー
    ザーの現場により近い拠点からリマン部品を届ける体制が
    整ったことになり、ユーザーの生産性向上やオペレーティ
    グコストおよびメンテナンスコストの低減に貢献できる。さ
     コマツは、ャンマーの主要都市であるマンダレーに、建設
    鉱山機械のリマン(コンポーネントの再生販売)および発電機
    の製造・販売を行うコマツマニュファクチャングミャンマー㈱
    (KMM)を設立し、このたび開所式が行われた。
     コマツは、エンジン、トランスミションなどの使用済みコン
    ポーネン(部品)をさまざまな工程を経て新品同等の品質に
    よみがえらせ、再び市場へ供給するリマン事業を強化してお
    り、KMMは世界13拠点目のリマン工場となる。また、コ
    マツの建設・鉱山機械関連の生産拠点としては、ミャンマー
    で初めての生産拠点となる。更にミャンマーの電力供給力
    サポートセンター、◇住所:タイ国プラチンブリ県ロジャーナ・プ
    ラチンブリ工業団地内(バンコク中心部から約140㎞/スワン
    ナプーム空港から約110㎞/レムチャバン港から約130㎞)
    ◇敷地面積:30,444㎡、◇延床面積:7,450㎡、◇作業保
    管エリア:6,417㎡、◇主要業務:輸出梱包業/部品・納入
    代行業/輸出入代行業。
    生産拠点…コマツ
    話題のニュートラック新製品情報・新情報
    ミャンマー初の生産拠点
    KMM
    を開所
    使用済み部品を再び市場へ供給するリマン工場
    プラチンブリ倉庫の完成イージ図プラチンブリ倉庫の鳥瞰図
    KMM社開所式の様子ミンマー・マンダレーの基幹部品再生工場
    TheTRUCK2015年9月号89
    サイピング技術「ミウラ折りサイプ」のサイプ幅を従来品(SP
    LT02)より25%細くした「新ミウラ折りサイプ」により、ブロッ
    クの倒れこみを抑制。また、サイプの数も増やすことができる
    ため、タイヤ全体のエッジ成分がアップし、路面への引っかき
    効果を高め氷上ブレーキ性能と耐摩耗性能を向上させた。
    ②ナノフィットゴム…ダンロップ独自の新材料開発技術「4D
    NANODESIGN(フォーディナノデザイン)により、ナノ領域
    での柔軟性と、マクロ領域での剛性を両立した「ナノフィトゴ
    ム」を開発。軟化剤がゴム内部でクッションの役割を果たし、
    ナノ領域の氷の凹凸に柔軟に変形し、強く密着することで、
    氷上ブレーキ性能と耐摩耗性能を向上させる。また、シリカが
    ゴム内部でネトワークを構築することで、支え合い、
    マクロ領域のゴムの剛性を高めている。これにより
    ロックの倒れこみを抑制し、「MAXXシャープエッジ」
    の効果を最大化させている。
    ③小型トラック・小型バス用「新パターン」
    地圧の高いトレッドセンター部をブ化する小型トラッ
    ク・小型バス用「新パターン」を採用することによりサ
    イプ数が増え、エッジ成分が18%アップすることで
    氷上ブレーキ性能をらに高めた。
    売サイズは10サイズで、価格はオープン価格となる。なお、
    ECORUT(エコルト)とは、ECO+ROUTEの造語で、ダンロ
    プが考える環境に優しいタイヤを意味している。
     輸送業界では各種コストの上昇などにより、タイヤに対す
     住友ゴム工業㈱は、氷雪上をはじめとするさまざまな路
    面で優れた性能を発揮するとともに、高い耐摩耗性能を両
    立した「長持ちするスタッドレスタイヤ」して好評を得てい
    る「WINTERMAXX」シリーズの技術を採用した、小型ト
    ラック・小型バス用スタッドレスタイヤDUNLOP「WINTER
    MAXXLT03」を2015年8月から順次発売する。発売サイ
    ズは23サイズで、価格はオープン価格となっている。
     DUNLOP「WINTERMAXXLT03」は、荷重による倒れ
    込みを抑制し接地面に高密度で密着する「MAXXシャープエッ
    ジ」マクロ領域での剛性とナノ領域での柔軟性を両立する「ナ
    フィトゴム」を採用。また、接地圧の高いトレッドセンター部
    をリブ化することにより、最大のエッジ効果を発揮
    する小型トラック・小型バス用「新パターン」を採用
    することで、氷上ブレーキ性能を同社従来品(SP
    LT02)に比べ11%向上させた。また、トレッド部の
    接地形状を最適化することで、耐摩耗性能を従来
    (SPLT02)に比べ4%向上させ、高い経済性を
    確保するとともに、操縦安定性能も向上させている。
    ■特長
    ①MAXXシャープエッジ…ダンロップ独自の
     住友ゴム工業㈱は、独自のトラック・バス用のタイヤ技術
    「DECTES(デクテス):DUNLOPEnergyControlTechn-
    ologies」を採用した、低燃費スタッドレスタイヤDUNLOP
    「ECORUTSP088」を2015年9月から順次発売する。発
    スタッドレスタイヤ…住友ゴム工業
    スタッドレスタイヤ…住友ゴム工業
    話題のニュートラック新製品情報・新情報
    話題のニュートラック新製品情報・新情報
    小型トラック・小型バス用スタッドレスタイヤ
    DUNLOP「WINTERMAXXLT03」を新発売
    DECTES採用のトラック・バス用低燃費スタッドレスタイヤ
    DUNLOP「ECORUTSP088」を新発売
    に、アフターマーケットの需要を確実に取り込むことで、販
    売の拡大を目指していくしている。
    ■KMMの概要
    ◇社名:コマツマニュファクチャリングミャンマー㈱、◇設
    立年:2014年6月、◇代表者:SeinLin(Managing
    director)、◇事業内容:建設・鉱山機械のリマン(コンポー
    ネント再生販売)および発電機の製造販売、◇従業員数:
    約14名、◇所在地:ャンマー・マンダレー、◇面積:敷
    地面積約11,613㎡・建屋面積約5,574㎡、◇資本金:
    550万USD(コマツグループ100%)
    小型トラック用スタッドレスタイヤ
    DUNLOP「WINTERMAXX
    LT03」
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    TheTRUCK2015年9月号90
    る低燃費性・安全性・省メンテナンス性への要求が高まっ
    ている。これらの要求に応えるため、同社では低燃費タイヤ
    ECORUTシリーズを発売し好評を得ている。
     低燃費スタッドレスタイヤDUNLOP「ECORUTSP088」
    は、独自の材料開発技術「4DNANODESIGN」
    (フォーディナノデザイン)により開発した新カーボン
    を採用することで、カーボンとゴム分子の結合力を
    高めたほか、新開発の低発熱部材によりエネルギー
    ロスを抑制し、さらに「2層サイドウォール構造」を採
    用することで低発熱化を実現。これにより、転がり
    抵抗は耐摩耗性能重視のトラック・バス用スタドレ
    スタイヤ「SP081」と比較し29%低減させている。
     従来より販売している氷雪上性能を重視した
    「SP001」、耐摩耗性能重視の「SP081」に、今
     UDトラックス㈱が本社敷地内で2014年に着工し建設し
    てきた「UDトラックス本社ビル」が2015年7月10日に竣
    工した。創立80周年となる今年、新本社屋に管理部門、
    開発部門、販売部門が集結することになる。
     新社屋は地上10階建てで、約1,500名の従業員を収容
    する。オフィスのほか、400名収容の「UDオーディリアム」
    を設け、セミナーや新車発表のセレモニーなどのイベントを開
    催する。オフィスフロアは各階1,200㎡の無柱空間となってお
    り上尾市を一望できる広々とした造りになっている。またオフィ
    スフロア横には、上下階をつなぐ吹き抜け・ガラス張りデザイ
    ンのスペースを確保し、従業員のフリーコミュニケーションの場
    して利用できる。顧客を迎えるエントランスにはフラッグシッ
    大型トラッ「クオン」を展示。天井部分にはUDトラックスの
    回の低燃費スタドレスタイヤ「ECORUTSP088」を加えるこ
    とで、幅広い顧客により安全で安心な冬道走行を提供できる
    ことになった。
    ■特長
    ①「4DNANODESIGN」により開発された
    新カーボンの採用…住友ゴム独自の材料開発技
    術「4DNANODESIGN」により開発した、ゴム分
    子との結合力を高めた新カーボンの採用により、無
    駄な発熱を抑えることで、エネルギーのロスを抑制。
    ②2層サイドウォール構造採用…シリカ含有量を
    増加することで結合力を強化し、低発熱性能に特
    化した内層サイドウォールと、耐外傷性能と低発
    熱性能を両立した外層サイドウォールの2層サイ
    ウォール構造でさらに低発熱化を達成。
    ブランドデザインの一部である「UDアーク」をあしらうなどブラン
    ドを強調したデザインとしている。また、UDトラックスの車両
    デザインを生み出す「デザインスタジオ」も新設している。
     2011年に発生した東日本大震災を機に工場棟や現社屋
    などの耐震補強も行っている。耐震基準に満たない建物は
    使用を停止し、開発部門や一部生産部門は上尾敷地内の
    仮の建屋で、また販売部門は東京都江東区木場にあるビル
    の1フロアを借りて業務を行っていた。今回、地震の揺れを
    吸収する最新の免震構造を持つ10階建てビルが竣工したこ
    とにより、全部門が上尾の地に集結することになる。
     1935年に埼玉県の川口で創立したUDトラックス(当時
    の社名:日本デイゼル工業㈱)は、本社工場を1962年に
    上尾へ移転。その後1987年の工場再編計画により、業
    務を上尾工場(大・小型
    ラック)、1981年操業の
    群馬工場(中型トラック)
    1972年操業の鴻巣工場
    (鋳物)の3拠点に集約
    し、効率的な生産体制を
    敷いてきた。以来、約50
    年以上もの間、上尾の地
    と共に成長している。
    新本社屋…UDトラックス
    話題のニュートラック新製品情報・新情報
    新車発表などが行えるオーディトリアムも設置
    UD
    トラックス本社敷地内に新本社屋が竣工
    低燃費スタッドレスタイ
    ヤDUNLOP「ECORUT
    SP088」
    UDトラックス本社ビル外観大型トラッ「クオン」が展示されたエントランス
    TheTRUCK2015年9月号91
     UDトラックス村上吉弘代表取締役社長は、「新社屋建設
    に踏み切った最大の理由は、従業員に安心して働いてもら
    環境を整えること。そして創立以来、私たちを支えていただて
    いるお客様、ビジネスパートナー、地域の皆さまへの感謝の
    気持ちをこめるともに、これからの新たな80年間を輸送業
    界を支える企業として、多くのことをここから発信していきたい」
    と述べている。
    ■新本社の概要
    ◇所在地:埼玉県上尾市大字壱丁目1番地/◇設計施工:
    大成建設㈱/◇規模:敷地面積420,000㎡、延床面積
    20,500㎡、建物高さ47.9m/◇構造:免震構造、鉄骨
    造/◇工期:2014年3月17日〜2015年7月10日。
     業界初の運転手付きレンタルトラックサービス「レントラ便」
    手がける㈱ハーツ(東京)は同サービスの増加傾向にあるインバ
    ウンドに特化した運搬サービス「東京ポーターサービス」(商標
    登録出願済/http://tokyo-porter.jp/)を2015年7月17日
    から開始した。
     インバウンドも今年度は年間2,000万人に迫る勢いだが、
    ハード、ソフト両面の受け入れ体制はまだまだ不足している状
    況となっている。ハーツは、「レントラ便」の利用層の中でも増
    加傾向にあるインバウンドに着目し、東京ポーターサービスを企
    画、開始した。
     具体的には、軽トラクから大型トラクの各種トラクを貸切
    り、羽田空港もしくは東京駅利用のインバウン(団体)の手荷
    物を当日中に目的地まで運搬するサービスになる。これにより、
    団体訪日旅行客の移動の容易化を実現し、手ぶらの移動の
    手伝いと、手荷物運搬の当日輸送を可能にした。
     当面は、大手旅行会社や旅行代理店を主に日本語でサー
    ビスを提供し、来春以降には他国語の
    サイトをリリースする予定となっている。
    今後は成田空港、中部国際空港(セン
    トレア)、関西国際空港と順次エリア
    を拡大する計画だ。
     これまでは、団体インバウンドが気軽
    に利用できる手荷物運搬サービスは宅
    配便しかなく、同社ではこの東京ポー
    手荷物運搬サービス…ハーツ
    話題のニュートラック新製品情報・新情報
    団体向けインバウンドサービスとして
    当日手荷物運搬「東京ポーターサービス」を開始
    1,500名の従業員を収容するオフィスフロア
    上下階吹き抜けのコミュニケーションスペース
    イベントの開催も可能なUDオーディトリアム
    ンバウンドに特化した「東京ポーターサービス」
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    TheTRUCK2015年9月号92
    ターサービスで、2016年7月までの
    1年間で累計1億円の売り上げを目
    指している。
    ■東京ポーターサービスの特長
    ①貸切りトラクなので、団体時の利
    (個数が多い場合)で料金的メリッ
    トがある。宅配便より圧倒的に安い
    ケースが多い(宅配便の3割程度に
    なる)
    ②日本語がわからない外国人でも理
    解できるように、羽田(東京駅)からの
    直線距離で料金を算出。
    ③外出先でも利用しやすいようにスマー
    トフォンサイト及びホームページでサー
    ビスを発信。
    トラクを貸切りにするので、宅配便
    のようにサイズ、重量、個数に制限が
    く、梱包も不要。
    ⑤空港のない遠隔地でも当日中に手
    荷物及び大型荷物の運搬が可能(宅
    配便は翌日配達)
     ㈱ジャストシステムは、小型で見やすいタッチパネル式ディ
    プレイ採用の「geaneeWi-Fi/GPS/フルHDタッチ式ドラ
    ブレコーダー(DVRGPS-04)を発売した。車線逸脱警報や
    フロント衝突警告など安全運転を支援する機能を満載したドラ
    レコである。
    ■DVRGPS-04の主な特長
    ◇小型で見やすいタッチパネル式ディスプレイ
     2.7インチのタッチパネルでス
    ムーズな操作が可能。操作ボタ
    を極力なすことで、小さなボディ
    を最大限に活かした見やすいディ
    スプレイを実現。小型な本体はフ
    ロントガラスに設置しても、運転の
    邪魔にならない。
    ◇車線逸脱/衝突警告など安
    全運転支援機能搭載
     GPSやGセンサー、カメラか
    らの情報などをもとに豊富な安全
    運転機能を提供。これらは本体
    設定で簡単にオンオフを切り替え
    ることができる。
    《安全運転支援機能》
    ・車線逸脱警報…GPSとカメラからの映像を分析して、50㎞
    /hを超えた状態で車線変更を行うと音声および画面メッセー
    ジで警告を発する。
    ・フロント衝突警告…60㎞/hを超える速度で運転、または
    前方の車との距離が20m以下になったときに音声と画面メ
    セージで警告を行う。
    ・動体検知…エンジンを停止しても内蔵の電池を利用して「動
    体検知モード」で待機。動くものを検知すると自動で録画を始
    める。車上荒らしなどの対策に利用できる。
    ・前方車両発進警告…車が20秒静止すると検知を開始し、
    前の車両が発車すると音声および画面メセージで警告を行う。
    ・制限速度アラート…走行速度があらかじめ設定した速度を
    超えると音声と画面メッセージでの警告を行う。
    ・ヘッドライト警告…雨や曇りの天候、夜間、地下駐車場お
    よびトンネルなどの照明環境を検出したときに音声と画面での
    警告を行う。
    ・カメラアラート…GPSを利用して自動速度違反取締装置
    に接近すると、音声と画面メッセージで知らせる。制限速度を
    超えると減速するよう警告を行う。
    ・運転者疲労警報…録画開始1時間後、およびその後30分
    ごとに音声と画面メッセージでの警告を行う。
    ・衝突検出…衝突による衝撃を検出すると緊急録画を開始。
    衝突検出の感度は3段階から設定が可能。
    ・加速/減速警報…80㎞/h以上で走行中に1秒間で20
    ㎞/hの加速、または50㎞/h未満で走行中に1秒間に
    30㎞/h減速した場合に音声と画面で警告を行う。
    ◇走行したGPSログデータを記録しPC閲覧できる
     付属のソフトウェアをパソコンにインストールすれば、
    ドラレコ…ジャストシステム
    話題のニュートラック新製品情報・新情報
    安全運転を支援する機能満載した
    フル
    HD
    タッチ式ドライブレコーダー登場
    TheTRUCK2015年9月号93
    microSDに保存
    されたドライブ中
    の走行データの
    詳細を見ることが
    できる。撮影した
    動画とマップを連
    動させ、走行ルートや経過時間、走行速度などが表示される。
    ◇夜間の走行時にもクリアに撮影
     レンズに“光
    学5層IR赤外線
    フィルター”を搭
    載しているため、
    夜の走行時にも
    映像をクリアに撮影することができる。
    ◇エンジンを掛けると同時に録画開始
     シガーソケットから電源を供給。エンジンを掛け、本体に電
    気が供給されると自動で録画を開始。動画ファイルがいっぱい
    になっていても古いファイルから上書きしていくため、車に乗
    るたびにドライブレコーダーを操作する必要がなく、もしものと
    に録画をしていなかったといった
    事態も防げる。
    ◇Gセンサーで衝突時緊急録
    画可能
     Gセンサーが衝突による振動
    を感知すると緊急録画を開始。
    通常の映像とは別の“緊急録画
    ファイル”が作成され、通常の
    録画によって上書きされないよう
    にデータを保護する。緊急録画
    ファイルは10件まで保存。衝
    突検出の感度は3段階で調節が
    可能。
    ◇スマートフォンと無線でつながる
     専用アプリ“LIFECAMRemote”を使って、スマートフォ
    やタブレットなどのモバイル端末と本機を無線LANで接続。
    接続したスマホにドライブレコーダー本体と同じ画面が表示さ
    れ、リモート操作することができる。iPhone、Androidに対応
    し、手持ちの端末から簡単に接続することができる。
     日産自動車㈱は2015年7月23日、同社のタイ現地
    子会社で、金型や車体設備を生産するSNNTOOLS&
    DIES社が、一般社団法人日本能率協会による「2015年度
    (第5回)GOODFACTORY賞」のファクトリーマネジメント
    賞を受賞した。
     GOODFACTORY賞は、アジア地域で工場の生産性向
    上、品質向上など体質革新活動に取り組む事例に着目し、
    そのプロセスや成功要因、現場の知恵、働く人々の意識改
    革、社会的貢献などの内容を日
    本製造業の範として顕彰するも
    の。優良工場の事例を産業界に
    広く紹介することで、製造業の体
    質強化と発展に寄与することを目
    的としている。
     SNNTOOLS&DIES社は、
    タイのサムトプラカーン県に所在
    するルノー・日産アライアンス向
    けのプレス金型、及び車体設備、自動車用の部品供給メー
    カーである。今回の受賞は、同社が日産ウェイに基づいた方
    針管理の徹底した実践、および日産の中期経営計画「日産
    パワー88」に向けた技術力と生産性強化のマネジメトの確
    立、従業員のモチベーションを向上させる教育・研修体制の
    確立といった点が高く評価されたもの。
    ■SNNTOOLS&DIES社の概要
    ◇名称:SNNTOOLS&DIESCO.,LTD.、◇主要事業:
    ノー・日産アライアンス向けプレス金
    型と車体設備、自動車用の部品供
    給、◇設立:1989年2月、◇従
    業員数:417人(2015年3月末現
    在)、◇所在地:61Moo6,Bangna
    TradHwy.,Km.32,T.Banrakad
    A.Bang-Bor,Samutoprakarn
    10560,Thailand、◇代表者:上
    田啓二社長。
    GOODFACTORY賞…日産自動車
    話題のニュートラック新製品情報・新情報
    日産のタイ子会社が日本能率協会の
    「2015年度GOODFACTORY賞」を受賞
    (参考写真)日産「LIVINA」。2007年に中国を皮切りに発売されたモデル