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【対談】懸念される自動車産業の未来

巻頭
TheTRUCK2018年4月号18
「謝罪会見の作法」
経済ジャーナリスト
大島春行
「時代を読む」󱌴
「謝罪会見の心得」
 企業が不祥事を起こしたらいち早く謝罪会見を開か
なければいけない。マスコミや国民に事実を隠したと
思われたら大変なことになるからだ。そして、どうせ謝
るのだから出来るだけ深く、長く頭を下げ続けなけれ
ばならない。大抵は広報部長あたりが会見前に社長
室に飛び込んで、「ここは危機管理の観点から、なるべ
く深く、長く頭を下げてださいいいですね」と訴えるこ
とになる。
 言われた方も、大企業であればあるほどサラリーマ
ンの成れの果てというか、つつがなく勤めていたら社
長になったという経営者が大半なので、もとより記者会
見に何某かの見識があるわけでもな、言われるままに
会見に臨むのだ。
 しかしそれも世
の中に謝罪会見が
滅多にないという
条件付きだろう。
最近のように芸能
人の不倫も含めて
こうも不祥事が頻
発すると、「深く長く」頭を下げることだけでは所期の効
果はとても期待できない。謝罪する社長たちが頭を下
げる角度と長さを競い合っているようにしか見えないか
らだ。何だか社長たちの学芸会を見せられているよ
うな気分になって、お詫びの気持ちは全く届いて来な
い。一旦そういう目で見られてしまと、うおしまいだ。
 国民の多くがテレビを観ながら、よも揃いも揃って
不誠実な謝罪をするものだと思ってしまうのではない
か。何年か前に、食中毒を起こした焼肉屋の経営者
が土下座をし
ていたが、こ
こまで来ると見
ている方は不
愉快になる。
「もっと他にや
ることがあるだ
ろうに」と思っ
てしまわけだ。
 たまにはもと堂々と謝罪会見をする経営者はいない
ものかと思っていたら、十年ほど前にあるホテルチェー
ンが全国で不法な改造建築をしていたことが発覚した
際に、ワンマン経営者が極めて率直な物言いで、「制
限速度6キロのところを68キロ位で走っちゃった」など
と、謝罪というりは開き直りの発言をした。「へえ、や
るなあ」と思っていたら、すぐさま批判を浴び、日をお
かずして平身低頭の謝罪会見をやり直した上に、結
局辞任に追い込まれてしまった。これ以降ますます謝
罪会見は画一的な平身低頭スタイルになってしまったよ
うだ。
「欧米との違い」
 謝罪会見は迅速に開くというのが洋の東西を問わな
い鉄則だとすると、洋の東西を分けるのは頭を下げる
かどうかだろう。いや東洋と言っても本当はもっと限定
的で、頭を下げる国は日本と韓国くらいのものではない
だろうか。儒教の影響が強く残っているからなのだろ
か。それ自体を否定するつもりは毛頭ないが、グロー
バル経済の世界から見ると不思議な光景に映ることは
事実だろう。だから謝罪会見も、欧米でやる時は頭な
どは下げない方がいい。
 ではどうやって謝罪の気持ちを表すべきなのか。答
えは一つしかなて、二度と同じ過ちを繰り返さない方
策を具体的に示すことだ。「なんだ当たり前じゃないか」
とご指摘を受けるかも知れないが、これが出来ていな
いから、ほとんどの謝罪会見は白々しく嘘っぽく見える
のだ。
「謝って済む問題か」
 言い換えれば経営者たちが一様に平身低頭してい
る本当の理由は、過ちの本当の原因が会社のカル

TheTRUCK2018年4月号19
チャー、企業風土に根ざしているからに他ならない。
大抵の経営者たちは、まさにこの企業風土の中で育
ち、選抜された存在なので、それを変えることが自ら
の失脚につながることを本能的に知っているので、そ
こだけは必死に守ろうとするのだ。あの平身低頭の本
意は、「過ちを抜本的に変えるつもりはありませんが、お
願いですからこの辺でご勘弁ください」と言っているの
だと受け止めるのが正しい。随分おかしな話だと思わ
れるかも知れないが、日本的経営風土の中で大概はこ
れで通ってしまうのが現実だ。だからこそ平身低頭モ
デルが使われて来たわけで、「謝れば済む」のだ。
「神戸製鋼所のデータ改ざん事件」
 ところが謝っても済まななってしまったのが、神戸製
鋼所が犯した製品データの不正改ざん事件だ。元々
は一昨年、子会社で行っていた改ざんが発覚したの
が発端だったが、翌年には本社での改ざんが発覚す
る。この過程で経営陣に危機感が乏しかった上に、
発覚後も改ざん行為が一部続いていたことなども明る
みに出てしまったことから所管の経済産業省も黙ってい
られななった。
 しかも改ざんしたアルミ材などが、新幹線や航空機
など、まかり間違えば人命に関わりかねない分野に
使われるものがあっただけに、そして国内だけでなく
海外の取引先に対しても不正が行われていたことが
判明したために、「日本のモノづくりに対する信頼が失
墜しかねない一大不祥事だ」という批判が高まってし
まった。
「改ざん事件の本質」
 この事件では神戸製鋼所が先月、なぜ改ざんが行
われたかについて80ページにも及ぶ報告書を明らかに
した。指導にあたった経産省の激昂が直に伝わってく
るよな内容だ。
 この問題の根が深い点は、改ざんが神戸製鋼所の
経営トップの指示で行われたものではな、工場と納入
先の企業との間の現場での直取引で行われた改ざん
だったことだ。こした改ざんは随分昔からの慣行で、
互いに阿吽の呼吸で行ってきたという。多少規格から
外れたものでも、安全性や性能に大した影響が出ない
ことが現場レベルで判っている場合に行われているも
ので、クサイ(特別採用の略)と呼んでいたそうだ。
だから、「現場では昔からやっています」というわけで、
原因究明も何もありしない。トップのクビを切れば問
題が解決するよな簡単な話ではないのだ。
 ある意味で、ものづくりで世界の頂点に立つ日本な
らではの、名人芸的な取引慣行と言うべきことかも知
れない。規格があることは承知しているが、彼らはそ
の規格の中身も糊しろも良く判った上で、差し障りのな
い範囲内で必要に応じてちょっと変えただけ、というわ
けだ。そしてそれが恒常化していった。
 誤解を恐れずに言えば、小学校の音楽の授業で音
を外したら叱られるけれども、美空ひばりがちょっと音を
外した歌い方をしても誰も外したとは思わないで、「上手
いから外した」と思う、そんな感じかも知れない。ものづ
りニッポンの現場では、JIS規格などは初心者向けの
ルールにすぎない、私たちはもと上のレベルで仕事を
しているのだという、そんな驕りもあったかも知れない。
「神戸が、ニッポンを救う?」
 しかしルールはルールである。規格から外れれば、
いかに名人級の立派な製品を作ってもグローバルビジ
ネスの世界では粗悪品と変わらないし、規格から外れ
た製品を製造販売する企業は信用を失う。しかもその
製品が、人命に関わる分野だったりすると致命的です
らある。
 だから勿論、この会社は過ちを正していかなければ
ならない。新しい経営トップの強いリーダ―シップのも
と、現場の解体的な見直しを進める必要がある。考え
うによっては、大事に至る前にこした誤った慣行が
発覚してよかったのかも知れない。更に言えば、問題
が神戸製鋼所にとどまらないこも容易に推測できるだ
けに、日本の製造業者はこぞって自らの生産現場の再
点検を行ったはずだ。その意味では、この会社の凡
庸な旧経営陣が日本を救うとになるかも知れない。日
本のモノづくりは、お辞儀の仕方を練習している場合
ではないのだ。

株式会社rimOnO
代表取締役社長
伊藤慎介
筑波大学ビジネスサイエンス系
教授
立本博文
TheTRUCK2018年4月号20
電機産業の前例から懸念される
自動車産業の未来
高度成長期に自動車産業と肩を並べて日本経済を支えた電機産業。しかし、
90年代半ばを境にパソコン、半導体、オーディオ、DVD、テレビ、携帯電話、
太陽光パネルなど日系電機メーカーが強みとしていた分野が次々と世界シェアを
失っていきした。その原因として語られているのがデジタル化とオープン・クローズ
戦略です。立本先生は東京大学シニア・リサーチャーの小川紘一先生とともに
オープン・クローズ戦略を含めた欧米やアジアのビジネスモデル戦略についての
研究を続けていらっしゃいます。そして、自動車産業においてもデジタル化と
オープン・クローズ戦略の波が到来するのではないかと早くから予言されて
いらっしゃいました。この数年、CASEと呼ばれているIT化、自動運転、シェアリング、
電動化という大変革の波が到来し、先生の予言が予想を上回る形で的中しま
した。そこで、他産業における構造変化の事例を研究されてきた立本先生から
見て今の自動車産業の大変革はどう見えているのか、この難局を乗り越えるには
どうしていくべきかについて伺いたいと思います。
The Next Vehicle World
胎動する次世代ビークルの世界⑥

TheTRUCK2018年4月号21
伊 藤 今から10〜15年位前に遡ります
が、東京大学の小川先生と立本先生とともに、
90年代の半ばからなぜ電機産業が凋落して
いったのかを一緒に勉強させていただきまし
た。デジタル化が急速に進む中で、これまで全
く想定していなかったビジネスモデルで勝負す
る企業が登場し、日本の企業が大きな産業構造
の変化になかなか対応出来ずに世界市場から
撤退していったとの分析を伺いました。その
ビジネスモデルの代表例がオープン・クロー
ズ戦略でした。また、自動車のソフトウェア
化の進展とともにドイツ企業が仕掛けてくる
AUTOSARという標準化戦略が議論となり、
彼らの標準に従わざるを得なくなっていくと技
術的に台頭である日本企業であってもビジネス
としてはドイツ企業が圧倒的に有利になるとい
う危機感を自動車部品メーカーととも共有しま
した。その時の自動車産業においての脅威は、
ソフトウェア化とその流れをうまくビジネスに
利用するドイツ企業であり、自動車産業全体が
大きな産業構造変化にさらされるという話まで
にはなっていなかったと記憶しています。
 ところが、ここ数年ではCASEという表現
で、コネクティッド(IoT化)、自動運転、シェ
アリング、EV化という大変革の波が同時に押
し寄せており、ゲームチェンジャーと呼ばれる
既存の自動車産業の文化や構造をあまり気にせ
ずに参入してくる企業が台頭するようになりま
した。グーグルやアップルはもちろんのこと、
ゲーム機のデバイスメーカーであるエヌビディ
ア、軍事産業からスピンアウトしてインテルに
買収されたモービルアイなどです。それから新
興家電メーカーのダイソンは電気自動車を市販
すると発表しており、世界中からエンジニアを
集めています。
 かつての高度成長期において日本経済を支え
てきたのは自動車産業と電機産業でしたが、
ゲームチェンジャーの台頭と産業全体の大変革
期を迎える中で、自動車産業は電機産業と同じ
ような道をたどっていくことはないのかという
危機感を持っています。ただ、自動車産業に従
事している人たちの多くは、電機産業とは全く
違うという意見の方が多いようにも感じます。
そこで、まずは電機産業の事例を紐解くところ
からお話をお伺いしたいと思っています。
立 本 まず自己紹介をさせていただくと、私
のバックグラウンドは経営学(経営戦略論)
す。大学終了後、東京大学ものづくり経営研究
センターのセンターで研究者となり、電機産業
を専門にしています。電機産業において国際競
争力をどのように高めていけるかを研究対象に
しています。実はこのところ自動車産業が電
機産業の構造と非常に近くなってきていて、
2000年代の半ば頃から電機産業の研究者が自
動車産業も研究するようになっています。経営
学の世界では自動車産業と半導体産業は研究対
象となる産業の二大巨頭です。一つ目の理由は
世界経済に与える影響が非常に大きいからで
す。世界の貿易量のうちトップ10をみると約
半分は自動車関係で残り半分は半導体・電機関
係でして、実はその二つの分野でほとんど占め
られています。
 私はものづくり経営研究センターで電機産業
を研究していたのですが、振り返ると、日本の
電機産業が寂しい道をたどっていく過程を観察
してきたことになります。1995年頃が変化点
だったと思います。そして2000年代以降は
再編の歴史になっています。ただし、重要な事
実は、世界全体では半導体や電機産業は拡大し
続けているという点です。半導体産業や電機産
業がだめになった、とか、時代遅れになった、
ということではないのです。日本の電機企業の
経営戦略が世界の動向に合わなくなった、とい
うことなのです。
 日本企業には共通した組織能力や戦略がある

TheTRUCK2018年4月号22
とおもいます。日本の産業環境を背景にしてい
るからです。その組織能力や戦略が電機産業で
は通用しなくなった、ということかと思いま
す。電機産業だけ、特殊な体質を持っていたと
いうことでは無いと思います。電機産業であ
れ、自動車産業であれ、日本企業であれば共通
したものがあるとおもいます。したがって、同
じような文化をもつ、自動車産業は大丈夫なの
か、ということになるかとおもいます。
伊 藤 電機産業は世界全体ではどのくらいの
勢いで拡大しているのでしょうか。
立 本 いろいろありますが、例えばスマート
フォンは15億台という市場規模になっていま
す。いままで、これほど巨大な市場をつくる電
気製品はなかったと思います。そして、あらゆ
るスマートフォンの中には必ず半導体が入って
います。このスマートフォンの分野では、アジ
アの中で苦戦したのは日本だけでして、台湾、
韓国、中国はものすごくメリットを受けていま
す。このように圧倒的な勝ち組と負け組に分か
れたという意味で非常に特殊なのです。加えて
電機産業の場合は、半導体とか液晶テレビとか
特定のセグメントだけで苦戦したというより
は、産業全体が全敗したという感じです。
 ただし、その状況は日本だけでなく、一時期
のアメリカも似たところがあります。一時期の
GEやIBMもどんどん苦戦に追い込まれまし
た。しかし、GEとかIBMは敗れたといって
も再編して復活しています。ただ、中には生き
残れなかった会社もたくさんあります。そうい
う意味では95年以降は電機産業の劇的な再編
期だと言えます。日本の場合は、多くの企業が
いまだ十分に対応できていません。一方の、ア
メリカの場合はGAFA(グーグル、アップル、
フェイスブック、アマゾン)といった新しい企
業がリーダーシップをとって変化をけん引して
いるといえます。
伊 藤 日本よりも再編の動きが早くて、その
結果新陳代謝が起きて、新しく生まれた会社が
時代の流れに対してどんどん攻めで対応できた
ということなのですね。
パソコンでの成功例を繰り返している
 アメリカのITジャイアント
立 本 私の最初の研究対象はパソコン産業で
した。パソコン産業はGAFAに代表する新し
い企業の「ゆりかご」というか、揺籃していた産
業でした。パソコン産業で彼らが体得した勝ち
パターンを、いろいろな産業で繰り返しやって
いるように感じています。それは携帯産業に
なってもクラウドビジネスになっても同じとい
う印象です。最近ではAIが注目されています
が、AIの世界でのやり方もほとんど同じにな
るだろうと感じています。したがって、ゲーム
チェンジャーと伊藤さんが仰っている会社が自
動車産業に参入してくると聞いてすぐに考えら
れるのはパソコン産業で成功したことと同じこ
とをやるのだろうということですね。もちろん
彼らのビジネスモデルは今も進化しています
が、その根っこのところにパソコン産業での体
験があると思います。
The Next Vehicle World
胎動する次世代ビークルの世界⑥

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TheTRUCK2018年4月号23
伊 藤 パソコン産業での勝ちパターンと仰っ
ていることをもう少し具体的に説明していただ
けませんでしょうか。
立 本 代表的なパターンの1つは「インテル
モデル」です。完成品は作らないのですが完成
品における付加価値のほとんどを持っていくと
いう戦略です。付加価値として提供するものが
基幹部品こともありますし、ソフトウェアのこ
ともありますが、重要なポイントは自分自身で
は完成品を作っていないということです。完成
品を作っていない「部品メーカー」なのですから
本来は大きな付加価値をとることが難しいはず
です。しかし、彼らはそれに成功しています。
これは彼らのビジネスモデルが基本的にプラッ
トフォーム戦略をとっているから出来ることで
す。そういう会社はバリューチェーンの一つの
要素しか持っていないのですが、それにもかか
わらず大きなバリューを獲得します。これと正
反対の方法で成功しているのが自動車メーカー
です。自動車メーカーはサプライサイドを系列
化し、販売サイドも抑えています。バリュー
チェーン全体で儲ける仕組みを作っています。
プラットフォーム企業のビジネスの仕組みは自
動車メーカーの対局にある戦略といえます。
伊 藤 完成品が供給されなければ市場は生ま
れないという事実は今も昔も変わらないです
が、かつては完成品も部品もソフトウェアもア
メリカ企業が作っていた時代から、アメリカ企
業は部品かソフトウェアだけを作って完成品は
主に海外の企業に担当させる時代に変えていっ
たということですね。そして海外企業の代表例
が台湾、韓国、中国の企業となったことから完
成品をやっている日米の企業は市場シェアを
失ったと。
立 本 このようなビジネス戦略は特にパソコ
ン産業で非常に顕著であったわけですが、携帯
電話でも、インターネット時代におけるクラウ
ドビジネスでも基本的には共通です。このよう
なゲームチェンジャーのやり方はアメリカの既
存企業にとっては許しがたい行為でした。アメ
リカの既存企業は完成品でビジネスをしていま
したから。したがって世界の企業がアメリカ企
業だけであれば、ゲームチェンジャーのビジネ
スは大成功することはなかったでしょう。ちょ
うど、1990年以降のグローバリゼーションに
よって、台湾企業や韓国企業、中国企業が世界
経済に参加したことが大きいと思います。ゲー
ムチェンジャーのビジネスモデルは、こういっ

TheTRUCK2018年4月号24
た新参者の企業に対して、キャッチアップの絶
好の機会を提供していました。
ゲームチェンジには雇用の流動性とリ
 スクマネーの供給が必要
伊 藤 役人を辞めて民間側に来てみると、
ゲームチェンジを仕掛けられる文化そのものが
理解できないと思ってしまいます。なぜかとい
うとインテルもマイクロソフトも元はといえ
ばIBMのサプライヤーであったわけです。そ
のサプライヤーが、IBMの競合であるコンパッ
クやHPに協力してIBMと同じようなパソコ
ンを作れるようにすることは考えられないです
し、更にその先にはASUSやACERのような
全くパソコンを作ったことのなかったアジアの
企業が作れるようにしていったのですから、
IBMからみたら非常に許し難い裏切り行為だ
と思います。アメリカではどうしてそういうこ
とが可能となっていて、なぜ日本ではできない
のでしょうか。
立 本 いくつか理由があると思いますが、ま
ず大きい理由としては雇用の流動性がありま
す。それに掛け算してリスクマネーの供給があ
ります。
伊 藤 IBMの社内でパソコンの完成品を担
当していた人がインテルに転職してしまい、そ
こでパソコン全体を作る仕組みを他のパソコ
ンメーカーに提供されてしまうと、残された
IBMの人はあまり反対できないということは
何となく想像できますね。
立 本 IBMとインテルみたいな関係は実は
日本にもあります。半導体メーカーと製造装置
メーカーの関係がかなり似ています。最初は半
導体メーカーが自社工場用の製造装置を装置
メーカーに依頼するところから始まったのです
が、国内の半導体産業がどんどん斜陽になって
いくと半導体メーカーのエンジニアが装置メー
カーに転職し、装置メーカーが海外に出ていく
につれてそのエンジニアが海外で活躍すると
いった具合です。
伊 藤 半導体の世界では日本でも雇用の流動
性があったということなのですね。
立 本 雇用の流動性が元からあったというよ
りも、国内の半導体産業があまりにも急激に調
子が悪くなったので必然的に雇用が流動せざる
を得なかったということかと思います。エンジ
ニア自身としても競合である台湾や韓国の半導
体メーカーに転職するよりは、装置メーカーで
あっても日本の会社のほうが良かったのでしょ
うし、そこでは大きな戦力になれたのですか
ら。雇用の安定性のような土壌も、産業構造が
急速に変わってしまうと極端な形で失われて
しまいます。幸いなことに自動車産業ではまだ
そういうことにはなっていませんが、電機産業
ではそういうことが次々と起きてしまったので
す。そういういう意味では、電機産業は好むと
The Next Vehicle World
胎動する次世代ビークルの世界⑥

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TheTRUCK2018年4月号25
好まざるとにかかわらず、調整期に入っていま
す。新しいイノベーションに対応する産業構造
変化を起こす上で、雇用の流動性が高いという
のは、重要点だと思います。
 新しいイノベーションといえば、イノベー
ションに必要ものはリスクマネーです。シリコ
ンバレーのようにゲームチェンジャーに莫大な
リスクマネーが供給されると、産業構造の変革
が急速に進みやすくなります。日本のリスクマ
ネーは一時期と比較すると随分と大きくなって
きましたが、海外と比較するとまだ小さいよう
に思います。にわとりと卵の関係かもしれませ
んが、雇用の流動性とリスクマネーは両輪のよ
うなもので、イノベーションの土壌をつくるた
めには両方必要です。
 雇用の流動性とリスクマネーに続く3つ目
の条件としてはデジタル化とグローバル化があ
ります。パソコンの場合ではインテルなどがデ
ジタル技術を使ってオープンなインターフェイ
スを開発したことで台湾や韓国の部品サプライ
ヤーや完成品メーカーがパソコン部品やパソコ
ン本体を作れるようになったわけです。雇用の
流動性、リスクマネーの提供、デジタル化とグ
ローバル化が掛け算されると産業構造の急変は
止められなくなってしまいます。
完成品を作れる能力を持つからこそ、
 アーキテクチャーを握れる
伊 藤 サプライヤーさんとお話をしている
と、パソコン、携帯、スマホ、テレビの世界であっ
てもサプライヤーやソフトウェアベンダーが単
独で完成品全体のアーキテクチャー(仕組み)
を創造することは簡単ではないと感じます。ど
れだけ大きいサプライヤーさんであっても経験
やノウハウがなければ、完成品全体の設計思想
を持ったり、耐久性、量産性を担保するために
必要な要素を盛り込んだりすることはできない
ように思います。その一方で、インテルは「イ
ンテル・インサイド」という名称でパソコンの
アーキテクチャーを設計して他社に提供してき
ましたし、グーグルはスマートフォンのアーキ
テクチャーを理解したうえでアンドロイドとい
うOSを提供しています。サプライヤーの立場
であるにもかかわらずこういうことができる理
由はなぜでしょうか。
立 本 それは簡単です。社内に完成品を設
計・生産できる経験やノウハウを持っているエ
ンジニアを抱えているからです。インテルは昔
から用途開発に相当投資をしてきていますので
いつでも自らパソコンの完成品を市販できる能
力を持っています。過去には実際に電卓を市販
していましたよね。パソコンの完成品を量産す
るためのトレーニングキットなども提供してい
ます。要するに、完成品のパソコンはいつでも
量産して市販できる能力は持ちながらも、あえ
てそうしないという戦略なのです。
伊 藤 グーグルも同じようにいつでもスマー
トフォンを作れるのでしょうか。
立 本 グーグルは実際にNexusやPixelと
いうブランドで、少量ですが自社の完成品を市

TheTRUCK2018年4月号26
場に投入しています。少量であっても自社の責
任とブランドで完成品を市場投入することは非
常に重要なことです。
伊 藤 自社ブランドの完成品を市場投入した
うえで、最終的に完成品のアーキテクチャーを
オープンにするということでしょうか。
立 本 完成品を市場投入して反応を見なが
ら、完成品における技術情報やコアなサービス
を次々とオープンにしていくわけです。自社
の最新技術をユーザーに使ってもらうという
ショーウィンドウ的な意味もあると思います。
最新技術での需要の掘り起こしは彼らにとって
も大きな目標です。
伊 藤 10年ほど前に、東京大学の藤本先
生が、日本メーカーは自動車ような「すり合わ
せ型」産業は得意だが、パソコンのような「モ
ジュール型」産業は不得意であると主張されて
いました。すり合わせ型というのは完成品の
アーキテクチャーが複雑に構成されていて玄人
でなければ簡単に作れない仕組みである一方、
モジュール型というのは昔のデスクトップPC
のように、秋葉原で部品を買ってくれば誰で
も組み立てられるキット型に近いアーキテク
チャーという定義でした。
 しかし、立本先生のお話を伺っていると、イ
ンテルやグーグルは社内で完成品のすり合わせ
をやった上で、それを自らモジュール化(キッ
ト化)し、コア部品やOSなどの「主要部品」
して提供していることになりますね。となる
と、こういう会社が出てくる限り、日本企業が
得意とする「すり合わせ型」が彼らによって次々
と「モジュール型」に転換されてしまうリスクが
あることになりますね。
立 本 仰る通りです。すり合わせ型がモ
ジュール型に一度転換されてしまうとあっとい
う間に産業構造が変わってしまいます。ただ、
最初にすり合わせ型からモジュール型を生み出
すことは実際には簡単ではないのです。
伊 藤 最初が難しいというのはどういう意味
でしょうか。
立 本 部品メーカーが完成品全体を設計でき
る能力を備えることは実際にはそう簡単ではな
いということです。実はここに雇用の流動性が
ものすごく効いてきます。完成品の設計や生産
をしたことがある人たちが実力のある部品メー
カーに集まり、不完全かもしれませんが完成品
を実際に作ってみることができれば、そのあと
はモジュール型でビジネスを展開することがで
きるようになっていくと思われます。一番はじ
めのところが難しいと思います。
伊 藤 仰ることはよくわかりますが、日本企
業のメンタリティだと、すり合わせによって優
れた完成品を作れるのであれば自社ブランドが
前面に出る完成品メーカーとして商売するほう
を望むような気がします。完成品を作ることの
できる能力を持ちながら、あえてその能力を要
素分解して他社が完成品を作れるように協力す
るという発想はなかなか出てこないように思い
ます。
立 本 企業の戦略としては二つのパターンの
どちらでも展開できるようにしておく必要があ
ると思います。一つは自分で作ったものを囲い
込んで完成品としてビジネス展開するパターン
と、もう一つは完成品のアーキテクチャーを解
体してオープンな形でビジネス展開するパター
ンです。そのどちらのパターンで勝負に出るか
はグローバリゼーションの力をどの程度活用で
きるかという世界情勢によって選択していくの
The Next Vehicle World
胎動する次世代ビークルの世界⑥

TheTRUCK2018年4月号27
だと思います。
 アップルのようにスマートフォンをゼロから
開発して完成品のまま世界の覇権を握るという
パターンもあり得ます。一方で、グーグルみた
いにクラウドサービス、OS、デバイスなどに
要素分解して利益を取っていくというパターン
もあり得ます。最終的にどちらのパターンが成
功するかはグローバルマーケットでの普及度合
いによって決まっていきます。自動車の場合は
たまたまアップルのような完成品のパターンし
かなかったのでこれまでは完成品メーカーがグ
ローバルマーケットで成功を収めてきました
が、これからもそのパターンのみが成功するか
どうかは分かりません。
CEO自らが事業判断できなければ
 ダイナミックな経営はできない
伊 藤 日本企業の場合、大手電機メーカー1
社の中に完成品と部品のそれぞれの部門があっ
たりしますが、それぞれの部門を担当するカン
パニーや役員が異なっているため、それぞれで
頑張って売り上げを増やしていくというやり方
になっているように感じます。完成品のパター
ンと部品のパターンを両方持ちながら、どちら
を中心に世界市場に出ていくべきかを戦略的に
意思決定しているように思えません。こういう
やり方だと、部品部門が頑張れば頑張るほど完
成品が売れないという結果にもなりかねないよ
うに思います。
立 本 戦略が明確でないと、社内でコンフリ
クト(利益相反)が起きているだけになってしま
いますよね。
伊 藤 経営方針としてそれぞれのカンパニー
が独立して売り上げを増やすように指示されて
いるケースが多いように思います。なぜインテ
ルやグーグルではそういうことが起きないので
しょうか。
立 本 インテルやグーグルのようなゲーム
チェンジャーが仕掛けているビジネスを実際に
やろうとするとマネジメントの構造を変える必
要があると思います。経営トップが完成品事業
と部品事業の両方を掌握して経営しなければな
らないのです。完成品事業と部品事業がそれぞ
れ独立した事業部になっていると利益相反が起
きるだけですから。ゲームチェンジャーの場合
は、完成品と部品の両方のセクションがあった
としても、どちらかはショーウィンドウになっ
ているはずです。
伊 藤 片方はビジネスだが、片方がコストセ
ンターだということなんでしょうか。
立 本 ええ、例えばテレビ事業と液晶パネル
事業の2つを持っていたとします。完成品とし
てのテレビを販売していたとしても、それはあ
くまで液晶パネルやコア部品を売るためのデモ
機であって、実際にそのテレビ自体の売上高は
重要ではありません。こういうことを経営者と
してやれるようにするためにはそれぞれの部門
を統括する事業部長の上に、本気で事業統合す

TheTRUCK2018年4月号28
る人が必要です。本気の意味はリスクを取って
事業間をまとめ、裁量しながら方向づけをする
という意味です。こういうことが出来るのは
CEOだけでしょう。
伊 藤 全体としてのビジネス戦略があった上
で、それを実行するための部隊として各事業部
が存在する形になっていないといけませんが、
日本ではそれぞれの事業部が事業計画を書いて
実行する結果、お互いが収支を奪い合うことに
なっていますね。
立 本 シリコンバレーなどのCEOが完成品
と部品の両方を見ることになった背景として
は、そうせざるを得なかったという事情もある
と思います。どちらかの事業が最初は小規模
だったからということもあるかもしれません
が、完成品と部品のどちらの事業が収益を生む
ことになるのかを事前に見通せなかったのだと
思います。国内外の様々なプレイヤーや市場の
反応を見ながらダイナミックにビジネス戦略を
どちらかに絞り込んでいく必要があり、そうい
うダイナミックな判断を実行に移すためには
CEOが自らやらなければならなかったのでは
ないかと思います。
伊 藤 そういうダイナミックな経営判断を実
行するのは日本の大企業では非常に難しいよう
に感じます。事業計画を立てて、着実にその数
字を満たすべく日々努力していくというスタ
ティック(予定調和的)な経営スタイルが一般的
のように思います。海外はトップダウンの経営
スタイルが一般的ですが、日本の大企業の場合
はボトムアップ型になっているため、トップは
あくまで下から上がってきた情報を俯瞰的に見
ているだけであり、ミクロも含めた経営判断に
なかなか介入できないという印象を持ちます。
立 本 確かに仰っていることはわかるような
気がします。しかし、ボトムアップ型であって
も各事業を見ている担当者がCEO目線でダイ
ナミックに経営判断していけばうまくいくよう
に思いますが。
伊 藤 仰る通りですが、その話は先ほど議論
した雇用の流動性と深く関係していると思いま
す。大企業においてたたき上げでやってきた人
は、俯瞰的に事業を見る訓練を受けていないた
め、どうしても戦術的あるいは前例踏襲的に経
営してしまうように見えています。
立 本 そこは私も大いに関心がある点です。
たたき上げの人にダイナミックな経営判断はで
きないものでしょうか。
伊 藤 前回インタビューさせていただいた神
奈川トヨタことKTグループの上野代表の場合
は、トヨタ自動車で働く経験などもお持ちなの
で俯瞰的に自社や業界全体のことを見て経営さ
れているのだと思いますが、多くの大企業では
自分の将来のキャリアパスがある程度予測可能
になっているために俯瞰的に事業を見る力が養
われないように思います。同じ工学部を卒業し
た友人が昔言っていましたが、大企業では配
属された1年目で既に3年後、5年後、10年
後、20年後のキャリアパスがある程度分かっ
てしまうといっていました。それだけの予見可
能性のあるキャリアパスが用意されていると、
自分たちが取り組んでいる事業を俯瞰してダイ
ナミックに経営判断していく能力など到底持ち
えないと思ってしまいます。
立 本 仰っているのはエンジニアのことです
ね。確かに予定調和的にキャリアパスを積んで
いくエンジニアも多いとは思いますが、中には
ビジネスモデルをデザインできそうなエンジニ
The Next Vehicle World
胎動する次世代ビークルの世界⑥

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TheTRUCK2018年4月号29
アもいます。なぜそういうエンジニアが生まれ
るかというと、その人はなぜかニーズの方から
技術を見ているんですね。あるニーズを満たそ
うとすると必要になる技術があればその技術を
虫食いで勉強していき、そのプロセスを繰り返
すうちにあらゆる技術についてフルスタック
(勢揃い)で知識を持っているという具合です。
ただ、そういうエンジニアが今の日本企業で生
まれやすいかというとそうではないでしょう
ね。偶然の産物として生まれている印象もあり
ます。
自らイノベーションに挑戦しなければ
 産業構造の変化を予見できない
立 本 世界中を俯瞰してみると、産業に必要
となる技術シーズはアメリカにもヨーロッパに
も日本にもほぼ揃っていると思います。ただ、
シリコンバレーを見ていると他のエリアと比較
してずば抜けている技術資源があります。ソフ
トウェアです。昨今のAI技術もこの延長です。
ソフトウェアの場合、個人の生産性は100倍、
場合によっては1000倍の生産性の違いとい
う風になります。いわば天才をマネジメントす
るということになります。日本ではこういう個
人毎に大きく生産性が異なるケースをうまく利
用することができていないように思います。
伊 藤 そういうことが原因で日本だけは過去
20年間において生産性が全く向上していない
わけですね。
立 本 これまではそうでしたが、これからも
そうかはまだ分かりません。日本からも様々な
ベンチャー企業が生まれ始めるようになりまし
たのでこれからは期待できるかもしれません。
伊 藤 先ほどの話を踏まえると、完成品とし
てのアーキテクチャーを作り出せる人がサプラ
イヤーの立場にシフトし、デジタル化・グロー
バル化を活用したオープン・クローズ戦略を実
行することで生産性を劇的に向上できるという
ことですよね。しかし、残念ながら自動車産業
においてそういう取り組みが日本企業の中で行
えるような気がしません。
立 本 日本でやることがかなり難しいのは事
実です。モビリティ・アズ・ア・サービスなどサー
ビスと組み合わせることで圧倒的にユーザーの
生産性を上げることは理論的に可能です。その
戦略を取る場合にあえて自動車を量産しないと
いう判断もあり得ます。ただ、日本の一般的な
マネジメントにおいてそういう経営判断をする
ことは極めて難しいと思います。
横 路 日本人の独特の特質ですね。世の中の
変化を遠くから観察することはできるのです
が、自らが世界をリードして変革をドライブし
ていくようなマネジメント力は弱いように思い
ます。
立 本 仮にその経営判断を無理してでも実行
しなければならないとすると、二つのことをや

TheTRUCK2018年4月号30
らなければなりません。一つは世の中のマクロ
情報をつかむこと、もう一つはテクノロジーに
対する理解を深めることです。前者のマクロ情
報というのは悩ましいところです。事業部から
のレポートラインでは上がってこない情報です
ので、例えばベンチャー企業に少し出資するな
ど実際に市場がどう動いているのかが本音で分
かる情報源を持つ必要があるのです。いちばん
重要なのはトップマネジメントが市場について
肌感覚を持つということです。
伊 藤 4月1日からKDDIの社長になられ
た高橋副社長が、昨年のあるセミナーで発言さ
れていた内容が印象に残っています。ソラコム
というIoTのベンチャーを買収した理由につ
いて問われた際に、IoT時代になるとどういう
変化が起きるのか全く想像がつかないからだと
回答されていました。高橋副社長は数人からス
タートしたDDI(第二電電)の創業メンバーだ
そうですが、その彼であっても電話料金が固定
料金化し、ADSLや光が急速に普及し、携帯
電話、スマートフォンへと急速に変化していっ
た通信業界の大変革を全て予想することはでき
なかったと仰っていて、だからこそIoT時代
の変化については若い世代が経営するソラコム
を取り込むことにしたとのことでした。そうい
う意味では高橋新社長は立本先生のおっしゃる
「マクロ情報」の分かる経営者として期待できる
と思いますが、そういう感覚を持った経営者は
少ないと思います。
立 本 多くの経営者にとって、そういう感覚
を持つことは相当難しいのではないかと思いま
す。
伊 藤 しかしマクロ情報をつかむというのは
こういうことですよね。
立 本 そうです。ベンチャー企業と付き合う
ということや、昔ながらの方法で言うと外部人
脈を沢山持つといったことです。それに加えて
テクノロジーに対するしっかりとした理解が必
要です。あまりテクノロジーについて話しませ
んでしたが、テクノロジーは非常に重要です。
結局、現在のイノベーションを牽引しているの
はテクノロジーです。ですので、テクノロジー
についてトップマネジメントが自分の言葉で理
解することが必要だとおもいます。
本気で破壊的イノベーションに
 向き合うべき
伊 藤 ここまでは日本企業の苦戦についてお
話しいただきましたが、海外企業も必ずしもう
まくいっていない事例があると伺っています。
例えば携帯電話会社のノキアはオープン・ク
ローズ戦略を巧みに駆使して中国市場で大成功
しましたが、スマートフォン化の波に乗ること
ができずに携帯電話事業を売却し、基地局など
のインフラのみを提供するBtoBの会社になっ
てしまいました。携帯電話版のインテルのよう
な存在であったクアルコムも今では買収の対象
として取り上げられる会社になりました。一方
で、オープン・クローズ戦略では一度も登場し
なかったアマゾンは“アマゾン・エフェクト”
と呼ばれているほど巨大な影響力を持っていま
す。海外企業について日本企業にとって参考に
なる事例があればお話しいただけないでしょう
か。
立 本 経営学における理論ではパソコン産業
のことを「エコシステム型の産業」と呼んでい
て、オープン・クローズ戦略のうちの「オープン」
がもたらす影響として「ネットワーク効果」を挙
げています。ネットワーク効果というのは、簡
単に言うと、製品自体でなくてその利用者数に
The Next Vehicle World
胎動する次世代ビークルの世界⑥

TheTRUCK2018年4月号31
ユーザーがうれしさを感じることです。古典的
な例は電話です。電話のユーザーは、電話機の
機能よりも、どれぐらいの人が同じ電話会社に
加入しているかを気にします。繋がれる人が多
いほうが、価値が高いからです。こういう行動
をユーザーが取ると、ある時点から製品普及が
極端に進むというような事が起こります。ネッ
トワーク効果が大きい業界では、業界の様子が
急変しやすいです。
 ノキアの事例でいうと、スマートフォンが登
場したと思っていると、ある時点から急速に普
及し、気が付いたらノキアが得意としていたガ
ラケーの市場がほとんどなくなっていたという
ような状況を指します。このネットワーク効
果があるためにエコシステム型の産業の勝者で
あっても一気に競争力を失うことがあるのです。
伊 藤 ノキアの場合はガラケーの時代では勝
てたのが、スマートフォンになると一気に勝て
なくなったということですね。
立 本 ノキアはモバイルインターネットの世
界がこれほど早く到来するとは思っていなかっ
たのです。彼らは通信キャリアが顧客ベースを
保有していることを前提にビジネスモデルを構
築していました。その一方、アップルやグーグ
ルが目指したモバイルインターネットの世界で
は、極端に言うと通信キャリアがいなくても
WIFI(無線LAN)があれば十分であると考え、
通信キャリアに依存せずに直接顧客とつながる
ことを目指しました。
 多くのユーザーはノキアではなく、アップル
やグーグルを選んだために一気に競争力を失い
ました。実際はノキアも様々な策を講じようと
してマイクロソフトと組んだりしたのですが、
既に携帯電話の分野ではマイクロソフトの競争
力も下火になっていたので巻き返せなかったの
です。
伊 藤 要するに既存のビジネス基盤を引き
ずっていると、そういうことは全く気にしない
破壊的企業(Disrupter)が登場し、ユーザーが破
壊的企業のビジネスを選択してしまうと、一気
にゲームチェンジしてしまうということですね。
立 本 その通りです。慣れているゲームチェ
ンジャーはそういう機会をうまく活用して狙っ
てきます。ノキアの事例で言うと、アップルも
グーグルも最終的にエンドユーザーが喜ぶだろ
うという勝算があるから狙ったのだと思いま
す。これまで一回も携帯電話を作ったことのな
いアップルがいきなりスマートフォンを市場に
出してくるのですから、勝算があったのだと思
います。
伊 藤 その話を今の自動車産業に当てはめて
みると、ノキアが携帯電話の基地局と端末の部
品を抑える代わりに中国メーカーに携帯電話の
端末を作らせたというオープン・クローズ戦略
は、いわばトヨタ自動車がインド市場において
ハイブリッドのコンポーネントだけを提供し、
完成車は地場メーカーに作らせるというような
イメージになります。それだけでも今の自動車

TheTRUCK2018年4月号32
メーカーにとっては到底できない経営判断で
す。加えて、アップルやグーグルのスマートフォ
ンの事例は、いわばイオン、ヨドバシカメラ、
ヤマダ電機のような量販店が直接販売できる電
気自動車を作るようなものです。そこまでの大
胆な挑戦は日本企業がとてもできるように思え
ません。
立 本 もちろんそうですが、日本企業だけで
はなく欧米の企業であっても非常に難しいと思
います。メインビジネスとして完成車を消費者
に直接売っているときに、自家用車を持たなく
てもクルマが使えるカーシェアリングやライド
シェアなどのモビリティ・アズ・ア・サービス
にも挑戦することは極めて難しいと思います。
ただ、最終的にモビリティ・アズ・ア・サービ
スにユーザーが乗り換えてしまうリスクがある
のであればトップが覚悟を決めてやるしかない
と思います。
 それをうまくやる方法として、別会社を作る
などして組織は分けたほうが良いと思います。
更にマーケットも分けられるとベストです。乗
用車の世界でやってしまうと困るので、まずは
トラックの世界で挑戦してみるといった具合で
す。いずれにせよ、トップがどれほど本気で挑
戦する気があるのかが重要になります。
伊 藤 本気で挑戦する覚悟がないといけない
ということですね。
立 本 ノキアのトップは覚悟を持ってやろう
としましたが、組織が対応できずに失敗しまし
た。最近の事例として、マイクロソフトは一生
懸命クラウドサービスに移行しようとしていま
す。サブスクリプション型のサービスを提供し
ていますが、旧来のようなパッケージソフトの
ビジネスは無くなってしまうので収益には相当
響きます。しかし、それ以外に生き残る方法が
なければ本気で挑戦するしかないと思います。
自動車産業のワーストシナリオとして
 何があるか
伊 藤 電機産業や通信産業を分析してこられ
た経験から、自動車産業におけるワーストシナ
リオとしてどういうことが起りうるとお考えで
しょうか。
立 本 いくつかのシナリオがありえます。
伊藤さんが冒頭で挙げられたCASEの話など
は、どれひとつとっても大きな要因です。例え
ば日本の自動車メーカーの作る電気自動車とは
全く互換性のない充電ステーションが一気に世
界中に張り巡らされると日本メーカーの商品は
世界で売れなくなってしまいます。また、先ほ
ど述べたようにモビリティ・アズ・ア・サービ
スが普及して自家用車を持たなくても良くなっ
ていくと、ディーラー網を持っている意味がな
くなってきて、顧客とのコンタクトポイントを
失い、一気に安定を失う可能性があります。自
動運転車が実現して、クルマを運転することに
も買うことにも消費者が興味を失う、というこ
ともあります。逆に、規制などの影響で日本で
だけ自動運転車が実現できずに、世界市場から
取り残されてしまう、ということもありえます。
The Next Vehicle World
胎動する次世代ビークルの世界⑥

TheTRUCK2018年4月号33
伊 藤 グーグルの自動運転子会社である
Waymoは自動運転について相当な量のデータ
をため込んでいることから、今更彼らのデータ
ベースに太刀打ちできる自動車メーカーはいな
いという話を聞きます。その彼らがデータベー
スを無償で提供するようになると、自動運転車
を販売したい自動車メーカーは「伸るか反るか」
を迫られ、一気にゲームのルールが変わってい
く可能性があります。
立 本 Waymoは今の時点で色々なことを考
えていると思います。自社で自動車を作ること
は断念しているように見えますが、これまでの
投資を回収する方法については確実に考えてい
ると思います。プラットフォーマーのビジネス
というのは、スケールをいかに大きくするかと
いうのがビジネスの根幹です。そのためにどう
すればいいかを一生懸命考えて実現するのが腕
の見せ所というわけです。
伊 藤 昨年11月にシリコンバレーの
NVIDIAに行きましたが、彼らのような新興デ
バイスメーカーは全方位戦略で取り組んでいま
す。系列は全く関係ないですし、自動車メー
カーに特化する必要もありません。自動運転
に関して一番勢いのある会社はどこかと聞い
たら中国のBaiduと言っていました。中国政
府はBaiduを含むBAT(Baidu、Alibaba、
Tencent)にリソースを集中させていますので
彼らが自動運転や電気自動車についての革新的
なソリューションを生み出すことができれば
あっという間にゲームチェンジしてしまう恐れ
があります。
立 本 中国の場合、内燃機関では先進国を越
えられないので、電気自動車で勝負することで
世界での勝利を狙うという可能性があると思い
ます。世界の自動車市場を数量でリードしてい
るのは中国なので、中国でスタンダードになっ
たものが世界のスタンダードになる可能性は高
いです。先程のワーストケースで電気自動車と
充電ステーションの話をしましたが、中国のス
タンダードがASEANなどに広がっていくと
一気に業界状況を塗り替えられないかと心配に
なります。日本の自動車メーカーの人たちは手
を打っているのだと期待したいですが。
経営者がギャンブルできる
 マネジメント体制が必要
伊 藤 トップが覚悟を決めて別会社を作るべ
きという立本先生のご意見には賛同しますが、
そのことも実際には簡単ではないと思います。
別会社を作ろうとすると経営会議に諮らなけれ
ばならないといわれそうな予感がします。
立 本 まだ存在しない市場にむけた取り組
みを経営会議において合議制で決めようとして
も、今その決断をする必要がない、本当に作る
必要があるのかという議論になって結論が出な
いように思います。そういうことはコーポーレー
トベンチャーキャピタル(CVC)を社長直結で運
営するような形でやるしかないと思います。
伊 藤 今の経団連加盟企業のうち、社長直轄
でCVCを運営している会社はほとんどないよ
うに思います。
立 本 まだ存在しない市場に向けて新規事業
に挑戦するわけですから、要するにギャンブル
するということです。どの程度思い切ったこと
をやるかについてはスタッフが検証する必要が
あります。こういう分野では本社スタッフに専
門集団を置くことがパフォーマンスに大きく影
響するという研究も有ります。しかし、ギャン
ブルをするかどうかは社長が判断しなければな

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TheTRUCK2018年4月号34
らないと思います。
伊 藤 四半期決算で数字を求められたり、社
外取締役から好き勝手に言われたりする状況で
は、そもそも社長がギャンブルできるマネジメ
ントはなかなかできないですね。加えて、社長
がギャンブルすると決めたとしても人生をかけ
てギャンブルに挑戦しようとする社員がなかな
か出てきにくいように感じています。
立 本 それはすごく問題ですね。少しくらい
のギャンブルをしないと生の情報が入ってこな
いです。実際に挑戦することで誰が本気で誰が
本気でないとか、どの商品やサービスがいけそ
うか、いけそうでないかが分かってくるもので
す。市場についての肌感覚もその1つです。
 実は日本企業の社長の近くにいる本社スタッ
フの情報収集能力は驚くほど弱いと感じていま
す。社内の情報を整理することには長けている
のでしょうが、それよりも業界全体がどう変わっ
ていくかという情報を収集して社長に入れる必
要があるのですが、そういう社外の情報を収集
する能力には長けていないように思います。
伊 藤 そういうミッションを負っていないの
で仕方がないと思います。一方で、社内をくま
なく探すと業界全体や業界の外で何が起きてい
るのかを把握している社員はいるはずです。い
なければ社外の人を取り込めば良いわけです。
そういう人たちから情報収集するとともに、
ギャンブルに挑戦しようと思う熱意のある人た
ちを一定の塊にしていかなければ既存事業が倒
れた時に全滅しかねないと思います。
立 本 そうですね。電機産業で起きたことは
既に分析されていますので、自動車産業ではそ
の前例を糧にしていただき、100年に一度の
大変革が起きたとしても競争力を維持し続けて
ほしいものですね。
伊 藤 本当にそう思います。だんだんタイム
リミットが近づいていて巻き返せる余裕がなく
なっていると私は勝手に焦っています。立本先
生の分析を多くの自動車関係者に改めて理解し
ていただくことで既存事業の守りだけでなく、
ギャンブルというか新しいビジネスへの攻めに
も取り組んで頂きたいと思います。本日はどう
もありがとうございました。
The Next Vehicle World
胎動する次世代ビークルの世界⑥
立本博文
(たつもと ひろふみ)
 筑波大学ビジネスサイエンス系教授
学位
 修士(経済学・東京大学)
 博士(経済学・東京大学)
研究分野
 経営戦略論、技術経営論、国際経営論
 企業の国際競争力構築に興味を持つ。近年はオー
 プン標準戦略やプラットフォーム戦略を研究。
略歴
1998年 東京大学経済学部卒
2002年 東京大学大学院経済学研究科
     (博士課程退学)
2002年 東京大学先端科学技術研究センター助手
2004年 東京大学経済学部ものづくり
     経営研究センター助教
2009年 兵庫県立大学経営学部准教授
2010年 MIT客員研究員
     (Sloanschoolofmanagement)
2012年 筑波大学ビジネスサイエンス系准教授
2016年より現職

平成26年4月よりバイオオイル標準充填開始。
環境マネジメント対策に適しております。
万が一、自然界に排出されても、二酸化炭素と水になります。
パレットローラー
製造・発売元
車輌機器株式会社
〒252ー0003神奈川県座間市ひばりが丘5丁目1ー6
TEL046(257)8800(代) FAX046(257)8811
(営業品目)ウイング用油圧装置/各種スイッチBOX/リモコンスイッチ/油圧シリンダー/車輌用油圧機器/アウトリガー油圧装置
上昇時パレットストッパーが自動的に浮き上
がり、ローラーストッパー掛け忘れによる落下
事故を防止します。
ストッパーの解除はローラー上昇後にプッ
シュロットを押してワンタッチ操作で解除できま
す。解除後は自動積込も対応可能です。
軽量コンパクトなステンレス製BOXにセッ
ト。防雨・防錆も完璧。平成25年マーキン
グリニューアル。ユニットカバーを外さなくても
黒いゴムを外せば油量ゲージ確認が出来ます。
キャブ内警告ランプによりローラー下げ忘れ
を確認出来ます。
オーバーフローの油は戻り配管を通じてタン
クに戻ります。
気密性の高いシリンダーBOXが外部へ油
を漏らしません。黒いゴムを外せばBOX内清
掃が簡単に行えます。

ドローン活用研究
第3回ジャパンドローン2018展では盛りだくさんのセミナーと
トークショーなどが開催された。3日間の会期で入場者は合
計11,440人で前回2017年(9,603人)と比較して19%
の増加であった(ジャパン・ドローン2018運営事務局発表)
5号館が今回の会場であった
 第3回ジャパンドローン2018展[主催:一般社団法人日本UAS
産業振興協議会(JUIDA)が3月22日から24日迄の3日間、
千葉県は幕張メッセで開催された。急速に発展するドローン市場の
現状と課題、そして広がる期待を展望してみたい。
広がるドローンの世界
急速な発展、
   課題と期待
西襄二
TheTRUCK2018年3月号36

会場の一角には広くネットで囲った試験飛行場が設けられて、次々にデ
モ飛行が行われた
はじめに
 韓国平昌(ピョンチャン)で行われた2018冬期オ
リンピックの開会式の中継を見ていたら、冬の夜空に
次々に光の映像を描き出された。これを演出したの
はLEDライトを搭載してプログラムによって点滅しな
がら編隊飛行した1218機からなる一群のドローンで
あったという。Intel社がこのライトショーの提供者で
あったという。当日の天候は寒風が吹きすさんでいた
為、テレビの画面を彩ったのは実は録画であったとい
う報道もあったが、ドローンの可能性の一面を見事に
演出した印象的な映像であった。
 ところで、急速に発展しているというドローン市場
は、どれ程の規模であろうか。
 機体と構成部品、付属品などのハード生産・販売・
整備領域に始まり、ドローンを活用して行う様々なサー
ビスソリューション領域、ドローンの操縦を普及する
教育訓練領域、保険やファイナンス領域などに大別
できるが、これらを網羅した日本における“広義のド
ローン市場”の大きさは2017年で530億円程度と
される。これは前年に比べて50%以上の伸びを示し
たことになる(表1)。今後の伸びも年率50%程度を
見込むが、拡大・新規参入はドローンを活用するサー
ビスソリューション分野が多い。
 因みに、国内のドローン市場規模は2017年現在
で通信ケーブル製造業界とほぼ同等の規模いえよう。
世界のドローン市場規模は2015年で既に1千億円
超で日本は僅かに2%弱であった。2017年は予測
値だが3.5%に拡大している。
(注:“ドローン”は“小型無人飛行体”の飛行中の
ブーンという風切り音から連想する俗称だが、既に一
般に馴染んだ名称として本稿では専ら“ドローン”を
用いる。
機体開発・製造分野の
リーディングカンパニー
 ドローンの機体を提供する最大手は中国・深圳に
本拠を置くDJI社とされ、わが国にも拠点を設けて
国内で販売されるドローンの大半は同社製品である
という。事実上の寡占状態にある。2006年に創
業した当社のホームページ(以下、HP)を参照する
と、その圧倒的な業界に於けるリーダーシップが見
て取れる。
 ハード分野ではわが国は完全に出遅れた状況にあ
るが、新しい発想で新たに参入する動きも見られる(後
述)。
TheTRUCK2018年3月号37
年 次
市場規模(億円)
1$=\105換算
2015 175   
2016 352   
2017 532   
2018 885(予測)
2020 1,401(予測)
2022 2,115(予測)
出典:ImpressReserchInstituteHPを基に筆者作表
年 次
市場規模(億円)
1$=\120換算
市場規模(億円)
1$=\105換算
2015 12,410 10,859
2016 15,230(予測) 13,326(予測)
2017 17,259(予測) 15,102(予測)
2018 19,165(予測) 16,769(予測)
2019 20,985(予測) 18,362(予測)
2020 22,814(予測) 19,962(予測)
出典:矢野経済研究所2016年8月1日プレスリリースを基に筆者作表
(表1)日本のドローン市場規模(表2)世界のドローン市場規模

ドローン活用研究
海難救助を想定した展示(手前)ドローンに搭載するには相対的に大型映写機を搭載した多目的機の例
いる(表3)
 この内、農業については「作柄や害虫被害などの
点検」「農薬散布」などの作業が考えられている。前
者の作業は広義の点検・検査に通ずる作業と考えて
よいだろう。
 これまで、屋外で活用する分野については10年
超の歴史を重ねてかなり広範に用途(ソリューション)
開発が進んでいる。この分野の普及は今後も大きく拡
大するはずだが、一方で屋内や地下空間などの閉鎖
空間での活用はこれからの分野である。道路面の下
に敷設されている暗渠内の配管・配線などの点検は、
従来は作業員が内部に入って目視していたが、ここに
高解像度のカメラを搭載した小型専用ドローンを活用
しようとするもの。
 ドローンの活用について、本稿では主として民生
用を採り上げるが、世界の市場規模で概観すると
2015年では軍事用が約66%、民生用が約33%
という割合になっている(矢野経済研究所調べ)。機
体等ハード部分の市場規模は2020年に向けた予測
でほぼ同じであるが、ドローンを活用するサービス売
上げが伸びる関係で2020年には民生部門の合計で
45%に近づくと予測されている(同)。
 軍事部門はさておき、民生部門の用途を見ると、
最も有望なのが「点検・検査」で、次に「映像撮影」が
挙げられ、「測量」「農業」「輸送・配送」等が続いて
TheTRUCK2018年3月号38
屋 外屋 内
映像撮影
TV報道、映画撮影などで活用
普及と拡大
映像撮影分析
点検・検査
注1)
狭隘な設備室、距離の長い
配管路等の作業に活用
点検・検査
建造物の外観検査、足場仮設
費用の削減による費用削減等
点検・検査 注1)
測量
映像技術を応用した省力・
広域のデータ処理等
下水道・暗渠内の点検
農業
農薬散布、生育状態の観察等、
作業効率の新手法開発
高層立体自動倉庫等の
安全性点検等
監視・観察
防犯、警備など安心・
安全確保の為の新領域開発等
注1)ブルーイノベーション株式会社・熊田雅之社長とスイ
スFlyability(フライアビリティ)社・共同創業者兼CEOP
PatrickThevozの提携による新分野への進出例
輸・配送
過疎地の高齢化住民への
医薬品供給、都市部の宅配等
エンタテイメント
平昌冬季五輪に見たライト
ショーの例 注2)
注2)IT大手(Intel社)の開発による1218機に及ぶ多数のド
ローンを一括制御したフライト・ライトショー。軽量な機体故、
一定風速以上では共用は出来ない
空中作業空中架線工事の費用削減化等
出典:各方面への取材を基に筆者作表
(表3)ドローンの主要活用領域

その機体。空中の機体識別用に備えられた強力なLEDライトを見せて
いる(同)
BlueInnovation社は別にスイスのFlyabilitySA社と提携して狭小
閉鎖空間内の点検・検査に特化した小型ドローンビジネスにも進出する
(同)。球形のトラス構造の機体は外径が僅か40cm、高解像度の小
型カメラを搭載している
日本のBlueInnovation社が中国・深圳のShenzhenAEETechnoligy社と提携して開発したオリジナル機体の目的解説パネル。オペレーターの訓
練目的に開発された(展示会に先立って行われた記者発表にて)
 近年、わが国では都市部の河川の許容流量に対し
て、気候変動の影響で短時間内の激しい降雨で都市
内洪水の危険が高まっているが、これを地下に設けた
大規模空間を利用して一時的に貯留し河川への流量
負荷の調節機能を担わせるインフラ投資が進められて
いる。こうした地下空間の管理にも屋内型ドローン活
用は普及するだろう。
TheTRUCK2018年3月号39

ドローン活用研究
狭隘な閉鎖空間にも適応できる機体の用途例をパネルで示した
室内で飛行するFlyabilitySA社製〝Elios〟機
農業用の粒剤或いは液体、粉体の散布用ドローン
BlueInnovation社の熊田貴之社長(左)とFlyabilitySA社のパトリッ
ク・テフォス共同創業者兼CEO(右)
 物流領域におけるドローンの活用は、搭載バッテ
リーで駆動するプロペラによる揚力と水平飛行距
離、制御用電波の到達距離という制約条件が伴う。
こうした現在のドローンの特性からして、貨物の搭載
は重量的に制約を受けざるを得ない。今回のジャパン
ドローン展2018に出展されていた機材の中では、
搭載貨物重量で10kgを想定したものが最大であっ
た。機体を大型化すればより重たい貨物搭載は可能
だが、これに伴うリスクの増大を考えると、物流領域
のドローンの活用にはビジネスモデルの周到な検討が
必要と考えるべきだろう。
 予測では物流用途は意外に少ないが、着想次第で
発展の余地は大きいということも言えよう。
 本誌では、地点間飛行に資するドローンポートシ
ステムの開発と実証実験の模様を紹介してきた(本
誌2017年4月号「物流用ロボット新動向研究」、同
10月号「ドローンの進化」参照)。この方面を主導し
てきた。
 機体分野は搭載電池を含めた重量で、微少なもの
では僅か30g程度のホビー用もあるが、ビジネスに
活用することを想定した場合は0.5㎏程度から10㎏
程度まで多岐に亘る。機体の供給は中国がダントツ状
態で、深圳地域がその集積地である。JDI社製の機
体も多種に及ぶが、用途開発(ソリューションサービ
TheTRUCK2018年3月号40

機体上下に異なる機能の公開度カメラを搭載した撮影用ドローン
立体トラス構造のドローン・モジュール
従来型の機体に枠形保護材を組み付けたドローン。トラス構造ではない
モジュールを繋ぎ合わせつと軽量ながら頑丈で揚重の大きなドローンが組
み上がる
ス又はビジネス)の進展で要求仕様が多角化した結果
の多様化と見てよいだろう。
 共通した特徴は、中央部分に電池搭載区画と付属
搭載機器(カメラ等)を搭載する本体構造があり、そ
こから片持ち式に放射状に外周部に伸展されるプロペ
ラ支持材(用途に応じて4〜8本程度)で構成されて
いる構造である。持ち運びの便を考慮して、プロペ
ラ支持材が回転式に折りたためる機種も多数ある。
プロペラへの接触を防止する防護メッシュも、基本的
に中央部の本体に支持される。これを仮に「片持ちプ
ロペラ構造ドローン」(略称:「従来型ドローン」と呼
ぶことにしよう。
 これに対し、立体トラス構造の軽量スペースフレー
ムにプロペラを搭載して一つのモジュールを構成し、
これを必要に応じて繋ぎ合わせて大きさと揚力を増し
てゆくことが出来る新方式のドローンがわが国で開発
されている。これを仮に「立体トラス構造ドローン」(略
称:「スペース構造ドローン」と呼ぼう。
 今回の展示会では説明用の小型機が持ち込まれて
いたが、揚重25㎏形も試験に成功しているという。
揚重100㎏形も開発中という。スペースフレームで
プロペラが保護される構造なので特別な防護メッシュ
などは不要。一つのモジュールは計画揚重に応じて
21インチ〜40インチプロペラの選定が可能で、普
通の貨物車にも搭載可能。現場で組み立てれば上記
したような大きな揚重を発揮する機体に組み上げるこ
とも出来るという。
 中国に主導権を握られているドローンのハード面
で、わが国発の新たな挑戦がどこまで受け入れられる
か、どこまで伸びるか多いに関心が持たれる。
TheTRUCK2018年3月号41

ドローン活用研究
国交省航空局安全部が啓蒙用に発出したチラシ
JUIDAが行っているドローンの運用精度を高め確実なものとするドローン
ポートシステムの研究開発
ドローンポートの識別用パターン。対角線上に障害物立ち入りを検出す
る一対のセンサーも組み込まれている
 新産業として急速に発展するドローンビジネスだ
が、その運用に関する規格や規則はどうなっている
か。駆け足になるが概観しておこう。
 法制面では国土交通省の航空局の所管となる。同
局の安全部無人航空機窓口から発行された「無人航
空機(ドローン・ラジコン機等)の安全な飛行に向けて
(平成27(2015)年12月10日付)」啓蒙チラシ
がある。また、同局安全部航空機安全課長名で発出
された「文書:件名:量産無人航空機の実機確認要領
(平成29年3月31日制定(国空機第9836号)」
がある。法律ではないが事実上の運用認可の定めと
されている。こよれば、量産されており同一性が認め
られる機材で最大離陸重量が25㎏以上の無人機(い
わゆるドローン)は実機確認が必要と定められてい
る。また、飛行を行う場合には上記文書に従って事
前に申請して認可を受けることになっている。運用し
たい個人及び事業者が自ら行うか、手続きを代行す
る事業者もあるからこれを利用することも可能である。
 一方、機材に係わる基準・規格については、統一
されたものは未だ検討段階となっている。健全なドロー
ン産業の発展には業界として一定の秩序は必要であ
り、次項に述べる一定以上のレベルでオペレーターの
技量水準を確保するなどのシステム整備を目指して発
足しているのが一般社団法人日本UAS産業振興協
議会(JUIDA)である。
 [注;JUIDA=JapanUASIndustrialDevelopmentAssoci
ation。ここで、UASはUnmannedAircraftSystemの略称で、
UAV:UnmannedAirialVehicleと同意]
TheTRUCK2018年3月号
42

長野県伊那市の白鳥孝市長は同市で取り組む最新のドローン関連市政
の概要を記者会見で披露した
民間団体でありJUIDAが定めたドローン操縦者に行う認定教育に合格
したことを証する技能証明書
JUIDAと共同でドローンポートの標準化に向けた実証実験に加え、同
市内を流れる一級河川・天竜川とその支流で長谷地区を流れる河川の
上空を利用してドローン用空路を設定する計画を進めている
 ドローンを飛ばす、操縦するオペレーター(パイロッ
トと呼ぶ場合もある)はどの様な資格要件が求められ
ているだろうか。結論を言えば、自動車や飛行機の
操縦の為の免許(国家資格)の様な制度は無い。但
し、扱いを間違えば第三者に危険が及ぶので、業界
としての自主規制の意味で先に紹介したJUIDAに
よる「無人航空機操縦技能・安全運行管理者証明」
を発行するJUIDA認定スクールを運営している。
2018年2月28日現在、全国に139校が開設さ
れている。
 地方自治体の中に、住民への広義のサービス向上
ドローンビジネスの振興を目指した施策で活動して
いるところもある。先に紹介した本誌の記事中には
山梨県伊那市の事例があった。今回の展示会でも、
国立公園南アルプスを抱える同市立地的特性を活か
し、住民福祉に資するドローンによる輸送を確立す
TheTRUCK2018年3月号43

ドローン活用研究
大分県は独自小間を設けて県としてのドローン関連事業について出典した
トークショウに出演した広瀬委勝貞大分県知事(中央)は県としての取組み目
玉の一つである宅配についても発表した。積載重量が10kgと国内の実証
実験では最大重量で機体の展示も行った
る為に欠かせない飛行ルートの設定のしかた一連とし
て、市内を流れる天竜川とその支流の上空を利用す
る河川ルートの設定と運用を実用化しようとしている。
 大分県では、10kg程度の比較的重量の張る貨物
の輸送を視野にドローンによる実証試験を行うと同時
にドローンビジネス全般の振興を県を挙げて取り組む
方針を打ち出したところもある。
 福島県では浪江町など3・11東日本大震災の被災
地の復興と並行して新ビジネスであるドローンの各種
試験に供する施設と飛行コースの提供を総合的に行う
計画が今年から本格的に動き出す。
TheTRUCK2018年3月号44

大分県がプロジェトに組み入れている水面に浮かべて水中撮影・モニ
ターなどの用途を想定した浮上型機体(ドローンと呼んでいいかどうか?)
21ー1)
写真が有りません
福島県はドローンの研究開発、実証実験等に供する施設やコースを整
備して提供する事業を2018年度から逐次完成させ運用を開始する
ドローンの心臓部である電池は安全を最重要視している
JUIDAの歴史と事業領域を示すパネル展示
おわりに
 ドローン産業は急激に発展している。規模は他の産
業と比較して特別大きいとは言えないが成長率は目を
見張るものがある。世界で初めてとなる機体構造の
開発など、出遅れた機体ビジネスにもわが国の底力
が試される動きが出てきた。
応用分野は今後一層開発されるだろう。今後の一層
の発展が期待される。
(本稿おわり)
TheTRUCK2018年3月号45

TheTRUCK2018年4月号50
を開発したもの。
 この新型磁石は、自動車やロボットなど様々な分野で
のモーター使用の拡大と貴重なレアア−ス資源の需給バ
ランスを保つことに役立つこと期待されている。今後
は、自動車やロボットなど様々な用途のモーターへの早
期採用を目指し、さらなる高性能化や商品への適用評価
とともに量産技術の開発も進めていくとしている。
 モーター・インバーター・バッテリーなどの要素技術
の開発は、将来を見越した地道な研究・開発ではあるが、
トヨタは電動車に必要不可欠な重要な技術と位置づけ、
それぞれの領域で着々と研究・開発を進め、今後の電動
車普及に向けた基盤整備に取り組むことにしている。
【1】「省ネオジム耐熱磁石」開発の背景
・自動車用モーターなどに採用される磁石は、高温でも磁
力を高く保つことが重要である。このため、磁石で使用
する元素の内、レアアースが約30%使われている。強力
なネオジム磁石を自動車用途など高温で使用するには、
テルビウムやディスプロシウムを添加することで、高温
でも保磁力(磁力を保つ力)が高くなるようにしている。
・しかし、テルビウムやディスプロシウムは希少で高価
であり、地政学的なリスクの高い金属であるため、これ
らを使わない磁石の開発は、これまでにも多く取り組ま
れており成果が上がっている。
・一方、レアアースの中で比較的産出量が多いネオジム
は、今後のハイブリッド車、電気自動車などの電動車の
普及を想定すると不足することが懸念されているにもか
 トヨタ自動車㈱は、今後急速な拡大が予想される電動
車に搭載される高出力モーターなど様々なモーターに使
用されるネオジム磁石において、レアアース(希土類元
素)であるネオジムの使用量を削減した上で、高温環境
でも使用可能な性能を確保した、世界初の新型磁石「省
ネオジム耐熱磁石」を開発した。なおレアアースは、ラ
ンタン、セリウム、ネオジム、テルビウム、ディスプロ
シウムなどを含む性質の似た17種類の元素の総称で、
これらの元素を用いることで様々な材料機能を発現させ
ることが可能となる。
 新開発の磁石は、高耐熱ネオジム磁石に必要なレア
アースの中でも希少なレアメタル(希少金属)に分類され
るテルビウム(Tb)やディスプロシウム(Dy)を使わない
だけでなく、ネオジムの一部を、レアアースの中でも安
価で豊富なランタン(La)とセリウム(Ce)に置き換える
ことでネオジム使用量も削減させている。ちなみに、経
済産業省の定義によるとレアメタルは、地球上の埋蔵量
が希少であるか技術的・経済的な理由で抽出困難な金属
のうち、安定供給の確保が政策的に重要な金属を指して
いる。
 しかし、ネオジムは、強力な磁力と耐熱性を保持する
上で、大きな役割を占めており、単にネオジム使用量を
削減しランタンとセリウムに置き換えただけでは、モー
ターの性能低下につながる。そこで、ランタンとセリウ
ムに置き換えても、磁力・耐熱性の悪化を抑制できる新
技術の採用により、ネオジムを最大50%削減しても、
従来のネオジム磁石と同等レベルの耐熱性能を持つ磁石
トヨタ自動車がネオジム使用量を
大幅に削減した
モーター用の新型磁石
「省ネオジム耐熱磁石」を開発
ネオジムを最大50%削減可能で
電動車普及に向けた基盤整備に貢献
次世代自動車◇ニュース

〈ネオジム磁石におけるレアアース使用状況〉
TheTRUCK2018年4月号51
かわらず、その取り組みが少ないのが現状である。
・トヨタは、この課題を克服するためにテルビウムやディ
スプロシウムを使わないだけでなく、ネオジムの代わり
に豊富で安価なレアアースのランタンとセリウムを使用
することでネオジムの使用量を削減しながらも、高い耐
熱性を維持し、磁力の低下を最小限にすることが可能な
技術開発に取り組んできた。
くすることで保磁力を高温でも高く保つことができるよ
うにした。
◇開発ポイント2:粒の表面を高特性にした二層構造化
・従来のネオジム磁石は、ネオジムが磁石の粒の中にほ
ぼ均等に存在しており、多くの場合、磁力維持に必要な
量以上のネオジムが使用されている。そこで、保磁力を
高めるために必要な部分である磁石の粒の表面のネオジ
ム濃度を高くするとともに内部を薄くした二層構造化に
より効率良くネオジムを活用することで、使用量の削減
を可能とした。
【2】「省ネオジム耐熱磁石」の開発ポイント(新技術)
・今回開発された「省ネオジム耐熱磁石」は、以下の3つ
の新技術を組み合わせることで保磁力を高温でも維持で
きる性能を実現している。
 1.磁石を構成する粒の微細化
 2.粒の表面を高特性にした二層構造化
 3.ランタンとセリウムの特定の配合比
◇開発ポイント1:磁石を構成する粒の微細化
・磁石を構成する粒を、従来のネオジム磁石の1/10
以下にまで微細にし、粒と粒の間の仕切りの面積を大き

〈電子顕微鏡写真と組成分析像〉〈耐熱性能〉
TheTRUCK2018年4月号52
◇開発ポイント3:ランタンとセリウムの特定の配合比
・ネオジムにランタン・セリウムなどの軽希土類を単純
に混ぜると、磁石の特性(耐熱性・磁力)が大きく低下
するため、軽希土類の活用は難しいとされていた。こ
れを解決するためにトヨタは、産出量が豊富で安価な
※今回の研究・開発は、新エネルギー・産業技術総合
開発機構(NEDO)が推進する「次世代自動車向け高効率
モーター用磁性材料技術開発」の一環として実施。
【3】今後の取り組み
・今回開発した新型「省ネオジム耐熱磁石」の技術は、高
い耐熱性が求められるネオジム磁石に必要なレアアース
であるテルビウムやディスプロシウムを使わないだけで
なく、ネオジム使用量まで削減することができる。
・この新型磁石は、今後、電動車の駆動用・発電用モーター
ランタンとセリウムを様々な配合比で評価した結果、
特定の比率で混ぜると特性悪化を抑制できることを見
出した。
◇3つの新技術を同時に織り込み開発した世界初の
 「省ネオジム耐熱磁石」
や電動パワーステアリング、ロボットや様々な家電製品
に用いられる比較的高い出力が必要なモーターなど幅広
い用途への応用が期待される。さらに、レアアースの需
給バランス・価格向上などのリスク低減にも寄与する。
・今後は、実用化に向けて、搭載する自動車などでの適
用評価を進めるとともに、低コストで安定した生産をす
るための技術の研究・開発を進めていくことになる。
・自動車の電動パワーステアリングなどのモーターでは
2020年代前半での実用化を、さらに要求性能が高い電
動車の駆動用モーターでは、今後10年内での実用化を
目指して開発に取り組んでいくとしている。
次世代自動車◇ニュース

仕様
項目
チップセッ
センサーデバイス
画角
ディスプレイ
供給電圧
動作温度範囲
記憶ディバイス
記録フレーム
カメラモード
記録内容
記録形式
マイク
時刻設定
加速度センサー
質量
内容
AmbarellaH.264画像圧縮チップ
フルHD5MCMOSセンサー
約105度
LCD3インチ4:3モニター
DC10-30V
−10℃-+70℃
SanDiskSDカードClass10以上
読み書き速度15MB/s以上推奨
(最小容量:4G、最大容量:32G)
1920×1080(フルHD1080P/30F)
1280×720(HD720P/30F)
システム起動時に自動録画
解像度:3M、5M、8M
手動写真撮影、加速度センサー、セルフタイマー
日付、時刻、画像、加速度、GPSデータ(速度含む)
専用プレイヤー用独自フォーマット(記録モード)
内蔵デュアル高感度マイク
GPS信号による自動設定
GPSが無効の場合、内蔵時計を使用
内蔵
本体:192g、シガー電源アダプター:112g
これは凄い!
製造販売元:株式会社日本ヴューテック http://www.nvt.co.jp/
営業本部:〒211ー0066川崎市中原区今井西町93ー3 TEL.044ー722ー2211(代) FAX.044ー722ー8488
本社:〒211ー0063川崎市中原区小杉町3ー239ー2 【サポート:TEL.044ー722ー2211】
常時録画
エンジン連動録画
イベント録画
センサー検知時録画
GPS搭載
Googleマップ連動
日付、時刻、速度を記録
音声録画
車内の音声を記録
VFーDVRー001
FULLHD5メガピクセル
ドライブレコーダー
FULLHD5メガピクセル
VIEWTECのドライブレコーダーVIEWTECのドライブレコーダー
FULLHD5メガピクセル
こんな使いかたも
自分の運転をチェック
旅行の想い出に
レース走行を記録

商用車ショーの形態研究
TheTRUCK2018年4月号56
はじめに
 今回採り上げる三つの自動車展は、開催目的と対
象とする来場者の層別ではっきり二分できる。
 「東京モーターショーTMS」は伝統的に乗用車と二
輪車及び商用車と部品を並列扱いして同時に展示す
るが、分類上は“パブリックショー(B2Cと表記する
こともある)”である。
 アメリカでは従来、乗用車ショーとトラックショーは
はっきり分離開催されてきた。トラックショーはオー
ナーオペレーターの年中行事的色彩の濃い展示会
が開催されてきたが、これに対抗してビジネスショー
(B2Bと表記することもある)として開催されたのが
以下に採り上げるNACVだった。
 中国は世界最大の自動車市場であるが、著名な自
動車展は西暦偶数
年の「北京自動車
展」、同奇数年の
「上海自動車展」
が乗用車と商用車を並列展示してきた。分類上は“パ
ブリックショー(B2C)”である。これに対し、湖北省
武漢市の国際展示場を会場に「中国国際商用車展示
会CCVS」を開催した。本年で通算5回目とされる
が、今回の企画運営を影で全面支援したのはドイツに
本拠を置くドイツメッセ(窓口はドイツメッセ〈上海〉
限公司)だった。分類上は“ビジネスショー(B2B)”
の性格に徹したのである。
 ドイツで開催する自動車展示会はIAA(Internatio
naleAutomobil-Ausstellung)の名称で世界に知ら
しめているが、主催者はドイツ自動車産業協会VDA
で、この運営を黒子として担当しているのがドイツメ
セという組織だ。今回紹介する海外二つの商用車展
の名称は開催地に因んだ名称としつつ、このドイツ
メッセが背後にある。IAAに代表されるように企画意
図は“ビジネスショー(B2B)”の考え方に基づいてお
り、パブリックショーの色彩が濃い東京モーターショー
(B2C)とは明確に一線を画していた
 主催者はメーカー団体、企画運営はその道のプロ
の力を活用する、そんな構図は今回採り上げる三つ
のショーに共通だが、企画意図(コンセプト)が異なる
ことについては留意すべきだ。
◇  ◇  ◇  ◇  ◇
北米商用車展NACV@アトランタ
テーマ〈WhereFleetsMeet
(大口ユーザーここに集う)〉
北米商用車展NACVはアメリカで開催された初の
昨2017年、アメリカと中国で開催された二つの商用車展示会(北米商用
車展NACVと中国商用車展示会CCVS)及び日本の東京モーターショー
TMSは、将来型商用車の姿を展望する良い機会であった。三つの展示
会の特色と主だった展示を紹介しよう。
商用車ショーに見る世界の動き
ドイツ
IAA
方式の
グローバル化
西襄二

TheTRUCK2018年4月号57
NACVの会場アトランタ市「ジョージア・ワールド・コングレス・センター」外観。周囲に大
トラックの駐車スペースは無い[HP]
単独車名でのシェアがアメリカでナンバーワンのフレートライナーFreightliner車。ダイムラーグループに属する[S]
(出所:[S]=スヴェン-エリク リドストランド、
[HP]=主催者ホームページ、無印=筆者)
IAA方式商用車ショーだったが、自動車メーカーにト
レーラ等の架装メーカー、加えて部品メーカーも参加
した。開催地は、ジョージア州アトランタ市。
 アメリカのトラック市場をユーザー層で見れば、伝
統的なオーナーオペレーター(個人事業主:主とし
て長距離輸送に従事)と会社組織の(規模は大小ある
が)フリートユーザーに二分出来るだろう。前者に好
まれているのが地場企業のパッカーPACCAR社に
よるPeterbilt車とKenworth車の2車とすれば、
後者向けには伝統ブランドながら欧州のDaimler
傘下となっているFreightliner車と
Westernstar車の2車グループに加え、
欧州VOLVOTruck社のVOLVOと傘
下にあるMackとVOLVOグループの三
つ巴の戦いにある。
 従来アメリカで開催されてきたトラック
ショーは、主としてオーナーオペレーター
向けのお祭り的性格の濃いものだった。開
催地ジョージア州アトランタのジョージア・
ワールド・コングレス・センターを会場に選んだ今回
のNACVは大型トレーラの駐車設備が無くオーナー
オペレーターが立ち寄ることが物理的に制約されてい
たことからも、開催意図はフリートユーザーを意識し
たものだったことが指摘出来る。
 PACCAR社はメーカーとしては参加せず、開催地
国名
都市名
(所属地域・州・省)
人口(人)
国内順位
日本
東京
(特別区部)
9,467,490 1
アメリカ
トラ
(ジージア
420,000 40
中国
武漢/ーハ
(湖北省)
4,488,892 5
出所:Wikipedia日本語版(東京は推計値)
(表1)自動車展示会開催都市の規模

商用車ショーの形態研究
TheTRUCK2018年4月号58
ボルボVolvoはアメリカ専用車を現地製造する。この外観スタイルはどちらかと言えばオーナーオペレーター
向けだ[S]
地場メーカーPACCAR社は会場地元の販社の名前で出展した。外にケンワースKenworth車もあるがそ
ちらは別のブースだった[S]
の販社がPeterbilt車とKenworth車を出展したこ
とで体面は保ったが、それだけヨーロッパ勢の動きを
警戒していることの現れでもあろう。PACCAR社は
オランダのDAF社を傘下に擁してヨーロッパ攻勢へ
の足がかりもあるが、強豪揃いの相手方の方が一枚
も二枚も上手である。
外観は変わらず
最新装備を搭載
 エンジンが前方に突き出たボンネット形の外観はア
メリカ車の特徴で、これは変わらずクラス6〜8車に
共通。クラス5以下の中小型トラックキャブオーバー
形が一部で活躍している。
 エンジンはディーゼルが主流で、排出ガス基準は
細部に違いが残っているがほぼ欧州及び日本の最新
基準と同じレベルにある。一部に天然ガス(NG)を使
うエンジンもあるのは他の地域と共通といってよい。
 一方、ITを活用する“コネクテッド”システムにつ
いては最新のものが搭載されていることは、さすがに
本場のアメリカの現状を示した。
 今後、NACVは西暦奇数年に隔年開催される。ド
イツ・ハノーファーで開催されるIAA商用車展と交互
に開催されることになる。
◇  ◇  ◇  ◇  ◇

TheTRUCK2018年4月号59
マックMack車はボルボグループに属する。販売チャネルは独立しておりボ
ルボ車と競合もする。全面改良の新型車を出展した[S]
日野のシャシに架装メーカー・グレイトデーン社が架装した温度管理車。
カーゴ系として多数の販売が見込まれるが、自社スタンドでの展示と重
複せず効果的な展示だ[S]
エンジンメーカーのカミンズCummins社が出展した全電動大型セミトラ
クタ“AEOS”。世間ではテスラTESLA社が大型EVトラクタを出すら
いと噂していたがこれを出し抜いた。都市内配送、コンテナヤード内の
運用などを想定[S]
日野自動車は北米専用車とデュトロハイブリド車を出展した。一番奥に一
部が見えるのはタンク車[HP]
トレーラメーカー・ユーティリティUtility社はフラットベッドセミトレにスティール
コイルを搭載した姿で出展。架装メーカーの参加も多数あった[S]
ブレーキなどのティアワン・サプライヤーのワブコWABCO社はコネクティ
ヴィティの進展をこのデモ車で展示した。キャブ内に大型モニターを設置
[S]

商用車ショーの形態研究



TheTRUCK2018年4月号60
TMS一般公開3日目(日曜日)午後の入り口風景。場内の混雑状況を
勘案して一定の人数を区切ってゲートコントロールを行っていた
小学生の見学団体も見られた。主催者が企画したジャーナリストの説明
付きアテンドを受ける参加募集も行われた
東京モーターショーTMS
テーマ〈BEYONDTHEMOTOR
世界を、ここから動かそう〉
 主催は日本自動車工業会JAMAで通算45回目と
いう歴史と実績とおり、乗用車と商用車、加えて二
輪車、架装メーカー、部品メーカーを網羅した展示だっ
た。IAAの影はない。
 商用車の展示では、国内で育った4社に加えボル
ボ、スカニアのヨーロッパ勢2社が意欲的に参加し
た。この2社は日本国内の販売では数は少ないが大
きな増加率で実績を積み増している。
 展示車は内燃エンジンの燃料の多様化、ハイブリッ
ド車の高度化、電動化への備えと将来への意欲、ユー
ザーの車両管理の高度支援による稼働率(アップタイ
ム)向上で収益性の改善など、商用車の絶えざる進化
を具体的に示した。
 日野自動車はユーザーとのコミュニ
ケーションを深め強い絆を一層育てるコ
ンセプトで展示内容を統一した。一方
で、トークショーやダカールラリー出走
車の巨大タイヤ交換実演などを行って来
場者の関心を集めた。
いすゞ自動車は国内大型車で唯一の天
然ガス車をライン生産し販売を続けてい
るところを実車とパネル展示でアッピー
ルした。今回のTMS商用車部門では小型配送車分
野で電動車が発展することを見込んでコンセプト車を
出展した。将来の高度な情報処理技術を駆使して、
一定地域内の配送に従事する一群の配送車を無駄な
く稼働させる仕組みの提案であった。こうした将来
向けの開発の一方では、明日にも実戦に投入出来る
EV電動配送車の展示もあった。
 三菱ふそうトラックバスは、電動化に向けた新たな
ブランド〈eFUSO〉の立ち上げをこのTMSで明らか
にした。実車大の大型EVコンセプト車も出展し、
ダイムラーグループ内の商用車ブランドでの電動化
リーダーの地位を誇示した。地域に根ざしたブランド
国名 展示会名称 会場名称 会場面積(㎡)
TMS2017 東京 97,420
アメ NACV2017
ジョー・ワ
コングレス・センター
34,400
中国 CCVS2017 武漢国際博覧中心 60,000
備考1)東京ビッグサイトは拡張された東7号館を含む全館面積を表示
備考2)アメリカ及び中国の会場は主催者公式HP記載面積を表示
(表2)商用車展会場規模比較

TheTRUCK2018年4月号61
西館の広い一角はスケールモデルなどを販売する企業が出展即売してい
た。家族づれで終始賑わっていた
国土交通省や日本自動車連盟JAFなどの公共機関の出展も恒例となっ
ている
大型トラックのブースは東2号館に集中して配置された。日野自動車のブースには奥手に大型ディスプレイを設置して各種のプロモー
ションを行って来場者とのコミュニケーションに力をいれた。ダカールラリー連続クラス優勝車などの展示は世界中の商用車展を見渡
しても珍しい
FUSOを尊重しつ、エンジンなどの主要コンポーネン
トは自社技術による製品を全世界に展開するのがダイ
ムラーの戦略だ。これが開発の無駄を省きコスト競争
力を有利に導く。
 対照的なのはボルボグループだ。わが国内で創業
以来100年の歴史を刻むUDトラックスの立場と製
品を前面に据えることは当然ながら、VOLVO車も国
内販売する。車種は6×4重トラクタに絞っているが、
かつてこの分野ではUDトラックスが国産四社中でナ
ンバーワンだったことは関係者の記憶に未だ残ってい
る。エンジンやAMT(自動化機械式変速機)などグ
ループ内の上級車で共用することはダイムラーと共通
するが、表だった販売戦略には違いがあることは前述
の通り。
 UDトラックスは新興途上国専用車も出展し、増加
傾向にある東南アジア方面からの来場者の関心を引
きつけていた。自社生産車は大型トラックのみで中小
型車はOEM車を販売しているが、この為の展示ス
ペースは割り当てていなかったのは当然の対応といえ
よう。
車体メーカーも
屋外展示で参加
 前回同様に車体メーカーの展示も行われたが、ス
ペースに限りがあって限られた11社のみの参加で
あった。所属正会員企業は192社(会場掲示のパネ

商用車ショーの形態研究
TheTRUCK2018年4月号62
全面改良してグッドデザイン賞ベスト100を受賞した大型プロフィア車。新開発小排気量ディーゼルエンジンの優位性をアピールした
EV化への動きに対しては小型バス「ポンチョ」EV車を出展した。この型のバスで
ナンバーワンの立場で備えに万全であることを示した
いす自動車は大型ギガ車のシャシ上に大型ディスプレイを据えてブース内を広く見せた(写真はプレスデイ当日の模様)
ルより)だから、その内の僅か6%に満たない少数の
参加である。この姿は、主催者(日本自動車工業会
JAMA)が会員外の日本自動車車体工業会JABIA
あってのトラック産業であることを辛うじて知らしめる
最低限の配慮であった。これは前回と同様趣向の展
示であった。
 見方を変えると、百貨店方式で現時点の日本の自
動車産業を余すところなく展示したのがTMSであっ
た。世界に例を見ない展示会であることは間違いな
いが、ここにもいわゆるガラパゴス化の一面があるの
ではないか。
◇  ◇  ◇  ◇  ◇

TheTRUCK2018年4月号63
将来型小型EVのコンセプト車を出展した。高度な情報技術に支えられて一定地域内の配送車の高効率な
運用を目指す
国内で唯一ライン組み立てを行っている天然ガス専燃NG大型車を展示した。説明パネルには大中小型車全域で対応していることを示した
目先のEV化にも現行車ベースで備えていることを現車出展でアピールした

商用車ショーの形態研究
TheTRUCK2018年4月号64
三菱ふそトラックバスは新たなブランド「eFUSO」の立ち上げを発表した。世界初、EVとしてキャンター車を欧・米・日でライン生
産している実績をアピールした
大型バス「エアロクイーン」が新デザインで展
示された。AMTの観光バス全車に搭載など
安全性の向上も謳った。同時展示の大型
ラック・スーパーグレートと共に現行ディーゼ
ル車の改良にも積極的に取り組む姿勢だ
eFUSOのコンセプト車は直ぐにも生産出来そうな仕上がりで展示された。ダイムラー・グルー
プ内でトラックEV化のトップランナーであることを示した

TheTRUCK2018年4月号65
披露した映像の一部。ボルボが隊列走行システムの実験走行を行っていることを紹介した
フラッグシップのQuon車。国内の自社生産はクオ
ン車に集中している
新興国専用モデルのQuster。海外工場の生産だがこれも展示して海外からの来場者の期待に
応えた
UDトラックスもブース内に大型ディスプレイを据え付けた。その対面には展示車のウィング・ボディーも利用した観客席を設けて自社及び親会社ボルボの
先進性も映像で披露した

商用車ショーの形態研究
TheTRUCK2018年4月号66
ボルボVOLVOトラックス社はUDトラックス社の100%親会社。通路を隔てた隣接ブースで展示した。組み立てはUDトラックスの工場で行う 
スカニアSCANIAのブース。設営は唯一、2階に接客フロアを設けた欧米式のつくりだった
日本市場で大型単車が多用される状況に対応する車種も出展した。一方で得意の大容量エンジン搭載のセミトラクタの展示もあった

TheTRUCK2018年4月号67
車体メーカーの展示は東2号館に接した屋外。決して広くない会場に
特徴ある製品を効果的に展示した
わが国発のウィング・ボディはここから世界に浸透しつつある。ウィング
の開き方も現場の要望に応えて様々だ
日常のゴミ処理用途の車にもデザイン性を取り込むレベルに進化。使い
勝手の細部に至る改善の積み重ねは更に続く
極低温管理可能な高機能温度管理車。断熱性能と荷役性の改善は
絶えず進化している
荷台がスライドする車載車は日本独自の方式。ワイヤ細工で造形的美し
も感じさせる“乗せるクルマの例”は現場技術者のセンスと技術も示した
手頃な価格と取り回しの良い軽トラックに様々な機能を搭載した“災害
救援車”
ドアを開放した状態でなお冷気の流出を最低限に抑える。荷役作業性
と両立させる透明ビニールの自動開閉カーテン
多くの会員を擁する車体工業会。限られたスペースへの出展希望を絞り
込むのは至難の手続きだろ

商用車ショーの形態研究
TheTRUCK2018年4月号68
会場の「武漢国際博覧中心」俯瞰写真。円形配置の建物は左が北側でB1〜B6館で今回はこちらが占用された。右が南
側でA1〜A6館。写真奥手に長江が流れている
中国商用車展示会CCVS@武漢
 中国は広く人口は世界一、経済規模(名目GDP)
は日本を引き離してアメリカに近づきつつあり、自動
車生産と販売で既に世界一のポジションにある。自動
車ショーは乗用車を主体に商用車も含め、北京と上
海で交互に毎年開催されている。海外メーカーの参
加も多数あり国際色は年々増してTMSを遙かに凌ぐ
趣きである。この為、商用車は脇役に回る傾向にあ
ると見られてきた。
 一方、地方振興の観点でもより内陸部で国際展示
会を開催すべき、というのは国家戦略の一つでもある
ようで、今回のCCVSは中国工業情報技術部の特
別支援のもとに、その下部支援組織として中国国際
貿易促進委員会武漢支部ほか6組織が支援し、中国
自動車工業会など自動車業界5団体が協力して開催
されたという背景がある。つまり、商用車に特化した
展示会の開催を通じて国を挙げて産業振興を図ろうと
いう目的で開催された展示会であった。
 そして、企画と運営に影ながら強力な支援をおこ
なったのがドイツメッセ(上海法人)であった。ここで
ドイツのIAA商用車展と同じく商用車製造に係わ
る自動車メーカー、架装メーカー、一次・二次・・の
コンポーネントと部品メーカーなどサプライヤー群が
挙って出展するB2B展に特化したものである。前回
(2015年)は乗用車やSUVなども出展したが、今
回はこうしたジャンルの出展は一つも見られなかった。
合従連衡が
進んでいる
 中国国内に自動車メーカーは乗用車・商用車併せ
て100社以上ある、といわれたのは今から10年
ほど前のことになる。現在、こうした乱立状態はど
こまで整理されたのか、これが大きな関心事の一つ
である。
 CCVS主催者発行の公式資料によれば、会場に当
てられたのは「武漢国際博覧中心」の円形展示場の内
の北側半分(B1〜B6棟)で出展社総数は133社・
団体であった。この内、完成車メーカーはB1〜B3
に集結していた様に観察されたがその総数は28社
(72頁に続く)
国名 展示会名称 出展者数
TMS2017 199
アメ NACV2017 439
中国 CCVS2017 133
出所:主催者公式資料又はHP
(表3)三大商用車展出展者数比較

TheTRUCK2018年4月号69
B1館には自動車メーカー7社が割り当てられていた。大手に混ざって中堅メーカーに分類されると見られるも
のもあった
B1館に入るといきなり左手に小型EVトラックが目に付いた。ガイドブックによれば飛礫汽車(実際は簡
体字)の出展だ
B3号館の東風商用車(実際は簡体字)のブースを利用してセレモニー。冒頭の挨拶をする東風汽車公司総経理助理羅元紅
わが国の2トン級車に相当するバン架装のEV車だ。
主要諸元表を読み解いて頂きたい

商用車ショーの形態研究
TheTRUCK2018年4月号70
引き続いて中国商用車業界の現状と課題、将来計画などがプレゼンさ
れた。柴油軽油)、汽油(ガソリン)など在来燃料は依然使われ続ける
との見通しだ
先進国・地域に学ぶ姿勢が真摯に示された。ライフサイクルコストで車
自体とマネジメント性能を総合評価すべきとの考え方も提案されていた
品質の向上が“手前の橋(課題)”との認識だ。2025年を見通した
業界のレベルアップの道程を示していた
B3館に勢揃いした最大手の一角を占める東風汽車グループの製品群
現在の中国商用車業界を担う面々。中央:東風汽車集団公司董事
長竺延風氏

TheTRUCK2018年4月号71
エンブレム・デザインの変更などもあり一見して車名・社名が一致しないことも。変遷説明が必要。左
手前の大型車はCNG車、奥の小型車はEV車だ
CNGタンクは航続距離を考慮してスペースを
とっている
電動冷蔵車。東風特装車によるもので開発間もないと見られる
冷蔵性能については明らかにされていない

商用車ショーの形態研究
TheTRUCK2018年4月号72
東風グループの特装車2題。左は大型のパネルバン型車、右は中型の車載車
連結車用各種部品・システムの
JOST社も進出している。ブランド
を浸透させる狙いが設営から伝わっ
てくる
(68頁より続く)
だった。必ずしも正確ではないかもしれないが、商用
車メーカーは未だこの程度併存していると見るべきだ
が、2年前には聞かれなかった名称のメーカーの出展
も目に付いた(1日同行をお願いした通訳:多 慶来
氏のはなし)というから、合従連衡は一定程度進展し
ていると見て良さそうだ。
EV車のラインアップ構成
LNG、CNG車も複数出展
 会場入り口に面したB1号館に入ると、左手にいき
なりEVバスとEVトラックの展示が目に入った。そし
て同館の他の出展車中にもEVは多く見られ、B2、
B3号館でも同じ傾向に目を見張るものがあった。中
国政府が乗用車と商用車の区別なく、将来に向けて
EV普及を制度面で後押しする姿勢を明らかにしてい
ることに呼応した動きであるが、燃料電池車FCVも
含めたZEV(ゼロエミッション車)を指向するメーカー
側の姿勢には本気度が感じられた。
 一方で、エンジン車の低公害化に向けた動きとし
ては天然ガス車(NGV)の普及も選択肢に加えている
ことは世界の潮流に同調したものである。
 中国の都市でここ2年の大きな変化として、シェア
リング自転車の急速な普及がある。今回訪れた武漢
でもこれは顕著で、街中の至る所にたまり場が見られ
た。上海や北京などでも同じ傾向であるという。アプ
リを取り込んだケータイを利用して、予約・開錠・施錠・
代金決済の一連の所作が現金なしで行える仕組みが
浸透している。
 同時に、あれだけ多数あった街中のバイクが全て
電動式(EV)で音も無く静かに走行していることも強く
印象に残る。こうした身近なEV化の成果を日常生活
の一部としている中国だから、自動車のEV化に伴う
色々な障壁(充電設備の普及や一充電走行距離の改
善、果ては発電設備の改善まで)もきっとうまく乗り越
えてゆくのではないか、と見方をしているのではない
か。だから、商用車のEV化は恐らくかなりのスピー
ドで進展するのではないか、と感じた次第だ。

TheTRUCK2018年4月号73
B4号館は部品及びコンポーネントサプライヤーが合計85社出展した。
BPW社も現地企業と合弁を組んで10年連続で最優秀賞に輝く製品
アクスルであることを表示
大型トラック用インホィール・モーターの出展も目を惹いた。Tet-electric
湖北泰特机
有限公司が出展者。TANHASというトランスミッションの
内部精密部品製造を行う企業が母体だ
世界最大級の会場コンテナメーカーCIMCの特装車部門「中集車両(実
際は簡体字)の製品。ウィングバンセミレだ
架装メーカーの隆盛
架装物の多様化進展
 会場のB4〜6号館は架装メーカー、部品サプラ
イヤー群に割り当てられ多様な製品の出展が見られ
た。105社に上る出展者が個々に集まっていたが、
商用車の多様化と製品の質向上も加速していると見
た。コンポーネントや部品の中には欧米系のメーカー
ブランドを表にだしつつ、提携関係にある中国企業が
出展しているケースも相当な数に上っているようだ。
 急速な発展の影には日本からのヴェテラン技術者の
雇用(有期契約が多い)も多いに貢献している模様だ
が、そこで得た技術やノウハウが定着するかどうかに
ついては意見が分かれる。わが国の架装メーカーとの
提携企業もあり、中国人技術者の雇用流動性が大き
く定着性では日本の事情と大きく異なる環境であるこ
となども勘案しつつ今後の動きには注目してゆくべき
だろう。
(お断り:本展示会公式ガイドブックの表記に従い、
中華人民共和国を中国と略式表記した)
おわりに
 筆者が機会ある毎に指摘していることだが、自動車
産業の組織形態が国によって異なることが展示会の性
格つくりにも大きく影響していることを改めて想起して
起きたい。
 わが国では、日本自動車工業会JAMA、日本自
動車車体工業会JABIA、日本自動車部品工業会
JAPIAなどが一般社団法人として夫々独立組織を運
営している。一方、ドイツではドイツ自動車産業協会
VDAのもとに車体、部品の製造を行う企業が全て集
結して活動している。そして、乗用車展示会(IAA乗
用車)はB2Cとして、また商用車展示会(IAA商用車)
はB2Bとして、関連企業が全て参加して隔年交互に
開催される伝統がある。後者の組織形態は商用車の
世界展開にも大きな原動力となっていることを改めて
考える必要がある。
【本稿は、TMS及びCCVSは筆者の現地取材に
基づく記事及び写真、NACVについてはスウエーデ
ンの国際記者・スヴェン-エリクリンドストランドの現
地取材記事及び写真に基づく構成です。】 

TheTRUCK2018年4月号74
トラックユーザーNews
トラックユーザーNews
ゲートブースに車両が進入
 関東地方整備局は横浜港で実施し
ていた「ICTを活用したコンテナ輸
送効率化試験運用」「シャーシ共同利
用化実証実験」の結果を発表した。
ゲート部での所要時間が約2割削減
するなど、混雑緩和に期待が集まる。
 関東地方整備局は横浜港で実施し
ていた「ICTを活用したコンテナ輸送
効率化試験運用」「シャーシ共同利用
化実証実験」の結果を発表した。ゲー
ト部での所要時間が約2割削減する
など、混雑緩和に期待が集まる。
 試験運用では、陸の業者と海の業
者のリアルタイム情報の共有・活用な
どにより、セキュリティを確保しつつ、
手続きの簡素化、ゲート前の混雑緩
和などを図り、コンテナ輸送の効率化
を図るのが狙い。
 2017年度に関東地方整備局
で、貨物情報、ドライバー情報(PS
カード情報)、車両位置情報を活用
して、ゲート処理およびヤード内荷
役作業の効率化を図る「CONPAS
(ContainerFastPass)」を開発
し、試験運用を行った。
 ドライバーはこれまでの貨物情報の
手入力からPSカードのタッチのみで
ゲートを通過できるため、所要時間が
約2割削減した。また、ターミナル
の3キロメートル先に設置したETC
の活用により、ゲート到着前に事前荷
繰り指示を出すことで、従来に比べ
て、事前準備のための時間を15分
程度確保できた。
 参加者へのアンケート調査結果で
は、事業者向けで「CONPAS
は使いやすかったか」に対して
「使いやすい」89%、「コン
テナ輸送効率化に効果があっ
たか」では「効果あり」89%、
「取り組みへの期待感は」では
「期待する」67%となった。
「今年度は搬出ゲートのみが
対象だったが来年度は搬入も
取り組む。さらなる時間短縮について
も検討を進める」(清水崇国土交通省
関東地方整備局港湾空港部地域港湾
空港調整官)と話す。参加車両の拡
大、事前登録方法の最適化を図り、
19年度に本格運用する。
 一方、「シャーシの共同利用化」
実証実験では、最寄りのシャーシおよ
びシャーシプールを利用することで、
走行時間の13〜32%の削減がみら
れた。アンケート調査では、「配車に
合った共同シャーシプールを選ぶこと
ができた」と、「使用したい時に使用し
たい共同シャーシを利用することがで
きた」に対する評価が低いことから、
その対策を進める考え。
 今後は、18年度に予約システム
の構築、参加シャーシの拡大に取り
組み、19年度の本格運用を目指す。
 厚生労働省は、2018年度から5
カ年の第13次労働災害防止計画を
策定し、19日に公示した。死亡者
数こそ減少しているものの、高齢化
などにより死傷者数のかつてのよう
な減少は望めず、これまでとは異なっ
た切り口での対策が求められている
と見解。重点とする業種の1つに陸
上貨物運送業を挙げ、死傷年千人率
で5%以上の減少を目指す。
荷主に荷役設備改善を要請
 年千人率は、在籍労働者千人当た
り年間の死傷者数の割合。陸上貨物
運送業の場合、2016年は全労働者
数171万771人に対して死傷者数
1万3977人で、年千人率は8.17。
17年の統計はまだ出ていないが、毎
月勤労統計による17年末の常用労
働者数176万506人に対して死傷
者数は1万4742人(推計値、速報
値は1万4161人)であり、年千人
率は8.37となる。
 22年までに17年比で5%以上減
少が目標であり、7.95にすることが
求められる。労働者数が変わらないと
仮定すると、死傷者数を1万3996
人に抑える計算となり、17年比5.1%
減が目安。
 なお、第13次計画による全産業
に求める目標は、17年比で死亡者

TheTRUCK2018年4月号75
提供:運輸新聞
数を15%以上、死傷者数を5%以
上減少と設定。陸運業の場合、死亡
者数は推計値比だと117人以下、
速報値比だと前計画と同じ105人
以下が想定される。死傷者数は、年
千人率の目標にほぼ沿った数値(1万
4000人以下)となる。
 全体の目標ではこのほか、仕事上
の不安・悩み・ストレスについて、職
場に事業場外資源を含めた相談先が
ある労働者の割合を90%以上、メ
ンタルヘルス対策に取り組んでいる
事業場の割合を80%以上、ストレス
チェック結果を集団分析し、その結果
を活用した事業場の割合を60%にす
ることを挙げている。
 陸運業は、働き方の多様化に対応
した対策を推進するとして、①保護
帽の着用など基本対策の徹底、荷役
作業に従事する労働者に対する安全
衛生教育のあり方を検討する、②荷
主に対し、長時間の荷待ち時間削減
や荷役施設・設備の改善について支
援を要請する、③ネット通販の普及で
取扱件数が増加傾向にあることを踏ま
え、荷役作業の実態に即した対策を
検討する、としている。
 自動運転の過渡期(2020〜25
年頃、自動運転車とそうでない自動
車が混在する時期)を想定した自動車
損害賠償責任のあり方を検討してい
た国土交通省の研究会(座長=落合
誠一東京大学名誉教授)は報告書を
まとめ公表した。
 高速道路での後続無人隊列走行ト
ラックについて、先頭車両の保有者
のみ運行支
配が認めら
れ、後続
車両はけん
引に準じた取り扱いができるとして、
「先頭車両の保有者である自動車運
送事業者が過失責任を負う」との見解
を示した。
 後続車両が有人の場合でも、後続
車に操縦の自由がないことを前提とし
ており、後続無人の場合と同様の扱
いになる。
 今回の報告書は、自賠法は運行供
用者(自動車の所有者・自動車運送
事業者)に事実上の無過失責任を負
担させており、過渡期においても運
行支配・運行利益を認めることができ
ること、迅速な被害者救済のため所
有者などに責任を負担させる現制度
の有効性は高いとした。
ハッキングにより起こされた事故
も、保有者が必要なセキュリティ対策
を講じていないこと、外部データの誤
謬や通信遮断の事態が発生した際も
保有者が安全に止まるなどのシステム
を確保する必要があるとしている。
 先頭車が負う
自賠責研究会

保有者責任変わらず
隊列トラック
 全日本トラック協会は、2016年度
決算版経営分析報告書をまとめた。
全国の事業者2333者(有効数)
ら提出された16年度決算の「一般
貨物自動車運送事業報告書」につい
て、決算内容を分析したもの。
 営業収益(貨物運送事業収入)は、
輸送量の増加を背景に1者平均2億
1375万1000円で、前年に比べ
6.1%の増加となった。
 また、営業利益率は燃料価格の下
落により、前年度比0.5ポイント改善
し、9年連続の営業赤字から脱却し、
黒字事業者の割合は55%(1287
事業者)と半数以上を占めた。
 さらに、これまで車両10台以下
の区分では半数以上が営業赤字と
なっていたが、人材不足による傭
車利用の拡大を背景に営業収益が
増加したことで、51%
(378者)が営業黒字
を計上した。
 車両規模別では、
営業収益・営業利益率
ともにすべての規模で
改善傾向を示している
ものの、営業収益で
101台以上が前年度
比11.5%増に対し10
台以下が3.5%増、営
業利益率でそれぞれ1.0%マイナス
0.7%と、その“格差”は依然として
大きい。
 地域別では、北海道と四国を除い
た全地域で営業収益が拡大、関東
は13.5%増と近年にない高い伸びと
なっている。営業利益率も全地域で
改善傾向を示す。中部、近畿、四
業績改善は限定的
燃料価格下落も人材不足で
全ト協
経営分析

TheTRUCK2018年4月号76
トラックユーザーNews
トラックユーザーNews
センター外観
 国分北海道(本社=札幌市)は、三
温度帯総合センターである釧路総合
センター(釧路市星が浦大通5丁目)
を新設し、25日から稼働する。
 現在、釧路地区では常温センター
2拠点、低温センター2拠点で運営
しており、これらを1拠点に統合す
ることで、配送や庫内オペレーショ
ンの効率化、事業拡大への対応を図
る。また、三温度帯総合センターに
統合することで、品質管理レベルの
向上を目指す。
新センター
は、延べ床面
積7128平
方メートル、
うち冷凍庫
194平方メー
トル、冷蔵
庫2347平方
メートル、常
温庫3680平
方メートル、事務所・居室部405平
方メートル、空容器・クレート・ほか
502平方メートル。
 対応カテゴリーは加工食品・菓子・
酒類・冷凍食品・冷菓・チルド・生鮮
など。配送エリアは釧路地区。
国が0.3%と最も高く、逆に関東は
0.0%で最も低い。
「燃料価格の下落が利益改善に大
きく寄与したが、一方で運転者の人
材不足から、残業時間の長時間化、
賃金引き上げなどで人件費率が増加
するとともに、稼働可能台数の減少
傾向による傭車利用の拡大、傭車の
運賃・料金単価の引き上げなどによ
り、傭車比率が一段と増加傾向を示
し、前年度同様、営業利益の改善は
限定的となった」と指摘している。
いすゞ自動車は、小型トラック「エ
ルフ」の一部車型を改良し、20日
から全国一斉に発売した。車両総
重量7.5トンを超える車型につい
て、主要コンポーネントを一新した
新開発の小排気量高過給エンジン
4JZ1(排気量2999㏄)と、後
処理装置にDPD+尿素SCRを採
用したことにより、2016年排出ガ
ス規制に適合しながら燃費性能を向
上させた。2015年度
燃費基準+10%を達成
し、エコカー減税の対象
となる。
 目標販売台数はエ
ルフ全体で年間4万4000台。
東京地区希望小売価格は、「2RG-
NPR88YN」が消費税込みで558
万2520円。
小型トラック「エルフ」を改良し発売
三温度帯の釧路
総合センターを新設
国分
北海道

TheTRUCK2018年4月号77
提供:運輸新聞
施設外観
 東日本大震災の発生から7年が経
過。主なインフラの復旧・復興の進
捗状況は、復興・復興支援道路は
100%着工し、46%完了、港湾は
98%、鉄道は97%完了した。
 道路は、復興・復興支援道路全
体550キロメートルのうち、503キ
ロメートル(約9割)で開通または開
通見通しが確定。昨年は南三陸道路
(3.0キロメートル)、阿武隈東道路
(10.5キロメートル)が開通、矢本
石巻道路(12.1キロメートル)4車
線化が実現した。
 現在、三陸沿岸道路の田老岩泉
道路(6キロメートル)、宮古田老道
路の田老第二IC〜田老北IC、山田
宮古道路(14キロメートル)、本吉
気仙沼道路(7.1キロメートル)、南
三陸道路の南三陸海岸IC〜歌津IC
および志津川IC〜南三陸海岸IC、
登米志津川道路の登米東和IC〜志
津川ICなどが事業中。
 鉄道は、JR常磐線のうち昨年は
小高〜浪江間、富岡〜竜田間で運転
再開。残る帰還困難区域を含む浪江
〜富岡間は2019年度末までの開通
を目指している。
 港湾は、産業物流上特に重要な
131施設のうち、3施設を残して復旧
工事を完了。残る釜石港および大船渡
港の湾口防波堤、相馬港の沖防波堤
の復旧工事は今年度末に完了予定。
 引き続き、復興加速化拠点となる
八戸港外港地区防波堤、久慈港湾
口地区防波堤、小名浜港東港岸壁
(水深18メートル)の整備を推進し
ている。
19年度末開通
     
復旧・復興の状況
東日本大震災
常磐線・
浪江〜富岡
 SGリアルティは、環境・防災対応
型の最先端大型物流施設「SGリア
ルティ和光」を竣工した。
 東京外環自動車道・和光北ICと
国道298号、254号和光富士見バ
イパス、市道378号という広域交
通の結節点に建設。敷地面積2万
7300平方メートル、延べ床面積6
万5259平方メートル、地上5階建
て。
 倉庫内は、梁下有効高さ約5.5メー
トル、1平方メートル当たり床荷重1.5
トン、柱スパン最大11.5×10.5メー
トルを確保。屋
根面には最新の
太陽光発電シス
テムを導入し、
最上階への遮熱
効果を発揮。防
災蓄電設備を設
置し、太陽光発
電された電力を
蓄電することにより、停電時の防災
対策を強化した。
 1階にはカフェをイメージしたラウ
ンジ(休憩室)、5階には眺望の良い
リフレッシュルームを併設し、働きや
すい環境づくりを目指す。
環境・防災対応型
和光竣工6.5万㎡
SG
リアルティ
 2018春季生活闘争は、15〜
16日にかけて大手のヤマ場を迎
え、運輸労連大手14組合中9組合
で解決した。
 賃金引き上げは、9組合中8組
合で前年実績を上回り、ヤマト運輸
は満額回答となった。
 大手9組合の単純平均は
4603円、加重平均は9639
円で、前年実績をそれぞれ
1220円、4066円上回った。
 夏季一時金も、8組合で前
年実績を上回り、単純平均は
39万3875円(前年比2万
前年を上回る
賃上げ・一時金ともに
ヤマト運輸は満額回答
運輸労連
大手組合

TheTRUCK2018年4月号78
トラックユーザーNews
トラックユーザーNews
外観イメージ
 ヤマタネの子会社である山種不動
産は、平和不動産、ちばぎん証券と
中央区日本橋兜町7番において共
同で(仮称)日本橋兜町7地区開発
計画」を進めてきたが、このほど東
京圏国家戦略特別区域における国家
戦略都市計画建築物等整備事業とし
て内閣総理大臣の認定を受けた。
 同事業は、「国際金融都市・東京」
構想の一翼を担う機能を導入し、金
 全日本トラック協会は運転者人材
不足が深刻化する中、経営に与える
影響をまとめた。2016年度決算版
経営分析報告書によると、トラック
運送業では、燃料単価が下落傾向に
あるが、業績改善は限定的となって
いる。この背景には、必要な運転者
人員を確保できないことから、自社
車両の実働率を改善させる傾向にあ
る。特に、21〜50両の区分では
改善率が最大となっている。
 運転者人材不足分を傭車でカバー
することから、傭車費比率は各車両
区分ですべて上昇した。傭車費比率
は26年度6.4%、27年度6.8%、
28年度8.4%と推移。保有車両が
融関連の情報発信や人材育成、投資
家と企業の対話・交流促進を図るとと
もに、地域のにぎわい創出のための
空間整備や担い手・仕組み作りを推進
し、地域全体を活性化するのが目的。
 地上・地下における歩行者空間の
拡充による回遊性の向上、帰宅困難
者対応施設の整備などによる地域防
災力の向上、緑化空間の拡充などで
都市再生にも貢献する。
多いほどその比率も高く、101両
以上は11%を超えている。「交渉で
は、運賃・料金の引き上げがなされ
る成功事例が多くみられる」としてい
る。
 ただ、傭車を利用する場合、以前
よりも運賃などの相場が上昇傾向に
あるため、傭車費比率の増加は利益
率の押し下げ要因になっていると指
摘。
 運転者人材不足は、人件費比率の
上昇にもつながっている。募集する際
の賃金水準を引き上げたり、既存の
賃金水準を引き上げて退職を引きとど
める動きがみられる。
 人件費比率は38.8%、39.2%、
 計画では、敷地面積約3350
39.6%と推移。51両以上では41%
を超えている。
兜町開発計画が
国家戦略特区に
ヤマタネ
7750円増)
 残る5組合も、今月中には解決す
るものとみられる。
 運輸労連の全国単組以外の解決
状況は、賃金引き上げは36組合で
解決。解決額の単純平均は2053
円と前年を182円上回っている。
増額は19組合、同額は4組合、
減額は9組合。
 夏季一時金は25組合で解決。
17秋闘で解決している5組合を含
めた単純平均は31万8093円で、
前年の最終実績21万9015円をか
なり上回っている。

TheTRUCK2018年4月号79
提供:運輸新聞
平方メートル、延べ床面積約3万
8000平方メートル、地上15階・
地下2階(高さ約90メートル)。用
途は事務所、店舗、金融関連施設
で、予定工期は2018年度〜20
年度。
 トラック業界により多様なドライ
バーを呼び込むため、国土交通省
と全日本トラック協会は「女性ドライ
バー等が運転しやすいトラックのあり
方検討会」を14日に設置した。今
後、トラックメーカーやドライバーな
ど多方面からヒアリングを行い、運転
にあたってキャビンへの昇降をはじめ
配慮する事項をガイドラインとして、
11月をメドにまとめる。
 将来の担い手や、現在勤務してい
るドライバーが働きやすい環境を維
持することが、女性をはじめとする多
様な人材確保のために必要不可欠。
このため、トラックを運転するにあ
たって、キャビンへの昇降、運転席
ボジションの調整、「見やすい」など
安全運転を支援する車両技術で配慮
すべき事項があり、ドライバーの視点
に立った車両のあり方をガイドライン
としてまとめる。
 ヒアリング(アンケートも含む)は、
トラックメーカーや架装メーカー、ド
ライバー(女性など小柄なドライバー
や高齢者)、それにこれからドライ
バーになってもらいたい人などさまざ
まな意見を吸い上げ、対象車種ごと
に運転しやすい車両の開発や、架装
で工夫する点などをまとめる。
 検討会は、東京大学の鎌田実教授
を座長に、有識者、行政、自動車
関連団体、労働組合などで構成。
 トラックドライバーは、有効求人倍
率が2.76(1月)と全産業の1.8倍
で、ほかの産業に比べて人手不足
が深刻。女性の就業割合は2.5%
で、全産業の43%より大幅に低
く、高齢者層の割合が高く(50歳が
37.6%)、若年層の割合が低い(25
歳以下3.2%)
 ヤマトホールディングスは9日、
都内のスワンカフェ銀座店で、昨年
の6月に続き物流業界紙記者向け
懇談会を開き、同社の山内雅喜社
長、ヤマト運輸の長尾裕社長が、昨
年9月に発表したグループの中期
 京浜港物流高度化推進協議会(中
田信哉委員長)は7日、第18回会
合を開き、昨年度に策定した「京浜
港物流高度化計画」に向けた取り組
みなどを報告した。
 「ICTを活用した貨物情報の共有・
ゲート処理の電子化」については、1
月29日〜3月2日に横浜港南本牧
ふ頭で、三菱倉庫や神奈川県トラッ
ク協会コンテナ部会などの協力で試
験運用を実施。ドライバーのIDカー
ドやETCの活用で、ゲート処理の
効率化やヤード内荷役作業の効率化
を図るのが狙い。システムの稼働状
況などデータを集計し、3月中に結
果を取りまとめる。
 昨年11月2日に開催した荷主意
見交換会では、荷主から「情報のシ
ステム化で連携を」「国内の物流コ
スト削減が大きなテーマ」「新たにス
タートする邦船3社によるコンテナ統
合会社の運賃やサービスに着目」「京
浜港の渋滞緩和対策を」などの意見
が出た。
 新たに設置した「広域連携WG」
「臨海部物流機能強化WG」につい
ては、昨年12月19日に合同で開
催。コンテナヤード前の渋滞対応やド
ライバー不足対応に加え、国際フィー
ダー貨物を地方港から釜山に流出さ
せるのではなく、国内できちんと集荷
して日本全体の物流強化を図ってほ
しい、などの意見が出された。
「横浜港でうまくいけば、東京港な
ど他港でも活用できる」(関東地方整
備局)と期待する。
横浜港で試験運用
ICT活用
ゲート処理電子化
京浜港
物流協

TheTRUCK2018年4月号80
トラックユーザーNews
トラックユーザーNews
長尾社長
山内社長
完成予想図
 大和ハウス工業とグループの大
和物流共同により物流総合効率化法
(物効法)の認定を受けることになっ
「海老名物流センター」(仮称)
3日に着工した。
 物効法に基づき開発する物流セン
ターは、岩倉物流センター(愛知
県、2015年3月竣工)に続き2拠
点目となる。
現在、大和ハウス工業竜ヶ崎工場
から2カ所の物流センター(海老名
市・相模原市)を中継して神奈川県
や東京都三多摩エリア向けに住宅部
材を配送しているが、配送面で重複
しているため物流拠点を集約し、新
たに物流センターを開発。
 所在地は神奈川県海老名市社家
嵯峨野。市街化調整区域だが、海
老名市から開発許可を受けて開発で
きるようになった。圏央道・海老名
インターチェンジから約2.5キロメー
トルに位置しており、トラックの走行
距離を約36%削減。敷地面積1万
2349平方メートル、延べ床面積1
万1817平方メートル、鉄骨造り地
上2階建て。
 拠点の集約により従来よりも総作
業時間およびトラック待機時間の削
減が見込める。センターには総発電
容量約490キロワットのソーラーパ
ネルを敷設するほか、LED照明を
全館に導入。南関東エリアの建築・
建材物流の新センターとなる。今年
10月末竣工予定。
市から開発許可取得
海老名物流C着工
大和ハウス
大和物流
経営計画「KAIKAKU2019for
NEXT100」の進捗状況などについ
て説明した。
 始めに山内社長は中計について、
『働き方改革』と、『デリバリー事業
の構造改革』『非連続成長を実現する
ための収益・事業構造改革』『持続的
に成長していくためのグループ経営
構造改革』の3つの構造改革を断行
することで、次の100年もヤマトグ
ループが社会的インフラとして持続
的に成長していくための経営基盤強
化を目的としたもの」と改めて強調。
 デリバリー事業の構造改革につい
て長尾社長は、「法人のお客様との
プライシングの見直し交渉などの結
果、現在は業務量の伸びは従来より
低くなっているが、提供可能なキャパ
シティに近づいている」と説明。今
後、適切にキャパシティを広げていく
ためには社員、特にセールスドライ
バー(SD)の労働環境の整備が最も
重要と指摘。従来のSDに加えて、
リレーのアンカーのような位置付けで
夜の後半部分の業務を担う、配達に
特化した社員『アンカーキャスト』の採
用を進めることで、中計にもうたって
いる『新たな複合型ラストワンマイル
ネットワーク』の構築が図れるとした。
 再配達の削減については、時間帯・
場所の変更などが可能な『クロネコメ
ンバーズ』会員の増加により、一度
で届けられる率が前年より上がってき
ていると報告。
 オープン型宅配ロッカー『PUDO』
の設置は3月末でほぼ目標の3000
台に近づく見通しであり、来期は物流
以外にシェアリング型サービスとして
新たな使われ方も提示していくした。
 ノンデリバリー事業で次の成長エン
ジンの1つとして捉えている『グロー
バル』について、山内社長は「アライ
アンスを進め、特にアジア、アセア
ンを含めたクロスボーダーでのラスト
ワンマイルまでの輸送に引き続き取り
組んでいく」と言及。さらに、成長の
2つめのポイントとして『クール』を挙
げ、アジア圏内の小口コールドチェー
ンをキラーコンテンツに、展開を促進
していく方針を示した。

TheTRUCK2018年4月号81
提供:運輸新聞
N-1サミット
電子錠(左)とGPS内蔵端末(制御部)
 ヤマトシステム開発(YSD)は、
事業者が所有する資材に取り付ける
だけでセキュリティを向上できる汎用
的な端末「セキュリティmodule」
開発し、4月から提供する。2018
年度中に導入台数5000セットを目
指す。
 現在、機密性の高い商材や書類
を特定の相手に送る場合、専用のカ
バンやケースなどの輸送資材が利用
している人の「所在確認や施錠・開
錠者の管理を強化したい」「使用して
いる輸送資材のセキュリティを高め
たい」という声に応えた。
 新サービスは、①携帯電話開錠
(事前に登録した番号から開錠)
Web開錠(権限を持つ人のみが遠
隔操作で開錠)③専用ICカー
ド開錠̶̶の3種類から最
適な開錠方法を選択可能。
GPSにより端末の現在地を
把握でき、いつ・どこで・誰
が開錠したのかの確認が可
能。異常な開錠が行われた
場合はメールで知らせる。
費用(税抜き)は、初回契約
料金5000円、初期設定料
5000円/セット、月額利用
料4000円/セット。専用IC
カードは2000円/枚(オプショ
ン)
今後は温度、湿度、衝撃、傾
斜などのセンサー搭載による輸
送追跡+輸送物の状態監視などの機
能追加を検討。輸送以外の利用シー
ンも想定している。
資材に取り付ける
セキュリティ端末開発
YSD
 オイシックスドット大地が事務局と
なり、5日に品川区立総合区民会館
きゅりあんでN-1サミット2018を開
催。農産品物流の先進的な事例が発
表された。
 京王電鉄戦略推進本部の嶌田智
仁氏が保冷コンテナに農産物を積載
し、高速バスを活用した取り組みを
紹介。ヤマト運輸の秋山佳子法人営
業部長は、オイシックスドット大地の
阪下利久氏と共同で「ベジネコプロ
ジェクト」を発表したた。
 生産者を中心に、青果流通を阻害
する要因を探ったところ、「納品先ま
で400キロメートル超で輸送を断ら
れる」ケースが判明。人手不足や過
労防止なども壁となっている。
 そこでヤマトのゲートウェイを活
用、拠点間に限定した輸送を行うほ
か、トレーラやオートメーション化へ
の投資を行い、宮崎県でトライアル
を実施した。その後、輸送に関する
クレームがなくなり、9月から11月
のにサービスインを実施。
 全国2700人以上の農家の中から
最も多くの消
費者に感動を
与えた農家を
表彰する「農家
(ノーカー)
オブザイヤー
」では、生産
者団体・福
島わかば会の
きゅうりが最
高金賞に選ば
れた。銀賞には「みつトマト」
伊原努さん(千葉県)、銅賞に
「かがやケール」の小山竜平
さん(兵庫県)が選ばれた。
 パネルディスカッション「農
産品の流通に市場は必要か」では、
日本総合研究所の三輪泰史氏をモデ
レータに、さんぶ野菜ネットワーク・
下山久信氏、農業総合研究所・堀内
寛氏長野県連合青果・吉崎岳氏がパ
ネリストで登壇。農産物流通の規制
改革について意見を交わした。
高速バス活用など紹介
N1サミット開く
オイシックス
ドット大地

TheTRUCK2018年4月号82
トラックユーザーNews
トラックユーザーNews
提供:運輸新聞
新型航空保冷コンテナの試作品(右)と既存コンテナ
試作品内部
 地方産地から海外までのコール
ドチェーン構築のため、国土交通
省の「交通運輸技術開発推進制度」
を活用し、東プレ、トプレック、
ヤマト運輸の3社は6〜8日、羽
田̶那覇̶香港間で新型航空保冷
コンテナ(試作品)の試験輸送を実
施した。それに先立ち6日、ヤマ
トグループの羽田クロノゲートで
試作品を公開し、試験輸送の概要
について説明した。
 現在、地方空港に主に就航する小
型航空機に搭載可能な保冷コンテナ
はなく、中・大型航空機に搭載可能
な保冷コンテナもドライアイスを冷
媒としており、温度管理の精度に限
界があった。
 そのため、ドライアイスを使わ
ず温度可変機能により商品特性に
応じた定温輸送ができ、既存の海
外製品に比べて安価に保守整備が
可能なLD-3型保冷コンテナ、同
じくドライアイスを使わず要冷品
の定温輸送ができ、B737型機に
搭載可能な小型保冷コンテナの開
発に着手したもの。
 説明会では、国土交通省総合政策
局物流政策課企画室課長補佐の大庭
靖貴氏のあいさつに続き、トプレッ
ク企画開発本部企画開発部部長の林
基行氏が概要を説明。
 今回の試験輸送では、LD-3型の
蓄冷式航空保冷コンテナ(試作品)
とドライアイス冷媒式航空保冷コ
ンテナ(既存品)の温度データを実
運用に近い条件で収集し、保冷性
能を比較。路線は往路が羽田空港
→那覇空港→香港国際空港、復路
はその逆。1つのパレットに2つ
のコンテナを搭載し、各コンテナ
に各4箱(計8箱)の疑似商品を積
み込み、各コンテナに温度データ
ロガー(電子記録計)を設置、コン
テナ内外および商品温度のデータ
を収集した。
 新型保冷コンテナは、外部電源(3
相200V)で稼働す
る蓄冷板冷却機(コ
ンデンシングユニッ
ト)によって蓄冷
し、保冷中はコンテ
ナ内の空気を自然対
流させる仕組み。電源を搭載して
おらず、航空機内で稼働しないた
め、航空機システムと干渉しない。
ドライアイスと乾電池が不要にな
り、ランニングコストが削減でき
るという。
国土交通省の大庭課長補佐は今
後の展開について「技術を生かし、
普及に努めてほしい」と期待を示す
とともに、今後の国内、国際認証
の取得に言及。トプレックの石川
公之専務取締役は「認証取得後、ま
ずは国内需要に向け量産をかけた
い」と見解。ヤマトグローバルロジ
スティクスジャパン国際戦略本部
課長の下簗亮一氏は、「温度を一定
に保つことで貨物のダメージを防
ぎ、日本の農水産品の品質保持に
貢献できる」と述べた。
 LD-3型、現在開発中の小型保冷
コンテナともに、2019年中の実
用化を目指している。

TheTRUCK2018年4月号83
提供:運輸新聞
中谷康夫社長
 日立物流は、2日に記者懇談会を
開催。SGホールディングス・佐川急
便との資本業務提携から約2年が経
過し、中谷康夫社長は「協業は着々
と進んでいる。特に地方でどんどん
案件が生まれている。事業所間でも
頻繁になってきている」と述べた。
 同社が受託した3PL業務をSGH
が倉庫運営するというケースが福岡県
(電機・産業)、大阪府(化粧品)
開始。岐阜県では航空宇宙博物館の
移転作業をSGHが元請けで日立物流
が搬入業務を行った。北海道では同
社ドライバーが農機具の部品取り付
け作業を行い、SGHが部品配送を
担う。関東地区では、昨年末に佐川
急便の物流増加に対応するためバン
テック車両(トラック・トレーラ20台)
を提供。
 協業の効果は2017年度売上高
95億円、営業利益10億円を見込
む。新規受注(5月稼働)や提案中の
案件(流通・小売、食品、アパレル
など)があり、18、19年度には年間
約20億円規模で寄与する。ただ、
中谷社長は「売り上げを追うのではな
く、コストコントロールができる、利
益につながることを積み上げていく」
とする。
 新技術の実践導入はR&Dセンター
を核に進んでおり、2月には経産省と
の連携で電子タグの発行から実験店
舗への納品までの作業を行った。「ス
マートロジスティクスの展開を加速し
ており、夜間のロボットの活用などで
生産性向上の効果は大きい」と話す。
 海外事業では、米国での新たな構
内業務の立ち上げやタイでのミルクラ
ンの拡大、インドの自動車事業関連
の立ち上げ、マレーシアでの3温度
帯センターは同社にとっては東南アジ
ア初の拠点となるなど、活発な投資
が続く。
佐川との協業が拡大
年間200億円の案件提案
日立物流

The TRUCK News
Now
TheTRUCK2018年4月号84
 ㈱加藤製作所は、新型220トン吊りオールテレーンクレーン
「KA-2200R」を2018年4月より全国一斉に発売した。
 オールテレーンクレーン「KA-2200R」は、フルパワー伸縮
方式で最長となるブームをはじめ、油圧伸縮起伏可能なスー
パーラフィングジブと高い吊上げ能力を有するヘビーリトジブ
を装備した他、センター&サイドに分割した扱い易い新型カウ
ンターウエイト、低騒音&クリーンなダイムラー製エンジンを搭
載するなど、従来機に新機能を追加することで使い易さを更
に向上させている。また、KA-2200Rは、業界No.1の安
全と環境に優しいオールテレーンクレーンを目指して開発され
ている。
 なお、KA-2200R価格は380,000,000円(税別/標準
仕様、工場裸価格)で、目標販売台数は年間10台として
いる。
■「KA-2200R」の主な特長
▼クレーン
⑴高剛性5段スーパーブーム
・伸縮操作が容易なフルパワーブーム採用。
・ひとクラス上の高剛性な大断面ブームで、縦横のたわみが少
く高効率作業を実現。
・ブーム主要仕様…ブーム長さ14.4m〜55.0m、ブーム最
起立角度85°、最大吊上げ荷重220t(重荷重装置使用、
後方のみ)、最大地上揚程55.3m、最大作業半径52.0m。
⑵高剛性3段スーパーラフングジブ(SLジブ)
・長尺で大オフセット角度により懐の深い作業が可能。
・自力着脱装置により補助クレーンが不要で短時間で着脱が
可能。
・SLジブ主要仕様…ジブ長さ1.8m+11.8m〜30.0m、オ
フセット角度0°〜60°、最大吊上げ荷重24t、最大地上揚
程87.7m、最大作業半径64.0m。
⑶ヘビーリフトジブ(HLジブ)
・立組み可能な構造で狭い現場で長尺ジブの組立が可能。
・油圧着脱式接続ピンにより高所作業を削減。
・HLジブ主要仕様…ジブ長さ4.4m+13m、22m、
31m、40m、47m、54m、オフセット角度10°〜60°、最
大吊上げ荷重84t、最大地上揚程110.7m、最大作業半
径80.0m。
⑷新型カウンターウエイ
・サイドベースウエイト着脱可能構造により、車幅内カウンター
ウエイト作業が可能。
・カウンターウエイト共通形状化により積み上げ順序の制限を
緩和。
・現場の状況によカウンターウエイト構成変更を容易化。
カウンタウエイト主要仕様…最大ウエイト質量83t(10t×3、
6t×6、ベースウエイト)旋回後端半径5.5m(ウエイト付)4.4m
(ウエイト無)
⑸多彩な装備品(オプション含む)
・新規採用装備品…分解・組立用ラジコン*、パイロットウイ
ンチ(組立作業補助用)、アウトリガ反力表示装置、LED作
業灯、ACS外部表示装置(LED
式)。
・標準装備品等…左後方確認カメ
ラ、ウインチ確認カメラ、リモコンサー
チライト、スタンショ(ブーム、カウ
ンターウエイト)、SLジブスタンド。
キャブ内装備品…アクセサリソケッ
(24V)、USB電源装置、拡声器、
燃焼式エアヒータ、ドアバイザ、ラン
チテーブル。
▼キャリヤ
⑴KATOキャリヤ
新型クレーン…加藤製作所
話題のニュートラック新製品情報・新情報
安全と環境に優しい新型オールテレーンクレーン
220トン吊り「KA-2200R」を新発売
安全と環境に優しい220トン吊り新型オールテレーンクレーン「KA-2200R」

TheTRUCK2018年4月号85
 三菱ふそうトラック・バス㈱(MFTBC)は、インドネシア
のジャカルタで開催された「ガイキンド・インドネシア・イン
ターナショナル・コマーシャル・ビークル・エクスポ」にお
いて、新型中型トラック「ファイター」を発表した。
 インドネシア全体のインフラ整備が進んだ結果、同市場
・KATOが独自に開発した機動性と安定性を両立したクレーン
専用6軸キャリヤ。
⑵ダイムラー製エンジン
・低燃費で高出力のダイムラー製OM906LA型エンジンを搭
載。
・作業時騒音99dBの低騒音型エンジン(超低騒音型建設
機械指定申請中)
・エンジン主要仕様…最高出力205kW/2,200min-1、最大
トルク1,100N・m/1,200min-1。(排出ガス後処理装置尿素
SCRシステム)
⑶ワイドキャ
・広い室内スペースで運転席・助手席間のウォークスルー移
動が可能。
・運転席、助手席に疲れにくエアサスシーを採用。
仮眠用の大型格納式ベッ(2320㎜×600㎜)を標準装備。
・プロジェクター式ディスチャージヘッドランプ(ロービーム)を標
準装備。
⑷電子制御リヤステアリングシステム
では中型トラックに対する需要が増大している。新型「ファ
イター」の投入は、この需要増大への対応を目指すもの。
ジャカルタで開催された「ガイキンド・インドネシア・インター
ナショナル・コマーシャル・ビークル・エクスポ」は商用車
に特化した初のモーターショーで、その会場において、東
・走行速度による操舵角制御により走行安定性向上。
・多彩なステアリングモードにより狭い現場内の移動も容易。
ステアリング状態を視覚的に表示するディスプレイ装備搭載。
⑸全輪フルエアーディスクブレーキ
ドラムブレーキより放熱性が良くンテナンス性にも優れたディ
スクブレーキを全輪に採用。
ブレーキパッド残量警報装置を装備(交換時期が来るとランプ
で表示)
⑹タッチパネル式CORインフォーションディスプレイ
・各種の車両情報を見やすく表示するタッチパネル式ディスプ
レイを採用。
⑺多彩な装備品(オプション含む)
・新規採用装備品…アウトリガ操作用ラジコン(機体水平補助
機能付)、アウトリガ反力表示装置。
・標準装備品等…後方確認カメラ、集中給脂装置。
・キャブ内装備品…エアコンディショナ、仮眠用ベッド、地上
デジタル対応テレビ放送受信装置、燃焼式エアヒータ。
海外新車発表…三菱ふそう
話題のニュートラック新製品情報・新情報
中型トラック「ファイター」をインドネシアで発表
インドネシアのトラック輸送に新時代の到来を告げる
インドネシアで発表された新中型トラック「ファイター」

The TRUCK News
Now
TheTRUCK2018年4月号86
南アジアを管轄するリージョナル・センターのCEOトーマ
ス・ヒルゼは、「急速な変化を遂げている環境下で、私た
ちは商用車用技術の世界的フロントランナーとして、競争
相手の一歩先を進み続けることができる強みを提供するこ
とに全力を注いでいます。私たちはインドネシアで半世紀
近く、市場のリーダーであり続けてきました。中型トラック
のファイターを発表し、最大の輸出市場に対して、パワー
と効率、そして快適性を提供できることを、とても光栄に
思います」と述べている。
 インドネシア市場向けの「ファイター」には、自動調整式
エアサスペンションシートなど、最高の快適性を実現する
機能が搭載されている。インテリアとエクステリアには人
間工学に基づくデザインを施し、日本市場向けの最新車
種と同様に、スマートな収納機能とアクセスが容易な湾曲
型コックピットが採用されている。
 さらに、現地販売代理店のP.T.KramaYudha
TigaBerlianMotors(KTB社)のランナーテレマティク
スを標準装備し、ノートパソコンやタブレットPC、携帯電
話から保有車両の管理・監視が容易に行える。同システ
ムは、リアルタイムでの監視、メンテナンスを含む車両管
理などの機能もある。MFTBCは、ノンストップなカスタマー
サービスを提供するため、24時間対応コールセンターとラ
イブチャットメッセンジャーでアフターサービスの強化を図っ
ている。
 KTBのコンスタンティン・クリーゲルシュタイナー製品
戦略部長は、「インフラの整備と商用車両による運送のプ
ロ化が進んだ結果、インドネシア市場では競争力のある
中型トラックが求められています。FUSO車両とランナー
テレマティクスは、同地域のお客様にとって、未来の課
題に対応可能な最新の車両管理を支援するうえで、理想
的なソリューションとなるでしょう」と語っている。
 今後3年以内に、各種ホイールベース、車両総重量
(GVW)16/26トン、出力240/270馬力を組み
合わせた、合計16のバリエーション(4×2、6×2、6
×4)の中から車種の選択が可能となる。現在、インドネ
シアの現地状況にあわせ、多岐にわたる車両試験を実施
している。中型トラック「ファイター」は、プランテーション、
建設、物流などの分野で多くのユーザーに使用されてお
り、保有車両の総所有コス(TCO)についても最小に抑
えることを可能にしている。
「ファイター」は、日本のMFTBCからノックダウンキッ
トとして出荷され、東ジャカルタ市のPTKramaYudha
RatuMotor(KRM)工場において現地組み立てを行う
ことになる。ふそうは過去47年間にわたり、インドネシア
市場のリーダーであり続けており、1970年代にインドネシ
アで発売して以来、現地では「コルディーゼルの名で知
られる小型トラック「キャンター」が、2017年に販売累計
で100万台を達成している。インドネシアでのふそう製品
は、三菱商事との合弁事業として、現地販売代理店の
KTB社を通じて販売されている。
 インドネシア市場は急速な発展を遂げ、フリートオーナー
の間では、高度な技術を用いた商用車に対する需要が次
第に増加している。最新の中型トラック「ファイター」の投
入は、インドネシアのユーザーに先進車両とソリューション
を提供するという、三菱ふそうのコミトメントを明確に示す
ものである。
 なお、ダイムラートラック部門はインドネシア市場で、
2017年42,700台と前年比52%増の販売を拡大を実
現させている。
機能的な「ファイター」の運転席(日本仕様)

TheTRUCK2018年4月号87
 横浜ゴム㈱は、耐摩耗性能重視型トラック・バス用オー
ルシーズンタイヤの新商品「710R(ナナイチマル・アール)
を2018年3月に発売した。発売サイズは全
10サイズで、価格はオープンプライスとなって
いる。
「710R」は耐摩耗性能と耐偏摩耗性能を大
幅に向上させることによって経営者の求める経済
性を追求しつつ、多くのドライバーが不安を抱え
る空荷時の安全性の改善を目指し開発しもの。
トレッドには新開発の専用パターンを採用。
ワイトレッドデザインが耐摩耗性能を向上し、
互い違いにブロックを配置した千鳥ブロックレ
イアウトや「Z」型のブロックを交差配置したセン
ター「Z」ブロックが偏摩耗を抑制する。また、
 三菱ふそうトラック・バス㈱(MFTBC)は、世界初の量産
電気小型トラック「eCanter」のごみ収集車仕様を開発し、
2019年に実証実験を開始する。
 「eCanter」は世界初の量産電気小型トラックとして2017
年より北米、日本ならびに欧州市場に投入している。ゼロ排
出ガスと騒音ゼロの環境性能の達成はもとより、商用車と
て求められる積載量の確保と維持コストの低減により高いレ
ベルの経済性も獲得する未来の都市配送を担う電気小型
ラックで、優れた環境性能は都市における作業用車両として
も最適である。
 今回のごみ収集車は、塵芥架装で多くの経験と実績があ
る新明和工業㈱と共同開発を行い、2019年春を目処に、
川崎市とのごみ収集作業における走行試験および性能確認
を含めた実証試験を開始する予定となっている。
 MFTBCのマーク・リストセーヤ代表取締役社長・CEOは、
「この度、日本で初めての“eCanterごみ収集車”の開発
新タイヤ…横浜ゴム
電気ごみ収集車…三菱ふそう
話題のニュートラック新製品情報・新情報
話題のニュートラック新製品情報・新情報
横浜ゴムが耐摩耗性能重視型トラック・バス用
オールシーズンタイヤ「710R」を新発売
川崎市との包括連携協定協業のひとつとして
電気小型トラック「eCanter」のごみ収集車を開発
ブロック面積の最適化により接地圧を均一化した。
 さらに、ワイドセンターブロックとワイドセンターグルーブが空
荷時のグリップ力と排水性の向上にも貢献する。
 コンパウンドには耐摩耗性能に優れるポリマーと
ウェト性能に貢献するシリカを配合し、らに新Cʼ
ROLL製法を採用している。
 これにより従来品(ZEN701ZE)に比べ耐摩
耗性能を20%以上向上させ、空荷時ウェト発
進スリップ性能を57%改善したほか、ウェット制
動性能や雪上性能も従来品同等レベル以上を確
保している。
 なお、性能データについてはタイヤ公正取引協
議会に届け済である。
を発表できることを大変嬉しく思います。ごみ収集車は公共
性が高く、環境と経済の両面で優れた性能が求められます。
eCanterごみ収集車は、CO
を排出せず、また騒音を出さな
い車で、都市の環境改善と地球温暖化防止に貢献できる
ラックです。今後さらに多くのお客様に導入いただけるよう、
様々な要望に応えられるアプリケーションを充実してまいりま
す」と語った。
耐摩耗性能重視型のトラック・バ
ス用オールシーズンタイヤ「710R」
開発が予定されている小型トラック「eCanter」のごみ収集車

The TRUCK News
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TheTRUCK2018年4月号88
■車両スペック
・車型…eCanter日本国内仕様(GVW7.5t)
・モーター性能…最高出力135kW、最大トルク390Nm
・充電時間…急速充電:最大約1.5時間(直流・三相
400V/125A)、普通充電:最大約11時間(交流・単相
200V/30A)
・バッテリー容量…13.8kWh×6個:82.8kWh
・架装仕様…回転板式塵芥車(新明和製)
 UDトラックス㈱は、経済産業省および国土交通省が
主導するトラックの後続有人隊列走行実験に、他の国内
ラックメーカー3社とともに参加した。同実証実験は、4社
が共同開発したCACC(CooperativeAdaptiveCruise
Control:協調型車間距離維持支援システム)を用いて一般
車両が走行する高速道路上で隊列走行を行い、社会的な
受容性と技術的な検証を行うもの。異なるメーカーによる高
速道路でのトラック後続有人隊列走行は世界で初めての試
みとなる。UDトラックスは大型トラック新型「クオン(Quon)
で実験に参加した。
 実証実験は後続車両ドライバーの負荷軽減を狙いとし、
将来的には後続車両の無人化をも見据えている。UDトラッ
クスは、こした日本の輸送事業の課題解決に貢献すべく、
今後も日本政府の取り組みに協調していくしている。
 今回の実験の技術的焦点となるCACCは、前後を走る
車との通信により車両情報を共有し、加減速制御を自動化
することで先行車への追従走行の安全性を向上するもの。
例えば、従来のACC(AdaptiveCruiseControl)では、ミ
リ波レーダーやカメラなどの車載センサーが前車との位置関
係の変化を検知した時点で初めて車が自動でアクセルやブ
レーキ操作を行うのに対し、CACCでは、前車のドライバー
がアクセル/ブレーキペダル操作を行った瞬間にその情報が
無線を通じて後続車に伝えるため、よりタイムラグが少ない追
従走行が可能になる。結果、安全性の更なる向上や速度
低下による渋滞の解消、後続車の燃費低減などが期待され
ている。
 UDトラックスは1989年、世界に先駆けてレーザーレー
ダーによる車間距離警報システムトラフィクアイ」を商用化
し、以降もAEBS(先進緊急ブレーキシステム)、LDWS(車
線逸脱警報装置)、ACCなどの高度運転支援技術を積極
的に採用してきた。UDトラックスは、技術の延長として自動
運転を捉えており、引き続き、安全性の向上、環境負荷の
削減、生産性の向上の観点から、隊
列走行に加えて様々な自動運転技術の
開発を進めることになる。
 なお実証実験は、2018年1月23
日〜25日にかけて新東名高速道路、
また1月30日〜2月1日にかけて北
関東自動車道路で行われた。
隊列走行実験…UDトラックス
話題のニュートラック新製品情報・新情報
UDトラックスがトラック隊列走行実験に参加
渋滞解消や後続車の燃費低減などにも期待
異なるーカーによる高速道路のトラク後続有人隊列走行実験実験に参加した新型「クオン」

TheTRUCK2018年4月号89
 UDトラックス㈱は、2018年1月29日から2月19日に
かけて北海道北見市で毎年恒例の寒地走行試験を実施し
た。今年の試験には、3月に発売予定の新型「クオン」
輪駆動除雪専用車2台を含む6台の車両を投入し、述べ
約300名の開発技術者が従事した。この厳しい環境下で
の試験を通じ、UDトラックスの社名の由来であるコアバリュー
「UltimateDependability(究極の信頼)にふさわしい車両
をユーザーに届けつづけるとしている。
 生産財であるトラックは、いかなる気象条件下にあっても問
題なく稼動し、ユーザーのビジネスに貢献する信頼性と耐久
性が求められる。気温が零下20度を下回ることも珍しない
厳寒期の北見市で毎年実施している寒地走行試験は、実際
の使用環境(自然環境)で試験走行をすることにより、総合的
な車両性能の向上に大きく貢献するものである。
 試験は北見市では1985年に初めて実施し、1997年よ
り場所を現在の農道離着陸場に移し今年で33回目となる。
走行試験…UDトラックス
話題のニュートラック新製品情報・新情報
いかなる気象条件下でも稼動する車両提供のため
北海道北見市で寒地走行試験を実施
離着陸場を活用した全長約1㎞の圧雪コースの中には、アイ
スバーン、シャーベット路、くぼ地なども配置され、パワートレ
インやブレーキの性能テストのほか、さざまな路面状況にお
ける走行試験、車両に付着する氷雪の影響確認試験、脱
出試験、エンジン始動試験などの試験を実施。加えて、市
街地や峠などでの公道試験も行い、長い日は1日で約300
㎞を走破した。
 北見市は、低気温ながら比較的降雪が少なく安定した試験
環境を確保できる自然条件に加え、十分な広さのある試験場、
高度な造成技術を持つ地元業者、近隣に技術者のための宿
泊施設や病院、UDトラックスの販売店など、試験に必要な
要素がすべてそろっている。UDトラックス車両実験部マネー
ジャーの渡邉博は、「当社が北見市で寒地試験を継続して行う
とができるのは、北見市および地域の皆さま、販売会社のご
協力・ご支援があってのことです。この関係が今後も末永く続
けられるよう引き続き連携をっていきます」と語っている。
 三菱ふそトラック・バス㈱(MFTBC)は2018年3月16
日、英国(ロンドン市)において、世界初の量産電気小型トラッ
ク「eCanter」をユーザーに納車した。
 新開発の「eCanter」を英国で運行する3社は、運送業の
DPD社、製粉大手のホーヴィス社、物流のウィンカントン社
電気小型トラック…三菱ふそう
話題のニュートラック新製品情報・新情報
世界初の量産電気小型トラック「eCanter」を英国へ初投入
ロンドン内外の配送業社に持続可能な代替輸送手段を提供
で、都市運送システムのために特別に設計された「eCanter」
は、これらの会社の環境に配慮した取り組みに重要な役割を
担っている。
 MFTBCのマーク・リストセーヤ代表取締役社長・CEOは、
「ニューヨーク、東京、そしてベルリンに続き、電気トラック
北海道北見市で行われた寒地走行試験

The TRUCK News
Now
TheTRUCK2018年4月号90
“eCanter”を、ロンドンの先見の明のあるお客様に納車できる
ことを誇りに思います。従来のトラックに代わる排出ガスゼロ
で静かな“eCanter”は、持続可能な都市配送のための理想
的なソリューションです。私たちは、ここで止まません。ダイ
ムラーの広大なグローバルネットワークを活用し、必要なインフ
ラの構築や充電設備設置等による“E-エコシステム”につい
て地域の自治体と協力し、支援していきます。そして環境に
優しい流通システムの発展を促します」と語っている。
 また、メルセデス・ベンツ&ふそトラックUKのマイク・ベ
ルク社長は、「今日はロンドンの運送業者にとって歴史的な日
になりした。完全に電気で駆動するトラックはもはや夢物語
ではありません。私たちダイムラーはすでに車両の生産を開始
し、名の知られたお客様とともに電気トラックを実際に動かし
ています。DPD社やホーヴィス社、ウィンカントン社とこのよ
うな形で関係を構築できることを嬉しく思っています。この3
社と共に、“eCanter”が都市配送事業に有益であると証明し
ていけると確信していきます。同時に、英国において、より
環境に優しく持続可能な都市環境の創出に取り組むロンドン
のような街と協力していけることを非常に楽しみにしています」
と述べている。
 DPDとホーヴィス、ウィンカントンの3社は、ロンドンとそ
の周辺の配送に数台の「eCanter」を運行している。環境に
優しい物流手段を選択した各社は、車両への投資を通じた持
続可能な運行への取り組みの方針を示しており、騒音や排出
ガス削減だけではなく、運用コストの削減も期待している。
 DPDは、200以上の国で1日当たり480万個の荷物を
運ぶ国際的な運送会社で、英国で6,000人以上を雇用し、
2,340台の車両を運行している。最初の2年間は「eCanter」
1台を使用する予定となっている。
 ホーヴィスはハイウィカムを拠点とする製パン製粉業者で、
英国のベーカリーや製粉所、配送センターで約3,200人を
雇用しており、製粉事業においては年間80万トン以上の小
麦を取り扱い、国内およびアイルランドのベーカリーやパン業
者に小麦粉を供給している。ホーヴィスは当面、2台を運行
する。
 ウィンカントンは英国最大の物流会社で、200以上の拠点
で約1万7500人が働いている。3,600台の車両プールに
「eCanter」5台が加わることになる。同社は、持続可能な
道路輸送・配送システムの開発を全国規模で目指している。
■eCanter電動化への道のり
欧州のグローバル物流企業で採用された量産電気小型トラック「eCanter」
米国市場で活躍する「eCanter」

TheTRUCK2018年4月号91
 いすゞ自動車㈱は、栃木工場内に小型トラック向け新型
ディーゼルエンジンの生産を行う工場を新設し、このたび生産
を開始した。
 この新工場では、国内市場向け小型トラッ「エルフ」に搭
載する、平成28年排出ガス規制に対応した新型エンジンの
生産を行う。栃木工場では、従来より大型及び中型トラッ
搭載用のエンジンを生産しているが、今回より国内市場向け
小型トラック用エンジンの生産が加わることになる。なお、海
外市場向け小型トラック用のエンジンについては、引き続き藤
沢工場で生産することになる。
 長年にわたる開発と、欧州や日本での9万㎞以上の徹底
的な試験走行を経て誕生した「eCanter」は、世界初の量産
電気小型トラックである。MFTBCが開発し、欧州、北米市
場向けの生産はポルトガルのトラマガル、日本向けの生産は
日本の川崎工場で行っている。2017年9月にニューヨーク
での世界発表以降、UPS社(米国)や、ヤマト運輸およびセ
ブンイレブン(日本)DHL、DBシェンカー、レーノス、ダクサ(ド
イツ)といった企業に納車されている。
 eCanterは総重量7.5トンで、最大積載量は車体や用途
によって最大4.5トンまで対応。永久磁石モーターを備えた
電気ドライトレインは、365V・13.8kWhの高電圧リチウ
ムイオンバッテリー6個を動力とし、後軸のシングルギアトラン
スミションを経由して135kWを生み出す。1回の充電によ
る航続距離は100㎞を超え、市内配送には十分な距離を実
現している。排出ガスゼロの「eCanter」によって、持続可能
な都市環境の創出に貢献できるだけでなく、従来のディーゼル
トラックと比較して走行1万㎞あたり最大1,000ユーロの運
用コスト削減を可能にしている。
 代替ドライブトレイ
ンの開発において、
ふそうは長い歴史を
持っている。「キャン
ターエコハイブリ
ド」は2005年から
生産されており、ハ
イブリッドドライブトレ
新工場…いすゞ自動車
話題のニュートラック新製品情報・新情報
いすゞの栃木工場内に小型トラック「エルフ」向け
新型ディーゼルエンジン工場を新設
 新エンジン工場
は、スマート工場と
してIoTの活用に
よる徹底した品質
管理や、セル生産
方式(複数の工程
をグループ化)採用
での生産性向上を
図るとともに、加
工ライン飛散物回
インを備えた小型トラックをユーザーに提供している。2010
年にドイツで開催された商用車の「国際モーターショー(IAA)
において、ふそうは電気トラックのプロトタイプ「キャンター
E-CELL」を披露した。その後2014から2017年には、ポ
トガルとドイツで大規模な実用供試を行っている。
 2017年、MFTBCは電気トラッ・バスを扱う「E-FUSO」
ブランドを立ち上げた。2018年、ふそうは実現可能性や技
術の進展に応じて、製品ポートフォリオの電動化を徐々に進
め、電気自動車分野でのダイムラーの豊富な資源プールや
知識を開発に活かすとしている。
■電気商用車ブランド「E-FUSO」について
 MFTBCは、新ブランドである「E-FUSO」を立ち上げること
で、全車種の電動化に向けた取り組みを明確にしている。こ
の取り組みは、電動化プロセスの頂点である大型トラックの
開発だけにとどまらず、今後、ふそうのトラックとバスの全車種
に、電動パワートレインのオプションを追加していく。各車両
の発表時期は、求められる技術力と実現の可能性を検討し
決定するとしている。
栃木工場内の新工場で生産されるエルフ用の
ディーゼルエンジン
日本の集配作業にも「eCanter」は利用されている

The TRUCK News
Now
TheTRUCK2018年4月号92
収システム導入による臭いや汚れの低減化や作業負荷軽減
を狙ったフロアーのフルフラット化、工場内照明の全灯LED
化など、人に優しくクリーンで、かつ環境負荷の少ない最新
の工場となっている。
■新工場の概要
⑴名称…いすゞ自動車㈱栃木第三工場
⑵所在地…栃木工場敷地内
⑶事業内容…国内市場向け小型トラッ「エルフ」搭載用
 エンジン生産(平成28年排出ガス規制対応)
⑷延床面積…約62,500㎡
■栃木工場概要
⑴名称…いすゞ自動車㈱栃木工場
⑵所在地…栃木県栃木市大平町伯仲2691番地
⑶事業内容…エンジン・部品生産
⑷従業員数…1,136人
⑸土地面積…約1,120,50㎡
⑹建物面積…約186,000㎡
トヨタ自動車㈱は、愛知県豊田市の元町工場に、㈱豊田
自動織機製の燃料電池フォークリフト(FCフォークリト)を、
2018年3月16日までに20台導入するとともに、元町工
場内にFCフォークリト専用の水素ステーションを新設した。
2017年1月31日に元町工場へトヨタとして初めて導入した
2台のFCフォークリトと合わせ、元町工場へのFCフォー
クリト導入台数は合計22台となる。
トヨタは、「トヨタ環境チャレンジ2050」の「工場CO
ゼロ
チャレンジ」の達成に向けて、低CO
生産技術の開発・導
入や日常のカイゼン活動に加えて、工場での再生可能エネル
ギーや水素利用に取り組んでおり、今回のFCフォークリフト
導入もその一環となる。今後も、「工場CO
ゼロチャレンジ」
FCフォーク…トヨタ
話題のニュートラック新製品情報・新情報
トヨタ自動車が工場における水素利活用を加速
元町工場に燃料電池フォークリフトを20台導入
の実現に向け、現在使用しているエンジン式フォークリフトを
FCフォークリフトに置き換えていく予定で、2020年頃までに
元町工場へ170〜180台のFCフォークリフトを導入する
予定となっている。さらに、元町工場以外の工場においても
FCフォークリフトの導入・利用を推進していくしている。
 なお、今回追加導入したFCフォークリフト20台は、環
境省・経済産業省連携事業である「水素社会実現に向けた
産業車両の燃料電池化促進事業」を活用して導入したもの
である。
豊田自動織機製の燃料電池フォークリフト
小型トラクの代名詞とも呼ばれている「エルフ」
FCフォークリトは3分程度で燃料充填が完了する高い利便性を備えている

TheTRUCK2018年4月号93
■FCフォークリフトについて
 水素を燃料として発電して稼働するFCフォークリフトは、
稼動時にCO
や環境負荷物質を排出しない優れた環境性能
と、3分程度で燃料充填が完了するなど高い利便性を備えて
いる。さらに、外部給電機能により災害などの非常時に電源
しても活用が可能である。
 日通商事㈱大阪工場はこのたび、大阪新工場「ALOZ 
OsakaMaintenanceCenter」として生まれ変わり、2018
年2月26日に竣工式を行った。落成披露パーティーには顧
客をはじめとする関係者約150人が出席。日通商事の新居
康昭社長が施主を代表し、ナカノドー建設、日通不動産な
ど関係各社へ感謝を述べ、大阪新工場を全国のモデル工場
と位置づけ、更なるサービス充実に努めたいと挨拶した。
 同工場は、昭和46年の開業以来大阪府北東部で大型車
両・重機の車検・点検・修理を行ってきた。今回の新大阪工
場は、甲子園球場のグランドがすっぽり入る広大な敷地に最
新鋭の設備を導入し、整備棟には9ドックのスペースを確保す
るともに、工場構内は前進一方通行による安全・安心な動
線により、安全性の高い作業と作業効率向上が図られている。
 重機棟は5ドックを有し、高さ18m・長さ20mのブーム
起伏を可能にし、200tクラスクレーンの屋内作業が可能とな
る。塗装棟は作業環境に優しい、高品質な仕上がりを実現
する最新のプッシュプル排気設備が採用されている。
■大阪新工場・施設概要
・名称…日通商事㈱大阪支店整備部大阪工場
・住所…大阪府守口市大日町1-5-3
・敷地面積…15,100㎡(4,600坪)
・車両整備工場…1,343㎡(400坪)
新工場…日通商事
話題のニュートラック新製品情報・新情報
大阪新工場「ALOZOsakaMaintenanceCenter」竣工
全国のモデル工場に位置づけてサービスを充実
・重機整備工場…1,159㎡(350坪)
・塗装工場…448㎡(136坪)
・主要業務…大型車両・重機の車検・点検・修理・塗装等
2020年頃までに元町工場へ170〜180台のFCフォークリト導入を計画元町工場内のFCフォークリト専用水素ステーショ
大阪新工場「ALOZ OsakaMaintenanceCenter」
落成披露パーティーで挨拶する日通商事の新居社長

The TRUCK News
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TheTRUCK2018年4月号94
 トヨタ自動車㈱とJapanTaxi㈱(本社:東京都千代田
区/川鍋一朗社長)は、KDDI㈱(本社:東京都千代田区
/田中孝司社長)、アクセンチュア㈱(本社:東京都港区
/江川昌史社長)と共同で、タクシー運行実績にスマー
トフォンの位置情報ビッグデータを利用して生成する人
口動態予測やイベントなどの情報を掛け合わせて予測
したタクシー需要を配信する「配車支援システム」を開発
し、東京都内で試験導入を開始した。
 このシステムに使われるタクシー需要予測技術は、人
工知能(AI)を活用して東京都内500mメッシュ毎のタク
シー乗車数を30分単位で予測するもの。4社は、タク
シー運行実績や人口動態予測だけでなく、タクシー需要
への影響が大きい気象、公共交通機関の運行状況、大規
模施設でのイベントなどのデータをAIに取り込み、需
要の大小に応じた複数の学習モデルを適用している。こ
のタクシー需要予測技術の精度を東京都内で検証した結
果、正解率94.1%という高い精度を実現することがで
きた。
 4社は、2018年2月から同システムをタブレットに
実装して、JapanTaxiの関係会社である日本交通㈱のタ
クシー数台に試験導入することで、実環境での有効性の
検証を開始している。タクシーに搭載されたタブレッ
配車支援システム…トヨタ他
話題のニュートラック新製品情報・新情報
人工知能活用のタクシー「配車支援システム」を試験導入
タクシー業界の変革を目指すサービスの開発を加速
トの地図上には、予測されたタクシー乗車数だけでな
く、周辺の直前の空車タクシー台数も同時に表示されて
おり、ドライバーは需要と供給のバランスを見ながらタ
クシーを運行できる。これにより、需要が大きいものの
空車タクシーが少ない場所に車両を集めることができ、
乗客の待ち時間を減らせるだけでなく、車両の最適な
配置によってタクシーの乗車率を向上することが可能と
なる。また、営業成績の良いドライバーの知見に基づい
「乗客を見つけやすい走行ルート」のデータを、ドライ
バーはタブレット上で受け取ることができる。
 今回の試験導入では、実際に本システムを利用したド
ライバーの2月の売り上げが平均で前月よりも1日あた
り20.4%増え、ドライバー全体の増加率9.4%を上回る
成果が出ている。今後、順次試験導入するタクシーを数
十台に増やして2018年度中の実用化を目指す。4社は、
同システムがタクシーの利便性を高めるほか、新人タク
シードライバーの研修ツールとしても活用できるなど、
タクシー業界の変革に貢献すると考えている。また、今
後タクシー車両向けに順次搭載を拡大していく通信型ド
ライブレコーダー「TransLog」から収集される「走行画像」
の解析結果と、タクシー需要の相関関係の研究も進め、
本システムに活用することも検討している。今後も、同
トヨタのタクシー  「配車支援システム」概要図

TheTRUCK2018年4月号95
システムの発展を通じて、快適なモビリティ社会の創造
に貢献していくとしている。
■各社の役割
◇トヨタ
 ・収集したビッグデータの加工・分析をモビリティサー
ビス・プラットフォーム(MSPF)で行い、タクシー
需要の予測情報をJapanTaxiに提供。
 ・気象、公共交通機関の運行状況、大規模施設でのイ
ベント情報などタクシー需要に影響するデータの確
保。
◇JapanTaxi
 ・タクシードライバー向けタクシー需要予測情報の配
信アプリの開発。
 ・タクシー会社を通じたタクシー運行実績、空車タク
シーの位置情報、乗客を見つけやすい走行ルートの
収集および提供。
◇KDDI
 ・KDDIが保有する位置情報ビッグデータを活用した、
移動や滞在などの人の動きを加味した人口動態予測
技術の開発および予測情報の提供。
◇アクセンチュア
 ・他3社と共同で要件を定義しタクシー需要予測エン
ジンのAI分析アルゴリズムを開発。
■JapanTaxi株式会社について
「移動で人を幸せに」をテーマに、日本最大のタクシー
アプリ「全国タクシー」、タクシー車内サイネージ広告
「TOKYOPRIME」、多言語対応・決済機付きタブレット
など、新しい公共交通のインフラ創造を目指すモビリ
ティ分野のソフトウェア・ハードウェア開発を行うIT
ベンチャー企業。
「全国タクシー」アプリについて
 シリーズ累計ダウンロード数400万超(2017年12
月現在)、47都道府県・約60,000台(全国のタクシー
台数の25%)のタクシーを呼べる日本最大のタクシー配
車アプリ。多言語対応(英語・中国語・韓国語)、タクシー
料金検索、クレジットカード/QRコードによるキャッ
シュレス決済などの利用可能。

ボデー架装業、整備業、部品販売業と運送業へのアーカイブ
TheTRUCK2018年4月号98
1.喫煙
 親に隠れて初めてタバコを吸ったのは高校3年生
の時で、銘柄はスリーエー(3A)だった。布団の上
で煙を大きく吸い込み、体を傾けるとバタンと倒
れ、タバコの持つ覚醒効果の強さを感じた。
 高校時代、少数の同級生が校内で喫煙して停学に
なったり、繁華街で警察の補導を受けたりする輩も
いて、“20歳以下禁煙”とする未成年者喫煙防止法
が正しく指導されていたように感じる。コンプライ
アンス(Compliance:法令遵守)が求められる時代
に、法律があっても未成年者が喫煙する姿を見ても
誰も注意や取り締まりをしない最近のルーズな世相
が気に障る。
 戦前、1937年(昭和12年)に発売されたコミック
調なデュエット曲“タバコ屋の娘”や、ザ・プラター
ズが歌う“煙が目に染みる(SmokeGetsInYour
Eyes)”など、タバコを題材にした名曲も数多く生
まれている。
 成人すると常習的に喫煙するようになりいろいろ
な銘柄のタバコを吸った。臭いの良いバージニアブ
レンドの“富士”、巻きの固い“ピース”、安い値段
が魅力だった“ゴールデンバット”などの国産タバ
コが懐かしい。当時は秦野市(神奈川県)などの農家
でもタバコ葉が栽培されたが、高齢化や人手不足な
どから国内でタバコ栽培をする農家はほとんど見ら
れなくなってしまった。
 社会人になると海上コンテナの顧客だったシーラ
『
煙草(タバコ)
 仏壇の脇に祖父が炬
󱢔󱢠󱢥
燵に入り、美味しそうに煙
󱢍󱢜󱣌
管で煙草を吸っているセピア色
に変色した写真が置かれている。その表情からは煙草の美味しさに酔いしれ
て、至福のひと時を感じているように見える。
 戦後の間もない幼少の頃、父親が吸っていたタバコの銘柄はオレンジ色を
した固い箱の“光”や柔らかい包装の“いこい”“新
󱢘󱣔󱢜󱢃
星”だった。父親がリング(輪)
状にして吐き出した煙の臭いが懐かしい。祖父や父親らが美味しそうにタバコ
を吸う姿や、俳優のアラン・ドロンやジェームス・ディーンらが格好よく喫煙す
る姿、映画“シャレード”で長いパイプでお洒落にタバコを吸うオードリー・
ヘップバーンらの姿から成人したらタバコを吸いたいと思っていた。
ゲンケートジャパンコンサルティング
井上元
“元さんの従心こばなし”

TheTRUCK2018年4月号99
ンド社の所
󱣫󱥄󱤍󱥄
有者がレイノルズタバコ会社(Reynolds
TobaccoCo.)だったので、真っ赤なパッケージに
入った“ポールモール(PallMall)”やラクダが印刷
された”キャメル(Camel)らの同社が生産するタバ
コに親近感を感じた。1871年に販売が開始され戦時
中、米兵が好んで喫煙した歴史のある“ラッキース
トライク(LuckyStrike)”、吸い口が楕円形をした
ドイツの“ゲルベゾルデ(GelbeSorte)などの特徴あ
る通称“洋もく”を喫煙し、設計担当になると喫煙
量は大幅に増えて指先は黄色く変色していった。
 麻雀の最中にはタバコが切れると灰皿に捨てられ
たタバコを吸う“シケモク”をしたが、従心世代に
なって振り返るとなんとも悍
󱢉󱢟
ましいましい光景だっ
たのかと恥ずかしくなる。
 首都圏を走る電車内では当時、タバコの喫煙は
認められ、車両内には灰皿が取り付けられていて
車内喫煙が当たり前だった。駅のホームや線路内
には吸い殻がたくさん投げ捨てられ、街の景観を
汚していた。
2.煙管、葉巻、パイプ
 時代劇では遊郭の遊女が火鉢に寄り添い煙
󱢍󱢜󱣌
管でタ
バコを吸う姿は妙に艶っぽく感じる。煙
󱢍󱢜󱣌
管は燃焼部
と吸い口を真鍮で作り、中央部の竹材で燃焼部と吸
い口部を繋いでいる。乗車駅と降車駅の乗車券だ
けを持ち、その間の区間を無賃乗車する行為を“煙
(キセル)乗車”と呼んで、車内ではキセル行為の
防止に車掌による検札が頻繁に行われた。現在では
電子改札やICカードの普及で無賃乗車も難しくな
り、キセル行為は懐かしい言葉になってしまった。
 パイプを吸う大人の姿を初めて見たのは連合軍司
令長官のマッカーサー元帥がコーンパイプを咥えて
厚木飛行場に降り立った写真を見たのが最初であ
る。トウモロコシでパイプを作れることが不思議に
感じた。
タバコ葉の栽培農園(ハバナ郊外 キューバ)
タバコ葉の選別作業(ハバナ郊外 キューバ)
1845年8月厚木飛行場に到着しコーンパイプを
手にタラップを降りるマッカーサー連合国総司令官
(“かながわの記憶”神奈川新聞社発行)
タバコ葉の乾燥作業(ハバナ郊外 キューバ)

ボデー架装業、整備業、部品販売業と運送業へのアーカイブ
TheTRUCK2018年4月号100
 イギリスのチャーチル元首相がゆったりとソファ
に座ってパイプを吸う姿には紳士の雰囲気を感じ、
ロンドンではジャーミンストリートの喫煙具店でダ
ンヒル製のブライアーヤパイプを購入した。
 キューバ革命を成功させたカストロ首相やチェ・
ゲバラが葉巻を吸う姿も格好いいので葉巻も吸っ
た。パイプや葉巻の甘い香りは紙巻タバコとは全く
別物の嗜好品と感じた。米国の友人から葉巻はエヤ
コンで室温が管理された販売店で買うことを奨めら
れたので、米国出張時には毎回、数本の葉巻を購入
するのが常になった。
 パイプや葉巻を吸う時代が何年か続いたが、鏡に
映る自身のパイプや葉巻を吸う姿は、チャーチルや
ゲバラとは似ても似つかないもないほどにダサイと
感じ、次第に吸わなくなっていた。
 禁煙期間が40年を超えた今でも、パイプや葉巻
の甘い香りには再度、喫煙への誘惑を強く感じる。
3.マッチとライター
 戦後の横浜には占領軍に所属する米軍兵をたくさ
ん街中に見かけた。日本のマッチは軸の頭薬と箱部
のヤスリ状の側薬を擦ってマッチに火をつけるが、
米軍兵らは頭薬をどんなものにこすりつけても発火
する硫化燐マッチを使用していたので、米軍兵が
マッチを靴の裏で擦ってタバコに火をつける仕草が
手品のように思えて不思議だった。
 米軍兵らが使用するライターはオイルライターの
“ジッポー(Zippo)を”を使用していた。“ジッポー”
は風防がついているので風に強く、戦時中から広く
愛用され、現在でも愛煙家には人気のあるライター
になっている。タバコに火をつけるライターの位置
は心臓の前になるので、戦地での日本兵からは火が
消えにくいジッポライターが格好の標的にされたと
いわれ、“ジッポー”の名声は上がった。
 経済が良くなると英国製の“ダンヒル”やフラン
ス製の“カルティエ”、米国製の“ロンソン”など
の高級ライターがお洒落な愛煙家や高級クラブの女
性らに人気となっていたので、海外へ行った新婚旅
行の記念にと金張りの“カルティエ”ライターを買
い求めた。お洒落なライターで火をつける女性の所
作や、ライターを持つ暖かい手の温もりも、禁煙し
た今では懐かしい思い出になっている。
 1970年代の後半から高級ライターの普及に反発す
るように実用的な100円ライターが登場した。文化
ダンヒル製“ブライヤーパイプ”
エヤコンで室温管理されて販売される高級葉巻(ハバナ市内
キューバ)
一本単位でケースに挿入されて売られる高級葉巻

TheTRUCK2018年4月号101
大革命後から日が浅かった頃の中国への出張では、
使い捨ての100円ライターが土産品として喜ばれた。
 現在でも物資の乏しいキューバでは、国内では使
い捨てされる100円ライターに穴をあけ、ガスを注
入するビジネスが路頭で一般的に行われている。 
 経済状況や時代変化に合わせてタバコの着火具の
変化を見るのも楽しいが、電子着火方式が一般的に
なり、喫煙者も減っていく今日、マッチを擦る機会
も少なくなり、お洒落なライターを目にする機会も
減っていることに一抹の寂しさを感じる。
4.禁煙
 日に日に喫煙量は増えて20本入りの“ハイライ
ト”を毎日3箱も吸うチェーンスモーカーになり、
次第に咳をすることも多くなっていった。
 米国で禁煙運動が広がっていった。海外出張時、
米国のコーヒーショップでは喫煙者は奥の小さな一
角に押し込まれ、シンガポールではエヤコンが運転
されている室内はすべて禁煙、中国の空港でも吸っ
たタバコを“ポイ捨て”すると罰金がとられるよう
になり、次第に喫煙を遠慮する行動が求められた。
 工場勤務では年末に大掃除をする。喫煙者が多
かった事務所の蛍光灯や机の脇はタバコのヤニ
(タール)で黄色く変色していた。ベットリと付着
した茶褐色のヤニに洗浄剤を吹き付けるとドロド
ロと垂れ落ちてくる。茶色くベットリしたヤニが
自身の肺の中にも付着していると考えると気持ち
悪くなった。
 新幹線では禁煙車両から喫煙可能車を抜けると、
タバコの煙と臭いに気分が悪くなるほどだった。飲
食店の女性がタバコの臭いが洋服に付着することを
気にしながら、タバコを吸うお客の隣で嫌な顔も見
せずにサービスする姿に感心する。
 飛行機に搭乗すると離陸から数分して禁煙(No
Smoking)のサインが消えると、乗客が一斉にタバ
コに火をつけるので機内は瞬く間に煙で充満した。
 当時、喫煙が許されていた新幹線や飛行機のエ
ヤーダクト内のタバコのヤニの除去はさぞかし大変
な作業だったと想像し、禁煙が当たり前になった最
近では、機材に付着したヤニの除去費用も大きな削
減がされたと思う。
物資の乏しいキューバでは使い捨てライターに穴をあけてガ
スを充填するビジネスが路頭で行われている(ハバナ市内
キューバ)
フランス製“カルティエ”ライター。“ダンヒル”ライターと並び
高級ライターとして人気が高かった

ボデー架装業、整備業、部品販売業と運送業へのアーカイブ
TheTRUCK2018年4月号102
 飛行機内での全面禁煙があたりまえになり、最
新鋭のボーイング787(B787)型機では“禁煙のサ
イン灯”の取り付けがなくなり、シートベルト着
用のサイン灯だけになっていることに時代の変化
を感じる。
 喫煙が原因とは思わないが、香りの良いピース
の缶入りを吸う友人は肺がんを患い、ハイライト
の好きだった友人は肺水腫になって亡くなった
ので、発がん性物質が含まれているタバコのヤニ
(タール)は体に害があると感じ、33歳のゴールデ
ンウィークの5月2日に“禁煙”した。
 禁煙すると鶯が鳴くように酷かった咳も一週間
もすると全く止まった。
 禁煙してみると喫煙中はポイ捨てをして道路や
ホーム、線路内を汚したり、室内や輸送機器内の喫
煙では煙を吐き出してヤニを付着させたり、隣に着
席する女性の衣服にタバコ臭を付けたりと、周囲に
迷惑をかけていたことを知った。
 喫煙者の減少や嫌煙活動で指定された喫煙場所
でマナーを守ってタバコを吸う愛煙家がふえたこ
とで、国内ではパリの道路のように道路上に汚く
ポイ捨てされたタバコの吸い殻を目にすることは
少なくなった。また、ニュースでも寝たばこが火
事の原因だったとの報道も少なくなったように感
じる。
 受動喫煙によるタバコ被害から身体を守るために
禁煙場所等の法制化が検討されているが、なんでも
法律で規制することなく、シケモク、モク拾い、
󱢍󱢜󱣌
管、きせる行為などタバコにまつわる言葉が死語
になっていく時代に、愛煙家には他人に迷惑をかけ
ない、気配りのある喫煙を心がけて、パイプやライ
ターなどの喫煙具や音楽なども含めて伝統あるタバ
コ文化を継承して欲しい。
 禁煙してから40年が過ぎた。タバコのリラック
ス効果や旨さ、美味しさを知っているので禁煙後は
一本のタバコにも、ライターやパイプにも一切、手
を触れていないが、未だに“タバコはリラックス効
果があって美味しい!“と思うので、過去が長く将
来が短くなった人生で再度、喫煙したい気持ちも沸
いてくる。
 喫煙していた半世紀前、青春時代に購入したダン
ヒル製のパイプ、カルティエ製のライターなどの思
い出の喫煙具は“箪
󱢠󱣔󱢚
笥の肥やし”になっている。
現在では死語になった“もく拾い”。戦後、米軍兵が捨てたタ
バコを拾い集め、ほぐして巻いて売った(“かながわの記憶”神
奈川新聞社発行)
マナーを守って指定された場所で喫煙する国内の愛煙家(新
橋東京)