1. 中古トラック販売のトラック流通センター
  2. ITV(旧The TRUCK)バックナンバー
  3. 【対談】笠原秀人 栃木県トラック協会 会長
  4. 【対談】笠原秀人 栃木県トラック協会 会長

    自動車新技術研究
    会場受付風景。最終日には学生の姿も多かった
    会場内風景。パネル展示もじっくり読み入る人が多いのがこの展示会の特長だ
    TheTRUCK2015年7月号
    18
    〝人とくるまのテクノロジー展2015〟(主催公益社団法人自動車技術会)
    が横浜(会場パシフィコ横浜、会期5月20日〜22日)で開催された。
    メーカーとサプライヤーによる専門的な展示会であるが、筆者が注目した
    出展品目を通じてこれからの商用車の更に進化した姿を展望してみたい。
    西襄二
    TheTRUCK2015年7月号19
    人とくるまのテクノロジー展 2015
    No.
    出展企業 出展品カテゴリー/内容
    1アイシングループ ㈱アドヴィックス安全技術ドラム一体型電動パーキングブレーキ
    2AlbonairGmbH環境技術
    ディーゼルエンジン排気浄化のSCR用尿素軽量注入システム。広範囲の
    排気温度に対応可能。特殊ノズル利用
    3㈱ヴァレオジャパン①安全技術アクアブレード:洗浄機能を組み込んだワイパーブレード
    4㈱ヴァレオジャパン②エンジン技術
    電動スーパーチャージャー:電動で瞬時に反応し低速時のダイナミクレス
    ポンスを改善。タ−ボラグ無しに優れたトルクを発揮。エンジンの小型軽量
    化も実現
    5英国パビリオン エアリステック社環境・EV/HVシステム48V仕様電動スーパーチャージャー(eSupercharger)
    6カルソニックカンセイ㈱視認性・軽量化
    大型HUD内蔵 HMIコクピットコンセプト。大型ながら薄型のインスツル
    メントパネルの提供を実現
    7計測エンジニアリングシステム㈱実験・計測無制限・強連成CAEソフトウエア
    8サインエレクトロニクス㈱情報・通信V-by-One HS1-pair高速差動通信技術
    9㈱シミウス実験・計測光ファイバーを用いた表面貼付型、多点圧力センサ
    10TRWオートモティブジャパン㈱①
    安全技術
    電動パーキングブレーキ(EPS)
    11TRWオートモティブジャパン㈱②
    安全技術
    総合ブレーキシステム(IBC) 主としてハイブリド車向け
    12日本精機㈱
    安全技術・視認性
    2面ヘッドアップディスプレイ(2-PlaneHead-UpDisplay)
    13
    ベルギーフランダース政府貿易投資局
    ベカルトジャパン㈱
    設計・実験手法
    樹脂用金属繊維フラーの導電メカニズムの見える化技術。電導性、シール
    ド性が要求される射出成形品における金属繊維フラーの活用へ道を開く。
    14明神工機㈱
    実験解析手法
    モータードライブの詳細解析手法。EV、HEV、FCV車等の更なる効率化、
    制御の高度化などを支援
    (表1)世界初公開
    世自動車メーカー・サプライヤー
     一堂に
     毎年開催される〝人とくるまのテクノロジー展〟は今
    回が第24回目。自動車の開発・設計者を始めとす
    る完成車メーカーのエンジニア及びコンポーネントと
    システムサプライヤーの同じセクターに属する人々を
    ターゲットとしているが、本年は3日間で70,000名
    の来場者で会場は大いに賑わった。540社にのぼる
    出展者は過去最多であり、海外からは英国(18社)、
    フランス(12社)、ベルギー(4社)の欧州各国がパ
    ビリオンを構えて出展した。また、米国からはノース
    カロナイナ州、ミシシッピ州、ウエストバージニア州
    などが、カナダ(10社)のほか、ドイツ、スウエーデ
    ンの各国に本拠を置く企業が夫々ブースを構えるなど
    意欲的な参加であった。出展者は日本法人でも実質
    海外製品として出展した事例も多く、会場は国際色が
    強く感じられた。
     展示品の中で世界初展示を行ったのは12社14
    品目、日本初展示は17社21品目であった。
     海外からの来場者はどれ位かと観察してみたが、
    受付時に手渡される首掛けタグには識別は無く判断材
    料にはならない。出展者関係者を除くと外見して欧米
    からの来場者は僅かであった。東洋系では、外見で
    判断出来る場合や各ブース(小間)で交わされている
    質疑等で外国語(英語或いは中国語等)を耳にして判
    断した限りであるが、最終日の数時間の観察によれば
    数パーセントであったと思われる。
     一方、報道関係者についてみると約500名の登
    録取材者中で海外からの取材者は1%強(主催者調
    べ)であり、この方面の国際性は今後の課題といえ
    よう。
    世界初&日本初出展品目
    自動車新技術研究
    TheTRUCK2015年7月号20
    人とくるまのテクノロジー展 2015
    No.
    出展企業出展品カテゴリー/内容
    1ASAMe.V.実験・計測電子統合制御システムの標準化された解析システム
    2㈱ヴァレオジャパン① =世界初=安全技術アクアブレード:世界初の表参照
    3㈱ヴァレオジャパン② =世界初=エンジン電動スーパーチャージャー:世界初の表参照
    4㈱ヴァレオジャパン③エンジン・電装品
    高効率オルタネータ:高効率オルタネーター ダイオードに代えてMOSFET
    (金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)による同期整流を利用。効率
    10%向上。
    5英国パビリオンAIE社エンジンSPARCS(自己圧縮空気ローター冷却システム):
    6英国パビリオンSevconLtd.EV/HV技術
    次世代モーターコントローラー Gens5:EV/HEV等のモーター制御効
    率を高める
    7サンゴバン㈱環境・エネルギー
    電着塗装に求められる通電性と樹脂部品増加との関係で発生する〝ゴミ〟
    発生を防ぐ。塗装工程の効率改善に貢献
    8SandvikMaterialsTechnoligyエンジン
    ステンレス製継ぎ目無し高圧パイプ:ガソリン直噴エンジン(GDI)の高燃圧
    に耐える薄肉燃料パイプで軽量化・高信頼性が特徴
    9サンワトレーディング㈱①樹脂系新素材
    ドイツ・ボンドラミナテスト社製疑似(実際上)等方性連続性繊維で熱可塑
    性の樹脂材Tepex(テペックス)の大量生産化に成功。価格競争力のあ
    る樹脂部品の提供が可能になった
    10サンワトレーディング㈱②樹脂材と成型技術
    ドイツ・エボニク・リテコン社の新開発樹脂によりモールド(型材)中でモール
    ド工程中に材料中の粒材を発泡させ自在に複雑な形状部品を成型する
    11サンワトレーディング㈱③樹脂材加工技術
    スイス・クリロス社による熱可塑性樹脂加工用の中波長赤外線ヒーター。
    熱可塑性樹脂であるCFRTPやGFRTPの加工に最適な新製品
    12㈱GSIクレオス
    軽量化技術の開発/
    量産化支援
    ドイツ完成車メーカーに採用されたプロセス技術の国内普及を狙う。CFRP
    材による軽量化部品の開発コンセプトから量産まで一環して支援。
    13シムパックジャパン㈱CAEソリューショ
    金属製で従来は剛体として扱われてきた歯車も解析技術の格段の進歩に
    より弾性体として扱う解析技法。軽量化と実用性能の見極め等に有効な
    CAE手法。
    14㈱ジャスティ
    自動車衝突試験用
    ダミ
    高度なダミー(WorldSID50th,HybridⅢ56th)の量産化が可能となり短
    納期を実現。
    15TRWオートモーティブジャパン㈱安全技術
    機能拡張型モノカメラS−CAMS。一つのカメラ画像から得られる情報で、
    非常ブレーキ・最低車間距離維持クルーズコントロール・道路標識認識・
    交通信号認識・斜線逸脱警告・対向車感応ヘッドライトハイビーム制御、
    等広範な自動制御に応用が可能。
    16㈱プランエコ・モビリティシステム
    中間加工及び施工会社として太陽光による超小型モビリティシステムを提
    案:太陽光発電カーポート、超小型EV、蓄電システム(鉛バッテリー)によ
    り地産地消型モデルとして提供。
    17
    ベルギーフランダース政府貿易投資局
    ベカルトジャパン㈱=世界初=
    設計・実験手法
    樹脂用金属繊維フィラーの導電メカニズムの見える化技術:世界初の表
    参照
    18
    ベルギーフランダース政府貿易投資局
    マテリアルズジャパン㈱
    3D設計
    ソリューショ
    3Dプリンター向けSTLベースの設計CADにより、従来は困難であった
    複雑な格子構造による軽量化を実現。
    19マーレグループ安全・環境・エンジン
    エンジンのエアインテークモジュール、ヘッドカバー、オイルポンプ等、各種
    エンジン部品軽量化を通じて環境負荷軽減に貢献
    20㈱ユビセンス情報・通信技術
    超広域帯無線による好感度リアルタイム3D位置情報システム。生産工場
    における工場運用状況の把握や重要業務指標(KPIとしてダウンタイム、作
    業効率、品質等)の可視化を実現。
    21㈱レゾニック・ジャパン
    重心位置・慣性
    モーメント計測技術
    物体の重心位置や慣性モーメトを高速で算出するソリューション。2010
    年に東京工業大学で誕生した独創的かつ革新的技術の商用化。
    (表2)日本初公開
     この種の展示会の性格を表す尺度として、出展品
    目の中で技術の新規性がどうかという視点がある。今
    回は世界初出展品が14品目、日本初出展品が21
    品目であった。少々専門的になったが、出展品目の
    概要を一覧表にしたので参照頂きたい。
    TheTRUCK2015年7月号21
    (お断り:一部は世界初・日本発出展紹介表に記載のものと重複します) 人とくるまのテクノロジー展 2015
    No.
    品目(摘要)
    概要筆者から一言出展者/連絡先URL
    1
    機能拡張型モノカメラS-CAN3
    (日本初出展)
    日本初出展表 参照
    大型商用車の周囲の状況を読
    み取り事故に結びつく情報を選
    別して安全性向上が飛躍的に
    向上できる可能性がある
    TRWオートモーテブジャパン㈱
    http://www.trw.com
    2レーザースキャナーSCALA
    赤外線利用のレーザーにより車両周辺
    情報を取り込む。
    大型商用車による悲惨な巻き込
    み事故等の軽減に一段の戦力
    となる可能性がある
    株式会社ヴァレオジャパン
    http://www.valeo.co.jp/
    3
    MAXXTM
    新型シングルピストン・エア・
    ディスク・ブレーキ
    新型シングルピストンエアディスクブレー
    キ。パッド編摩耗防止プレート組み込みが
    特徴(特許)。軽量で保守費用軽減が図
    れる。パッド交換時期を運転者に知らせ
    る機能あり。
    運行用トレーラのブレーキ総合
    性能の向上に普及が望まれる
    ワブコジャパン㈱
    Tel.03-5435-5711
    4アクアブレード(世界初出展)
    車両前方を監視するカメラレンズ用洗浄
    液通路を内蔵したワイパーブレード
    車両前方情報検知用カメラのみ
    ならず、ヨーロッパで大型バス
    のワイパーにも応用実績有り
    ㈱ヴァレオジャパン
    http://www.valeo.co.jp/
    5
    ディーゼル・インジェクタ
    洗浄システム
    燃料噴射の多段精密電子制御の普及
    に伴い、インジェクタの不具合で本来の
    性能が発揮出来ない事例が増加傾向に
    ある。これを改善する目的の製品と方式。
    高圧化が進むディーゼルの燃料
    噴射圧と正常な噴霧状態を維
    持するメンテナンスの核となる設
    備として注目
    ㈱アイ・アール・エス
    http://www.irs-japan.com/
    6エコ・モビリティ・システム
    小型のEVに対する太陽光発電と蓄電
    池、及びそれらの制御器を統合したオン
    サイトシステムで、脱化石燃料物流&モビ
    リティを目指す。
    カスタマイズ機能を活かしてEV
    商用車に対する商用電源利用
    充電の極小化が可能。地産地
    消型EV化環境に可能性を示す
    ㈱プラン
    http://www.kamiwaza.jp/
    (表3)筆者が注目した商用車関連新技術・展示6選
    海外企業の参加
     海外からの参加で国名を冠した展示コーナー(パビ
    リオン)を構えていたのは英国(参加企業17社)、フ
    ランス(同12社)、ベルギーフランダース(政府貿易
    投資局以下4社)、カナダ(大使館以下11社)、米
    国から3州2社(ミシシッピ州政府、ノースカロライ
    ナ州政府日本事務所、ウエストバージニア州(日本代
    表事務所以下3社)、スペイン・カタルーニャ州政府
    ⑴など6か国42社があった。この他企業単位の海
    外出展者は47社で、これらを合計すると全540出
    展者に対する割合は約8.7%(出展者目録より筆者
    調べ)であった。
    商用車向けの新商品
     商用車に目に見えるかたちで適用可能と判断して筆
    者が選んだ5品目を解説しておこう。読者も関心を
    寄せられるだろうと思われる出展品である。選ぶに際
    しての視点は以下のとおり・・
    1)環境性能の維持向上に貢献するもの
    2)重大事故減少と運行の安全性向上に貢献するもの
    3)ディーゼル車の性能維持と整備に有用なもの
    4)EVの持ち味が生かせると考えられる関連製品
    ・・などである。
    1.TRWオートモーティブジャパン社は米国ミシガン
    州に本拠を置くTRWオートモーティブ社の日本法人
    だが、TRWオートモーティブ本体は本2015年5月
    20日にドイツに本拠を置くグローバル企業のZF社に
    買収されてグループに組み入れられたばかりである。
    ZF社はパワートレーンを始めとする自動車の主要コン
    ポーネントサプライヤーだが、TRWが手掛ける自動
    運転システムを取り込んで〝システムサプライヤー〟
    業態の拡充を図ったものである。
     出展品の中の〝機能拡張型モノカメラS-CAN3〟
    は車両前面に装着する1台のカメラで〝エマージェン
    シーブレーキ、アダプティヴクルーズコントロール、
    道路標識認識、交通信号識別、車線逸脱警報とハイ
    ビーム自動制御などの機能を持ち、より快適、安全
    な運転を実現する〟と説明されている。エマージェン
    シーブレーキは運転者が気付かない危険状態にも自
    動で判断して制動をかける機能、アダプティヴクルー
    ズコントロールは希望する速度を設定するとこれを自
    動的維持して走行する機能に前車との距離を検知し
    て車間距離が危険なほど近づくことを検知算出してア
    自動車新技術研究
    TheTRUCK2015年7月号22
    クセル開度を絞ったり制動を行う機能である。
     道路標識認識は制限速度標識の読み取りから速
    度超過を警告する機能に結びつき、車線逸脱状態
    を路面の車線区画を認識することでこれも警報する
    し、前方車両が接近してくる場合はヘッドライトのハ
    イビームを切り替えるなど、安全サイドに各種の操作
    を行う。
    2.ヴァレオジャパンのレーザースキャナーSCALA
    は赤外線系電磁波を利用して車両周囲をスキャン(走
    査)し、車やバイク、歩行者など動いている物体、立
    木や停止している車両やガードレールなどを検知し、
    衝突予防措置に結び付ける。1.などとは役割を異に
    する機能を発揮するから、例えばこうしたものも利用
    すると全方位の監視が精度良く出来る。相対的に死
    角の大きい大型商用車などに応用すれば右左折時の
    巻き込み事故などの派生を予防することが出来る筈で
    ある。
    1.2.とも今後一層普及が望まれる自動(又は自律)
    運転に欠かせない基本的機能で、既にわが国の大型
    商用車にも一部は標準化されているが、今後認識領
    域を拡大して悲惨な結果に結びつく可能性の高い大
    型商用車の交通事故撲滅に効果を期待するという立
    場で紹介した。
    3.ワブコジャパン社はWABCOの日本法人。
    WABCO本体は米ニューヨーク株式市場に上場して
    いるグローバル企業で、発祥はウエスティングハウス
    鉄道車両用エアブレーキを製造する部門に遡ることが
    出来る。約150年前のことである。自動車部門でも
    ブレーキシステムに特化して営業展開している。
     今回の出展品は全部で5品目あったが、その中か
    らMAXXTM新型シングルピストン・エア・ディスク・
    ブレーキを選んだのは、わが国では未だ普及率の低
    いディスクブレーキの普及を視野に入れてのことであ
    る。対応するホィールサイズは17.5〜22.5インチ
    にわたり大型トレーラで多用されているホィールをほ
    ぼ全てカバーする。
     わが国では未だドラムブレーキが主流の感がある
    が、ディスクブレーキ普及の足かせになっている事
    由として価格が高いという意見に対する回答となる
    のが本製品の特徴としている。軽量化によって実質
    積載重量が増やせるという大きなメリットがあるが、
    同時にドラムブレーキより制動距離を短縮できる、
    新機構によりパッドの片減りが防止できる、メンテナ
    ンスコストが低減出来る、パッド厚さを増加させ長
    寿命化を図った、稼働率が向上する、摩耗センサー
    でパッド交換時期をドライバーに知らせる、など多
    くの特長を訴求している。同社が手掛けるABS、
    EBSなどは既に採用例が多いのもWABCOの強み
    である。
    4.プラン社は地方に根ざした中堅企業であるが、カ
    スタマイズ機能を持って施工する太陽光発電システム
    とEVの組み合わせにより、人員輸送及び物流の脱
    化石燃料化を目指す活動を行っている。本誌本号の
    表紙に取り上げられた三輪EVトレーラ〝エレクトライ
    ク〟などをこのシステムに組み入れれば、ミクロの地
    産地消型のエコ物流も可能である。日中の発電電力
    を蓄電するバッテリーを必要とするが、これに敢えて
    鉛バッテリーを採用していることについては関心のあ
    る読者の皆さんは同社のコンセプトを直接聞いて賛同
    出来れば採用を検討して頂きたい。
    5.アイ・アール・エス社のディーゼルインジェクター
    洗浄システムは必ずしも新規性はないかも知れない
    が、近年増加しているディーゼルエンジンの噴射シ
    ステムに対する高機能化(燃圧の高圧化、多段精密
    制御噴射の高度化など)によりインジェクターに課せら
    れた機能が一旦損なわれると、排出ガス性能の劣化
    に直結するから、メンテナンスの重要性は高まってい
    る。一般的には、整備工場内部でこうした設備を整
    えて対処する場合と、専門工場へ外注する場合に分
    かれようが、いずれの場合も適切な設備によってイン
    ジェクターの適正な整備が必要であることから、一例
    として紹介した。
    国内トラック4社の対応
     国内メーカーはほぼ全社が出展する中で唯一参加
    しなかったのは三菱ふそうトラック・バスであった。
    ダイムラーの意向が反映したものと推察される。何し
    ろ、世界最大級の「IAA商用車ショー」を開催する
    イツ自動車工業会のなかでも最も影響力の大きい企
    業であり、ここにつぎ込むエネルギーは並大抵ではな
    いことから、無理からぬことかも知れない。他のトラッ
    ク3社の出展概要は表を参照頂くとして、ここでは
    最近の4社の動きの中から筆者が注目しているいくつ
    かの事案を紹介しておこう。
    エルフ用主力エンジンの一つ4JJ1-TCS型。低圧縮比
    化エンジンの先陣機種で注目される。総排気量は2.999L
    だが、これより大きなエンジンに低圧縮比化リノベーショ
    の動きが波及するか大いに関心が集まる
    いす自動車のブースでは新型ハイブリッド車が展示。EV走行機能を強化した
    クラッチ前方で上部に立ち上げたPTOの出力フランジの大きさに見入る
    人も多かった。用途はいろいろ想定できる
    TheTRUCK2015年7月号23
    人とくるまのテクノロジー展 2015
    社  名出展品の見どころ
    いす自動車
    いす自動車のニューディーゼルエンジンは、
    お客様の「運ぶ」を支え、信頼されるパートナー
    して豊かな暮らしに貢献します。いす自動
    車の新型エルフハイブリド車はEVモードを追
    加し特に静粛な走行環境に対応する「スマー
    グライド+e」サポート領域を拡大。燃費性能を
    飛躍的に向上しCO
    削減に貢献。
    日野自動車
    日野自動車のトラック・バス技術として、「先
    進国向け技術」「新興国向け車輌開発の取
    り組み」を紹介します。先進校向けには最
    新技術として、大型ディーゼルエンジン、安全
    技術(PCS、ドライバモニター、車線逸脱警
    報等最新のアクティブセフティー技術)等。
    新興国向けには新製品のHINO500誌の
    搭載、実機エンジンの展示、及び技術の紹
    介等。また、ダカールラリー2015の映像の
    紹介も行います。
    UDトラックス
    UDトラックスは、「GoingtheExtraMiles」
    をブランドプロミスに、安全で低燃費、高い稼
    働率を実現するトラックを提供しています。今
    回の展示では、UDトラックスの主力エンジン
    であるGH11とGH5、スムースな操作性と低
    燃費を両立させたESCOT−V、そして安全
    への取り組みを展示します。
    三菱ふそう
    トラック・バス
    (出展せず)
    注)各社報道向け原稿による
    (表4)トラック4社の展示
    ■いすゞ自動車(ISUZU)
     GMとの復縁と報じられている。かつての資本関係
    の復活は未だないが、北米市場をはじめとするGM
    が強い市場での中量級トラック(日本名エルフ・フォ
    ワード級)のGMブランドでの販売を再開する。
     また、ディーゼルエンジンの一層の商品力強化を
    視野に、主力機種も含めた設計の見直
    しを進めている。会場に展示したエルフ
    車用エンジンでは、圧縮比を従来機種
    より下げ(17.3→15.8)て、かつ性能
    を向上する成果を挙げている(本誌本年
    2月号「日本のトラック研究・いすゞエル
    フ14.5型試乗リポート」参照)。この動
    きはマツダが行った従来のディーゼルエ
    ンジンの設計常識を覆すSKYACTIVD
    TECHNOLOGYに刺激を受けたことは
    自動車新技術研究
    日野のA09C型エンジン。同社の旗艦車プロフィ(車両総重量25トン)
    用で総排気量8.9L。いわゆるダウンサイジング型の部類に入るだろ
    UTトラクスのGH11型エンジン(中央)。総排気量11Lで最高出力は
    350/380/410馬力の3仕様があり、車種・用途で使い分ける
    TheTRUCK2015年7月号24
    想像に難くないことを筆者は指摘しておいたが、この
    動きはこれから他のエンジンにも波及してゆく可能性
    は高いとみられる。
     今回の「人とくるまのテクノロジー展」と同期して
    第65回自動車技術賞
    *1)
    の発表があったが、いすゞ
    自動車の五味智紀氏は浅原賞学術奨励賞を受賞して
    いる。そのテーマは「トータルエンジンシミュレーショ
    ンシステムを用いたピストン温度予測手法の開発」
    なっているが、これは今後のディーゼルエンジンでは
    局部に至る熱管理を徹底して行い、求められている
    信頼耐久性と高性能化の両立を計ることに応用される
    技術であろう。
    *1)自動車技術会賞は、1951年に自動車工学およ
    び自動車技術の向上発展を奨励することを目的として
    設けられ、自動車技術における多大な貢献・功績に対
    して授賞する。
    ■日野自動車(HINO)
     当社はトヨタ自動車グループ内で商用車の中核企業
    であるが、技術開発の側面では相互乗り入れをして
    いることが覗われる。最近、トヨタ自動車がエンジン
    の熱効率に関連した研究テーマの一環で、ピストンを
    通じてシリンダー壁等に流れる(熱損失につながる)
    流の抑制を図る為に、ピストン頂部に一種のセラミッ
    クをコーティングする技術を開発していることが報じら
    れている。2020年に一層強化される燃費基準の達
    成に向けてエンジンの総合効率向上による燃費低減
    技術開発は現在最終段階に近づいていると推察され
    るが、上記の新技術が実用化の域に入ると日野のエ
    ンジンにも応用されることは十分可能性がある。いすゞ
    自動車が先鞭をつけた在来のディーゼルエンジンメー
    カーによる(圧縮比の見直しを含む)ディーゼルエンジ
    ンのリノベーションが、違った形で日野自動車によっ
    て日の目を見る可能性を筆者は予測するが、果たして
    如何であろうか。
     一方で、日野自動車が推進する安全装備の標準化
    路線は大型商用車による悲惨な交通事故に対する社
    会の要請に積極的に応えるものであり、他社をリード
    する姿勢は大いに評価されてよい。
     北米には専用車型を投入してトヨタとの営業面での
    協調展開も行っており、一定の実績伸長が見られる。
    ■UDトラックス(UDT)
     当社は現在の社名になって5年余、ボルボトラック
    スグループ入り以来多くの試練と変革を経て新しい立
    ち位置を確立した当社は、創業75年となる本年に
    創業時からの歩みを踏みしめつつ新たな歴史に邁進し
    ているといえよう。
     アジア地域におけるボルボグループの中核企業とし
    て究極の信頼性(UD:UltimateDependability)を
    新たなブランドコアバリューと位置付け、顧客に目に
    見える利益を実感してもらうべく数々の仕組みを提供
    している。低燃費エンジンと扱い易いATMを組み合
    わせたパワートレーン、充実したサービス体制、運行
    情報の解析と改善指導を一体化したUDインフォメー
    ションサービスなどである。
     本誌前号では上尾工場内に開設された新エクスペ
    リエンスセンターを通じて、国内を始めとしてアジア
    欧州仕様のFUSO(日本名CANTER)車の4×4車を改造した英国鉄
    道網保線車。現地架装メーカーによる昇降式鉄路ガイド車輪を装着し、
    タイヤも線路に接して軌道上を走行できる。後輪をシングルタイヤとして軌
    道幅との整合性をつけている
    ディスクブレーキ用電動駐車ブレーキの例
    気温と水温を感知して開閉するAGS:アクティブ・グリル・シャター。マ
    ツダのCX3型車に装着した例。大型車への展開も可能
    AGSの開いた状態
    AGSの閉じた状態
    TheTRUCK2015年7月号25
    地域の顧客との対話を拡充してファンを増やしてゆく
    姿勢を示している。当社の国際色は一層強まってゆく
    だろう。
    ■三菱ふそうトラック・バス(MFTBC)
     今回展示会に不参加だった背景については
    Daimlerの意向が強く働いたとの筆者なりの観測を
    前記した。FUSOブランド車の欧州での展開は小・中
    トラック(日本名CANTER)に限定特化しており、カー
    ゴ用途のほか特装車によるニッチ市場の開拓と攻略の
    展開が特徴的と映る。つい最近の事例では、英国の
    鉄道網(元の英国鉄)の保線作業車がある。わが国で
    もこの種の特装車は架装メーカーとの協業で各社が手
    がけているが、現地でも地道な取り組みが積み重ねら
    れているようだ。
     わが国内でかつていすゞエルフとトップシェア争いを
    展開していた面影は今は無いが、国内の消耗戦には
    一定の見切りをつけ新分野への展開で地歩固めの手
    応えを感じているように観察される。
    TheTRUCK2015年7月号26
     栃木県は関東の北部に位置し、面積は約6,500㎢で全国第20位、関東では
    最大の県である。県庁所在地の宇都宮市は、東京から約100㎞、東北新幹線
    で約50分の位置にあり、中核市の指定を受けている。最近では“餃子日本一”
    としても知られ宇都宮の宣伝に一役買っている。人口は約200万人(平成26
    年2月現在)で、宇都宮市に約52万人が集中し、小山市、足利市、栃木市、
    佐野市、那須塩原市、鹿沼市が10万人以上の都市となっている。地形は北部
    に八溝山地や那須連山、日光連山がつらなり、日光国立公園、尾瀬国立公園
    に指定されており、日光・鬼怒川・川治・塩原・那須などの観光地がある。また
    県内には那珂川、鬼怒川、渡良瀬川の3河川が流れており、那珂川は風光明
    媚で関東の四万十川と称され、季節にはアユや鮭、ウナギなどが獲れ、観光客
    に喜ばれている。渡良瀬川の下流には平成24年に、ラムサール条約に登録さ
    れた渡良瀬遊水地がある。気候は、山間部では冬季の降雪、また平地部では冬
    季の乾燥と夏季の雷が特徴で、宇都宮の雷日数は4〜9月に限っては日本一と
    なっている。冬の晴天日には放射冷却の影響を強く受け、日の出前後に氷点下と
    なり、温暖な県中南部の平地でも−5度を下回ることもある。県内の物流は圏央
    道の開通で大きく変貌を遂げようとしている。今回はトラック輸送の課題に正面
    から向き合う一般社団法人栃木県トラック協会(以下、栃木ト協)の笠原秀人会長
    に、協会活動など伺った。
    トラック協会長インタビュー《栃木県》
    笠原秀人
    (笠原運送株式会社)
    最大の課題は運賃の制度改革
    全国に先駆けて
    荷主懇談会を開催
    TheTRUCK2015年7月号27
    一般社団法人栃木県トラック協会の笠原秀人会長
    秋林路 今日は東京から電車を乗り継いで栃木ト
    協さんに寄せて頂きしたが、緑の田園が遠くまで広
    がり、関東平野の広さを実感しました。
    笠 原 そうですね、この辺りは自然に恵まれてい
    ますので、古くから農畜産が盛んです。また、最近
    は圏央道の開通で、物流事情が大きく変わろうして
    います。
    秋林路 確かに道路インフラに恵まれていますの
    で、トラック運送事業者にとっても、これからが楽しみ
    な地域ですね。
    笠 原 少し詳しくご説明しますと、都心からだと
    約一時間です。東北縦貫自動車道を軸に、外環道、
    圏央道、北関東道、常磐道、関越道に直結してい
    ます。また国道4号(東京―青森)、50号(高崎―水
    戸)、294号(柏―会津若松)、408号(成田)にも直
    結していますので、茨城港や新潟港からのコンテナ
    輸送も1〜3時間、仙台までは2時間強の距離です。
    更に長野、上信越、北関東道経由で、中部・関西
    TheTRUCK2015年7月号28
    企業進出が盛んです…笠原会長
    圏からも首都高を経由せずに輸送が可能ですので、
    インターチェンジに直結した物流センター等の産業団
    地も多くなっています。
    秋林路 都心に近くて、高速道のアクセスも良い
    のに、土地は安いようですね。
    笠 原 団地の用地価格は首都近郊隣接県の半
    分以下です。新設の物流センター賃貸料も条件次第
    では2,000円台(坪/月)の実現も可能です。工業用
    地価格は、首都東京の10分の1以下、圏央道沿
    線の半分以下。物流センターの建設費や賃料も低く
    抑えることが可能です。
    秋林路 最近は震災なども考えて物流施設の建設
    も計画されるようですね。
    笠 原 栃木は海なし県ですから津波の心配が
    無いし、台風や洪水による被害も少ない地域です。
    また東西南北に交通軸がありますので、災害地域を
    避けた物流網の維持が可能です。
    秋林路 産業ではどんな特性がありますか。
    笠 原 栃木県は、内陸型近代工業で製造業が
    県内経済を牽引する「ものづくり県」です。また、農
    業も盛んで米作、酪農、苺の栽培も広く知られてい
    ます。製造品出荷額は約8兆円で、県内総生産額
    に占める製造業比率は31%と全国屈指の実績を誇
    ます。様々な産業がバランスよく集積していて中で
    も自動車(日産自動車、ホンダ、いすゞ自動車)、航空
    (富士重工業)、産業用等の輸送用機械、医薬・
    医療関連(東芝メディカルシステムズ、中外製薬、久
    光製薬)は全国の核となっています。業種別製造品
    出荷額の構成比は、輸送機械19.2%、飲料たばこ
    (サンリー、ニッカ)10%、電気機械(富士通、東
    光高岳、日立アプライアンス、コマツ、キヤノン、栃
    木ニコン)9.8%、化学7.1%、食料品(エバラ食品、
    カルビー、丸大食品、森永製菓、ハウス食品)6.2%
    になっています。
    秋林路 最近の物流の動きではどんな点が注目さ
    れますか。
    笠 原 佐野市は北関東自動車道と東北自動車
    道の結節部に位置しています。そこで、交流拠点都
    市としての地域経済の活性化のために、国際コンテ
    ナ輸送の国際物流基地として、佐野市が「佐野インラ
    ドポート」の実現を推進していますので、今後、北
    関東自動車道、東北自動車道の物流が増加すると
    思います。
    秋林路 道路アクセスが良くなると、企業進出も盛
    んになるのではないですか。
    笠 原 はい、既に県南部に位置する「みぶ羽生
    田産業団地」に産業用ロボットや小型マシニングセンタ
    などで世界トプシェアを誇るファナックが2016年秋に
    稼働予定で、工場用地として70万平方メートルを購
    入しています。県知事も率先して企業誘致に取り組
    んでいますが、今後も企業進出は増えると思います。
    ただ一方では、キリンビールの撤退、ブリジスンや
    シャープの縮小などと物流の減少が懸念されますの
    で、引き続き県知事には企業誘致に頑張っていただく
    う要請しているところです。
    秋林路 国土交通省は今年から連結車両(トレー
    TheTRUCK2015年7月号29
    安全運動の一環で高齢者にヘルメットを寄贈
    実車による左折巻き込み事故の教室
    燃料高騰反対でデモ行進
    ラ)の軸重緩和(2軸車の駆動軸を11.5t)を実施しま
    したし、45フィートの超大コンテナも内陸走行できるよ
    うになりしたので、大量高速輸送は一段と進むと思
    われます。進出企業にとりましても朗報です。
    笠 原 確かに、これからはレーラの時代だと思
    います。
    秋林路 トラク運送事業は地域産業と密接な関
    係がありますので、産業振興はとても重要です。とこ
    ろで、この業界は近年、ドライバー不足が深刻です
    が、栃木ト協としてはどのような取り組みをしておられ
    るのですか。
    笠 原 現在、国土交通省は高等学校への訪問
    活動を行っていますが、栃木ト協としても、具体的な
    条件を示す等の方策を模索中です。また厚生労働
    省の「雇用関係助成金」を上手く活用した人材確保
    も進めて行く考えです。更に栃木ト協としては、近く
    に自衛隊の基地がありますので、退職自衛官のトラッ
    ク運送事業への再就職制度の利用を促進する計画
    です。
    秋林路 ドライバー不足は待ったなしのところに来
    ているので、運賃問題と併せて後ほどまた伺います
    が、会員への経営支援では、どのような活動があり
    ますか。
    笠 原 沢山あるのですが、前回の燃料価格変
    動に対しては、運送事業者の経営が厳しさを増す現
    状を訴えるデモを平成26年8月9日に経営者、運
    転手など約250名が参加して、宇都宮市役所から
    栃木県庁まで約1㎞の行進を行いました。また、機
    会あるごとに国会議員への陳情を行っています。
    秋林路 積極的ですね。社会的要請の強い安全・
    環境問題への取り組みはいかがですか。
    笠 原 安全対策としては、交通安全事故被害
    を軽減する安全用品の配布として、高齢者向け自転
    車用ヘルメト400個を栃木県、警察署を通じて一
    般市民に配布しました。ただ、恥ずかしがって着用し
    ないケースも見受けられます。また、左折巻き込み事
    故や死角体験等を実車を使って再現する、交通安全
    教室を県内13地区の小中高学校や自動車教習所で
    開催しています。すでに68回で参加者は1万3千
    名に上ります。
    TheTRUCK2015年7月号30
    矢板での植樹活動
    年2回の県内一斉道路美化運動
    環境事業として行っているエコドライブ講習会
    益子での植樹活動
    取得したとちぎカーボンオフセット証書
     今年6月からは自転車に対する規制が強化されま
    したが、栃木県は自転車専用道の総延長が日本一で
    もありますので、県も、我々も事故の撲滅に強い思い
    をもって取り組んでいます。
    秋林路 それは大変な活動です。
    笠 原 その他にも、「営業用自動車事業所交通
    事故防止100日コンクール」を運輸支局、県警、バ
    ス協会、タクシー協会と一緒に行っています。今年で
    すでに29回になっています。今回は6支部で事故0
    になりましたので、事故防止の効果があったものと思
    われます。このコンクールは表彰式を行いますので、
    励みにもなると思われます。
    秋林路 環境問題はいかがですか。
    笠 原 年2回(5月、11月)、県内一斉に道路
    環境美化運動を行っています。13支部の会員、家
    族(27ヵ所、延べ1,930名)によるこの活動で道路が
    綺麗になることで地域に貢献できるともに、一般ドラ
    イバーに対しても環境美化へのアピールが出来ます。
    また運転者向け事故防止講習会(県内3カ所で計
    296名)など事故防止講習会も実施しています。
    秋林路 一般ドライバーへのアピールは良いですね。
    笠 原 その他にも、植樹事業等大気環境改善と
    して、栃木県との協定で県内3カ所(矢板、岩舟、
    益子)での「トラックの森づくり事業」を行っています。
    この活動では、
    栃木県から「とちぎ
    カーボンオフセット」
    の認証1号を頂い
    ています。また「ト
    ラックの森づくり事
    業」のラピング車4
    台を県内に走行さ
    せてPRを行ってい
    ますが、子供や大
    人にも注目されます
    TheTRUCK2015年7月号31
    盛り上がりを見せるトラックデーイベン
    幸洋ラッピングトラッ
    トラックデーイベントでの太鼓の演奏
    ので効果があるものと思っています。また、エコドライ
    ブ講習会を年9回実施し、窒素酸化物や二酸化炭
    素、粒子状物質等の削減を図っています。一般市民
    に対しては、毎年トラックの日(10月9日)直前の日曜
    日に、「トラックの日感謝デーイベント」を行って、国民
    生活を支えるライフラインであるトラックに理解を深め、
    トラック協会の紹介や事故防止、働くクルマ展示など
    で一般市民に周知しています。
    秋林路 ずいぶん長期にわたる活動が目立ちま
    すね。
    笠 原 その点は会員一丸となって頑張っていま
    す。ただ、労働時間の問題や不安定な燃料価格、
    安全・環境への投資もあってトラック運送は経営が安
    定しません。
    秋林路 そうですね。本誌もここ2年間はドライ
    バー不足と運賃問題を最大の編集テーマに掲げてい
    ますが、この業界は3Kイメージが色濃く残っている
    のに加えて、待遇の問題が大きな課題です。
    笠 原 3Kイメージが残っている事は確かです
    が、実際にはフォークリフトなど機械荷役が多くなって
    いますし、言葉づかいまで含めて、事業者はドライバー
    教育を熱心に行っていますので、実態は昔とは大き
    変わっています。
    秋林路 トラック運送は“ライフライン”に位置づけ
    られていますので、社会的には非常に重要な役割を
    担っています。ただ残念なことに、その役割が一般
    には正しく認知されていないし、物流の中でもしわ寄
    せを食らいやすい業界だと思います。このことが、運
    賃にも影響していて、経営が苦しい事業者が多くなっ
    ているのも事実です。適正運賃が貰えなくては頑張る
    ドライバーに充分な給料も支払えない。今年は14万
    人もドライバーが不足することが公表されていますの
    で、トラックで物が運べなくなる限界に近づいているよ
    うに思います。
    笠 原 運賃は同業者で話し合って取り決めると
    公正取引に関わって来るし、取引先の荷主は物価抑
    制の意味もあって、可能な限り運賃を下げたい訳で
    す。物流二法による規制緩和以来、この25年間で
    事業者数は4万から6万3000社に増えていますか
    TheTRUCK2015年7月号32
    ら、生き残りをかけて荷物の奪い合いになる。これが
    適正運賃が収受出来ない最大の原因です。
    秋林路 物流二法で運賃も自由化して来た訳です
    が、これも限度があるように思います。その結果、ド
    ライバー不足で物が運べなくなれば、ライフラインは
    止まってしまことになります。その前に手を打つ必要
    があると訴えたのが本誌の政治家インタビューです。
    その効果があったのか、国土交通省はドライバー不
    足対策や運賃の書面化などトラック運送経営の正常
    化への取り組みが見られます。
    笠 原 この問題は、個々の事業者だけでは声
    が届きにくい業界ですから、政治力強化が必要です。
    秋林路 その辺りは全日本トラック協会の役割だと
    思いますが、高速道路料金や税制など、最近は頑張っ
    て成果を上げているように思います。
    笠 原 私は常日頃から「会員のためになる協会
    運営をする」と申し上げています。では、会員が何を
    一番望んでいるかというと“運賃の適正化”が真っ先
    に上げられます。これは他のトラック協会も同じだと思
    います。バスにしてもタクシーにしても、規定運賃のよ
    うなものがあるのに、トラック運送にはそれがない。こ
    れは一日も早く実現して貰いたい要望です。燃料が
    上がった下がったで一喜一憂するのではなく、安定
    した経営が出来るようにして頂きたい。その結果、過
    労運転による事故も減るだろうし、環境問題にも取り
    組みやすくなります。
    秋林路 元の運輸省時代には“法定運賃”があり
    ました。それが物流二法で自由化されました。私は
    基本的には自由化の考え方は間違っていないと思う
    のですが、やはり行き過ぎると弱者にしわ寄せがくるこ
    とになります。運賃に対しては、荷主もトラック運送事
    業者も対等であるべきですが、主導権はやはり荷主
    が握ることになります。新規参入の事業者は荷物が
    欲しいので、「他社よも安く運ぶから…」という形で
    値崩れが際限なく続きます。その結果、ドライバーに
    も世間並みの給料が支払えないし、若い人も魅力を
    感じない業界に陥ってしまった。これが最大の問題だ
    と思いますね。
    笠 原 自由化は言葉の響きは良いのですが、取
    引の構造的問題がありますから、弱者へのしわ寄せ
    は避けられません。その結果、どうにもならないところ
    に来ているのが現状です。
    秋林路 トラック運送も鉄鋼・橋梁のような重量品
    からタンクローリーで運ぶ液体、定温輸送車で運ぶ
    食品など様々ですが、分野別に運賃のあり方を検
    討して、基準になる線を決めると良いのではないで
    しようか。
    笠 原 それも事業者が話し合って決めたのでは
    公正取引にひっかかるでしょう。
    秋林路 そうですね。勝手に決めると談合になる
    ので、有識者などで『トラック運賃制度検討協議会』
    のようなものを組織して、国に提言する形が良いと思
    います。荷主も物が届かなければビジネスは完結し
    ませんから、物流費の中に占めるトラック運賃の割合
    が、何か目安になるものが国から示されれば、不当
    な要求はしなくなると思います。最終的には物価に占
    TheTRUCK2015年7月号33
    本誌・秋林路(右)
    めるトラック運送費の割合を明確にすることになるの
    で、一般消費者の理解も必要です。
    笠 原 そう言う事が出来れば有り難い事です
    が、一日も早く実現して欲しい課題です。
    秋林路 実は本誌は来年(2016)のトラックの日を
    中心に4日間、幕張メッセでトラックショーの開催を
    準備していますが、そのジョイントイベントとして、荷
    主とトラク運送事業者、そして事業者とトラクメー
    カーが本音で語り合える講演会やシンポジウムを開
    催する計画です。幸い幕張メッセには1,600名を収
    容できるコンベンシンホールと22室の会議場をもつ
    国際会議場がありますので、議論を尽くすには最適
    な場所です。
    笠 原 トラックショーには、約10年前に支部会
    員の子供達を連れて観に行きした。ほぼ半日ほど自
    由行動にしましたが、沢山カタログを集めて戻りのバ
    ス車中で盛り上がっていました。そのような企画を進
    めて頂くことは有り難いことです。
    秋林路 そうで御座いましたか。今度のトラック
    ョーでは、トラック運送事業者の子供と親御さんもご
    招待して、“こどもトラックショー”も開催の予定です。
    子供達にはこの業界の社会的役割もしっかり勉強し
    て頂きたいし、それをNHKなどマスコミにも取材して
    欲しいと思っています。
    笠 原 それは楽しみな事です。トラクショーで
    は荷主と懇談できる場を計画しておられるという事で
    すが、実は栃木ト協も全国に先駆けて荷主懇談会
    を開催しています。この懇談会では、我々の現状を
    お話しして、運転時間の制限などに理解を求めてい
    ます。そして、荷主さんとも真剣に意見交換してい
    ます。
    秋林路 何事も最初に手がけるのは大変です。
    笠 原 ただ、我々としましては、現場に近いご
    担当者に来て頂きたいのですが、その点課題が残っ
    ています。
    秋林路 荷主も現場担当は日常業務があるので難
    しいのかも知れません。これまで、トラックショーはメー
    カーとトラック運送事業者をつなぐイベントとして開催し
    て来たのですが、今後は荷主までその幅を広げたい
    と考えています。
    笠 原 そのような形になると、我々の実情も荷主
    に伝わり易くなると思います。トラックのあり方につき
    しては、私は必要以上にデラクスになり過ぎている
    のではないかと感じています。車両価格は運送経営
    にも影響しますので、もう少しシンプルにならないもの
    かと考えています。
    秋林路 トラックのあり方については、他県のトラッ
    ク協会でも話題に上りしたが、交流が不足している
    ように思います。やはり、常日頃からメーカーとユー
    ザーが本音で話し合う場は必要です。
    笠 原 地元のディーラーと懇談の場を持つ事は
    必要だと思います。
    秋林路 トラックは物流と深い関係がありますから
    荷主も無縁ではないですよね。例えば側面開放のウ
    ングボデーも荷主の物流戦略とも言えるユニッロー
    ドを目的に開発されたものです。つまトラックに対し
    ては、荷主もトラック運送業者もメーカーも同じ土俵の
    上にいるのですが、最近は相互の関係が希薄になっ
    ているように思います。この点と点を線で結び、更に
    TheTRUCK2015年7月号34
    歴史を刻む笠原運送
    面に発展させれば、トラックはもっと実態に即したもの
    になると思います。
    笠 原 それは同感です。我々はもっと交流を密
    にする必要があると思います。
    秋林路 それと、業界の実態を広く一般に知って
    頂く為には、マスコミを味方につけることが大切です。
    その為には取材していただくネタを考えなくてはいけな
    いし、広報活動も重要です。
    笠 原 そうですね。栃木ト協のイベントは栃木放
    送など地元ラジオ局は報道してくれます。
    秋林路 トラック運送の役割など、イメージづくりは
    大切です。
     ところで、会長さんの笠原運送は何時の創業ですか。
    笠 原 当社は父(正一郎氏)が昭和32年12月
    に創業しています。
    秋林路 主にどんな運送ですか。
    笠 原 主体は郵便の輸送で宇都宮を中心に北
    は仙台、西は東京・町田あたりまでの幹線輸送です
    が、こちらは365日無休です。他に、自動車部品の
    配達、コーンフレークの原料など食品もあります。現
    在、36台保有しています。
    秋林路 やはりドライバー不足は深刻ですか。
    笠 原 募集は大変難しい状況です。それで、
    しても人手が足りないので、昨年は顧客を選別させ
    て頂こうということで運賃の合わない2社をお断りさせ
    て頂きした。
    秋林路 そうですか。荷主さんとは本来対等であ
    るべきですが、無理難題を提示された場合は断る勇
    気もこの業界は必要だと思います。
    笠 原 その通りです。荷主はお客様に違いない
    のですが、赤字になる場合はお断りする。全事業者
    が襟を正せば運賃問題も解決するのですが、アウ
    サイダーも居るし、なかなか正常化は困難です。
    秋林路 会長は何歳でこの業界に入られたので
    すか。
    笠 原 24歳です。会社を後継したのは昭和47
    年です。父はこの会社を設立する前は笠原商店と
    て、飼料とか肥料を川崎方面から運ぶ一方、苺の配
    送も行っていました。ただ、青果物輸送は天候によって
    荷の量が左右される上に、車両の稼働時間も不規則
    で、安定性に欠けるので、航空貨物などに進出して、
    徐々に取扱い貨物の幅を広げて今日に至る次第です。
    秋林路 これから道路事情が良くなりますし、レー
    も良いのではないですか。
    笠 原 私もこれからはレーラ化という事でお客
    さんにも相談して見ましたが、郵便局は割に狭いとこ
    ろが多くて、難しい状況です。ただレーラを上手く
    使えばドライバー不足にも貢献しますから、今後レー
    ラは普及すると思います。
    秋林路 会社の経営で教訓にしておられることは
    何かありますか。
    TheTRUCK2015年7月号35
    笠原運送で活躍する大型トラック笠原運送で活躍する中型トラッ
    笠 原 私は、『人は石垣、人は城』という武田節
    の言葉を経営訓にしています。会社の経営も荷の安全
    も、社内の人間関係がよなければ確立されるもので
    はありません。利益率を考えるこも大事ですが、まず
    安全第一です。そのために、車両の安全点検、コン
    プライアンス(法令遵守)には、とくに力を入れてきした。
    秋林路 何か、スポーツやご趣味は
    笠 原 趣味と言えるものはなくて、行きがかりで
    ゴルフはしますが、上手ではありません(笑)。今はもっ
    ぱら社業と協会活動に専念しています。
    秋林路 この業界は今、非常に大事な時期を迎え
    ていると思いますので、健康に留意なさってご活躍さ
    れますことを祈願しております。本日はご多忙のところ
    有り難う御座いました。
    此花
    〒554-0024大阪市此花区島屋4丁目2番40号
    TEL(06)6468-8828FAX(06)6468-8829
    広島
    〒733-0822広島市西区庚午中1丁目2番41号
    TEL(082)507-1005FAX(082)273-8500
    “運輸システムEXPO2015”
    TheTRUCK2015年7月号36
    「運輸システムEXPO2015」の展示会場風景
    ICTの役割が増加する中で
    運輸事故撲滅を目指し開催
    本誌レポーター:
    岡雅夫
    TheTRUCK2015年7月号37
    3展合同の来場者受付登録所会場内で実施された関連セミナー
    主催者のパラボックス代表、於
    ???
    久田氏
     2015年5月27日〜29日の3日間、東京ビッ
    グサイト西4ホールで恒例(今回で5回目の開催)
    となった「運輸システムEXPO2015」運輸事
    故撲滅を目指して!を旗印に開催された。同時開
    催の「ワイヤレスジャパン2015」「ワイヤレス・
    テクノロジー・パーク2015」も同じフロアで開催
    され、相互に関わる技術も見られ興味深い展示
    会であった。なお、会期3日間の総来場者数は
    44,791人で昨年開催時(44,740人)とほぼ同
    数となった。
     かなり専門分野に関わる展示が多く、同じフロ
    アの中で明確なエリア分けが無いため一見どこか
    らが運輸システムでどこがワイヤレスジャパンな
    のか判りずらい部分もあったが、そこはやはり車
    に関わる展示が多いところが運輸システムという
    ことで、将来的にはさらに交流が深まり、運輸シ
    ステムというくくりの中でICT(Informationand
    CommunicationTechnology)やモバイルの果た
    す役割が必然的に増えていき、うまく溶け込んで
    いくと思われる。そうなれば車両メーカーも黙っ
    て見に来るだけではなく自社のPRの重要性に気付
    くのではなかろうか。
     生意気な事を言うようだが、そうした時に「運輸
    システム」という名称が相応しいかどうかという事
    が再検討課題になるのではなかろうか。今回の展
    示を見た時に従来以上にそうした印象を得た。そ
    の件に関して主催者であるパラボックス㈱代表取
    締役の於久田幸雄氏にお聞きしたところ、やはり
    もっといい名称があればいいのだが、との回答で
    あった。
     今までも名称は変更してきており「運輸システム
    EXPO」という名称は前回に引き続き2回目だとの
    ことであった。はたらく車とそこに関わる情報。シ
    ステムを得られる内容の濃い展示会であるからひ
    とくくりにする名称は難しいとは思うが今後の検討
    を期待したい。
     今回の出展社は共同出展含み37社。その全
    てを紹介したいのだが、誌面の都合上残念なが
    ら詳細についてはその内の一部を採りあげるが、
    出展社が訴求したいポイントについてはその代表
    的なものを以下の通りインデックス的に簡単にま
    とめて見た。
    “運輸システムEXPO2015”
    TheTRUCK2015年7月号38
    1.㈱あきば商会:タコドラ(タコグラフとドライブレ
    コーダで安全運転支援)
    2.アゼアス㈱:高視認性防護服(路上作業者の人対車
    両事故防止安全アイテム)
    3.㈱NPシステム開発:ハイブリッドデジタコ(車載
    機+車載運行管理システム)
    4.快走韋駄天:運行管理システム(パソコンと携帯で
    受注配車請求入金を一括管理)
    5.協栄産業㈱:物流ソリューション(配送進捗管理、
    運賃計算システム等)
    6.共栄システム㈱:物流業情報管理システム(運坊シ
    リーズで業務効率化)
    7.クラリオン㈱:バックアイカメラ、ナビ(死角防止
    マルチカメラ)
    8.㈱ゴーガ:Googleマップ利用の位置情報活用シス
    テム(稼働状況確認)
    9.㈱コムアソート:配送進捗システム(携帯スマホ利
    用、自動認識)
    10.㈱GISupply:リアルタイムトラッキング
    (docomo3G回線利用)
    11.㈱シーネット:クラウド型在庫管理システム(倉
    庫管理システムに特化)
    12.㈱システムギアソフテック:一番星運送業システ
    (運送業特有の業務に対応)
    13.ジャパン・トゥエンティワン㈱:後付衝突防止警
    報装置(1カメラ画像処理技術)
    14.JUKI㈱、㈱デルタツーリング:ドライブリズム
    マスター(体調管理装置)
    15.㈱城山:スマトークⅡ(FOMA通信網利用のIP
    無線アプリ式無線機)
    16.西菱電機㈱:IP無線一体型カーナビ(カーナビと
    の一体化で省スペース化)
    17.太陽工業㈱:エアースタイル(トラック用アイド
    リングストップ対応クーラー)
    18.テクダイヤ㈱:キッズビーコン(タグ発信機によ
    る交通安全支援システム)
    19.テレニシ㈱、フィガロ技研㈱IT点呼キーパー(パ
    ソコンとアルコールチェッカ)
    20.テレネット㈱IP無線機(災害時緊急連絡サービス)
    21.東京ユニオン物流㈱、フリッカーヘルスマネジメ
    ント㈱、㈱トライプロ:ドライバー疲労度測定管理
    システム(パソコン簡易測定)
    22.㈱東計電算:クラウド配車総合管理システム(車
    両別収支管理サポート)
    23.㈱トータルフリートサービス:「車録」(ドラレコ
    データ利用の安全運転支援)
    24.ナブテスコ(ナブテスコオートモティブ、ナブテ
    スコサービス):オイルキャッチャ
    25.日米電子㈱:GPS動態管理システム(デジタコ機
    能搭載)
    26.㈱ビジネスサポート:販売管理システム(売上仕
    入在庫管理システム)
    27.㈱日立ケーイーシステムズ:シミュレータ機能搭
    載可搬型運転操作検査器
    28.㈱物流ウイークリー:運輸システムEXPO特集
    (週刊物流専門紙)
    29.Bluebird.Inc:業務用端末(在庫管理、配達現場
    管理、業務支援等)
    30.㈱ポート・ア・クールジャパン:現場用大型ウオー
    タークールファン
    31.㈱ツキ:合宿免許(運送業界ドライバー不足対応、
    大型免許)
    32.矢崎エナジーシステム㈱:ドラレコ一体型デジタ
    (予防安全)
    33.ユニオンツール㈱:眠気感知器(居眠り運転予防、
    ウエアラブル心拍センサ)
    ◇   ◇   ◇   ◇
     さらにワイヤレスジャパンの中でも運輸システム又
    は車に関する展示が見られたのでそれも合わせて紹
    介する。
    1.インターネットイニシアティブ:富士ソフトの車
    両管理システム(次世代ドラレコ)
    2.リニアテクノロジー:センサーによる輸送システ
    ムモニタリング(列車、トラック)
    3.ITSパビリオン(トヨタ、ホンダ):ITS協調型運転
    支援システム、安全環境快適性
    4.アイサンテクノロジー:マルチGNSSによる車両
    実験、移動体高精度測位
    5.沖電気DSRC高度化(無線通信技術によるITSサー
    ビス)
    6.ヤマトシステム開発:物流業務のワンストップ化
    7.日本電業工作:車載用無線LANアンテナ(トラッ
    ク物流管理に活用)
    ◇   ◇   ◇   ◇
    それでは見どころを紹介していこう。
     先ず【ジャパン・トゥエンティワン】「後付け衝突防
    TheTRUCK2015年7月号39
    JUKIのスリープバスター体験風景
    スリープバスターのモニター。筆者のどんよりした体調を現わす
    やがて表示は「警告」モードに
    西菱電機のソリッドアイピー
    止警報装置」だが、こちらはセミナーでも細かく解説を
    していたが昨年も出展しており、その時点からの進化
    は判らなかったが技術的には高く評価されている。そ
    の証拠としては自動車メーカーがユニッとして採用して
    いることから明らかである。特徴は1カメラで1秒間
    に15回撮影して瞬時に解析して警報として情報化する
    ところにある。イスラエルの技術だそうだがその解析力
    の速さと正確さは解説画面を見ても驚くほどだ。もちろ
    ん車だけでなく人間も検知し、直接自車と関わりがなさ
    そうな場所は除外しているから無闇に警報が出るわけで
    もない。ちなみに日産エクストレイル、セレナ、ノート
    などに採用されているのが同社の装置で、日産は車両
    側で自動ブレーキ機能を追加している。GM、フォード、
    クライスラー、プジョー、BMWやスカニアなどが採用
    している。後付け式なので警報のみだが、ドライブレコー
    ダーとの連動などで十分安全運転に役立つだろう。
     次は【JUKI】である。「スリープバスター」と名付けら
    れた装置は運転中の体調に起因する事故リスクを低減
    させる装置として国土交通省補助制度対象機種になっ
    ている。センサーが眠気の進行や集中力の低下など体
    調の変化をモニタリングする。シートに座るだけで体調
    を推定する。筆者が実験台としてシートに座って見た
    が、かなりの二日酔い状態で寝不足の状況が見事にモ
    ニタリングされて運転は要注意(警告モード)のメッセー
    ジが現れた。18秒ごとに体調の変化を知らせてくれ
    る。もちろん音声でも警告するので居眠り運転防止に
    もなる。長距離運転では知らない内に睡魔にのみ込ま
    れている事があるからこうした安全装置が必要だと思う
    が、この情報をネットで飛ばし警告が出たからそこで
    ライバーは車を停めてしばらく休んでもいいという指示
    を運行管理者が出せるだろうか。
     IP無線機は数社が展示していたが、その中で操作
    が簡単そうなものを紹介する。【城山】が出展した「IP無
    線機」は人口カバー率100%のNTTDocomoFOMA通
    信網を利用しており、日本中どこでも通信することが
    出来るのが売りである。災害時に制限されにくいパケッ
    ト帯域を使用しているためにいざという時にも安心であ
    る。無線LANにも接続可能でFOMA回線が使えない
    場合でもインターネット網を利用して通信が可能だ。「無
    線機に代わる無線機を追求した」という地下でも建物内
    でもあらゆる現場で活躍することを想定して防水、防
    塵、防寒や堅牢性は十分そうだ。
     そのIP無線機をナビゲーションと一体化させたのが
    【西菱電機】「ソリッドアイピー」だ。こちらはソフトバ
    ンクの回線を使う。
    カーナビと一体化す
    ることでスペース効
    率を高め、タクシー
    やバス、トラックな
    どへの搭載を前提に
    考えられている。車
    内での利用に限られ
    るのでマイクはいか
    にも無線機のスタイ
    ルで、携帯的なス
    “運輸システムEXPO2015”
    TheTRUCK2015年7月号40
    太陽工業のエアースタイル及びベッドマッ
    クラリオンの超広角160度ビュー小型カメ
    テクダイヤのキッズビーコン・シルバービーコ
    ン。手前が受信機、小さい2つが送信タグ
    テクダイヤの説明パネル
    マートな形状ではない。西菱電機でも携帯式IPも販売
    しているが、こちらはソフトバンクのため接続率ナンバー
    ワンを謳い文句にしている。
     トラック車内の快適性と省エネを狙った商品として
    【太陽工業】「エアースタイル」が展示されていた。ト
    ラック用アイドリングストップ対応スポットクーラーで、
    全日本トラック協会助成対象商品である。トラックの延
    着防止による
    時間調整や法
    令順守による
    休憩時間の確
    保など、車内
    での大気・休
    憩時間は増え
    ている。その
    上、荷待ち時
    間が長い、乗
    務員休憩室が
    無い、トラッ
    クから離れら
    れないなどの状況から車内の空調は切実な問題だ。そ
    こでほとんどのドライバーが体験する荷待ち、時間調
    整に大変便利な機器が求められている。大型トラック
    のベッド部分に設置して冷気を供給する仕組みだが、
    電源は車のメインバッテリーから電気をされるサブバッ
    テリーを使う。最長6時間稼働できるので安心だ。
    室外機の設置も不要でショートキャブ車にも設置可能
    だ。大型・中型共国内メーカー4社に対応でき、
    VOLVOにも装着できる。又逆にトラック専用燃焼式エ
    アヒーターも販売している。太陽工業は元来テントメー
    カーなので本装置と接続できるスリーピングシェルター
    も用意されている。
     今回大変ユニークな交通安全システムが展示され
    た。【テクダイヤ】が開発中の「キッズビーコンとシル
    バービーコン」だ。小型軽量のビーコン・タグ型発信
    機から発信される電波をドライブレコーダーに内蔵され
    た受信機でキャッチし、警報を発することでスピードを
    落とすなど交通安全につながるものだ。特徴はカメラ
    やセンサーでは捉えられない曲がり角などの死角、夜
    道や荒天などでも電波方式により存在をキャッチできる
    ことである。今現在制限速度を守るためのドライバー
    ツールであるXバンドのレーダー探知機は驚くことにほ
    ぼ2割と高い普及率だが、そのXバンドに反応する
    ので狭い道での
    事故防止に役
    立つ。今後は
    小学生の84%
    が所持している
    防犯ブザーにタ
    グを組み込む方
    向で国と実証実
    験を進めると言
    う。また将来の
    400MHZ化へ
    の対応も考慮し
    ているとのこと
    だ。自動ブレー
    キで感知できな
    いような状況で
    も警報は発せら
    れることから、
    新たな交通安
    全グッズとして
    期待される。な
    お、高齢者の
    事故防止としては杖にタグを組み込むなどのシルバー
    ビーコンが考えられている。
    「商用車用バックカメラ」の最新技術を展示したのが
    【クラリオン】である。超広角カメラでは160度の広角
    カメラで低い位置に取り付けても死角をカバーし、モニ
    ター画面も4画面表示が出来る。左側面カメラで巻
    き込み防止を図り、右側面カメラも追加することで狭
    い道路で作業する塵芥車などで車の周り全てを監視し
    安全を確保できる。バックカメラは左右反転も出来る
    TheTRUCK2015年7月号41
    クラリオンの超広角160度ビュー小型カメラ
    あきば商会:タコドラ
    NPシステム開発:ハイブリドデジタコ
    アゼアス:高視認性防護服
    ので常時リヤビューミラーとして使用が可能である。4
    カメラ映像を一定時間ごとに自動で切り替えるタイマー
    機能も付加することが出来る。様々な組み合わせが可
    能で距離マーカー付きの7型ワイドLCDモニターは全
    日本トラック協会助成対象モデルである。
    ◇   ◇   ◇   ◇
     この展示会は運輸システムという名称であるから当然
    運行管理システムの展示は数多く出展されたが、総合
    システムにするか、部分的なものにするか、あるいは
    簡易型のスマホとアルコールチェッカーだけで済ますか
    などそれぞれの方法があり、ここでどれがベストかと判
    断するのは難しく、選ばれるお客様のニーズと予算に
    合ったシステムが何でも揃っているので、導入を急が
    なければ1年後の本展示会にご来場いただき、じっく
    り見て聞いて選んでいただければ幸いである。
     トラック・バス・タクシーなどの運輸業は、自動車で
    公共の道路を使って(使わせてもらって)モノ、ヒトを運
    ぶ仕事であり、一番エンドユーザーに近づいた商売で
    ある。安全に、正確に、リーズナブルな価格で運ぶこ
    とが求められるが、何故かなかなか事故も減らず無理
    な運行実態も法律強化でしか解決できず、その課題解
    決のための運輸システム改善も進んではいるが普及の
    スピードは速いとは言えないのではなかろうか。そうし
    ている内に数年後には自動運転が実現のものとなり、
    2020年には無人タクシーを走らせると公言している企
    業がある位である。トラック・バスも将来無人化するの
    には自家用車よりも効果が高いと思われるから、意外
    に来年あたりから自動運転システムの展示が登場する
    かもしれない。そうなれば物流の世界もかなり変わって
    くるだろう。
    “運輸システムEXPO2015”
    TheTRUCK2015年7月号42
    クラリオン:バックアイカメラ&ナビ
    GISupply:リアルタイムトラッキング
    協栄産業:物流ソリューショ
    コムアソート:配送進捗システム
    快走韋駄天:運行管理システム
    共栄システム:物流業情報管理システム
    TheTRUCK2015年7月号43
    ジャパン・ゥエンティワン:後付衝突防止警報装置システムギアソフテック:一番星運送業システム
    JUKI、デルタツーリング:ドライブリズムマスター城山:スマトーク
    西菱電機:IP無線一体型カーナビ太陽工業:エアースタイル
    “運輸システムEXPO2015”
    TheTRUCK2015年7月号44
    トータルフリートサービス、日立ケーイーシステムズ、ゴーガ
    日米電子:GPS動態管理システム
    テレネット:IP無線機
    ナブテスコ:オイルキャッチャ
    テレニシ、フィガロ技研:IT点呼キーパー
    東計電算、マツキ、フリッカーヘルスマネジメト、トライプロ
    TheTRUCK2015年7月号45
    矢崎エナジーシステム:ドラレコ一体型デジタコ
    ンターネトイニシアティブ:富士ソフトの車両管理システム
    Bluebird:業務用端末
    ユニオンツール:眠気感知器
    ビジネスサポート:販売管理システム
    ポート・ア・クールジャパン:現場用大型ウオータークールファン
    川崎市長に国交省の
    自動車型式認定取得を報告
    経済性・安定性に優れた
    電気三輪自動車
    『エレクトライク』
     株式会社日本エレクトライク(松波登社長、神奈川県川崎市)は、独自
    に開発を進めてきた電気三輪自動車『エレクトライク』が国土交通省の自動
    車型式認定を取得したことから、6月15日、川崎市役所において市長報
    告を兼ねて記者発表会を開催した。川崎市と川崎商工会議所などでつくる
    川崎市ものづくりブランドに認定され、宅配など市内の各分野でテス
    採用されている電気三輪自動車『エレクトライク』が、このほど国土交通省
    の自動車型式認定を取得したことから、川崎市長に対して報告したもので
    あるが、新たな自動車メーカーの誕生とあって大勢の報道陣が訪れた。
    「やっとスタート地点に辿りついた」と松波登社長
    開発の経緯を語る千葉一雄取締役技術部長
    TheTRUCK2015年7月号47
    今年は100台、来年は200台、
     その後量産計画
     “レクトライク”は、初年度の今年は100台、
    2016年度には200台、その後対前年二倍計画で
    増産、国内での普及を図る計画。また、経済統合で
    発展が期待されるASEANに対しても技術供与を進
    め、地球レベルでのCO2削減にも貢献したいという。
     この“エレクトライク”の名称は、電気を意味するエ
    レクトリックと三輪バイクを意味するトライクを組み合
    わせたもの。シャシと運転室を含む車体は、インド2
    位の二輪メーカーで、世界最大の三輪車メーカーであ
    るバジャージオート社から導入、これをベースに新た
    なモーターを動力源とするEVに改造している。三輪
    車最大の課題であった不安定な挙動(転倒し易い)
    解決する方法として、左右の駆動輪(後輪)それぞれ
    にモーターを備え、個別に制御する「アクティブホイー
    ルコントロール」としたことで、課題を克服、安定した
    コーナリングを実現している。構造は比較的シンプル
    なものであるが、このアイデアは国際特許を申請中。
    国交省の自動車型式認定取得を福田紀彦川崎市長(右)に報告する松波登社長。左は川崎商工会議所の山田長満会頭
    TheTRUCK2015年7月号48
     バッテリーは日本製のリチウムイオンバッテリーを採
    用。容量によって二種類のグレードがある。即ち、容
    量の大きな7.8kwhを搭載するモデルは、航続距離
    60㎞、その半分の3.9kwhのバッテリーを搭載する
    モデルでは30㎞の航続距離を確保している。どちら
    も最高速度は49㎞/hに制御している。
     車両ランクとしては、250㏄クラスのバイクと同等
    で、税金は年間2400円。充電は家庭のコンセント
    (100V、200V対応)から可能で、1㎞あたりの走
    行コストは僅か2円で済む。
     このエレクトライクは、ベース車に用途に合わせて
    各種の車体をデザインする事が可能で、積載容量も
    最大150㎏と集配業務に充分対応できる能力を備え
    ているので、狭い地域を対象に電動自転車等による
    集配を行っている宅配業者なども、ユーザーとして想
    定している。
     価格はバッテリーサイズによって160万円、130
    万円に設定しているが、補助金が受けられるため、
    安いモデルは100万円で購入ができる。
    安定した走りで、
     アクセルの反応もいい…福田川崎市長
     川崎市は、エレクトライクを2013年に「川崎ものづ
    くりブランド製品・技術」に認定するなど開発を支援し
    てきた。これに対して、国土交通省の自動車型式認定
    を取得したことを川崎市に報告するのが今回の趣旨。
     松波社長から型式認定取得の報告を受けた福田紀
    彦川崎市長は、「電気三輪自動車のベンチャーとして
    初めて型式認定を取得したことは偉業であり、その努
    力は髙く評価される。川崎市で誕生したエレクトライ
    クは、川崎市が環境先進都市であることを身をもって
    示すものであり、走るショーウィンドウとして国内だけ
    でなく広く海外にも展開してほしい。とコメントした。
    また、自ら試乗運転した福田市長は「カーブでもすご
    く安定した走りで、アクセルの反応もいい。環境にも
    良い素晴らしい車だ」と感想を語った。
     日本エレクトライクの松波社長は、「ベンチャー企業
    にとって国土交通省の型式認定を取得するハードルは
    高く、大変困難であったが、やっと取得できた。しか
    し、これはゴールではなくスタートだと考えている。
    川崎市からスタートして、今後は神奈川、東京などの
    首都圏、そして広く日本国内への普及を目指したい。
    また、通常のエンジンを搭載するオート三輪が多い東
    南アジアに普及すれば、地球規模での大気汚染改善
    にも貢献できる。と語る。
    「安全性に優れている」と福田紀彦川崎市長自らエレクトライクを試乗する福田紀彦川崎市長
    試乗する福田紀彦川崎市長報道陣に応える松波登社長
    TheTRUCK2015年7月号49
    【解説】
     三菱「アイミーブ(i-MiEV)」の個人向けに販売開
    始、そして日産「リーフ」の発売された2010年は“電
    気自動車元年”呼ばれた。そして、2011年以降に
    は、GMやトヨタ、フォードなど大手各社が電気自動
    車の販売に参入するようになった。更に、電気自動車
    の心臓部とも言えるバッテリーが、大容量・高性能化
    の方向に進み、日産自動車は、「リーフのリチウムイオ
    ン電池の蓄電容量(当時24kWh)で、一般家庭の2
    日分の電力を賄える。と発表した。これらの動きもあ
    り、電気自動車は当初着実に増え、このまま本格普
    及に突入するかに見えた。
     しかし、国内メーカーの電気自動車の販売台数は、
    当初の計画を大きく下回る結果となっている。2009
    年5月に、環境省が策定した「次世代自動車普及戦
    略」では、2020年までに200万台の普及目標を掲
    げているが、現実には2011年度末で、ハイブリッ
    ド車をあわせた合計台数で653,687台(電気自動車
    17,897台)に留まっている。
     なぜ、電気自動車は普及の足が遅いのか。その原
    因のひとつが、一度の充電で走れる航続距離が短い
    ことや、毎日充電の煩わしさと充電インフラの立ち遅
    れが指摘されている。
     これに対して、このほど国土交通省の型式認定を
    取得した『エレクトライク』はどうか。
     現在、このサイズの車両で転倒し難い電気三輪自
    動車は皆無に等しい。しかし、用途は宅配を始め、
    花やクリーニング、弁当、農畜産物など限りなく広い。
    特に農業国であるわが国では、ちょっとした買い物や
    届け物に150㎏程度の積載があるミニトラックは一家
    に一台あれば重宝する。しかも、太陽光発電など自
    然エネルギーを蓄電し、必要に応じて充電するシステ
    ムが普及すれば、自給自足で『エレクトライク』のエネ
    ルギーを賄う事が出来る。
     当面、家庭用の100ボルト電源で充電可能とした
    点も、わが国の市場にマッチングしており、『エレク
    ライク』が新たな市場を切り拓く可能性は極めて高い
    と言える。
    (秋林路)
    TheTRUCK2015年7月号50
     5月26日〜29日に亘って、東京ビッグサイ
    トでの環境展。多くのテーマに分かれて展示さ
    れており、その中の「収集/運搬/搬送/物流
    /保管」のエリアに展示されていた車両と屋外展
    示での興味ある物について取り上げる。
    ☆花見台自動車の海コン運搬車両 2点
     今回、最も興味ある機種。この4月1日から
    施行された車両法のセミトレーラの基準拡大に対
    応、海上コンテナ用として新規開発された車両
    である。
     6月号の表紙を飾っているから、ある程度の予
    備知識はお持ちだろうと思うので、歴史/法制
    /技術的な面を中心に解説しよう。
    ●改正された基準でもっとも影響のあるのが『セ
    ミトレーラのGVWはWBに関係なく36トン
    以下』と言う条項。
     トラック(単車)は未だWBの長さによって、
    20トン/22トン/25トンであり、3月末まで
    はセミトレーラも20トン〜28トンに亘って2ト
    ン刻みで5段階となっていた。
     これが、セミトレーラだけが一気に36トンま
    でWBに関してフリーハンドになった。(短くても
    大きいGVW)6月号の表紙をよく見てもらうと、
    トレーラ2点の後面に「基準緩和車両」を示す
    〈白色の逆三角形マーク〉がない。保安基準に
    適応しているという事。だから、この車両を運
    用するに関して陸運支局に基準緩和申請をする
    必要がない。
     ただ、間違ってはいけないのは、これは「車両
    法」に依る規定であって、走れるのはこの車両が
    通行できる強度/能力のある道路でなくてはなら
    ないということ。
    (強度の小さな橋、曲がれない狭い交差点等を
    避けなければならないのは当然。9フィート6イ
    ンチ高さのコンテナ運搬では3.8m超の指定道
    路を走らなくてはならない)
    ●コブラネック構造について
     海上コンテナトレーラ(海コンシャシ)は積載物
    が剛体で6面体のコンテナと決まっているので、
    車両の基本構造としてはそれを支えるだけのフ
    レームと道路を走る為の車軸(アクスル)だけであ
    る。今迄の構造は、それを横から見るとけん引し
    てもらう為のキングピンを取り付けるフレーム先端
    部分が細く、少し高くなってちょうど鵞鳥(グース)
    が首を前方に伸ばしているように見える事からそ
    の部分を「グースネック」と呼んでいた。
     コンテナの構造も40フィート以上のサイズ
    は、搭載時にこのグースネックが納まるようにコ
    ンテナの床面下の補強ビームが切り欠かれてい
    る。「トンネルリセス」と言う名称)
     このグースネックは形鋼等を用いたフレーム構
    造とするのが常識だったのだが、「この部分に上
    下方向の大きな曲げ剛性が必要なのだろうか?」
    環境展出展車両
    澤田征二
    ユーザーの大川功会長(大川運輸)と開発者の能條健二花見台
    自動車社長
    TheTRUCK2015年7月号51
    と考え、同じ首でもコブラのような平たいもので
    良いのでは?と考えて設計されたのが、この「コ
    ブラネック」と言う名前であろう。
    1、20フィート 24トン仕様
     これまで使用されていた同じ仕様の連結車両
    のイメージを近くに配置しておくが、車両法規の
    改正でここまで劇的に変化したのを見るのは初
    めての気がする。全長が3m近く短くなって取り
    回しが格段に良くなった。連結全長:9,730㎜と
    言えば大型トラック(12m)より大幅に短く、従
    来型に比べて車両重量も2.5トン近く軽減され
    ている。
     セミトレーラ連結車両と言うより、海外で使わ
    れている『ArticulatedVehicle(折れ曲がる
    車両)と呼ぶのが相応しい。20フィートコンテ
    ナには、フルロード:30,480㎏仕様もある。し
    かし、その時には3軸仕様にしなければ成り立
    たないが、図を見てもらえば判るようにもう1軸
    のスペースがない。既に稼働している3軸フル
    ロード仕様を使ってもらえばよ
    いという事だろう。
     これと較べられる面白い機
    種がある。今から30年近く
    前に、いすゞ自動車が「ノン
    ワッペントレーラ」という連結
    車両を出したのをご存じの方
    がおられるかも・・・。車両
    法で(連結車両も含め)車両
    全長の限度は12m」「トレー
    ラ単体のGVW限度は(単車
    と同じ)20トン」そして「WB
    が10mを超えるとGVWが
    27トン」(この為にトラクタ
    のフロントアクスルを前方移
    動した)
     この3つの条件を組み合わ
    せて、連結全長12m/トレーラ20トン/トラ
    クタ自重7トン・という究極の1点を狙った連結
    車両を売り出した。大型トラックの過積載全盛の
    頃、この車両ならトレーラの最大積載量が15ト
    ン取れるので、大型トラックより5トン余分に積
    TheTRUCK2015年7月号52
    載できる。しかし、荷台形状がバン型に限られ
    ていた為、単車と較べて連結の為の前回りクリ
    アランス分だけ荷台が短い。「軽量嵩ものを運ぶ
    バンに短い荷台の大きな積載量はミスマッチ!」と
    言う理由でほとんど売れなかったという。
    2、45(40兼用)フィート GVW:36トン
    PL:30,480㎏(フルロード仕様)
     連結車両の全長規制は2通りあって、東名/
    名神等の高速道路は、16.5m。一般道は17
    mであったのだが、この4月から18mと1m伸
    びた。
     2005年に45フィート海コンがISOに登録さ
    れた事によって、ISO受け入れを宣言している政
    府は慌てて2010年から数種類のモデルを使っ
    て港と荷主の間を運行する実証試験を開始した。
     花見台自動車では、2007年には連結全長
    16.5mのドラフトが仕上がっていて、2011年
    のトラックショーには6×4低床トラクタでけん引
    する実車を展示していた。
     今回は駆動軸重に11.5トンが使えるように
    なった為、トラクタは4×2で、WBは3.5m
    クラスを使う仕様、トレーラは3軸シングルタイ
    ヤ仕様となっている。この車両の大きな問題が、
    日本で流通する45フィートコンテナのボリュー
    ムが見えないこと。40フィートコンテナにも通
    用するので稼働率を確保することは出来ても安
    価な現行40フィートシャシを休ませて無理に使
    うという経営方針は無い。何台持つか?が悩まし
    い。出来れば、現在トラク
    タの大部分を占めるWB:
    3.2mクラスが使えれば投
    資額が助かるのだが・・・・。
     この様にこれからのトレン
    ドと投資方向が話題になる
    と必ず出てくるのが、20
    〜45フィートまで(20×
    2個も)をカバーできる「マ
    ルチシャシ」。しかし、当
    然価格は更に高価になるし
    TheTRUCK2015年7月号53
    取り扱いの難しさやメンテナンスの対応(外国製
    を使用する為)、法規への対応も複雑でトータル
    の稼働率は上がるのか心配する業界人が多いと
    いう。
     あと、このトレーラのリアバンパが前後に伸縮
    するようになっているのが(6月号の表紙で)お判
    り頂けると思う。これは、45フィートコンテナに
    は45フィート位置(コンテナの4隅)の他に40
    フィート位置にもボルスタが着いているので、ト
    レーラは40フィート位置のツイストロックで固定
    する事としている。40フィートコンテナを荷役の
    (フォークリフトの乗り入れ)プラットフォームに
    「ドン着き」させなくてはならないからコンテナを
    支えるフレームは40フィートのところまでしかな
    く、リアバンパもフレーム後端位置に有る。そ
    こで、45フィートコンテナを搭載した時は2.5
    フィート(762㎜)荷台がオーバハングすることに
    なる。リアバンパの取付基準は車両(この場合は
    搭載しているコンテナ)後端から600㎜以下であ
    るから、その分後方へ延ばさなくてはならない。
    そこでこの車両は伸縮式のリアバンパを装備して
    いるのだ。
    3、エア式ランディングギア
     花見台自動車とは直接関係はないのだが、1
    台のサンプルと一人の説明員が花見台自動車の
    ブースの隅で展示していたのでここで取り上げ
    る。4×2のトラクタ駆動軸は軸重能力:11.5ト
    ンを獲得するにはエアサスである必要がある。
     トレーラを切り離して置いておく時は次に連結
    する事を考えてキングピンプレートを然るべき高
    さにしておかなくてはならない。その為には、リー
    フサスのトラクタではトレーラの先端を持ち上げ
    る為に、ランディングギアには「ジャッキアップ」
    の能力が必要であった。
     しかし、トラクタの殆どがエアサスになった今
    ではトレーラの先端高さ調節はトラクタが出来
    る。ランディングギアにはジャッキアップの機能
    が不要になり、トラクタがセットしてくれた高さを
    保持する「つっかい棒」の能力だけでよくなった。
    この「棒」の上げ下げをエアでやるという構造。
    なかなかスマートで楽な機構だと思う。
    ☆アーム式脱着荷台
     新明和工業と極東開発工業の4トン級脱着荷
    台装置の新しい機構が展示されていた。
     数メートル先にあるコンテナ、それを持ち上げ
    TheTRUCK2015年7月号54
    る時に捕まえる取っ手はコンテナの前面に溶接さ
    れている幅50㎝足らずの丸棒。90度に曲がっ
    た大きなアームの先のフックでその丸棒を引っか
    けて車体上に引揚げるのだが、そのアームは車体
    に取付いているので車(キャリア)をバックさせて
    フックを丸棒に寄せてゆく。最終的にはアーム全
    体を回転、フックが丸棒を下から掬い上げるように
    して捕まえるのだが、フックと丸棒の遠近感は中々
    掴みにくい。そこで、フックを100〜300㎜位、
    伸ばすかスイングさせる機構を追加した。
     確かに、4トントラックのキャブバックにあるガ
    ラス窓を通してトラックに固定されたアームの先
    を数m先の標的に前後/上下/左右共に、数㎝
    内にバックで寄せるというのは大変神経を使う作
    業なのだろうと思う。
     新明和はアームの上部を伸縮、極東はここを
    スィングさせる機構と別れるが、共に別の油圧機
    構を仕込むなど結構なコストがかかっている。
     実作業的に大きな要望として上がっていたか
    ら、ユーザニーズの取り込みが必要と考えてられ
    ての対応だろう。
    ☆ハイブリッド式塵芥収集車
     荷台の塵芥収集装置を動かすのには動力が必
    要。その動力はトラックのエンジンからPTO(動
    力取り出し装置)を介して取り出していた。塵芥
    収集車の出す騒音はその仕事のイメージを想像
    させてボリューム以上に不快感をあたえる。作業
    時にオルゴール音を鳴らしたりという事も行われ
    ていた事もある。
     乗用車でハイブリッド車が出回るようになり、
    音が静かな事から、せめてエンジン音を消せない
    か? と考えて造られたのが、動力をPTOから
    貰うのではなく自ら電気(バッテリー)を持って、
    収集作業を行う車とする事。
     軽の電気自動車に使用されていた「リチュー
    ムイオン電池」を搭載、収集作業時はトラック
    のエンジンを切ってこのバッテリーの電気で作
    業を行う。それなりの評価はあったらしいが、
    このリチュームイオンバッテリーは単体でも百
    数十万円かかり、費用対効果としては芳しくな
    かった。
     しかし、2トンクラスのトラックにもハイブリッ
    車が設定されるようになってきたことから、この
    シャシを使う事になった。勿論、標準のディーゼ
    ルエンジン車よりは高価だが、バッテリー電源だ
    けで走ることが出来るのでエンジンを止めてバッ
    テリーでトランスミッションを廻せばPTOから動
    力が取り出せる。架装メーカの上物は基本的に
    標準仕様になるので一気にコストが下がる。
     ただ、現時点でこのクラスのハイブリットラッ
    クを設定しているのは、日野自動車だけ。そこ
    で、新明和、極東、モリタエコノスの3大メー
    カが出展していたが、シャシは全て日野デュトロ
    でした。
    TheTRUCK2015年7月号55
    ☆㈱リトラスRETRUS
     (ReliableTruckSupply)
     一般的な企業業種として
    は、「中古トラック販売業」
    なのだろうが、リビルトパー
    ツの他、特装荷台の架装
    も得意。展示の内容積40
    ㎥のダンプは自社工場での
    架装、これだけの嵩もの
    を歪少なく組み上げられる
    のはそれなりの技術がある
    のだろう。カタログにある
    工場の現場を写した写真は
    大手ダンプメーカの特殊ボ
    ディブースと遜色ない。隣
    の4軸低床(中古)シャシ
    のスライドボディーはフジタ
    自動車工業が架装しており、説明員にはフジタの
    社員が就いていた。こういった使い分けができる
    のも顧客とのしっかりしたコミュニケーションが出
    来ているという事だろう。
    ☆脱着荷台のフルトレーラ セット
    カーゴテックジャパン
     集積場に集めた廃棄物
    をまとめて、処理場へ運ぶ
    のに用いる。廃棄物が発
    生する地域は人口が多いと
    か、産業/経済が活発な
    所。そういうところには廃
    棄物処理場は立地しにくい
    ので過疎地などに作られる
    ことが多いから、どうして
    も運搬距離が長くなる。そ
    の為に1台の車両で最も
    大きな積載量が取れる、フ
    ルトレーラを使うのだという。私の住んでいる、
    神奈川県綾瀬市には1社、このタイプの車両を
    使っている企業が有るので説明員にその話をす
    ると、「IWDさんは千葉の中間処理場まで運んで
    おられますネ」と教えてくれた。写真を見ると判
    るが、トレーラの後軸(タンデム)がステアしてい
    る。処理場への道は狭くて後軸をステアさせない
    と脱輪の可能性があるのだとのこと。因みに、
    このフルトレシャシは日通商事製でした。
    TRUCK・X2013年7月号56
     全日本トラック協会は6月18日、第一ホテル東
    京において、第90回通常総会および161回理事会
    を開催、星野良三氏(多摩運送会長)の三期目となる
    会長案をはじめ、全ての議案を全会一致で可決し
    た。議事は平成26年度事業報告および計算書、会
    長、副会長、常任理事、理事長、専務理事、常務理
    事などの選定(理事会)に続いて、第20回全国トラッ
    ク運送事業者大会、トラック輸送における長時間労
    働の抑制に向けた取り組み、乗務時間等告示遵守違
    反トラック事業者に対する当面の指導方針などが提
    案された。
     事業報告書は一般情勢について「平成26年度の国
    内貨物輸送量は、前年度比2.3%減、営業トラック
    による輸送量も同様に3.2%減となっている。燃料
    価格は年度後半以降、下落に転じたが、荷動きの低
    下、ドライバーをはじめとした若年労働者不足など
    により、トラック運送事業者の経営は厳しい状況が
    続いている。」とし、トラック業界に対する燃料高騰
    対策の補正予算として、中小トラック事業者の先進
    環境対応型ディーゼルトラックや自家用燃料供給施
    設の導入に対する支援策として55億円、平成26年
    度末で期限を迎える高速道路料金の大口多頻度割引
    の継続について507億円の合計562億円予算措置を
    講じられた。また、地球温暖化対策税については、
    エネルギー特別会計から61億円の補助金措置が講
    じられた。平成26年度は、年度後半以降、景気が
    回復基調をみせ、荷動きが活発化してきたところで
    あり、27年度には更に景気が上向いてくることが
    期待される、としている。
     冒頭、あいさつに立った星野会長は、「労働基準法
    の改正で、月間60時間を超える時間外労働の場合
    の割増賃金が50%に引き上げられると、労働時間
    の長いトラック運送業界は人件費が増大して、大き
    な打撃を受ける。このため、5月20には“トラッ
    ク輸送における取引環境・労働時間改善中央協議会”
    がスタートしたので、今年夏までには47都道府県
    の地方協議会を立ち上げることになる。これによ
    り、ドライバーの総労働時間の削減に総力をあげて
    取り組む。また、ドライバー不足は深刻となってい
    るので、6月11日に衆議院で可決成立した準中型
    自動車免許については一日も早く実施頂きたい。」と
    述べた。
     任期満了に伴う役員改選では、星野良三会長を再
    公益社団法人 
    全日本トラック協会 第90回通常総会
    星野良三氏
    (多摩運送会長)
    が会長三期目へ
    最大の課題は
    ドライバー不足対策
    TRUCK・X2013年7月号57
    ○○
    全国から多勢の会員が出席した第90回通常総会
    星野良三会長(三期目へ)
    選して三期目に入ったほか、新見健氏と原重則氏の
    二人が副会長を退任し、真鍋博俊氏、嶋田康子氏、
    馬渡雅敏氏の三名が新たに副会長に選任された。
     来賓として駆けつけた国
    土交通省の田端浩自動車局
    長は挨拶の中でおよそ次の
    ように述べた。
     「トラック輸送業界のドラ
    イバー不足はよく認識して
    いる。国土交通省、厚生労
    働省、荷主、トラック事業
    者で立ち上げた“トラック
    輸送における取引環境・労
    働時間改善中央協議会”を
    関係者と一緒に取り組み、
    実行の上がる施策を考える
    のでご協力願いたい。」
     また最後に、今年の第20
    回全国トラック運送事業者
    大会を北陸信越ブロックトラック協会が中心となっ
    て10月1日、石川県金沢市の石川県立音楽堂で開
    催することを報告して、総会を終了した。
    TRUCK・X2013年7月号58
    総会終了後のパーティーで挨拶する星野良三会長
    ○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○
    来賓の面々
    祝辞を述べる田端浩国交省自動車局長
    公益社団法人 
    全日本トラック協会 第90回通常総会
    TRUCK・X2013年7月号59
    西村明宏国土交通副大臣北川イッセイ国土交通副大臣
    青木一彦国土交通大臣政務官司会を務める全日本トラック協会の山崎薫常務理事
    TheTRUCK2015年7月号60
    現在の中型トラックは普通免許では運転できない
     警察庁が設置した有識者会議で検討してきた新し
    い免許区分『準中型免許』の創設が、6月11日の
    衆議院本会議で可決された。2年以内に施行される
    ので、2017年の6月頃までには創設される見通
    し。これによりトラックに新しいカテゴリーが出来る
    ことになる。
     準中型免許は「総重量3.5トン以上7.5トン未満の車
    両」を運転できる免許区分で、18歳から取得できるの
    で、高校を卒業時までには取得可能となるので、ドライ
    バー不足のトラック運送業界が強く要望していたもの。
     現行の制度では車両重量と積載物を合わせた「総
    重量」によって、普通・中型・大型免許の3つの区分
    がある。すなわち、普通免許では総重量5トン未満
    まで、中型免許では5トン以上11トン未満、大型
    免許では11トン以上のものを運転することができる。
     この準中型免許では普通免許と中型免許の間に新
    たに創設し、これで4区分となり、それにともない運
    転可能な総重量も変更される。具体的には、普通免
    許は総重量が3.5トン未満に引き下げられ、新設され
    る準中型免許が3.5トン以上7.5トン未満、中型免
    許が7.5トン以上11トン未満となる。
    【道路交通法】
    準中型免許を新設が衆議院本会議で可決
    総重量3.5トン以上7.5トン未満の
    車両を運転できる新免許区分
    新旧免許区分の総重量と受験資格の比較表
    現在の区分
    〜5t未満
    [普通免許]
    5t以上〜11t未満
    [中型免許]
    11t以上〜
    [大型免許]
    ・18歳以上
    ・免許経歴は必要なし
    ・20歳以上
    ・普通免許又は大特免許の取得者で免許経歴
    が通算2年以上
    ・21歳以上
    ・普通、中型、大特免許
    のいずれかの取得者で免
    許経歴が通算3年以上
    導入予定の
    新区分
    〜3.5t未満
    [普通免許]
    3.5t以上〜7.5t未満
    [準中型免許]
    7.5t以上〜11t未満
    [中型免許]
    11t以上〜
    [大型免許]
    ・18歳以上
    ・免許経歴は必要なし
    ・18歳以上
    ・免許経歴は必要なし
    ・20歳以上
    ・普通免許又は大特免
    許の取得者で免許経
    歴が通算2年以上
    ・21歳以上
    ・普通、中型、大特免許
    のいずれかの取得者で免
    許経歴が通算3年以上
    ※免許経歴とは「有効な運転免許を所持していた期間」のことであり、免許停止等になっていた期間は有効な期間としては含まれない。
    TheTRUCK2015年7月号62
    鈴木社長自筆の石碑
    事務所の奥に会議室と応接室がある
    日本リトの山梨工場外観
    事務所)があり、階段を上がって中に入ると右手が
    事務所や会議室、左手が食堂で広い調理場は何時
    でも使用できる。階段を上がると幾つもの畳間の
    小部屋があり、30人ほどが寝泊まりできる保養所
    になっている。また、一旦外に出てスロープを下
    りると地下一階になっているので、このスペース
    も自由に使える。
     この山梨工場は2008年のリーマンショックでリ
    フトゲートの需要が激減した際に閉鎖したままに
    なっているが、全てが整っているので何時でも再
    開できる。しかし、「条件が合えば他社に活用して
    もらっても良いと考えている。とのこと。近隣は
    水田農家が多く、山の上にはペンションに永住し
    ている人も多く、人材確保は割に容易だという。
     中庭の突き当たりには大きな石碑がある。工場
    を建設する際に敷地内から出て来た石を掘り起こ
    して建てたもので、石碑の表には鈴木社長自筆の
    『夏の空築く礎永久に幸』の文字が刻まれている。
     辺りが暗くなり始めたので、高台のペンション
    が立ち並ぶ山道を抜けて、公営の温泉に向かう。
    ウィークデーだというのに駐車場は満杯。この辺
    りは良質の温泉が沢山あるという。源泉の露天風
    呂で汗を流し、ビールと親子丼でお腹を満たし、
    再び工場に戻って食堂で暫く歓談。
     生まれ故郷(工場に隣接)で働いていた鈴木社長
    に台風の影響で山津波が襲いかかり、村は全損し
    て生活は成り立たなくなる。18歳の夏、鈴木社長
    は郷里を後にして東京に出る。独学で2級の自動
    車整備士の資格を取得したり、工作機械も扱うよ
    うになって、技術者としての腕も磨き、大企業の
    仕事にも参画して海外へも派遣される。
     その後、リフトゲートの製造販売を日本で最初
    に行なった東京建設興業、東建リフトゲート販売
    から引き継ぎ、東建リフトゲートとして発足した
    のが、日本リフトの前身。物流が進化していく中
    で鈴木社長が開発する各種のリフトゲートは抜群
    の性能を発揮、リフト専門メーカーとして不動の
    地位を確立する。
     子供の頃に近くの川を堰き止めて遊んだこと
    TheTRUCK2015年7月号63
    初期の頃に使用していた工作機械
    3階は30名が泊まれる保養所 3階建の保養所(2階部分が事務所)
    や、宗教との出会い、家族のこと等、歓談は夜遅
    くまで続いた。
     宿舎の二階東端の部屋に布団を敷いて横にな
    る。温泉に浸かったせいか深い眠りに落ちて、鈴
    木社長の声で目覚めたのは7時前。北の杜カント
    リー倶楽部は8時14分OUTスタートの予定になっ
    ているので、それほどのゆとりはない。それでも
    山梨工場からは車で30分ほど。少し時間があった
    ので、モーニングセットで朝食を済ませてコース
    に向かう。
     果たして最後まで腰がもつのか。医師の忠告に
    背くゴルフなので不安は大きい。「今日はスコアは
    関係なくお互いゴルフを楽しもう。と鈴木社長。
    体調を配慮して筆者への心遣いが有り難い。
     昼食なしで18ホールを一気にプレイした。腰に
    多少の違和感はあるものの、痛みは感じない。一
    時は腰に負担のかかるスポーツは諦めなくてはな
    らないかも知れない、と考えていたので、無事に
    プレイ出来たことは限りなく嬉しい。
     日本リフトの山梨工場見学と自分の体力確認を
    目的の旅は、あっとう間に終わったが、鈴木社長
    の人となりにも触れて、自分の中で何かが動いた
    ことを実感する二日間となった。
    (秋林路)
    TheTRUCK2015年7月号76
    技術開発、
    新たな段階へ
    高い環境性能と信頼性に支えられた高稼働率のトラックは、これから
    の運輸企業にとって選択基準の最重要事項だろう。世界をリードする
    欧州発の商用車最新テクノロジーについて
    【Ⅰ】ディーゼルエンジン編
    【Ⅱ】トレーラ&ボディ編
    【Ⅲ】CO
    排出削減に向けたIT活用編
    の三部構成で紹介する。
    た。しかし、基本に立ち返って見直すと改良の余地は
    まだまだ有りそうだ。
     トラックの世界では、ディーゼルエンジンの時代が
    なお当分続く見込みだ。様々な代替動力が提案され
    ているが、大型トラック用として改良が続けられた結
    果、環境優等生としてディーゼルエンジンが再評価さ
    れているからだ。
     ルドルフ・ディーゼルが籍を置いて初期のディーゼ
    ルエンジンの工業化に尽力したのは独MAN社(以
    下、MAN)だが、この世界で長い伝統を育んできた
    MANでも欧州の排出ガス規制の強化に対応して商用
    車用ディーゼルエンジンの改良に余念がない。
     MANの旗艦トラックTGX車用エンジンについて
    は、〝逆転の発想〟ともいうべき新たな設計コンセプト
    も交えた改良が続けられている。その狙いは、燃料
    消費効率の高い環境性能を更に高みへ押し上げるこ
    と、そして長期間に亘って大きな整備を必要としない
    信頼性と経済性の高いエンジンへの道を突き進むこと
    にある。
     ディーゼルエンジン生みの親のDNAを引き継いで
    いるMANの場合を事例として、最近のエンジンと関
    連システムの技術動向を見てみよう。(図2)
    【Ⅰ】ディーゼルエンジン編
    商用車用ディーゼルエンジン、
    新たなステージへ
     ディーゼルエンジン生みの親であるルドルフ・ディー
    ゼル(1858〜1913)(図1)〝圧縮着火〟内燃エン
    ジンを発明したのは1892年であった(翌1893年に
    特許取得)
    〝ディーゼル
    エンジン〟
    誕生から今年
    で123年目
    である。この
    1世紀を超え
    る期間に、
    内外の数多
    のエンジニア
    がディーゼル
    エンジンの改
    良を重ねてき
    ドルフ・ディーゼル 圧縮着火内燃機関の発
    明者。その名を冠して今日のディーゼルエンジン
    がある。
    (図1)
    TheTRUCK2015年7月号77
    MANの最新D3876型エンジンを
    裸にすれば・・
     2015年から本格的に市販車に搭載されて普及が始
    まる最新D3876型エンジンの特徴を端的に記すと
    ■直列6気筒 総排気量15.2Lで最高出力640
     馬力最大トルク3000Nm
    ■930rpmから最大トルクを発揮
    ■画期的新設計コンセプトで再設計されたシリンダー
    ヘッド、吸排気系及び燃焼メカニズム、そして冷
    却方式などで全体が一新され究極の環境性能、信
    頼性そして経済性を生み出す、となろう。
     MANが旗艦トラック用の直6総排気量15.2L
    D3876型エンジンに吹き込んだ最新の技術開発の目
    的は、輸送業界から寄せられた期待、即ち、燃費効
    率を極限まで高め、かつ長期間にわたって高い信頼
    性が保証されること、などに応える為であった。性能
    的にはトルクが2500から3000Nm、出力は520
    から560馬力を維持して長距離運行車の用途をカ
    バーし、かつ重量物輸送用途向けには最高出力640
    馬力で対応出来るエンジンの開発である。排出ガス
    性能はユーロ6に対応していることはいうまでもない。
     直列6気筒という基本レイアウトと、100万㎞を
    優に超えて走りきる堅牢さや高剛性設計のクランク
    シャフト・メインベアリングの支持方法などは先達の
    D20/D26型エンジンの特徴も引き継いでいる。そ
    して今回は、後述の新素材を用いてこうした伝統を
    更に確かなものにしている。
     このD3876型エンジンの開発に当たって、MAN
    のエンジニア達は他社製も含めて最新型エンジンを
    広範囲に調査検証した上で、夫々の長所と課題を分
    2015年から欧州を初めとして各地で販売されるMANTGXEfficient2モデルはここに掲げる新技術開発の成果がとりこまれた。ルドルフ・ディーゼルが
    籍を置いて初期のディーゼルエンジン開発拠点としたMANはそのディーゼルエンジンを社業の柱にして自動車と船舶、産業機械部門で確固たる地位を築
    いている。
    磨きのかかった「EfficientCruise
    エフィシエントクルーズGPS」
    新MANEfficient2車は、内蔵地図
    情報と車載GPS位置情報の連携が
    進み運行ルートの道路勾配を予知す
    る。これが先を読んだクルーズコント
    ロールであり燃料消費の無駄を省く。
    「LaneGuardSys
    temレーンガードシス
    テム(LGS)」
    最新世代のLGSが
    レーンキープ機能は
    レーンに対するブレ
    を一層正確に認識す
    る。安全運行と乗り心
    地改善に寄与する。
    「EmmergencyBr
    akeAssist緊
    急ブレーキアシスト
    (EBA)
    EBAは前方の移動体
    もしくは固定物を認識
    しドライバーの緊急回
    避動作を支援する。
    地改善に寄与する。
    後駆動軸
    終減速比は高速型を採
    用し、平均してエンジ
    ン回転を低速に保ちつ
    つ走行速度は充分なレ
    ベルを確保することがで
    きる。高トルクエンジン
    の特性が活かされる。
    排気過給
    2段排気過給方式が、低
    速から高速に至る広範な
    エンジンスピードで太いト
    ルクを発揮させる。MAN
    D38エンジンは930rpm
    という低速から最大トルク
    を発揮する。
    お洒落なペイントデザイン
    MANTGXD38型車の
    上級詣でるではサイドミ
    ラーの背面とラジエータグ
    リルにシルバー色のアクセ
    トを施している。
    「AdaptiveCruise
    Control受動型ク
    ルーズコントロール
    (ACC)」
    ACCは先行車との車
    間距離を検出して適正
    な車間を維持して安全
    を確保する。
    シリンダーヘッドにハイテック応用
    MANのトラック用ディーゼルエンジンは新冷
    却方式として、世界で初めて冷却水の流れを
    トップ・ダウン方式に改めた。シリンダーヘッ
    ドの最も必要とする部品の冷却を重視し噴射
    特性のブレや作動不全を防ぐ。バルブヘッ
    形状も一新、バルブシートと共に信頼耐久性
    を格段に高めた。
    リターダーシステム
    MAN式エキゾーストブバルブブレーキ
    (EVB)とターボEVBの二段構えの排
    気ブレーキシステムがエンジンブレーキ
    能力を一層高めた。エンジンの仕様によ
    り制動力は340〜600kWを発揮する。
    MAN式TipMatic2
    MANの自動化機械式変速機(AMT)は
    TipMatic2の名称で呼ばれるが、高速
    側10、11、12速のギヤシフトを短時
    間で行う仕組みを採用した。道路勾配
    を読み込んで不要と判断した変速段をス
    キップすることもある。これで燃費効率
    が更に向上する。〝アイドルスピードドラ
    イビング〟機能はアイドル回転からのゼロ
    発進時の必要トルクを瞬時に発揮させス
    ムースな発進を助ける。
    燃料系統はコモンレールシステム方式
    最高噴射圧力は2500barと超高圧
    に加圧・噴射される燃料はより微細な
    噴霧で圧縮されたシリンダー内空気と
    混合される。燃焼効率が一層高まった。
    (図2)
    TheTRUCK2015年7月号78
    析し尽くして自分たちの新エンジンの設計に反映させ
    た。そこから、独自の数々の技術革新を生み出した
    のである。
     結果、D3876エンジンは燃費効率の改善に目を
    見張る成果が実り、同等排気量のユーロ5相当先代
    エンジンと比較しておしなべて3%の燃料消費率削減
    を実現した。その上、トルクは200Nmも向上させた
    のであるから、新たな技術革新の大きな成果である。
    (図3/3.1/3.2/3.3/3.4)
    ツーステージ排気過給方式
     新たに採用された2ステージ排気過給方式は、中
    間に2個のインタークーラーを採用した。これにより
    低速回転域から力強いトルクを発揮するこのエンジン
    は、出足の良さを保証する。
     二つの異なる容量のターボチャージャーが直列構
    成で作動する。小型サイズの過給器は低速回転域で
    効果を発揮する。エンジン回転が上昇し負荷も高く
    なると大型サイズの過給器がプラスして効力を発揮
    する。この排気過給システムにより、MANの新エン
    ジンは低速から高速高負荷領域迄の全稼働域におい
    て理想的な量の空気をエンジンに供給する。930〜
    1350rpmというワイドレンジの回転域で最大トルク
    を発揮する。このエンジン特性は低速で高トルクを発
    揮するから、自動車専用道路の走行ではより高速ギ
    ヤで走行しエンジン回転を低速域で維持することを可
    能とする。これにより実用燃費の改善が実現する。
    同時に、ナビゲーションシステムと連動させた自動変
    MANTGX38型車のパワートレーン。D3876エンジンに組み合わせる
    のはMANTipMatic2ギヤボックス(AMT)だ。
    D3876型エンジン外観(前方右から)
    D3876型エンジン外観(後方左から)
    D3876型エンジン(ロッカーカバーを外した状態)
    D3876型エンジンはOHC(オーバーヘッドカムシャフト)で、ロッカーで
    吸排各2本のバルブを開閉する。普段見られないヘッドカバーの下には
    この美しいメカが作動している。
    (図3)
    (図3.1)
    (図3.2)
    (図3.3)
    (図3.4)
    TheTRUCK2015年7月号79
    速システムが、不要な低速段へのダウンシフトを行な
    はず、できるだけ長い時間高速ギヤで走行することも
    可能となる。
     このツーステージ排気過給方式は既に有る技術の
    応用であり、長期にわたる耐久性については実証済
    みということが出来る。大小二つのターボチャージャー
    が夫々に役割を分担するので、無理なく全回転域で
    理想的な過給圧力が維持出来るのである。可変容量
    の過給器も世の中には存在するが、MANは大小二
    つの固定容量過給器の採用でシンプルかつ高信頼性
    というコンセプトを貫いた。
    ツーステージ排気過給方式
     給気温度を低く保つ考え方は、燃焼高度化に決定
    的な効果をもたらす。低温過給気はこれまでの高温
    過給気と比較して、同じ容量の空気でより多くの酸素
    を供給可能とする。結果、高出力化へ向け燃焼効率
    の改善が進む。MANの新型D3876型エンジンの
    場合、2段階冷却が行なわれた過給気は冷却液の温
    度を上限に従来より低く保たれる。二つのインタークー
    ラーを直列に配列せず、並列させて夫々に独立した
    冷却回路を割り当てているので、冷却効果が高めら
    れている。
     ツーステージ給気冷却方式の有利な事は他にもあ
    る。高圧側排気過給器の入り口給気温度が低圧側イ
    ンタークーラーで冷却されているので熱負荷が軽減さ
    れる。これは耐久性の点で非常に有利である。(図4)
    コモンレール式燃料噴射系
    最高噴射圧力2500bar
     MANの新エンジンS3876型はコモンレール式
    で、第三世代に相当する。燃料は最高圧力2500
    barでシリンダーに噴射される。これにより混合気の
    状態が一層理想に近づいた。噴射のタイミングは前、
    主、後の三段階に精密制御される。設計上の気筒内
    圧縮圧力は250barとされている。給気が充分冷却
    されるので上死点で必要以上の温度は回避される。
    このように燃焼に係わる様々な要素を最適化させた結
    果、このコモンレール式燃料噴射システムは出力的
    に高効率である。同時に燃料消費率においても極少
    となることに加え、粒子状物質(PM)の生成も極少レ
    ベルを実現した。(図5)
    高張力素材採用により
    160kgの軽量化に成功
     新エンジンのシリン
    ダーブロックには強靱鋳
    鉄の一種となる高張力
    GJV450鋳鉄(バーミ
    キュラーグラファイト:
    線虫黒鉛鋳鉄)が使用さ
    れている。(図6)
     この高張力材の採用
    により剛性を維持しつ
    つ設計的に軽量化効果
    も実現した。更にフラ
    (図4)MAND3876型エンジンの吸気系構成 シリーズ配列の①
    低圧用チャージャーと②低圧用インタークーラー、パラレル配列の③高
    圧用チャージャー、④吸気メインインタークーラー。低速域から大トルク
    を生み出す一方の立役者。
    (図5)新D3876型エンジンの燃料システムはMANの第三世代に相
    当するコモンレール式で噴射圧力は最高2500bar。①噴射タイング
    及び噴射量は電子制御ユニット、②高圧燃料ポンプ、③コモンレール、
    ④インジェクタ。
    D3876型エンジンのブロック及
    びヘッドには高張力GJV450鋳鉄
    (バーミキュラーグラファイト:線虫
    黒鉛鋳鉄)が採用された。(写真はイ
    ージ。出典:KEYtoMETALAG
    /www.totalmateria.com)
    (図4)
    (図6)
    (図5)
    TheTRUCK2015年7月号80
    イホィールハウジングはアルミ系軽量材に変更し、鋳
    鉄製エンジンマウントを組み合わせるなどした結果、
    在来の同等排気量エンジンD28型に対し総体として
    160kgの軽量化に成功した。結果、新D3876型
    エンジンは同種エンジン中で最軽量機の一つとなっ
    た。オイルパンと共にバルブロッカーカバーの樹脂化
    も軽量化に貢献している。
     新型エンジンに採用された樹脂製オイルパンは
    MANの特許になる〝蜘蛛の巣構造〟の底部形状が採
    用されており、軽量化に加えて騒音低減にも一役かっ
    ている。低減されたエンジン作動音は耳に心地よい
    音質になるという副次効果ももたらした。(図7)
    新たな構想、過酷な条件下の部品を救え
     MANの新D3876型エンジンは、トラック用ディー
    ゼルエンジンとして史上初の上部から下部方向へ冷
    却水を流す方式を採用した。この〝トップ・ダウン〟
    却方式はディーゼルエンジン中で最も熱負荷の厳し
    いシリンダーヘッドを優先的に冷却する考え方に基づ
    く。インジェクタと排気バルブを優先的に冷却するこ
    とで、長期に亘る信頼性が格段に高まる。〝トップ・ダ
    ウン〟冷却方式は全気筒に平均して高い冷却容量を確
    保する。これにより局所に過度な高温部を発生させ
    ず、しかも冷却液循環量を特段増加させる必要も無
    い。これは冷却液ポンプ容量の増加に伴う損失増加
    も抑制できるから燃費改善にも貢献する。(図8)
    トラック用エンジン初
    凸面形状バルブヘッド採用
     このエンジンでは、1気筒当たり4バルブ方式だ。
    そのバルブ、トラック用ディーゼルエンジンとして初
    の採用となった凸面形状がバルブヘッドの強度を高め
    る。走行中の数えきれない回数のバルブ開閉により
    バルブヘッドは繰り返し応力を受けるが、これに耐え
    る為にこの形状が採用された。高温下の過酷な長期
    間の運転でもバルブヘッドの変形を防ぎ、バルブシー
    トへの着座面の荒れを防止する。結果、分解整備の
    必要な期間の延長を可能とし、トラック用として信頼
    性のより高いエンジンが生まれたのである。(図9)
    (図8)MANの新D38型エンジンは同社として史上初の上部から下
    部方向へ冷却水を流す方式が採用された。①インジェクタを最優先冷
    却対象とし、②次にバルブシートを冷却する。
    (図9)MAN3876型エンジンのバルブヘッド形状:①バルブヘッドは
    凸面形状、②適正化されたバルブシート接触面。
    機械加工されたバルブヘッド。ステムの長い方が給気用、短い方が
    排気用。
    (図7)
    (図8)
    (図9)
    (図7)耐衝撃樹脂材のオイルパンには特許〝蜘蛛の巣〟構造が採用さ
    れ騒音低減効果も得られた。
    (図9.1)(図9.2)
    TheTRUCK2015年7月号81
    鍛造スチール製ピストン採用
    サービスライフの延長に貢献
     D3876型エンジンのピストンには鍛造スチール製
    ピストンが採用されている。この方式の特長は、高
    強度の合金鉄材によりピストン形状はコンパクト化さ
    れる。全高の小さい鉄製ピストンはピストンピンの位
    置が高くなりコンロッドの長さが延長されるから、ジオ
    トリー的にクランクシャフトに燃焼膨張力を効果的に
    伝達できる。更に、全長の短いピストン形状はシリン
    ダー内面との接触面積を低減させるから摩耗を少なく
    することができる。ピストンとシリンダーライナーの摩
    耗が少ないということは、サービスライフが伸びると
    いうメリットにつながる。
    各シリンダー当たり8本締めのボルト配置
     各部の見直しはシリンダーヘッドボルトの数と配置
    に及んで再検討された。シリンダーヘッドはブロック
    に対して均一に締結されることが望ましい。それがエ
    ンジンの運転中のシリンダーライナーに対する均等な
    締め付け力となり、円筒の真円度を保証するからであ
    る。シリンダーが真円度を保てばピストンとシリンダー
    間の気密性を高める。更にエンジンオイルの消費を
    抑制するし、フィルターの交換周期も延ばすことが可
    能となる。シリンダーヘッドガスケットへの締結力も均
    一になりガス洩れを防止する。当然、サービスライフ
    を通じてガスケットの機能が保証されることになる。
    ファイヤリング採用、
    オイル由来カーボン発生を抑制
     もう一つ、新エンジンの特徴としてシリンダーライ
    ナーの頂部に注目すると、ピストンのトップリングが頂
    点に達した瞬間の位置を正確に捉えてファイヤリングが
    鋳込まれていることだ。このファイヤリングはピストン
    の上死点付近におけるピストンとライナーの隙間を埋め
    る役割を担っているから、燃焼ガスのこの部分への侵
    入を防止し潤滑油が燃焼ガスの影響で炭化してピスト
    ン外周面に付着することを防ぐ。オイルの炭化による
    カーボン層はシリンダーライナーの摩耗を促進してしま
    うから、これが発生を抑制するファイヤリングの採用は
    サービスライフを長く出来ることを意味する。(図10)
    電装ハーネスは配索導管で保護
     新エンジンは、業界初の試みとして、エンジンハー
    ネスは樹脂発泡充填剤を併用した配索管で保護する
    方式を採用した。これによりハーネスがエンジン作動
    中に振動して損傷する可能性を封じ込めた。これは
    長期間ハーネスが正常に機能することを保証する。こ
    れもサービスライフの延長に有効である。この新しい
    方式は、エンジンの作動中の振動でハーネスが周辺
    の金属部分と接触し、ネズミがかじるような損傷も防
    ぐことができるのも当然の効果である。
    MAN式圧力空気マネジメント方式の採用
     フラッグシップである新型TGXD38車に設定され
    たEfficientLineモデルでは、燃費改善を目的とし
    たディマンド応答式のエアコンプレッサーを採用して
    いる。最近のトラックでは、各種の装備品の追加によ
    り圧力空気の消費が増加している。この要請に従っ
    て大排気量のエアコンプレッサーが必要となるが、同
    時に要求される低燃費性能と両立させる為に2気筒の
    エアコンプレッサーにクラッチを採用し、不要な時間
    には運転を中断する。大排気量化してあるからタンク
    圧が低下するとクラッチをつなげて直ちに運転を再開
    し所定圧を回復することができる。このエアコンプレ
    サー・マネジメントシステム(AMP)の採用で、平均し
    て運行時間中の90%はコンプレッサーを止めて置け
    ることが実証されている。(図11)
    (図10)鋳鉄製ピストンとファイヤリングなど ①鍛造鉄製ピストン、②
    気筒当たり8本締めのヘッドボルト。
    (図10)
    TheTRUCK2015年7月号82
    強力で連続使用可能なエンジンブレーキ
    EVB、ターボEVB及びインターダー3
     今後増大すると見込まれる(連結)車両総重量に備
    え、D3876型エンジンでは強力なEVB(Exhaust
    ValveBrake)方式のエンジンブレーキと、更に一
    段強力なターボEVBが設定された。いずれも初の商
    用化である。双方の方式とも低速域から有効だが、
    エンジンの中速回転領域では格段の効力を発揮す
    る。VDBのブレーキ能力は最大で2400rpm時に
    340kWまで発揮される。
     ターボEVBの場合だと、制動馬力は顕著な増加
    を見せ2400RPM時に600kwに達する。勿論連
    続使用が可能だ。この方式だと冷却系の過冷も防ぐ
    ことが出来る。これは安全上重要なことだ。本システ
    ムは2015年から重量物運搬用のモデル車から搭載
    して提供を開始し、順次一般のカーゴ輸送用モデル
    にも拡大される予定である。(図12)
    メンテナンスコストの低減と
    保有全期間に亘るコストとの関連
     新D3876型エンジンの開発に当たり、試作機の
    モニター運用段階ではサービス部門の熟練者の意見
    を特に重視し、整備性の良し悪しについて忌憚のな
    い意見を出して貰い設計に反映させた。一例を挙げ
    れば、バルブ調整時にエアクリーナの脱着を必要とし
    ない設計がある。他の例を挙げると、燃料噴射系に
    ついても調整に必要な作業性について特段の配慮を
    計った。
     新エンジンの開発段階では、過去にD20/D26
    型などで実績のあるコンポーネントの利用も考慮され
    た。例えば燃料フィルターモジュールやオイルセパレー
    ター、或いは冷却液ポンプや排ガス再循環用の配
    管、更に冷却ファン、オルタネーター、スターターか
    らエアコン用コンプレッサーなどである。新たな基準
    で見ても、これらの実績あるコンポーネントが新エン
    ジンにも利用可能と判断されたものは、サービス部品
    の互換性の観点から躊躇無く再度利用している。今
    回、新たな最強エンジンの開発を通じてサービス性と
    補給部品の互換性などを最大限考慮したことは、特
    に強調しておきたい事項である。
    新D38型エンジン、
    ユーロ6排出ガス基準に対応
     現時点では究極の排出ガス浄化基準とされる
    ユーロ6に適合させる技術として、外部で冷却した
    排気の再循環方式(EGR)と選択的触媒還元シス
    テム(SCR)に加えクローズド粒子状物質フィルター
    (CRT)を採用した。MANの小排気量エンジンとは
    一線を画して再循環排気は二段冷却方式を採用して
    いる。第一段階で排ガスは冷却系統に接続された高
    温排ガスEGR冷却器を通過させ、第二段階で給気
    冷却器に合体したEGR冷却器を通過して充分に冷却
    される。
     この設計では、在来エンジンと比較して排ガスの冷
    却レベルを40%高め、NOxの排出を極小化する。
    これはとりもなおさず、排出ガス浄化システムの負荷
    を小さくする。結果、MAN製エンジンはAdBlue(尿
    素希釈触媒液)の消費が少ないとの定評を得ている
    が、これが一層少量で済むことになる。以前のユーロ
    (図11)必要に応じて運転する大容量2気筒エアコンプレッサー ①
    近年の運行事情と車両設計はより大量の圧力空気を要求するので大排
    気量化し、②不要な時間はクラッチで作動を中止する。
    ターボEVBの制動馬力
    は600kWに達する。①排
    気コレクター(マニフォールド)
    ②排気バルブ、③制御シリンダー、
    ④高圧ターボチャージャー。
    (図11)
    (図12)
    TheTRUCK2015年7月号83
    5適合エンジンの場合と比較すると、AdBlueの消費
    量は60%減少したことになる。これはMANが掲げ
    るTCO(車両保有全期間を通じて発生するコスト)
    極小化を実現する有力な手段の一環をなすものだ。
     更に後処理システムへの負荷が減少すれば関係機
    器・部品を小型化出来るから、フレームサイドのレイ
    アウトの関係で燃料タンクの大きさなどについても犠
    牲が生じない。
     最適設計のコモンレール式燃料噴射システムによ
    り、ディーゼルスート(黒煙)の排出も極小化されるか
    らPMフィルターの負担も小さく出来る。すると、排
    ガス系のバックプレッシャーも小さくなるから、燃費も
    当然ながら良くなる。更に、PMフィルターの自己再
    生機能がそれ自体で充分機能するので補助燃焼用燃
    料の噴霧注入は不要となり、これも燃費改善の一助
    となる。PMフィルターへのアクセスも専用ドアが設け
    られているので、サービス性は良好だ。もっとも、分
    解清掃は走行50万kmの間必要としない。(図13)
    (お断り:以上のエンジン編中、出力の単位はkW
    数併記はせず馬力数のみ表記し、コンポーネントに係
    わる名称はMANの資料に準じた。)
    シリンダー配列直列6気筒
    総排気量15.2LL
    内径138㎜
    行程178㎜
    圧縮比18.1
    乾燥重量1345㎏
    MAND3876型エンジン主要諸元
    わが国のディーゼルエンジン開発、
    最近の事例
     用途は異なるが、乗用車用のエンジンとしてディー
    ゼルエンジンを常識に捕らわれず根本から見直し、見
    事な商品化に成功したマツダのSKYACTIVD1.5/
    D2.2エンジンの例を見ると、ディーゼルエンジンに改
    良の余地はまだ沢山あるとの思いを強くする。
     別の事例として、いすゞ自動車のベストセラー小型ト
    ラックエルフ用のディーゼルエンジン(4JJ1-TCS型
    総排気量2,999L)で、〝圧縮比を下げ(17.31→15.8:1)
    噴射ノズルを改良して〟燃費№1(重量車モード・国交省認
    定)に還り咲いた事例が報告されている。これは上記
    マツダの技術開発に刺激されたトラックメーカーのエン
    ジニアが、改めて自社のディーゼルエンジンを新たな
    視点で見直し、価値ある改良に成功した事例ではない
    かと推測するのは筆者だけではあるまい。
    (図13)2ステージ排気再循環システムを採用したMAND3876型
    エンジン:①遮断弁、②高温用冷却器、③低温用冷却器、④冷却給
    気の注入
    (図13)
    (図14)
    (図15)
    (図14)D3876型エンジンの最高出力382kW仕様性能線図。一
    般に性能曲線というが、このエンジンでは見事に制御されて線図というべ
    きだ。アイドリング回転で最高トルクを発揮するから発進時にむやみにア
    クセルを踏み込む必要はない。
    (図15)D3876型エンジンの最高出力460kW仕様性能線図。こ
    ちらも際だった制御特性に注目される。
    TheTRUCK2015年7月号84
    【Ⅱ】トレーラ&ボディ編
     次に、トレーラとボディの新動向を見てみよう。先
    ず、セミトレーラのフレーム構造の進化例を採り上げ
    よう。
    カーゴ用セミトレーラのフレーム構造
     SHMITZCargoBullカーゴ用セミトレーラの場合
    は、フレームを従来の鋼材の溶接構造から高張力引き
    抜きIビーム(正確には上下のフランジ部が互いに逆
    方向に折り曲げられた形状)材構造に変更している。
    フレームの主要材料をモジュール化し、高い断面の部
    材と両外側に通したIビームを縦横に組み合わせたサ
    ブメンバーで一体化した構造で全高を低く(ということ
    は低床構造)すると同時に積載容量も高めている。
     この方式の量産設備として主力の独アルテンベル
    グ工場に3000万ユーロを投入して整備を行なったと
    いう。冷間加工で溶接工程無しにこの部材を製造す
    る。アセンブリーに使われる他の部材は全部で20種
    で、従来の28種から削減された。こうした一連の新
    部材を製造する設備とラインは欧州内主力2工場に
    加え、提携している中国・武漢にある東風汽車グルー
    プの工場でも生産される。(図16、17、18、19)
    (図16)Iビーム材。正確には上下のフランジが逆方向に向いている
    断面Z形状。
    (図19)一般カーゴ用トレーラの
    フレーム構造も進化している。低
    床化、荷重容量増加に加え耐久
    性、生産性などの向上も背景と
    ている。
    (図17)SCHUNITZのIビームとモジュール構造材によるフレーム構
    造例(上面)。
    (図18)SCHUNITZのIビームとモジュール構造材によるフレーム構
    造例(下面)。
    (図19)
    (図17)(図18)
    (図16)
    TheTRUCK2015年7月号85
    空気抵抗低減による運行燃費向上
     次に見るのは、バン型ボディの後端に付加される空
    気の乱流を補正する整流板だ。2006年に米カリフォ
    ルニア州で起業したATDynamics社(以下、ATD)
    の提唱するこの整流板を装着して走行中に展開する
    と、長距離を高速で運行するバン型車(トレーラを含
    む)のボディ後端に生ずる空気の乱流による空力
    的走行抵抗を緩和し、多くの場合3%程度の燃
    費節減に寄与する。このレトロフィット(既存車に
    も後付け装着可能)キットは現在世界31か国で
    販売されるまでに急速に普及しつつある。欧州
    のトレーラメーカーでもこれを導入する動きがあ
    る。
     このキットを取り付けると、ボディ後端に50
    〜80㎝程度の延長代が必要で車両全長を制限
    する各地の在来の車両関係法規(わが国では道
    路運送車両法の保安基準)に抵触する場合が多
    い。この為、地球温暖化問題への対応の見地
    から概ね好意的な受け取り方で迎えられている
    が、一部で特例としてこのキット装着による全長延長
    は例外扱いとする(特認)動きがある。しかし、多くの
    国・地域では放棄の改正を行って正式にこれを認めて
    ゆこうという機運である。
     アメリカではEPA(連邦環境保護局)の公認を得て
    州法の改正で対応している一方で、欧州では特認方
    式で実効の検証を行っている段階である。遠からず法
    規改正が実現するものと予測されている。(図20、
    21、22、23)
    (図21)トラックメーカーが提案するとトラクタとの一体的総合的デザイン改良となる。
    (図20)バンボディ後端部の整流版。米ATDynamics社の提唱で世界的に普及
    する見通し。整流板の長さを特例で認める法規改正が検討されている。
    (図20)
    (図21)
    TheTRUCK2015年7月号86
    高温積荷用セミトレーラ
     欧州で新たな安全基準が施行されようとしている。
    高温積荷(具体的には路面舗装材であるアスファルト
    混合物等)を輸送するダンプボディにおける外面温度
    規制である。
     一般に、路面舗装材はプラントでアスファルトと骨
    材を加熱混合されるが、敷きならし(転圧)施工時には
    一般に110℃を下回らない温度が推奨されている(一
    般社団法人アスファルト協会)。従って、出荷(プラン
    トでの積み込み時)にはこれより20〜30℃高い状態
    であることは常態であり、冬期には輸送途上の温度
    低下を考慮して積載時には185℃程度まで高めるこ
    とも珍しいことではない。
     ダンプボディの構造が鋼板製で単板構造なら、高
    温の積荷で外面は高温となることは避けられない。
    もし、人体がこの高温外板に触れるようなことがある
    と、火傷を負うことは必至である。安全上の嫌疑か
    (図23)トラック側の未来車デザイン(Daimlerの提案)
    (図22)試作の整流版で長さは製品化段階で更に延長されるだろう。
    (図23)
    (図22)
    TheTRUCK2015年7月号87
    らこれを防止する規制(詳細は未定)が検討されてお
    り、ダンプ(欧州式にはティッパー)セミトレーラに断
    熱構造を取り入れて先行商品化の動きがある。具体
    的にはダンプベッセルを二重構造として中間に発泡断
    熱材を注入したものだ。複数のメーカーが〝IAA2014
    商用車展〟に出展していた。(図24)
    【Ⅲ】CO
    排出削減に向けた
        IT活用編
     全地球的課題である二酸化炭素(以下、CO
    )の
    排出削減は、自動車にとっても喫緊の大きな課題で
    ある。商用車では内燃機関の時代がなお当分続く見
    通しであるところから、燃料消費(以下、燃費)の削
    減は引き続き重要な課題である。本稿の【Ⅰ】【Ⅱ】とも
    関連してソフトウエア開発が競われている。アプロー
    チとしては先ずエンジン本体や変速機との協調制御
    などで改良を先行させ、確実な成果を出してゆこう
    とするものだったが、これから紹介する事例はソフト
    ウエアからCO
    削減を支援してゆこうとするもので
    ある。
     運行燃費は運転方法で大きく影響を受ける。運転
    者によって同じ条件で同じ種類の車を運転しても燃費
    の優劣(平均に対する上下の振れ)は極端な場合は±
    20%程度は普通に観察される。従って、先ずは省
    燃費運転の技量を習得して日常のスキルとしてもらう
    ことが先決だが、ここに紹介するのはクルーズコント
    ロールなどのシステムに地形情報を取り込んで自動
    変速機(以下、AMT)の制御プログラムと統合して実
    効を上げようとするものである。
     近年、コネクテッ(Connected)というキーワー
    ドで表されるシステム運用が話題になっている。
     個別の車両が車載の通信機能で道路沿いの通信
    ネットワークを通じて外部ネットと繋げる(コネクト)
    態を維持しつつ、運行ルートの前方の交通事情を掌
    握して状況に応じた最適な速度と車間距離で走行で
    きるように運転支援を行うことが実用段階に入って
    いる。
     更に、GPSと地図情報を統合して運行中の現在
    地点から前方数キロメートルにわたる道路勾配を取り
    込み、クルーズコントロールのプログラムに反映さ
    せ、安全性も見込んでAMTの制御を燃費極小とな
    るように行うシステムが、欧州の主要トラックメーカー
    で実用化されだした。こうしたITの広範な応用は、
    運転者の技量によって大きくばらつく燃費性能を誰が
    運転しても〝ベテランの技量に並ぶ〟レベルに引き上
    げることを可能とする。
     従来、運転操作を車載の運行記録システムが記
    憶媒体に記録し、これを事務所で解析して運転者の
    運転操作上の特徴を長所・短所に整理して運行管理
    者が指導することが行われていた。記憶媒体を車載
    せずインターネットを通じてリアルタイムに車載機器
    と事務所を結んで、帰庫したら当日の運行記録が整
    理されるようにもなってきている。〝コネクテッド〟の一
    つの形態だが、最近のシステムでは上記したように
    道路管理者が提供する交通情報、地図・地形情報を
    GPSと連動して提供するサービスも商業的に利用で
    きるから、こうした外部情報源と常時(或いは適宜に)
    〝結んで(コネクト)必要情報を利用してクルーズコ
    トロールを高度化するイメージだ。
    (本講おわり)
    (図24)アスファルト混合材用の断熱構造ダンプトレーラ(Friegl社の
    場合)
    (図24)