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【対談】水素社会実現に向けて

TheTRUCK2018年1月号18
巻頭
煮詰まったあと
経済ジャーナリスト
大島春行
「時代を読む」
『二つのモーターショー』
 東京のモーターショーは毎年秋に開かれるが、
アメリカでは毎年1月に、ビッグ3の拠点都市デ
トロイトで開催される。ニューヨーク特派員をし
ていた関係で、2001年から2003年まで毎年年が
明けるとデトロイトに行ったが、一番印象に残っ
たのは2003年のモーターショーだった。
 この年世界の自動車メーカーは一斉にSUV(ス
ポーティーな多目的乗用車)を主力製品に据え
た。ポルシェのブースは流線型の美しい二人乗り
のスポーツカーを傍に押しやって、四角いカイエ
ンをセンターに置いた。イタリアのランボルギー
ニのブースですら何やら角ばった車が真ん中に居
座っていた。GMは軍用車を民事転用したハマー
を、アウトドア車として全面的に売り出すべく
並べた。横に3人も4人も座れそうな大きな車
だ。会場にいたGMのワゴナーCEOに「日本に
輸出する気はないのか」と聞いたら、得意満面の
表情で「このクルマの燃費は、日本の消費者には
とても払い切れないよ」と応じていたのを覚えて
いる。「ガソリンを喰うクルマ」を本気で自慢して
いた時代が、ほんの十数年前にまだあったのだ。
もっともこの5年後にGMは経営破綻する。
 今年の東京モーターショーは、「ガソリンを使う
クルマはもう作らない」というのが合言葉になっ
たように、EV一色になった。15年を隔てた二つ
のモーターショーだけを比べても、クルマ社会が
大きく変わろうとしているように感じられる。
『EV時代の到来』
 しかし今後3、4年で本当に新車が全部EVに
なるのだろうか。そんなことがにわかに実現する
とは到底思えないが、ここは気合というものだ。
メーカーの中には何が起きているのかよく判らな
いままにEV化を唱えているところも少なからず
あるのだと思う。「潮目が変わり始めたのだからそ
れに乗らなければ生き残れない」という経営判断
だろう。訳が判らないままにワッショイワッショ
イ走り続けているうちに本当に新しい流れが出来
てくるということもあるかも知れないのだ。
 一方でEV転換宣言は、ハイブリッドに代表さ
れる日本車の独走に対抗するために欧州勢がぶち
上げた苦肉の策に過ぎないという覚めた見方もあ
る。EVへの転換という機運は盛り上がっている
ものの、どうもスローガンだけが上滑りしている
という印象もある。遅かれ早かれEV車がガソリ
ン車に取って代わるのは間違いないとしても、掛
け声だけでなく本当にクルマ社会の変革が起きる
には、もうひと押し何かが足りない、そんな気が
する。
『煮詰まった近代工業システム』
 そもそもなぜこの時期に一斉にEV機運が盛り
上がったのか。それは一言で言えば、T型フォー
ドが本格生産を始めてから百余年経って、ガソリ
ンで走るクルマの開発が煮詰まってしまったから
だ。エンジンや燃料も色々変えてみたし、デザイ
ンも変えた。流線型のデザインが行き着くところ
まで行ってしまったので、今度は角ばったスタイ
ルに変えたように。色々な意味で、ガソリン車の
可能性はもう追求され尽くしたというわけだ。
 もっと言えば産業革命から二百年、化石燃料を中
心に成り立ってきた近代工業システムそのものも結
構煮詰まってきたとも言える。良い製品を大量に安
く作るという製造業のこれまでのゴールだけでは、
目が肥えた消費者は満足しなくなったのだ。
 クルマに限らずあらゆる社会経済システムにつ
いて言えることだと思うが、物事が煮詰まってく
ると、やがてシステムそのものが根本的に変わっ
ていく。ガソリン車を巡るこの百年のシステムと
産業革命以来この二百年の近代工業システムとは
比較的関連性が高いので、変革はおそらく同時に
起きる。そして両方ともいつ起きてもおかしくな
いほどに煮詰まって来ている。

TheTRUCK2018年1月号19
『急速に拡大する消費市場』
 もう一つ、時代の変革を求める要素がある。そ
れは新興国の台頭がもたらす消費市場の急速な拡
大だ。産業革命以降、世界の企業は購買力を持つ
先進国の消費者を相手にモノやサービスを提供
してきた。この市場が欧米と日本を中心に10〜
15億人位だろうか。ところがここに中国が、そ
して今世紀に入ってからはインドなどアジアや
BRICKsなどの新興国の、今は低所得だがやがて
購買力を伴った消費者になる可能性のある人たち
が加わってくる。これがざっと40億人余りで、
2050年までに、購買力を伴った消費マーケットは
一気に50億人規模に膨れ上がると言われている。
 クルマを作る側から見ると、マーケットが10
億人から40〜50億人規模に拡大することは、売
り上げが何倍かに増える可能性が出て来るので大
いに好ましいはずだが、単純に喜んでばかりはい
られないのは排気ガス問題があるからだ。クルマ
の排気ガスだけが悪いわけでは勿論ないが、クル
マが量産されて以降この100年で温暖化が随分進
行したのは事実であり、もはや放置できない状況
に来ていることも共通認識となって来ている。石
油をジャブジャブ使って享受するような繁栄や豊
かさは、もはや許されない環境となって来た。
 石油中心の社会経済システムが相当煮詰まって
来たこと、新興国の急速な成長による消費市場の
爆発的拡大という二つの要因が反応し合って、時
代は「脱石油」のベクトルに向かい始めている。そ
ういう文脈の中でEVや燃料電池車の開発が急務
となっているのだ。
『煮詰まった後』
 ここまでは予想がつくとしても、判らないのは
いつ本当の変革が起きるのか、それがどういう形
で現実になるのかということだろう。判っている
のは、何かひと押しがあると一気に動くというこ
とだ。しかし何がきっかけになるかは判らない。
流れの渦中にいればいるほど、それは見えないの
だ。それは同時代に生きている人間の宿命であり
限界でもある。
 きっかけについて言えば、例えばロック歌手
のデビッド・ボウイが1987年にベルリンの壁の
前でコンサートを開き、HEROSという歌を歌っ
た。スピーカーの一部を東ベルリンの側にも向け
たために、壁の向こうにもよく聴こえた。
 君が泳げたらいいのに
     イルカのように 自由に
 今は一緒になれないけれど
     きっとくつがえせるはずだ
 その時 ぼくらはヒーローになれる
     たった1日だけの
 集会の自由が認められていなかったにもかかわ
らず、壁の向こうでは大勢の若者が集まった。秘
密警察の担当者が無線機を口に当てながら、しか
しなす術もなく呆然と立ちすくんでいる映像が記
録されている。デビッド・ボウイのメッセージは
強烈に向こう側に届いた。2年後に東ベルリン側
から壁は崩壊する。すぐれて政治的な案件が、ロッ
ク歌手のひと押しで一気に動くとは誰も想像出
来なかったに違いない。ドイツ外務省は2016年
に亡くなったデビッド・ボウイを追悼し、「ベルリ
ンの壁の崩壊に力を貸してくれた」という感謝の
メッセージを発表した。
 わたくしが一番注目しているのは、EV業界を
リードしているテスラの経営問題だ。もし資金難
が噂されるこの会社の経営問題が深刻になって、
テスラが築きあげた卓越したEV生産のプラット
フォームが自動車メーカーの手に渡るのであれば
別に何も起こらないだろうが、思いがけない新規
参入者の手に渡ればとんでもない大化けが実現す
るかも知れないと考えるからだ。まあしかし、そ
もそもこれは正月のお屠蘇にいささか酔った素人
の妄想に過ぎないのだけれど。

TheTRUCK2016年1月号20
新年スペシャル対談
長距離トラックこそ
FC
(燃料電池)が最適
水素の安定供給には
規制緩和も必要
「爽やかな笑顔とカラッとした透き通るような声…まるでアニメ本から飛び出して来た
ようなショートカットの女の子」…元内閣総理大臣、小渕恵三氏の地盤(群馬5区)
継ぎ、若干26歳でトップ当選を果たして政治の表舞台に登場した小渕優子氏を最初
に見た時の印象である。あれから17年の歳月を経て小渕優子氏は44歳。議員になっ
てから授かった2人の子供は10歳と8歳に成長し、空手の稽古に励んでいるという。
 2014年10月号で対談した小池百合子氏(現東京都知事)がFCV(燃料電池自動
車)を中心とした水素社会実現を促進する研究会の会長であったので、FCトラックの
普及促進に期待したが、都知事に立候補した時点で、その会の会長は小渕優子議員に
バトンタッチされた。その縁もあって何とか小渕議員とも面談したいと考えていたが、
10月号で対談した㈱LUCの内田光彦会長が地元で親しいことを知り、仲介を依頼し
たところ快く引き受けて頂いた。
 12月号で経済産業省の河野太志自動車課長の対談を掲載した(32P)直後でもあ
り、本誌としてはグッドタイミング。FCトラックの普及促進と課題についても十分伺う
ことが出来たし、筆者の提案に賛同を得ることも出来た。
 先端技術のブレーキシステム企業に勤務する倅(篤)と生年月日がほぼ近い小渕議員
は誠実で勉強熱心。凛とした立ち居振る舞いは現代女性の生き様を身をもって示して
いるようである。(秋林路)
小渕優子(元経済産業大臣・衆議院議員)
ゲスト

TheTRUCK2016年1月号21
小渕優子氏(元経済産業大臣・衆議院議員)
FCV(燃料電池自動車)を中心とした水素社会実現を促進する研究会会長
カメラ:沢邉優子
テレビ局を辞めて総理の
 私設秘書に…
秋林路 本日はご多忙のところ
有り難う御座います。本誌は物流
の中でもとり分けトラックと運送
の分野を中心に扱っております。
 ご承知の通り日本は本格的な少
子高齢化時代を迎えまして、ト
ラック運送業界ではドライバー不
足が深刻になっております。ま
た、技術面ではトラックも自動運
転や電気自動車が現実のものに
なって参りました。優子さん(小
渕優子議員、以下同じ)はFCV(燃
料電池自動車)を中心とした水素
社会実現を促進する研究会の会長
も務めておられますので、後ほど
その取り組みについてお伺いした
いと思います。ただ、折角の機会
ですので、ご尊父との思い出など
もお聞きしたいと思います。ここ
に掲げてあります『平成』の額は本
物ですか?
小 渕 いえ、由緒正しい偽物
です(笑)。実は本物は暫くの間竹
下登先生のご自宅に保管してあっ
たのですが、竹下先生がご他界な
さった後、国立公文書館に預けら

TheTRUCK2016年1月号22
新年スペシャル対談
れることになり、その時に2点の
レプリカを作成頂きまして、その
ひとつをここに飾らせて頂いてお
ります。
秋林路 そうでしたか。私は昭
和の生まれですが、この『平成』の
元号をご尊父がテレビの前で公表
されました時のことを鮮明に覚え
ています。あれから29年も経ま
した。再来年5月には新しい元号
になると思いますので、順調に行
けば私も3世代を生きることにな
ります。
小 渕 そうですね。再来年は
東京オリンピック・パラリンピッ
クを翌年に控えていますし、歴史
的な年になると思います。
秋林路「内平かに外成る、
地平かに天成る」の語源からな
る“平成”は歴代総理の師と崇め
られた故安岡正篤先生が命名さ
れたと聞いておりますが、当時
全国師友協会で安岡先生のご講
義を聴講する機会に恵まれまし
た。倅は優子さんと同じ昭和48
年に生まれたのですが、安岡先
生のお名前の一字を頂いて篤
󱢁󱢥󱢘
名付けました。今はブレーキシ
ステムでは世界第二位の会社に
勤務しております。
小 渕 そうですか、安岡先生
のお名前から…。生まれ年も同じ
で奇遇ですね。
秋林路 はい、子供世代が政治
の中枢を担う時代になったことは
感慨ひとしおです。優子さんは
大学卒業後はTBSにご入社です
が、いつ頃から政治家を志してお
られたのですか。
小 渕 父は私が生まれた時か
らずっと政治家でした。子供もあ
る程度年齢が嵩むと選挙の手伝い
をさせられますから、ずっと政治
の近くには居たのですが、政治に
関心があるのと、自分が政治をや
るのとでは大きな違いがあるんで
すね。私としては、父の政治家と
してのサポートはして来たけれど
も、自分でやるという感覚ではな
かったです。
秋林路 でも、大きな転機に見
舞われる事になった訳ですよね。
小 渕 実は、TBSに入社
して何年目かに父が総理大臣に
なったんですね。ちょうど景気
の悪い時期でしたし、とても不
人気な総理でしたので、毎日マ
スコミのバッシングを受けてい
て、私としては可哀想で見てら
れなくて、局の近くだったので、
仕事が終わってから首相官邸に
「大丈夫?」と父を見舞っていたん
です。父は「私は大丈夫だから、
お前は自分の仕事をキチンとや
りなさい。と言ってました。で
も、当時の父はホントに忙しく
て、何かあったらいけないので、
パジャマに着替えても横になら

TheTRUCK2016年1月号23
なくて、上着を羽織ってソファー
で過ごす状態がずっと続いてい
たんです。そんなにくしゃくしゃ
になって働いている父を見てい
て、ここで父を支えないと私は
一生後悔することになると思っ
て、TBSには未練もあったので
すが、局を辞めて父の私設秘書
になったんです。
秋林路 総理大臣の秘書ですか
ら、いきなり政治のど真ん中です
よね。
小 渕 そうですね。政治を間
ぢかで見るという意味では、非常
に良い勉強をさせて頂きました
し、地元群馬の皆様との交流も出
来るようになりました。それと、
父が夫婦で海外に行くときには一
緒に行って、母のサポートもさせ
て頂くことが出来ました。
突然の別れと
 政治家への転身
秋林路 総理大臣の仕事が激務
であることは、今の安倍首相を見
ていても分かります。優子さんが
秘書として近くに居てくれること
が、どれだけ大きな支えになった
か、言葉には尽くせないと思いま
す。
小 渕 でも突然父が倒れてし
まって…。4月に秘書になって翌
年の4月に倒れて約一ヶ月半意識
がなくて、そのまま逝ってしまっ
たので「お前後を頼む」とか引き継
ぎは一切出来なかったんです。で
も『後継は優子さん』と新聞に出て
しまって、やるしかない状態に
なっていくのですが、当時、地元
群馬で最もお付き合いが多かった
のが私でしたので、地元の皆様の
意向が強く反映されたと思いま
す。
秋林路 小渕家はお祖父さん
(初代小渕光平)も叔父さん(二代
目小渕光平)も政治家だし、まし
てやご尊父は現役の内閣総理大臣
でしたから、地元の皆さんは大変
だったと思います。優子さんは若
干26歳でしたからね。
小 渕 政治家がいかに大変な
仕事であるか、という事は小さい
頃から父を見て育っていますの
で、よく分かっていました。26
歳の若さで良いのだろうかという
想いはありましたが、それこそ父
が命をかけて取り組んで来た仕事
ですから、このままにしておいて
良いのか、という気持ちはありま
した。とくに私は父親っ子、ファ
ザコンの極みみたいなところがあ
りましたので、父に認めて貰いた

TheTRUCK2016年1月号24
新年スペシャル対談
いという気持ちも強くて、政治の
お仕事をすることが、父の意志を
継ぐことにもなるし、地元群馬の
皆様に何か貢献出来るのではない
かと思って、政治家になる事を決
断しましたね。
秋林路 正直言って凄い決断で
あったと思います。私の26歳を
振り返ってみますと、まだ右も左
も分からない駆け出し記者でした
ので、その年齢でトップ当選を果
たしたのは驚異的です。
小 渕 実は、父も26歳で初
当選していますので、何か因縁め
いたものを感じています。しかも
父も私も干支は同じ丑年なんです
よ。(笑)
秋林路 そう言えば、ご尊父の
父君(優子さんのお祖父さん、小
渕光平)も亡くなられたのは同じ
順天堂大学医学部附属順天堂医院
で、死因も同じ脳梗塞だったそう
ですね。
小 渕 そうなんです。ただ祖
父が亡くなったのは、父が19歳
の時ですから、立候補するまでに
少し時間があったのですが、私の
場合は即でしたので、あまり考え
るゆとりもなかったですね。
秋林路 それが“若さの力”だ
と思います。それに優子さんの
場合は“美貌”と地元群馬の絶大
なバックアップがありましたの
で、一躍『時の人』になられたと
思います。
小 渕 実は、私自身が26歳
で何が出来るのか、大きな不安
があったのは確かなのですが、
マスコミの方が「その若さで大丈
夫か?」と聞かれる度に、地元の
皆さんが「大丈夫だ、我々が育て
るから…」と応えて下さったんで
す。それはとても有り難いこと
でした。
加速度的に進化する
 技術にも夢を求めて
秋林路 明治維新とか見ても、
歴史を変えたのは若い世代です。
3年後には東京オリンピック・パ
ラリンピックが開催されますが、
その辺りを節目に過去の常識が通
用しない時代に突入するのではな
いかと思っています。
 この時代変化を欧州では“第四
次産業革命”と呼んでいるようで
すが、産業機械や自動車、ロボッ
ト等にもAI(人工知能)が搭載さ
れるので、国際間の枠組みも経済

TheTRUCK2016年1月号25
の仕組みも加速度的に変化するの
ではないかと思います。
小 渕 そうですね。技術は
大きく進化していますので、予
測し難いことは確かです。AIも
物凄く大きな影響力があるかも
知れません。技術には用途によっ
て正と負の両面がありますが、
進展する技術は誰にも止めるこ
とは出来ません。ただ正を活か
す一方で、負の側面を封じ込め
る事は可能です。それが政治で
あったり、人間の知恵ではない
かと思います。
秋林路 そうですね。火は人
類最初の発見ですが、エネル
ギーとして大きく貢献してきま
した。もし、この火を悪用する
世の中になっていたら、世界は
終末を迎えていたかも知れませ
ん。人類が発明した原子力は更
に大きなエネルギーを発揮しま
すので、その正しい取扱いが、
いま人類に突きつけられている
のだと思います。
小 渕 AIも同じですね。コ
ントロールを誤れば、映画で観た
SF(サイエンス・フィクション)
の世界を招きかねない。でも人類
の幸せのために活用すれば、不可
能であった事が可能になるかも知
れません。要は負の側面への対応
を怠らないことが大切です。
秋林路 実は、本誌12月号で
は経済産業省製造産業局の河野太
志自動車課長にインタューしてい
ます。(32P参照)
 自動車産業は日本経済全体とし
て特別重要な分野です。世界の自
動車産業は国を挙げてEV化(電
気自動車)を打ち出しているので
すが、日本は未だ方針が定まらな
いのが現実です。自動車産業は非
常に裾の広い業界ですので、EV
化を一気に進めると、産業構造に
大きな歪
󱢳󱢛󱣀
が生じることになりかね
ません。しかし、時代は加速度的
に進化していますので、手を拱い

TheTRUCK2016年1月号26
新年スペシャル対談
ていては世界に置いてけ堀を喰ら
うことにもなりかねません。
小 渕 そうですね。自動車
は日本が得意とする物づくりが
発展していく中で、技術を開発
して、これほどのリーディング
産業に発展してきました。今日
でも自動車産業が日本経済を牽
引していることに変わりはない
のですが、正直言って自動車関
連産業の皆さんは頭を悩ませて
いると思います。何故かと申し
ますと、自動車産業が単に物づ
くりだけではなくなって来たか
らだと思います。
 既に量産の自動車にもEVが登
場していますし、私が力を注い
でいるFCVも現実になっていま
す。更に、ここに来てAIが加わっ
て来ましたので、日本が得意とす
る物づくりに留まらなくなってき
たという事だと思います。
 ただ、この点は悲観的に考え
れば頭の痛い問題かも知れませ
んが、もしかしたら新たな可能
性を秘めたテーマかも知れない
のです。
秋林路 時代が急速に変わる
…だから革命なのですが、私は
第四次産業革命後の姿は誰にも
見えていないのではないか、と
思います。
小 渕 そうですね。今、物
づくりのリーディング産業であ
る自動車について申し上げたの
ですが、実はこれは国政として
考えていかなければならない課
題だと思っているんです。内閣
府ではいま税制調査会を開いて
いまして、その中に自動車税を
どうするか、というテーマがあ
ります。これは来年度から本格
的に取り組むテーマですが、い
ろいろご意見を聞く中で、単に
税を下げれば良いのか、という
疑問もあります。
 と申しますのは、この先の自動
車に対するニーズは一人に一台の
時代じゃなくなって来ているし、
自動運転がどうなるのか、とか自
動車がリーディング産業でなく
なったら何処が日本経済を引っ
張って行くのか、という事を広く
深く考えなくてはいけない。この
点は私たち政治家も、経産省を始
めとするお役所も頭を悩ませてい
るところです。
秋林路 革命は現体制を新勢
力が打ち破ることで実現します
ので、理論的には次の時代が見
えてくる訳ですが、イノベーショ
ンが加速的に変化していますの
で、なかなかその姿を掴みきれ
ないところに困惑があるように
思います。
小 渕 新時代の姿については
なかなか解りにくいですね。と申
しますのは、私たちの子供世代が
仕事に就く頃には、6割の子供は
私たちが知らない新しい仕事に就
くだろうと言われています。私た
ちが知らない仕事が6割を占める
のであれば、今その時代を想定す
ることは出来ないという事です。
秋林路 確かに、新しい発明が
あると新たな産業が生まれるし、
淘汰される産業もあります。1540
年代に鉄砲が伝来すると、刀鍛冶
は役割を終えて火器産業が台頭し
ます。陸・海・空のあらゆる分野
でそういう事を繰り返して来た
し、通信や報道、医療や薬品など
全ての分野でイノベーションを繰
り返して来たので、手に職をつけ
ても役に立たなくなる場合も沢山
ありました。要は、このイノベー
ションが加速度的に変化するので
対処がより難しい時代になるとい
う事だと思います。
小 渕 確かにそうだと思いま
す。AIというのは、人知と関係
が深いので、物凄い威力を発揮す
るかも知れませんし、計り知れな
い怖さもあります。でも人類はそ
ういう事を克服して進化してきた
と思うんですね。もしかしてSF
の観すぎと言われるかも知れませ
んが、このイノベーションに可能
性を求めて、日々努力しなくては
いけないし、その対応力を養うこ
とが夢に繋がるのではないかと思
います。
秋林路 その点同感です。江戸
幕府が開かれてまだ400年そこそ
こですが、当時の人々が自動車や
パソコン、スマホ、飛行機、更に
は人類が月に降り立つなど想像出
来なかったと思います。技術は産
業革命以来、加速度的に進化して
来ました。核の使用で大きな過ち
も犯しましたが、破滅には至って
おりません。この先は後進の知恵
を信じるしかないと思います。
只、予測できる事に対しては国も
企業も最大限の努力を傾注しなけ
ればなりません。
小 渕 その通りですね。自動
運転等の新技術につきましては経
産省、国交省など関係省庁が積極
的に取り組んでいますし、関連企
業も社運をかけて取り組むと思い
ます。
トラックこそFC
(燃料電池)が最適

TheTRUCK2016年1月号27
小渕優子(元経済産業大臣・衆議院議員)と対談する本誌・秋林路(左)
秋林路 イノベーションに対す
る企業の取り組みは、ビジネスの
関係がありますので、表面に出に
くいのですが、FCについては私
なりの持論が御座います。ご承知
の通りバスは既にFC大型バスが
開発されています(表紙参照)。東
京オリンピック・パラリンピック
に向けて都バスの車両台数も増え
てくると思います。しかし、トラッ
クは未だ1台もFCが製作されて
いません。一般の人は「あんなに
重いトラックを電気(モーター)で
走らせるのは無理なのではない
か」と疑問を呈しますが、動力源
となるモーターは構造がシンプル
ですし、用途に合わせて動力は自
由に設計できます。新幹線がモー
ターを動力源にしている事を考え
れば明らかです。
小 渕 なるほど。それで“持
論”と申されますのは?
秋林路 私はトラックこそFC
が最適ではないかと考えていま
す。FCは水素と空気中の酸素に
よって電気を発生させ、バッテ
リーを経由してモーターを回して
走行します。EVとの違いは発電
機能を備えている点です。
小 渕 何だか私の「FCV(燃
料電池自動車)を中心とした水素
社会実現を促進する研究会」と関
係がありそうですね。
秋林路 その通りです。FCV
の課題は水素の調達と供給です。
水素は現在のFCVが使用する程
度でしたら足りると思いますが、
全ての車両がFCVに代わるとし
たら絶対的に足りなくなります。
只、水素は様々の方法で生産が可
能ですので、何時の日にか安価で
大量に生産する方法をエンジニア
は開発すると思います。
小 渕 燃料電池というの
は、FCVだけではなくて、非常
に多くの分野で活用できますの
で、エネルギー問題とも関係が
あります。
秋林路 近代日本は、エネル
ギーの多くを石油に依存している
のですが、「油断大敵」の言葉が示

TheTRUCK2016年1月号28
新年スペシャル対談
すように、非常に不安定なエネル
ギーです。もし、水素を安価で大
量に生産することが出来れば、日
本のエネルギー事情は大きく変化
する事になります。
小 渕 日本のエネルギーは石
油、天然ガス、石炭そして水素な
ど…、特定するのではなくて、用
途に合わせた適正化が必要だと思
います。
秋林路 そうですね。そういう
意味でも私はトラックこそFCが
最適だと考えているのです。水素
で問題なのはコストと供給方法で
す。既に量産型のFCが発売され
ていますので、国の助成を得て全
国にH2(水素)ステーションの建
設が進められていますが、問題は
“水素の物流”です。水素は高圧
ガスの対象になりますので、輸送
は強靭なボンベに詰めて運ぶこと
になります。また保管方法につい
ても非常に厳しい制約がで定めら
れています。
 私はこの辺りで水素の取り扱
いに関する現在の規制が、適正
であるのか否かを再検証する時
期に来ているように感じていま
す。現代の技術を駆使すれば、
水素はもっと安全で簡単に取り
扱う方法があるのではないかと
思います。
小 渕 水素は一般に“危険”
の印象が強いんですね。ですから
取り扱い基準も非常に厳しくなっ
ているように思います。ただ、水
素は空気よりも軽いので、空気中
に放出しても蒸発するので、ある
意味では安全を担保し易いと言え
ます。
秋林路 そうですね。イメージ
が先行して規制が厳しくなってい
るように思いますので、容器の形
状や強度、取り扱いについても、
是非見直しを行って欲しいと思い
ます。
小 渕 確かに必要以上に取
り扱い基準が厳しいと、産業の
発展を阻害することになりかね
ません。
秋林路 水素をFCトラック
に供給するためには供給基地(ス
テーション)が必要です。高圧ガ
ス保安法ではこの供給ステーショ
ンの場所や構造についても非常に
厳しい制約が設けられています。
トラック運送事業者は現在全国に
約6万2000あると言われていま
すが、車両を保有する事業者は事
業所ごとに車庫を確保していま
す。この車庫用地を水素の供給ス
テーションとして活用することが
出来れば、FCトラックが実用化
した際には、水素の供給に関する
課題は大きく前進することになり
ます。
小 渕 それは妙案かも知れま
せんね。FCトラックの開発と同
時に供給インフラを整備すること
も大切な課題です。
秋林路 FCトラックはエネル
ギー問題とも密接に関係していま
す。もし世界情勢の変化で原油の
輸入が滞ったり高騰すると、ト
ラック運送は非常に大きな痛手を
被ることになります。しかし、水
素が安価で安定的に供給できれ
ば、トラック運送の経営も安定し
ます。
小 渕 経済産業省は経済全般
を見ますが、私が経産大臣になっ
た時には、原発がまだ動いていま

TheTRUCK2016年1月号29
せんでしたので、お仕事の8割は
エネルギー問題でしたし、予算委
員会の質問も8割はエネルギーで
した。ですから日本にとってエネ
ルギーがいかに大切か。資源のな
い日本がエネルギーを確保する為
に、これまでどれ程の苦労を重ね
てきたのか。そして、今後どれほ
どの心配があるのか、痛切に感じ
て勉強もしました。
 我々はエネルギーに関して、安
全・コスト・CO
、そして安全
保障の4要素を満たすエネルギー
を求める訳ですが、日本で見ます
とね、その全てにパーフェクトな
エネルギーはないんです。例えば
石油はCO
の問題があるし、原
発は安全が問題です。だから日本
は長所も短所もあるエネルギー
をバランス良く確保する。石油
がNGになっても天然ガスや石炭
が使えるようになるかも知れませ
ん。それでもこの水素は、先の4
つの条件の中で3つは満たしてい
るんです。問題はコストだけです。
 水素につきましては入口は
FCVですが、将来的には発電に
繋げたい訳です。先般、オースト
ラリアを視察しましたが、あちら
は褐炭が山ほど余っていますの
で、それを液化して日本に運び水
素を沢山使えるようにする。この
水素発電については既に日本と
オーストラリアの間でプロジェク
トがスタートしていて、サプライ
チェーンの実証に入っています。
これが本格的になると、水素に対
する期待が一般にも高まって来る
のではないかと思います。
秋林路 でも水素はエネルギー
としての認知度はまだ低いと思い
ます。
小 渕 我々としては、国民理
解を得るために先ずFCVを中心
に水素を広めていまして、既に
2000台のFCVと100箇所近い水
素ステーションがあります。ただ
残念ながらFCVは大量生産が出
来ないのですよね。
秋林路 国民のコンセンサス
を得るのは時間がかかります。
でも水素の時代は必ず訪れると
思います。
小 渕 そうなんです。CO
フリー、環境破壊の心配がないエ
ネルギーという意味では一番に水
素が挙げられます。これまで電気
は貯蔵出来ないという点が問題で
したが、水素は貯蔵可能ですの
で、ホントに期待して良いと思い
ます。なので国としては規制の見
直しとインフラ整備の両輪でやっ
ていく。そして、東京オリンピッ
ク・パラリンピックが目前に迫っ
ていますので、この機会に世界に
どうアピール出来るか、ここが課
題です。
秋林路 先般開催されました
東京モーターショーでも展示さ
れましたが、FCバスは既に完成
していますので、都バスを中心に
2020年には世界にアピール出来
ると思います。只、FCトラック
はまだこれからです。
小 渕 特に長距離の大型ト
ラックはエネルギー密度が高いの
でFCに向いていると思います。
しかも、トラックが排出するCO
は大変多いので、これをゼロにす
る事が出来れば環境への貢献度は
非常に高くなります。そういう意
味ではトラックメーカーさんに出
来るだけ早くFCトラックを作っ
ていただきたいですね。
 それから以前、FCバスついて
自動車メーカーさんにお話を伺っ
たことがあるのですが、「これまで
のバスと違って排気ガス特有の臭
いがないのと乗り心地が良い。」と
いう事でした。これは長距離ト
ラックにも言えるのではないで
しょうか。
秋林路 なるほど。現実にはま
だFCトラックが無いので比較出
来ませんが、エンジンの振動とギ
アチェンジのショックがないので
FCトラックは乗り心地が良くな
ると思います。それと、トラック
は車体が大きいので、水素ボンベ
やバッテリーを搭載するスペース
も十分にあります。
小 渕 実は、トラックはFC
に向いていると思って、補助金と
かないのか調べてみたのですが…
今のところ無いですね。
秋林路 その点は大事なポイン
トです。トラックメーカーやユー
ザー団体にも相談して受け皿を作
りますので、是非ご支援をお願い
します。(笑)
小 渕 確かに、トラック事
業者さんもFCにもう少し関心
を寄せて頂いた方が良いと思い
ます。
秋林路 実は、トヨタ自動車
は2017年10月に米国カリフォル
ニアで燃料電池システムを搭載し
た大型トラックの実証実験を開始
すると発表しているし、アメリカ
のテスラも牽引用大型トラック
のEV車を2019年に発売すると
発表しているんです。欧米やイン
ド、中国なども2025年から2040
年をメドにレシプロエンジン車の
販売を禁止する方針を打ち出して
いますので、世界は急速にEVに

TheTRUCK2016年1月号30
新年スペシャル対談
向けて動いています。
小 渕 日本はEVとともにFC
の促進も図るべきだと思います。
学生時代は演劇とゴルフ
秋林路 FCも動力源がモー
ターという意味ではEVと同じで
す。一日も早く水素を低コストで
多量に供給する仕組みを構築する
ことが大切です。
 ところで、本日は折角の機会で
すので、優子さんの人となりも少
し伺っておきたいと思います。小
渕家は元々群馬を中心に産業発展
に努め、優子さんのお祖父様は群
馬県のトラック協会長もなさって
おられますね。
小 渕 そうなんです。そのご
縁もありますので、私も自民党の
トラック輸送振興議員連盟に名前
を連ねさせて頂いております。
秋林路 このトラック運送業界
はゴルフ好きのオーナーが多いの
ですが、学生時代はゴルフ部でご
活躍されたとか…。
小 渕 はい。高校と大学は
ゴルフ部でした。ですからゴル
フは随分打ち込んだのですが、
子供が出来てからは、朝早くか
ら一日中かかってしまうので、
もう10年位はクラブを握ってい
ません。
秋林路 学生時代のゴルフです
と、基本に忠実ですし練習量も多
いので、良いスコアを出しておら
れたと思います。
小 渕 そうですね。当時は夏
休みもキャディをやりながらゴル
フ場に籠もって練習していたので
結構上手でしたよ。(笑)
秋林路 ゴルフをやって良かっ
た点は何か御座いますか。
小 渕 父が政治家でしたの
で、一緒に過ごす時間がホントに
少なかったのですが、ゴルフは一
緒に居る時間が長いので、父はと
ても喜んでくれました。ですか
ら、父は、ゴルフは私と…美術館
に行く時はお姉ちゃん、海外に行
く時はお兄ちゃん…と言った具合
でしたね。
秋林路 それは子供たちともバ
ランス良く交流できたと思いま
す。どうしてゴルフをやる事に?
小 渕 実は、こう見えても体
育が苦手で、小学校の時は走るの
もボール競技もダメで、成績も3
以上頂いたことが無いんです。そ

TheTRUCK2016年1月号31
れで苦手意識を克服したい気持ち
もあって運動部に入ろうと思った
のですが、人様に迷惑をかける運
動部には入れないと思って捜して
いたら、見つかったのがゴルフと
いう訳です。(笑)
秋林路路 それは微笑ましいと
いうか、優子さんらしい選択で
す。私は剣道でしたので、個人競
技だけれども相手が居るところが
違います。
小 渕 私の子供ふたりにも何
か武道をさせたいと思っていたの
ですが、4歳と2歳になった頃か
らよくケンカをするようになりま
した。それで、私は群馬県少林寺
拳法連盟の会長ですので、少林寺
をやらせようと思ったのですが、
4歳と2歳では小さすぎてダメと
言われて、空手になりました。
秋林路 空手も良いのではない
ですかね。相手に対する礼を重ん
じるという意味では武道に通じて
いると思います。いま何歳ですか。
小 渕 10歳と8歳になりま
した。空手も練習の最後は乱取り
といって防具を外して、素手で相
手に立ち向かっていますよ。
秋林路 それは将来が楽しみで
す。優子さんは演劇もなさったよ
うですね。
小 渕 はい、小さい頃からお
芝居を観るのが大好きでしたか
ら、母が劇団四季にキャッツを観
に連れて行ってくれたのが印象的
だったのと、私の好きな演劇のマ
ンガがあって、それで中学では演
劇部に入ったんです。
秋林路 女子にはよくあるパ
ターンです。実際ステージにも
立っておられたのですか。
小 渕 はい、最低一年に一回
は発表会がありましたし、3年生
では部長もやったので結構熱心で
したよ(笑)。私は今でも選挙演説
で喉を傷めることはないのです
が、あの当時の発声練習が良かっ
たのではないかと思います。
秋林路 なるほど。選挙は確
かに喉を使いますね。でも高校
でゴルフに行かないで演劇を続
けていたら、この美貌ですから
今頃は大女優になっていたかも
知れませんよ。
小 渕 お口が上手ですね〜
(笑)。今となってはこのお仕事を
天職と思って務めさせて頂いてお
ります。
秋林路 そうですね。今は公人
ですので、政治が全てだと思いま
す。ただ、この先少し時間が出来
たら、何かやりたいこと御座いま
すか。
小 渕 日本も大事ですが、や
はり世界の子供たちも元気に育っ
て欲しいじゃないですか。勿論、
政治家としても出来ることです
が、私個人としてもそういう想い
は強く持っています。
秋林路 黒柳徹子さんはユニセ
フで頑張っておられますが、生ま
れ育った地域や国が違っても、同
じ人の子ですから、幸せになる権
利は平等です。そういう気持ちを
持ち続けることはとても大切だと
思います。
 ご尊父は志半ばで病に倒れる
結果になりましたが、草葉の陰
では優子さんに政治家の頂点を
目指すことを望んでおられるよ
うに思います。健康に留意して
お仕事に励んで下さい。本日は
とても貴重なお話を有り難う御
座いました。

株式会社rimOnO
代表取締役社長
伊藤 慎介
東京電力ホールディングス株式会社
原子力技監 技術士
姉川 尚史
TheTRUCK2018年1月号32
来る第
4
EV
ブームで
日本勢はどう向き合うべきか
なぜ東京電力でEVに積極的に
 取り組んだのか
伊 藤 本日は、これまでEVの中心にいらっ
しゃった東京電力の姉川技監にご登場いただ
き、EVブーム発祥から現在の第4次EVブー
ムがどのように映っているのかを伺いたいと思い
ます。
 姉川さんは東京電力において電動車両
のグループリーダーとして、急速充電規格
CHAdeMO(チャデモ)の制定とグローバル展
開、営業車両3000台のEV化など、積極
的に取り組んでいらっしゃったことを記憶してい
ます。
 過去のEVブームについては人によって整理
が異なりますが、マスキー法の対応として1960
〜70年代頃、通商産業省が大型プロジェクトを
立てて進めたのが第1次EVブームだと考えて
います。当時は東京電力を含む電力会社各社が
積極的に関与し、さまざまな電気自動車を開発し
ました。しかし、鉛畜電池の性能が低かったため
航続距離や電池の劣化が問題となりました。結
今年に入って急にEVがブームとなっています 。
2006年頃、経産省自動車課の課長補佐だった私は、東京電力の姉川さんと一緒に
電気自動車の普及に積極的に取り組んでいました。スバルや三菱自動車が電気自動車
を市場投入するともに、リチウムイオン電池がいよいよ自動車の世界に本格的に使われ
るようになるなど、まさに日本がEV大国として世界をリードしていた時期でした。
ところが、現在の第4次EVブームではどちらかという日本が世界から追い込まれてい
る印象があります。そこで、第3次EVブームの立役者である姉川さんより来る第4次
EVブームに日本勢としてどう向き合うべきかを伺いたいと思います。(伊藤)
The Next Vehicle World
胎動する次世代ビークルの世界③

電気の史料館に展示されていたIZA
TheTRUCK2018年1月号33
果的にガソリン自動車の排ガス技術が急速に進化
し、EVに依存しないでもガソリン車の排ガス問
題が解決したことから第1次EVブームは終焉を
迎えました。
 第2次EVブームは1990年初頭にアメリカの
ゼネラルモーターズ(GM)が市場投入した電気自
動車「EV1」がきっかけとなり始まりました。そし
てこの車両の導入と同時にカリフォルニア州では
ゼロ・エミッション規制(ZEV規制)の導入が始ま
り、大手自動車メーカーは一定割合の電気自動
車を販売する義務を負うこととなりました。カリ
フォルニア州で多くの日本車を販売していた日本
の大手自動車メーカーも同様に義務を負うことと
なり、トヨタ、日産、ホンダの各社が最新のニッ
ケル水素電池を搭載した電気自動車を市場投入
しました。本日お邪魔している川崎の技術研究
(現経営技術戦略研究所)にはトヨタ自動車の
RAV4EVなど第2次EVブームの車両が保管
されていたことを記憶しています。当館のエント
ランスに保管されているIZAもこの時期の車両
です。
 第3次ブームは私が経産省で自動車課に在籍
していた2005年〜2007年頃です。電気自
動車に取り組むことになった直接的なきっかけは
慶応大学の清水浩教授(現名誉教授)が開発した
「Ellica(エリーカ)」に小泉首相が試乗された
ことでした。総理からの指示で電気自動車の支
援策を検討することとなり、電気
自動車、ハイブリッド自動車、燃
料電池自動車に共通するコンポー
ネントである自動車用電池の性能
向上を目指す国家プロジェクトを
立ち上げることとなりました。そ
の性能目標を決める研究会のメン
バーとして参加いただくために姉
川さんを訪ねたのが最初の出会い
です。実は、清水先生の構想に
はそれほど感銘を受けなかったの
ですが、姉川さんの構想には大変感銘を受け、
私はすっかり電気自動車の虜となったのです。
 そして現在、第4次ブームと言われています。
今回は、第3次EVブームの立役者である姉川
さんに当時目指されていたことをお聞きしたいと
思います。
姉 川 私はそもそも原子力エンジニアだった
のですが、2002年に手を挙げて東京電力で電
気自動車に取り組み始めました。夢物語を語って
も仕方がないのでまずは現実を知ろうということ
で、最初にやったのは電気自動車の歴史の調査
でした。当時は第2次EVブームが終わり掛け
の時期で、ZEV規制を発行しようにも「今の時
点でとても電気自動車を量産して市販することな
どできない」と自動車メーカーがカリフォルニア州
を訴えていた時期でもありました。
 社内での調査の結果、電池の性能が向上しな
いことには電気自動車の実用化には結びつかない
という結論に達しました。一方で、ちょうどこの頃
にリチウムイオン電池が携帯電話やPC用途で量
産され始めていました。そこで、「リチウムイオン
電池が自動車用になれば、状況が大きく変わるの
ではないか」と考え、EV普及に向けて後押しをす
るいいタイミングではないかと考えました。
 ちょうどその時期にカリフォルニア州で行われ
ていた電気自動車のシンポジウムを見に行きまし

充電中のGMのEV1
参加した電気自動車のシンポジウム(2001年カリフォルニ
ア州サクラメト)
GMが採用していた充電方式のインダクティブ・チャージャー
TheTRUCK2018年1月号34
た。当時のカリフォルニア州には充電ステーショ
ンが100か所以上ありましたが、実は充電規格
がばらばらでした。
 まさにGMがEV1を市場投入していた時期で
もありました。会社全体としてどこまで本気で推
進しようとしていたのかは今となってはわかりま
せんが、少なくとも開発を担当していたエンジ
ニアたちは非常に熱心でした。シンポジウムで
はEV1の担当者が非接触型のインダクティブ・
チャージャーという充電器を紹介していました。
出力が5kWしかないことから充電性能が良いか
どうかは微妙でしたが、それは別として、GMだ
けでなく日本の大手自動車メーカーでも採用する
ことが決まっていた規格でした。
伊 藤 日産自動車が国内で市場投入した電気
自動車専用モデルのハイパーミニもこの充電方
式でしたね。
姉 川 ハイパーミニの充電器は豊田自動織機
が作ったものです。そういう規格統一が行われよ
うとした最中にフォードが別の充電方式の提案を
してきたのですが、それをカリフォルニア州大気
資源局(CARB)が受け入れてしまったのです。
どちらの充電方式の性能が良いのかはさて置
き、フォードの横紙破りのような行為に対してパ
ネルディスカッションの観客席にいたGMのエン
ジニアは怒鳴り散らし、CARBに対し、「お前ら
のせいでEVが台無しになる」と難詰していた光
景を目にしました。
 充電方式はインフラだと私は捉えています。誰
もが使えるのであれば、どの方式でもよかったの
ですが、リチウムイオン電池が大きく発展する勢
いを見るにつけ、充電インフラをみんなが使える
いい方策はないのか――、丸く収まる方式を開
発することはできないのか――、この2点を解決
できればEVはうまくいくのではないかと考え、
原子力専門だった自分のキャリアをEVへとス
The Next Vehicle World
胎動する次世代ビークルの世界③

TheTRUCK2018年1月号35
イッチしていきました。見込みがないのに、原子
力から乗り換えをしたのではないんですよ(笑)
 まずは電気自動車用のリチウムイオン電池を開
発しなければならないと思いましたが、それを東
京電力が開発するのは筋が違うと思い、小型の
リチウムイオン電池を作っている電池メーカーに
自動車用の大型電池を作っていただくべく多くの
メーカーへの行脚を開始しました。リチウムイオ
ン電池が普及し、充電方式の標準化をすれば、
EVはいけるだろうと考えたわけです。
EV推進のための
 国内メーカーの巻き込み
伊 藤 GMとフォードによる対決の図式があっ
た中、充電方式の標準化をなぜ自ら推進しようと
したのでしょうか。新たに充電規格を作ろうとし
た理由は何ですか。
姉 川 GMが提唱するインダクティブ・チャー
ジャーが最適なものには見えなかったからです。
その一方でフォードの充電方式も良いものとは思
えなかった。どちらも100Vや200Vでの普通
充電器だったからです。
私は5kWの普通充電ではなく、短時間で充電
ができる急速充電器が必要だと考えました。これ
はインフラです。東京電力のような電力会社が
汗をかいて前進させる価値があるだろうと考えた
わけです
伊 藤 それは誰もやっていなかったわけです
ね。
姉 川 長距離走行ができるよう電池のパフォー
マンスを上げていく方法もありますが、リチウム
イオン電池が高性能になって安価に提供できるの
は一方の努力、急速充電インフラはもう一方の
努力と考えていました。トンネルを掘り進めるう
ち、どこかで両者がドンピシャと遭遇でき、トン
ネルが貫通できるかもしれないと思ったのです。
しかし、国内の電池メーカーの中にはEV用バッ
テリーに消極的な会社もあり、残念な思いもたく
さんしました。
伊 藤 当時の自動車メーカーでは三菱自動車
と富士重工(現スバル)がEVに取り組んでいる
一方、大手のトヨタ、日産、ホンダはEVではな
くハイブリッドにシフトしていました。その先の究
極のエコカーは燃料電池車だと考えていましたよ
ね。
姉 川 当時、スバルと三菱自工の経営者はど
こまでEVに熱意を持っていたのかはわかりませ
ん。ただ、スバルや三菱自工の研究開発の責任
者の方は非常に熱心でした。現在のEVのブー
ムの本当の立役者は彼らだろうと私は考えていま
す。
伊 藤 その人たちを魅了したのは、EVのどの
部分だったのでしょうか。
姉 川 EVが素晴らしい乗り物だからでしょう。
その後、三菱とスバルに対して、当社との開発
を働きかけました。即断できるような話ではない
ことはわかっていましたが、重要なのは組織の中

最初に導入された急速充電器(2008年10月)
洞爺湖サミットでのR1eと急速充電器(2008年7月)2010年3月CHAdeMO協議会設立
スバルが開発していた電気自動車R1e(2006年11月)
TheTRUCK2018年1月号36
で一生懸命にやれる人がいるかどうかでした。そ
して、最初に前向きな返事を下さったのがスバル
でした。
 スバルと東電がアライアンスを始めた直後に、
三菱自工にも参画していただきました。一方で、
スバルは経営状態の変化から徐々にEVへの取り
組みをトーンダウンしていくようになりました。
 伊藤さんと日産を訪問したのはその頃でしたね。
伊 藤 そうですね。トヨタ、日産、ホンダのい
ずれかがEVに取り組むようになれば流れが変わ
ると思っていました。日産は第2次EVブームの
時に専用車両であるハイパーミニに取り組むなど
EVに思い入れのあるエンジニアを抱えていたの
で、EVを市場投入する可能性があるのではない
かと思っていました。その意向を一緒に確認しに
行きましたよね。
CHAdeMO充電規格が生んだ
 予想外の成果
伊 藤 第3次EVブームの時代に姉川さん
は様々な活動をされてこられましたが、その結
果として何が成功で、何が課題だったと思われ
ますか。
姉 川 成功は、急速充電器の標準化ができた
ことでしょう。2010年3月にCHAdeMO協議
会を立ち上げ、その1年後に原発事故が発生し
ました。事故発生直後から私は原子力に戻らざる
を得ませんでしたが、協議会で取り組んだ1年
間には大きな価値がありました。
 今では世界中に約1万7000台の充電器が
設置されており、その数はまだ増えています。
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ジュネーブモーターショーでのCHAdeMO対応充電器の展示(2011年3月)
CHAdeMO方式の普及啓発活動(左ノルウェー・オスロ、右エストニア・タリン)
TheTRUCK2018年1月号37
CHAdeMO協議会の精神は全員が
ハッピーでなければならないというこ
とでした。Windowsのようにプラッ
トフォーマーが独占する戦略もあり
ますが、充電器はソフトウェアでは
なくハードウェアです。故障すれば
地元でメンテナンスしてくれる人が
必要になります。地場特有の事情を
踏まえる必要がありますから、各地
域に人を配置しないといけない。だ
から極東の1社が利権を握るというよ
うな形で世界に普及できるとは思え
ません。だからこそみんなで神輿を
担ごうとする精神にしたのです。
 協議会の立ち上げは2010年で
したが、その間に準備をして欧州や
米国の充電器メーカーに対して機器
の作り方などを基礎から教えていき
ました。自動車メーカーと充電器メー
カーが複数参画するため、互換性では必ず不具
合が発生するものです。互換性検証装置やトラ
ブル発生の際の分析を強化しながらの1年間で
した。
 ドイツ勢はプライドもあり、当時から一貫して
日本の規格に対して圧力をかけ、彼らが提唱す
るCOMBO規格以外の充電器を作ってはいけな
いというルールを欧州全域で制定しようとしてい
ました。
 その動きを見かねた欧州の充電器メーカー
やユーザーが、「そのルールはおかしい。ここ
まで普及しているものをゼロから覆すのはおか
しいじゃないか」とEUの会議で主張してくれ
ました。
 最終的には、ドイツの面子も立てる必要がある
ため、ドイツ製COMBO規格さえ搭載されてい
れば、それに加えてCHAdeMO規格が搭載さ
れていても構わないというルールで決着すること
ができました。
 大変嬉しいことに、今でも欧州の充電器メー
カーの人たちには感謝してもらっています。
CHAdeMOのメンバーが現地まで赴き、製造ラ
インの組み方まで指導したものですから。
伊 藤 大きな成果ですね。
姉 川 その通りです。COMBO方式はドイツ
が我田引水で進めている規格であるため、絶対
に互換性が維持できなくなると考えていました。
CHAdeMOのように徹底して現場まで入り込ま
ない限り互換性は維持できないと思っていまし
た。ところが私の予想に反してCOMBOの互換
性は維持できたのです。
 そこで、欧州の充電器メーカーに対し、なぜ
COMBOは互換性を維持できているのかと聞い
たところ、「姉川さん、実際にCOMBOの充電
器を作っているのがCHAdeMO協議会のメン
バー企業だからですよ」と言われて驚きました。

TheTRUCK2018年1月号38
CHAdeMOのやり方を学んだ充電器メーカーは
同じ方法をCOMBOにも適用していたというこ
とだったのです。
 一般的には、CHAdeMO規格はCOMBO
規格に負けたと見られていますが、CHAdeMO
がなければCOMBOは成立しなかったわけで、
私にとっての成果はCOMBOも含めて急速充電
器の考え方が統一されたということだと思ってい
ます。
独立系電池メーカー不在が日本の
 電池産業苦戦の原因
伊 藤 第4次EVブームは日本が仕掛けられ
ているというイメージが強いのですが、第3次
でこれだけの大きな挑戦をしたのに日本は世界的
なEVブームを仕掛けることができなかった。そ
こに第3次EVブームの課題があるような気が
するのですが。
姉 川 電池産業は苦戦する結果になりました
ね。東京電力は自ら電池を量産できないため、
電池ビジネスについては他力本願ではありました
が、日本の電池メーカーは明らかに技術的に先
行していました。問題となったのは、1000〜
2000億円といった大規模な設備投資の踏ん切
りができなかったことです。
 自動車メーカーは、国内に数多ある電池メー
カーに対して「電気自動車を量産する計画なの
で、それぞれのメーカーが設備投資をしてコス
トパフォーマンスの良い電池を提供してほしい」
と号令をかけ様子見をすればよかったのに、そ
ういう戦略ではなく、電池メーカーと合弁会社
を設立して自ら電池の量産に取り組む戦略を取
りました。
伊 藤 私自身も電池メーカーの抱え込みを誘導
した側なので反省があります。ちょっとだけ当時
の判断を正当化すると、自動車メーカーにとって
電池があまりにもブラックボックスだったことが大
きいと思っています。EVやプラグインハイブリッ
ド車を量産するにはもっと電池の性能を理解し、
一旦すり合わせをする必要があったのではないか
と思います。
 ただし、合弁会社を設立してしまうと、合弁を
組んだ自動車メーカーの販売台数を大幅に超え
る量の電池を生産することができなくなってしま
う、それが電池メーカーにとってビジネス面での
大きな足かせですよね。確実に売れる個数が決
まってしまうため、大規模投資ができず、合弁会
社を組んでいない韓国の会社が量産投資に踏み
切ると、コスト競争で勝てなくなってしまいます。
 唯一実現できる可能性があったのが自動車メー
カーとパートナーを組まなかった三洋電機でした
が、不幸なことに経営が悪化してそれどころでは
なくなり、パナソニックに買収されるという道を選
ばざるを得なくなりました。全方位で電池を
販売できる電池メーカーが日本からいなくなっ
てしまったことが、日本の電池産業が苦戦す
るようになった原因ではないかと思います。
 そのことに加えて、タブレットやスマホが
急速に普及し、電池メーカーの稼ぎ頭だっ
た携帯電話とパソコン用電池ビジネスが傾
いていき、新規投資する余裕をより一層奪
われたことももう一つの大きな原因だと思い
ます。
The Next Vehicle World
胎動する次世代ビークルの世界③

TheTRUCK2018年1月号39
姉 川 LGはそういった環境でも投資を続けて
いったわけですから、日本の経営者の投資に対
する意思決定の仕組みがうまくなかったのがやは
り大きいのではないでしょうか。
自動運転では国の役割が重要
伊 藤 第4次EVブームの話題に入っていき
たいと思います。第3次から第4次までの間で
プレイヤーとして大きく台頭した会社は2社ある
と考えています。1社はアメリカのテスラです。
そしてもう1社は中国のBYDです。当時からこ
の2社については注目していましたが、まさかテ
スラがビッグ3の株価を超える存在にまでなると
は思いもしなかったです。
 11月末にシリコンバレーを訪問し、テスラに
も行かせていただきましたが、最初はカーディー
ラーの一室のようなところで創業したと聞き驚き
ました。今や巨大な工場といくつものオフィスビ
ルを構えているのですから。
姉 川 イーロン・マスクさんに会えましたか。
伊 藤 時の人ですから、そう簡単に会えない
ですよ(笑)。姉川さんはお会いになられたことが
あるのですか。
姉 川 1回だけお会いしたことがあります。も
う一度お会いできないかとコンタクトしているとこ
ろですが、部下の人も含めてなかなか返事がな
いです。今は大統領並みに忙しいのでしょうね。
伊 藤 深センのEVタクシーのほとんどは
BYDのものですし、京都でもBYDのEVバ
スが走っていると聞いています。元は電池メー
カーだったBYDがこの20年間でEVメーカー
として台頭し、ものすごい拡大を続けているわ
けです。
 第4次EVブームはディーゼル不正で追い込
まれたドイツ勢が仕掛けてきたものというイメー
ジですが、日本の自動車産業はこのブームに対
してどのように取り組むべきと姉川さんは思われ
ますか。
姉 川 自動車産業は事故やリコールが発生す
ると莫大な費用がかかるため、ベンチャーがどう
こうできる話ではなく、一定規模がある大企業で
ないとビジネスとして成立しない。だからこそベ
ンチャーを恐れることはないと考えています。キー
デバイスがバッテリーやモーターであっても企業
の体力が前提となる部分は変わらないわけです。
 テスラはイーロン・マスク氏が常人離れしてい
るために全否定はできませんが、自動車産業は
ベンチャーにとっては危ういビジネスと考えてい
ます。
伊 藤 耳の痛い話ですね。私自身がrimOnO
の開発を通して思うことは、走る・曲がる・止ま
るというのは電気自動車になろうがなかなか大変
だなということです。とにかく自動車はスマホと
違ってユーザーを選べず、人の命を預かるもので
あるため、操作ミスの発生を許容できないのが大
変だと思います。電動化とは無関係であるボディ
構造やシートレイアウトなどの設計も非常に大変
です。
 例えば足の長い人が着座したときにアクセルを
踏みっぱなしになってしまうようだと自動車として
成立しません。万人が運転できる自動車を量産し
てきた自動車メーカーに大きな強みがあると思い
ます。海外に目を向けなくても、日本のメーカー
には、ノウハウを持っている人たちが多数いると
思います。
姉 川 だからこそ、どの自動車メーカー、電
池メーカーにも第4次EVブームで勝ち組となる

TheTRUCK2018年1月号40
チャンスがあると思います。
伊 藤 その時に何をすればいいのでしょうか。
「EVになったことでお客さんの価値は変わらな
いことがわかった。必要なのはEVに付加価値を
つけることだ。とEVベンチャーに取り組んだ経
験のある方がおっしゃっていましたが。
姉 川 トヨタが愛・地球博で開発したパーソナ
ルモビリティ「i-unit」のように、エンジン車では
実現できないけど電気自動車であれば実現でき
るものを狙えばプラスアルファの独自の世界が築
けるはずです。
 私が思うに今のプラスアルファは自動運転で
す。最初は自動運転など絶対に実現しないもの
だと考えていましたが、AlphaGo(アルファ碁)
が韓国のプロ棋士に勝利した報道に驚かされて
からは思いなおすようになりました。かつての囲
碁ソフトは人工知能ではなく、過去の事例を前提
としていたものだったのですが、アルファ碁はAI
技術によるディープランニングで見事に囲碁の定
石を変えました。
 自動運転も白紙からディープランニングを行う
と、あっという間に人間より上手な運転をするか
もしれない。ただしそこでは壮大な実験が必要と
なります。囲碁は何百回負けを喫しても構いませ
んが、自動車の場合はそれだけの数の事故を起
こすわけにはいきませんから。
伊 藤 まさにAIとリアルをどう組み合わせて
いくのかがポイントですよね。どんなにAIが賢く
なってもリアルフィールドに当てはめていく時、リ
アルで何が起きうるのかは常に見ていかないとい
けません。リアル側の膨大な資産を持っている日
本の自動車メーカーがモデルを回していけば、も
のすごく良いAIが完成するはずです。
 シリコンバレーでNVIDIA社を訪問しました
が、彼らはレーシングゲームの開発からスタート
し、今では自動運転のソフトウェアと半導体技術
を持ち、全方位戦略で世界中の自動車メーカー
と組んでいるようです。自動車メーカーによって
レベルの高低はあるでしょうが、様々なプレイヤー
とモデルを回すことで彼らのAI技術はどんどん
進化していくだろうと思いました。そのスピードを
上回る進化を日本のメーカーが実現できるのか心
配になりました。
姉 川 そこについては伊藤さんが在籍してい
た経済産業省、あるいは国土交通省がプラッ
フォームを作り、業界全体をけん引できるかにか
かっているのではないでしょうか。
伊 藤 確かに政府の役割は必要でしょうね。
大規模な投資や一か八かの賭けをできるチャンス
を作れるか――です。それができないせいで、
アイデアはあるのに大きい勝負に出られないジレ
ンマが続いている気がしています。
 今のEVブームにおいて、日本が蓄積した資
産を活用できる余地はまだまだ残っていると思い
ます。それをどうやって世界に提供していける形
にするのかでしょうね。EVベンチャーとして自分
自身がバッテリーにはものすごく苦労してきたの
で、独立してバッテリーパックを提供できる会社
が出てこないものかと思います。今は、お寿司
を握りたくても魚を丸ごと買ってきてさばけない
といけないというような状態なんです。
姉 川 どこのバッテリーセルを使うかは別とし
て、お客さんのニーズに応じてパッキングする
バッテリーパック会社は日本にもあったほうがい
いでしょうね。
 まぐろを食べたいという人もいれば、光り物を
食べたい人もいるわけで、「お客さん、トロだけ
でお願いします」では通用しないですよね。
伊 藤 その通り。様々なネタを扱えるすし職人
The Next Vehicle World
胎動する次世代ビークルの世界③

TheTRUCK2018年1月号41
のような存在がいないとだめなんですよ。
姉 川 電池はいろいろな見方がありますが、
①容量、②価格、③寿命、④急速充電性能―
―、4本の指標があると考えていますが、日本
メーカーが重視してきたのは容量です。しかし、
充電インフラの整備が進んでいくと、容量だけで
そんなに頑張らなくてもよくなってくると思ってい
ます。容量の代わりに、短時間で充電できる高
出力の電池を選べばよいわけですから。
 そこで、お客さんが一回充電する毎にどの程度
の走行距離を必要としているのかを聞き、そのニー
ズに基づいて適切なバッテリーパックを搭載する
というサービスはあるのではないかと思っていま
す。「その航続距離であればこの車両価格になりま
す。もし、車両価格を落としたいのであれば、容
量を減らす代わりに急速充電しやすい電池にした
ほうがいいです」と提案をするわけです。伊藤さ
んがおっしゃっている独立系バッテリーパックと非
常に親和性の高いビジネスモデルだと思います。
スウェーデンの事例にみるEVトラック
伊 藤 トラックやバスなどのEV化について、
どうお感じになりますか。
姉 川 トラックとバスでは車両の活用方法が異
なりますよね。バスは路線が固定化していること
が特徴です。トロリーバスのような架線はできる
限り引きたくないので、例えば5つぐらいの停留
所間隔で急速充電できるスポットを設置しておけ
ば、大容量の電池を搭載しなくても済みます。そ
ういう構想に基づき、マレーシアでNEDOのプ
ロジェクトとして実証試験をしています。これま
ではEVバスの電池は乗用車以上の容量が必要
と思われていましたが、マレーシアのNEDOプ
ロジェクトを見る限り、実際はそうではないのか
もしれません。
 EVトラックについては、テスラがスーパーコ
ンボイのような車両を発表しましたね。ものすご
い電池容量が必要なため本当にEVとして成立
するのかというネガティブ記事がありましたが、
アメリカ大陸を横断するためには変電所に横づけ
して充電し、また次の変電所で同じようなことを
するといった話になるでしょうね。日本でも高速
道路にこじんまりした変電所を設置すれば、トラッ
クの充電はなんとかなるかもしれません。
伊 藤 スウェーデンでは架線が付いたトラック
が走行していると聞きました。北欧では水力発電
が豊富にあるため、水力から電気を生み出して、
できる限りそのエネルギーで賄う方法がシンプル
なのかもしれません。残念ながら日本ではそうい
トラックは全く提案されていません。
姉 川 架線というアイデアは悪くないですね。
電車という電気自動車が存在しているわけですか
ら。レールという制約がなくなる意味は大きいの
で、アイデアとして東名高速全線に架線を敷くと
いうのもありえるかもしれませんね。
伊 藤 シリコンバレーでは、新しい公共交通
の提案として完全自動運転EVの構想が出始め
ています。道路に白線を1本引いて専用レーン
を設ければ、あとは充電方法さえ確立すれば路
面電車よりも圧倒的に安価な公共交通システム
が構築できるというアイデアです。
姉 川 急速充電を使えば部分的に架線を引く
だけでいいわけですから、架線をなくせるという
リットも大きいですね。
伊 藤 ところが日本ではそういう新しい公共
交通システムの提案が出てこないのです。大手
自動車メーカーも大手鉄道メーカーもあるのです

TheTRUCK2018年1月号42
が、それぞれがそれぞれの世界でのビジネスを
考えていて、両方の強みを生かした新しいシステ
ムを作ろうという発想がない。非常にもったいな
い話だと思います。
姉 川 ぜひ、一緒に取組みましょう。
伊 藤 ありがとうございます。是非やりましょ
う。最後に、第4次EVブームで、日本の自
動車産業はどのように向き合っていけばよいのか
ッセージをお願いします
姉 川 日本の自動車メーカーは、様々な厳し
い局面を乗り越えて現在も生き残り、世界をリー
ドしている会社ばかりです。ゲームチェンジや技
術のイノベーションがこの先あることは確実です
が、これまでの蓄積を携え、未来を切り拓けば
明るい未来がやってくると見ています。
Profile
姉川尚史(あねがわ・たかふみ)
1957年生まれ。1983年、東京大学工学部原子力工学科で修士課程を修了し、東電入社。原子力建設部な
どで技術者としてキャリアを積み、2002年から9年間、電気自動車を担当。震災後に原子力部門に戻り、原
子力設備管理部長などを経て2013年6月から常務執行役。原子力改革特別タスクフォース事務局長と原子力
立地本部副本部長を兼務。
2014年6月から取締役、原子力・立地本部長
2017年6月から原子力技監として原子力関係の業務に加え、CHAdeMO協議会代表幹事などEVの発展の
ための業務に復帰。
The Next Vehicle World
胎動する次世代ビークルの世界③

仕様
項目
チップセッ
センサーデバイス
画角
ディスプレイ
供給電圧
動作温度範囲
記憶ディバイス
記録フレーム
カメラモード
記録内容
記録形式
マイク
時刻設定
加速度センサー
質量
内容
AmbarellaH.264画像圧縮チップ
フルHD5MCMOSセンサー
約105度
LCD3インチ4:3モニター
DC10-30V
−10℃-+70℃
SanDiskSDカードClass10以上
読み書き速度15MB/s以上推奨
(最小容量:4G、最大容量:32G)
1920×1080(フルHD1080P/30F)
1280×720(HD720P/30F)
システム起動時に自動録画
解像度:3M、5M、8M
手動写真撮影、加速度センサー、セルフタイマー
日付、時刻、画像、加速度、GPSデータ(速度含む)
専用プレイヤー用独自フォーマット(記録モード)
内蔵デュアル高感度マイク
GPS信号による自動設定
GPSが無効の場合、内蔵時計を使用
内蔵
本体:192g、シガー電源アダプター:112g
これは凄い!
製造販売元:株式会社日本ヴューテック http://www.nvt.co.jp/
営業本部:〒211ー0066川崎市中原区今井西町93ー3 TEL.044ー722ー2211(代) FAX.044ー722ー8488
本社:〒211ー0063川崎市中原区小杉町3ー239ー2 【サポート:TEL.044ー722ー2211】
常時録画
エンジン連動録画
イベント録画
センサー検知時録画
GPS搭載
Googleマップ連動
日付、時刻、速度を記録
音声録画
車内の音声を記録
VFーDVRー001
FULLHD5メガピクセル
ドライブレコーダー
FULLHD5メガピクセル
VIEWTECのドライブレコーダーVIEWTECのドライブレコーダー
FULLHD5メガピクセル
こんな使いかたも
自分の運転をチェック
旅行の想い出に
レース走行を記録

実証実験に使用する大型トラクコンセプと燃料電池自動車「MIRAI」
TheTRUCK2018年1月号44
2018年より開始し、2020年頃の稼働開始を予定
している。
 Tri-Genは、これまでFuelCellEnergy社が、
米国エネルギー省、カリフォルニア州大気資源局
(CARB)、同州の南部沿岸大気品質管理区(AQMD)
などの公的機関や、核となる燃料電池関連技術の研
水・電気・水素を生み出すTri-Gen
 トヨタ自動車㈱の北米事業体であるToyotaMotor
NorthAmerica(TMNA)は、燃料電池発電事業
を手がける「FuelCellEnergy」社とともに、米国
カリフォルニア州ロングビーチ港に、燃料となる水
素を生み出し、2.35メガワットの発電が可能な燃料
電池(FC)発電所および水素ステーションを併設す
る「Tri-Gen(トライジェン=水・電気・水素の3種
類を生み出すTri-Generation)」を建設すると発表
した。Tri-Genでは、同州の畜産場の家畜排せつ
物や汚泥等の廃棄物系バイオマスから水素を取り出
し、「溶融炭酸塩型燃料電池」を用いて発電を行う
ことで、FC発電で排出される水も含め、再生可能
エネルギーから水素・電気・水を生み出す。建設は
水素社会実現に向けた
FC
技術
水素と電気を生み出す燃料電池発電所と水素ステーションを併設
FC大型トラックコンセプトで実用に向けた実証実験をトヨタが実施

水・電気水素の3種類を生み出す理想的な燃料電池発電所「Tri-Gen
トライジェン)【参考写真】
TheTRUCK2018年1月号45
究を行うカリフォルニア大学アーバイン校とともに、
取り組みを進めてきたもの。今回、トヨタとFuelCell
Energy社が協力し、Tri-Genの商用化に向けて、
水素・電気・水を効率的に利用する仕組みの確立を
目指すことになる。トヨタは、この取り組みを通じ
て、水素社会実現に向けたFC技術の応用拡大や水
素インフラ拡充を推進するとともに、港湾エリアの大
気改善に取り組むカリフォルニア州エネルギー委員会
(CEC)やCARB、AQMDなどの環境改善目標達
成にも貢献していくとしている。
 Tri-Genで一日に発電する約2.35メガワットア
ワーの電力量は、米国の一般家庭約2,350世帯分
の日当たりエネルギー消費量に相当し、製造する水
素約1.2トンは燃料電池自動車およそ1,500台の
日当たり平均走行距離に必要な充填量に相当する。
電力の一部と水は、北米でトヨタの物流事業を担う
ToyotaLogisticsServiceのロングビーチ拠点に
供給され、同拠点は、北米において、再生可能エネ
ルギーの電力のみを使用するトヨタ初の施設となる。
 TMNA戦略企画担当のダグ・マーサ(Doug
Murtha)グループ・バイス・プレジデントは、「トヨタ
は、水素に大気汚染物質の削減と大気改善の大いな
る可能性を見出し、20年以上にわたってFC技術の
開発に取り組んできた。Tri-Genは、持続可能なモ
ビリティ社会の実現に向けた大きなステップであり、
あらゆる事業活動においてCO2排出ゼロを目指す『ト
ヨタ環境チャレンジ2050』における重要な取り組み
のひとつとなるだろう」と述べている。
 現在、カリフォルニア州では合計31基の水素ス
テーションが稼動しているが、トヨタは、2017年9
月にシェル・Hondaとともに同州北部への水素ステー
ション7ヶ所の新設を発表するなど、エネルギー企
業をはじめ、様々な企業や公的機関と協力して水素
ステーション網の拡充に取り組んでいる。今後も、ト
ヨタはクリーンな水素社会の実現に向けた取り組みを
進めていくことになる。なお、水素ステーションを併
設するメガワット規模のFC発電施設は世界初の取り
組みである。
GVW36トンの大型FCトラックで実証実験
 このTri-Genで製造される水素(約1.2トン/日)
は、併設する水素ステーションなどを通じて、日本
から米国カリフォルニア州ロングビーチ港に輸送され
る新車配送前の燃料電池自動車「MIRAI(ミライ)」や
2017年10月23日から同港湾エリアで実証実験中
のFC大型商用トラックなどの燃料充填に使用される。
 現在行われている燃料電池システム搭載の大型ト

水素で走行するFC大型トラクとバスの今後に期待が…
燃料電池車「MIRAI」のFCスタック2基と12kWh駆動用バッテリーが搭載されてた実証実験中の大型トラクコンセプト。ロサンゼルス港やロングビーチ
のターミナルを基点にした物資輸送で1日あたり約320㎞を走行している
TheTRUCK2018年1月号46
ラック(FCトラック)実証実験は「プロジェクト・ポー
タル」と呼ばれており、燃料電池パワートレインを
搭載した大型トラックコンセプトが実証実験に使用
されている。このFCトラックはボンネットタイプの
コンビネーション(トラクタ+トレーラ)で、市販され
ている燃料電池車「MIRAI」のFCスタック2基と
12kWhの駆動用バッテリーが搭載されている。最
大出力は670hp以上、最大トルクは183.2kgm
を発生する。
 実証実験は、トヨタモーターノースアメリカが実施
しており、総重量約36トンの大型トラックコンセプ
トを1日あたり約320㎞を走行させ、市場投入時の
データー収集をこの実証実験により得ることになる。
現在、ロサンゼルス港やロングビーチのターミナルを
基点に、倉庫へ物資輸送を行っている。その後、順

バイオマスから水素を取り出し「溶融炭酸塩型燃
料電池」により発電を行うTri-Genのシステム概
念図(写真・上)とディーゼル車との比較加速性
能テストで圧倒的なパワーを発揮するFC大型
ラックコンセプ(写真・左)
東京モーターショーに出展されたトヨタの燃料電池バス「SORA」。東京
都を中心に100台以上が導入される予定となっている
TheTRUCK2018年1月号47
次走行距離を伸ばし、大型商用車に燃料電池技術が
導入するための実用性などを確認していく予定となっ
ている。
 移動距離が短い小型車EVは、小さなバッテリー
の搭載でも実用性にさほど問題はないが、大型車の
場合、電気自体はそこら中にあるものの大量の電気
を蓄える大きなバッテリーをどうやって搭載するかの
課題がある。その点、燃料電池車(FCV)は、装置
自体の重量はあるものの、車両のサイズが大きくなれ
ばなるほどそのメリットが出てくる。つまり、トラック
やバスはFCV化しやすいと言われている。今回、ト
ヨタが取り組む大型トラックの実証実験にはその意味
でも大きな期待が寄せられている。
 水素と酸素を化学反応させて電気をつくる「燃料
電池」を搭載しモーターで走行するシステムのFCV
は、燃料として、環境にやさしく、さまざまな原料か
らつくることができる水素が利用される。その水素燃
料の大きなメリットとして、①その使用過程における
CO
の排出がゼロ、②多様な一次エネルギーから製
造でき、化石燃料のように枯渇の心配がなく、安定
した供給が可能、③水素製造システムが確立できれ
ば、離島・過疎地などに設置することで地産地消の
エネルギーとなる、④発電した電気を水素に置換す
ることで、エネルギーを貯蔵でき、需要に応じての
輸送が可能、などがある。
 今後の水素社会実現に向け、FCユニットの特性を
最大限に活かしたトヨタの燃料電池バス「SORA」が
すでに開発されており、東京オリ・パラに向けて東
京都を中心に100台以上導入される予定となってい
る。将来的に各自動車メーカーからFCトラック・バ
スが市場投入されることに期待したい。

TheTRUCK2018年1月号48
年)、燃料電池自動車「MIRAI」を発売する(2014
年)など、困難な課題に挑戦してきた。これまで磨き
続けてきた、車両電動化技術と商品化における知見
や蓄積を基に、ユーザーのライフスタイルや地域性
に適合した、HV、PHV、FCV、EVなどさまざま
なエコカーの開発に取り組んでいる。
 パナソニックは、車載用リチウムイオン電池事業を
重点事業のひとつと位置づけており、車載用電池に
求められる様々な要求事項を実現させる技術力を評
価され、世界の多くの自動車メーカーで採用されて
いる。現在、車載用角形電池については、これまで
培ってきた電池事業での技術的な知見やノウハウを
活かし、さらに安全で高容量の電池の実現に向け挑
戦を続けている。
 トヨタとパナソニックは電動車の一層の普及に向
けて、車載用電池の性能・価格・安全性等のさらな
 トヨタ自動車㈱と、パナソニック㈱は2017年12
月13日、車載用角形電池事業について協業の可能
性を検討することに合意したことからその記者会見が
行われた。
 今回の合意は、地球温暖化、大気汚染、資源・エ
ネルギー問題という社会問題の解決に貢献し、電動
車への需要と期待の高まりに応えるために、電動車の
中核となる車載用電池のさらなる進化を目指すもの。
 両社は、1953年の取引開始以来、長年にわたり、
モノづくりに携わる者として互いに切磋琢磨してい
る。昨今両社を取り巻く環境が激変する中、日本発
のモノづくりで世界に貢献するため、信頼できるパー
トナーと従来の枠を超えて、新しい価値創造に挑ん
でいくことが重要との認識で一致した。
 トヨタは、持続可能なモビリティ社会の実現に向
け、世界初の量産HV車「プリウス」を発売し(1997
車載用角形電池の進化を目指す
トヨタとパナソニックが車載用角形電池事業の協業について検討を開始
次世代自動車◇ニュース

世界初の量産HV車「プリウス」。高回転モーターや高出力のハイブリ
ドバッテリーが搭載されている
EVの中核となる車載用角形リチウムイオン電池
トヨタ・プリウスPHVに採用されているPanasonic製の駆動用リチウ
ムイオン電池
TheTRUCK2018年1月号49
る進化と安定供給能力の重要性を認識している。今
回、両社は業界ナンバーワンの車載用角形電池を実
現し、トヨタのみならず、広く自動車メーカーの電動
車の普及に貢献すべく具体的な協業内容を検討して
行くとしている。
◆トヨタ自動車・豊田章男社長スピーチ(抜粋)
 本日(2017年12月13日)、トヨタ自動車とパナ
ソニックは、車載用角形電池について協業の可能性
を検討することに関する合意書を締結しました。
 現在、私どもが直面している温暖化や大気汚染、
資源・エネルギー問題といった地球規模での課題を
解決していくためには、電動車をより一層、普及さ
せることが必要となります。そのためにも、電動車の
重要な基幹部品である車載用電池について、性能・
価格・安全性などの面での更なる進化と安定供給能
力の確保が喫緊の課題と言えます。
 こうした認識のもと、両社は、車載用角形リチウム、
全固体など次世代電池の取り組みに加え、その電池
の資源調達やリユース・リサイクルなども含めて、幅
広く、具体的な協業の内容を検討してまいります。
 トヨタと電池との関わりは古く、1925年にまで遡
ります。トヨタグループの創始者である豊田佐吉は、
当時のお金で100万円の懸賞金をかけて、蓄電池
の開発を奨励いたしました。その翌年の1926年に
設立された豊田自動織機製作所の資本金が100万
円でしたから、当時としては大変な金額になります。
 開発を奨励した蓄電池は、「100馬力で36時間
運転を持続することができ、かつ重さは225キロ、
容積は280リットルを超えず、工業的に実施できる」
というものでした。これが「佐吉電池」といわれるも
のですが、未だにここまでの性能を持つ電池は開発
できておりません。
 佐吉は、今日のような「電動化時代の到来」をすで
に予感していたのかもしれません。
 当時から90年以上が経過した2013年、私は静
岡県湖西市にある佐吉記念館で、ある方をお迎えす
ることになります。いま、私の隣におられる津賀社長
です。
 社長に就任された1年後に、私どもの原点とも言
える佐吉記念館をご訪問いただきました。いろいろ
なお話をしながら、館内をご案内させていただいた
のですが、津賀社長の表情、姿勢、言葉の端々か
「創業への想い」「お国への想い」、そして、「会

トヨタ自動車とパナソニックの協業により車載用電池の性能・価格・安全性のさらなる進化が期待されている
TheTRUCK2018年1月号50
社を継承する者」としての覚悟がひしひしと伝わって
まいりました。
 その時から4年の月日が流れ、本日、皆さまの前
で、車載用電池の開発というテーマでの協業を、発
表させていただく運びとなったわけです。私には、「津
賀社長と、佐吉記念館で出会ったときからこうなるこ
とは必然であったのではないか」という気がしてなり
ません。
 いま、自動車業界は「100年に一度」と言われる
「大変革の時代」に直面しております。
もはや、これまでの延長線上に未来はない。自分た
ちの知恵と技術によって、未来を創造しなければなら
ない時代に入ったと認識しております。未来を創造す
るために必要なものは、「世の中をもっとよくしたい」
というベンチャー精神と「もっといいやり方がある、
もっといい技術がある」というベターベターの精神だ
と思うのです。
 パナソニックさんには、長年にわたって積み重ねて
こられた車載用電池の業界ナンバーワンの開発力が
あります。そして、トヨタには、ハイブリッドカーの
開発でつちかった電動化技術に加えて、「クルマへの
愛」「クルマを絶対にコモディティにはしないという
決意」があります。
 さらに申し上げますと、両社には、松下幸之助翁、
豊田佐吉、豊田喜一郎という日本の国の発展に人生
を捧げた偉大なる発明家、起業家から継承してきた
「ベンチャー精神」があります。
 本日、私が皆さまにお伝えしたかったことは、両社
の提携は、「今よりも、もっと豊かで、もっと楽しいモ
ビリティ社会」を実現するための提携であり、「日本で
生まれ育った両社が電動化の時代をリードしていく」
という想いを形にしたものだということです。
◆パナソニック・津賀一宏社長スピーチ(抜粋)
 私からは、電池事業と、今回の協業への思いにつ
いて少しお話させていただきます。
 我々の創業者であります松下幸之助は、「事業を通
じて世界中の皆様の『くらし』の向上と社会の発展に
次世代自動車◇ニュース

両社には、豊田佐吉、松下幸之助という日本の発展に人生を捧げた偉大
な発明家で起業家が継承してきた「ベンチャー精神」がある。今回の協業は
“必然であった”のかもしれない。(写真・左)トヨタ産業技術記念館で開催
された「豊田佐吉生誕150周年特別企画第二弾」のポスター。(写真・上)
「パナソニックミュージアム松下幸之助歴史館」に展示されている松下幸
之助の肖像
TheTRUCK2018年1月号51
貢献する」という基本理念を掲げ、当社を発展させて
まいりました。我々はその理念を引き継ぎ、現在は、
「ABetterLife,ABetterWorld」というスローガ
ンを掲げ、家電にとどまらず、住宅、車関係の車載、
そしてソリューションなどのB2Bという幅広い領域
で、お一人お一人のお客様にとっての、「より良いく
し」、「より良い世界」の実現を目指しています。
 今、自動車産業では、電動車の立ち上がりにより
取り巻く環境が劇変し、産業自体も大きく変わろうと
しております。加えて世界の国々でも積極的な動き
が見られるのは、皆様ご承知のとおりでございます。
 まさに、我々が掲げる、「ABetterLife,ABetter
World」という視点では、本当に、「より良いくらし」
得るためには、「ABetterWorld」、すなわち、「より
良い社会」を実現しなければならないということであり
ます。「ABetterLife」「ABetterWorld」、この
2つが切っても切り離せない関係になり、高い次元の
ソリューションが求められる時代が、自動車産業に来
ていると思います。その中で電池は、電動車の普及
と、その先にありますサステイナブルな社会への進化
に向けて鍵を握るデバイスであり、我々パナソニック
にとっても、大変重要な事業になります。
 こうした背景の下、我々は自動車メーカー様との
連携を強化しながら、開発から生産まで、様々な打
ち手を進めております。そして今回、トヨタ様よりお
声がけをいただき、その高い志に大いに共感し、協
業の検討開始を決断いたしました。トヨタ様からのご
期待にしっかりとお答えし、両社でスピード感を持っ
て検討を進め、実効性のある枠組みになればと考え
ています。
 パナソニックは来年、創業100周年を迎えます。
しかし、車の電動化に伴う自動車産業の変革の動き
に見られますように、次の100年は、これまでの
100年とは比べ物にならないほど、変化の激しい時
代になると思っております。そうした中では、現状
を守ろうとするだけでは生き残ることはできません。
したがってパナソニックは、培ってまいりました強み
を活かしながらも、「チャレンジャー」のマインドを持っ
て、電動車の普及に少しでも貢献してまいりたいと
思っております。  

TheTRUCK2018年1月号52
 11月の終わり頃、本誌のホームページ経由で
一通のメールが届いた。発信者は行政書士の佐
久間翔一氏で、凡そ以下の内容である。
「私は、特殊車両通行許可申請専門の行政書
士事務所『特車申請センター』を経営している。
弊所は物流会社向けの新しいサービスを開始し
た。サービスの内容は特殊車両通行許可を申請
し放題というもの。現在、多くの行政書士事務
所では経路数や車両数に応じて報酬を請求してい
るが、弊社のサービスは毎月定額で申請し放題
となり、業界初のサービス内容。これまで、毎
月不確定な報酬を行政書士事務所に支払っている
物流業者や報酬が高額なため自社で社員や経営
者申請している物流業者には画期的なサービス。
既に物流上場企業1社からも導入頂いている。是
非、取材して欲しい。」
 この取材依頼には大いに興味があったので、承
諾のメールを返信したところ12月12日に佐久間
翔一氏が本誌の事務所を訪ねて来られた。
 特殊車両とは、道路法及の車両制限令の規
定によって、公道の通行を規制される車両のこと
で、主な車種はオールテレーンクレーン、一部の
大型ラフタークレーン、トレーラー連結車、その
他、鉄道車両、橋桁、大型発電機、変圧器、
大型建設機械等を輸送する車両である。最近は
道路の老朽化が進んだことから、規制緩和をした
一方で、この規制違反に対する取締りと罰則が
強化されて、トラック運送業に波紋が広がる実態
がある。
 特殊車両が公道を通行する場合には、道路管
理者の特殊車両通行許可が必要になる。しかし、
通行区間すべてが一つの道路管理者が管理する
道路のみで完結することは少ないため、許可の申
請は、通行する区間の道路管理者であれば、ど
こに出してもよい事になっている。申請を受理した
道路管理者は、あらかじめ各道路管理者が国土
交通省に提出した道路データをもとに、他の道路
管理者の管理区間について許可の可否を判断す
る。可否の判断できない場合には、各道路管理
者に個別に協議を行い、申請対象のすべての区
特殊車両通行許可申請専門の行政書士、
佐久間翔一氏の「特車申請センター」
顧問契約制度で早く、
安く申請
法務部のアウトソーシング
として提案

TheTRUCK2018年1月号53
フレッシュ感覚の佐久間翔一行政書士
間について、一括して許可をすることができる事
になっている。
 ところが、特殊車両の通行違反に対する取締り
と罰則が強化されて以来、通行許可申請が殺到
しているが、申請をさばき切れなくてなかなか通
行許可が下りないという問題も発生している。
 佐久間行政書士事務所は『特車申請センター』
を設置して、「煩雑な特殊車両通行許可申請の代
行を、迅速かつ正確に取得する」としており、更
新期限間近に迫っている場合や、すぐに許可を取
得したい物流業者への呼びかけを強化している。
 特車申請センターの特徴としては凡そ以下の通
り説明している。
①佐久間行政書士事務所には顧問契約制度があ
り、毎月5台以上申請している業者には業界最
安値を提案できる。
②10台以上の申請に対しては割引制度がある。
③土日や夜間も対応できるので、休日に急な案
件入った場合でも、即日申請業務に取り掛かるこ
とができる。
④初回の相談の際には佐久間翔一氏本人が直
接出向いて対応する。信頼関係の構築を第一と
している。
【顧問契約報酬体系】(日本全国のお客様に対応
することができます。
※こちらはあくまでも目安です。具体的な報酬額
はお気軽にご相談ください。
●1ヶ月の申請内容(車両10台、10経路)・・
月額5万円
●1ヶ月の申請内容(車両50台、20経路)・・
月額10万円
●1ヶ月の申請内容(車両100台、20経路)・・
月額15万円
☆   ☆   ☆   ☆
 佐久間翔一氏は、2012年に早稲田大学
法学部を卒業して野村證券に入社、2015年
4月には統一地方選挙(さいたま市議会議員選
挙・さいたま市中央区)に出馬しているが、次
点で落選。2016年1月に佐久間行政書士
事務所を開業し、特殊車両通行許可申請を
専門に扱っている。また、2016年4月には
LEC(東京リーガルマインド)新宿エルタワー校
で行政書士講座の専任講師として活動している。
若干28歳、このフレッシュな感覚はトラック業界に
新しい風を吹き込むかもしれない。
(秋林路)

TheTRUCK2018年1月号58
最新モーターショー―③―
2017・中国国際商用車展に見るトラック点描
新型車「江鈴重汽・JMCVeyron」6×4トラクタ
ʻ17年11月に正式発表。シャシー、キャブ、エンジンは欧州(トルコ製)フォードがベース。フロ
ントは中国独自に大胆に一新。シリーズ化し8×8、4×2や、単車、ダンプあり。13L、355〜
400hp(フォード)、T/Mは
「法士特12速MT」

TheTRUCK2018年1月号59
石野 潔
  中国の物流大動脈「長江」武漢付近を24時間中ひっきりなしに航行
する内航船。コンテナ、バラ積み貨物やトラック車両等を満載しゆったり
と航行する。正面高層ビル群が武漢中心地域。大河の右遠方に産業地
帯が広がる。
(絵は午前1時頃)
 世界最大のトラック王国中国の大中型トラック市場はʻ15年には運転手や空車両
が飽和状態で大都市や産業地の求車、求貨斡旋場は閑散としていた。「新常態」「一
帯一路」政策でʻ16年(販売310万台/年)以降はトラック市場の成長が見込まれ
各社の競争も活発になってきた。中国国内では大都市や地方都市でのトラック展示
(商用車展)が盛んに開催されるようになってきた。春の「上海ショー」に始まり、
11月には「武漢」、「広州」「済南」で国際商用車展が開催され各社新モデルが披露
された。また展覧会に前後し各社独自のお披露目展も開催された。
 従来のトラクタは依然500hp級6×4が主力だが6×2のエアサス車も増加。
都市内,都市間輸送の大中型バンボデーも展示の準主役となった。車両諸元令
「GB1589」がʼ17年秋に施行され車両区分の長さ、GCW。GVWが明確になっ
た。センターデフ車載トレーラー等の出展も目立った。
新型車「江准汽車・JACギャロップA5」6×4トラクタ
 JAC大型主力車A5シリーズの第3世代新モデルでʻ17年11月に発表、発売
は18年、JACは小中型車に定評があるが最近は大型車に力を入れハイエンド車の
「K7」も出した。
絵は「A5」でフロント部を大変更、エンジンはWeichai550hp、
               T/Mは「法士特12速MT」後2軸エアサス。

TheTRUCK2018年1月号60
M3新型:エンジン:東風カミンズ220hp、
     4×2、7.65m冷凍冷蔵ボデー
東風柳汽
乗龍M3新型
最新モーターショー―③―

TheTRUCK2018年1月号61
ネット通販拡大による小荷物の大増加で都市内及び近郊都市間向け輸送ト
ラックニーズが更に高まり、4×2,6×2の大中型バン型単車の展示が増加
している。今迄は縦型リブのスチール製が主体だったバンはアルミや樹脂
製製品が出展され、また中型以上に冷蔵冷凍車も僅かだが出展されてきた。
かつては平台トレーラに簡易架装の車載車が主であったが、先述の新諸元令
公布影響からʼ17年の展示会から車載専用センターデフトレーラトラクタの
出展が目立った。ヘッドは12m級6×2〜4×2。
絵は広州展で発表された。
広汽日野7006×2センターデフ車載トレーラセット
中型SUVが9台搭載可能、エンジンは上海日野J08Eで300hp、T/
M9速MT、後軸エアサス、GCW43t。
エンジン:福田カミンズ210hp、
  4×2、GVW18t
     ドライバン
福田欧慢
AUMARKS5新型

世界のトラックショー研究
会場として使われた“武漢エキスポセンター”。手前が西、奥が東という方角で円形に配置さ
れている。写真奥は大河「長江」。今回は左手半分のB1〜B6館が使用された。右側半
分はA館で、CCVSと同じ会期で[婚活展]が開催されていた
自動車大国・中国
 中国は広く人口は世界一、経済規模(名目GDP)
は既に日本を引き離してアメリカに近づきつつあり、
自動車生産と販売でも既に世界一のポジションにある
(表1)。2016年に国内販売が2800万台を超え
ていたから、昨2017年には3000万台を超えた可
能性が高い。内、トラック・バスは13%のレベルで
先進国の域に達している。
 中国の自動車ショーは、北京(AutoChina初回
1990年)と上海(AutoShanghai初回1985年)
各市の国際展示場で開催されている。交互に毎年開
かれており、乗用車を主体に商用車も含め海外メー
カーの参加も多数あり国際色は年々増している。但
 今回は中国の商用車に特化した展示会を採り上げる。昨年11
月の現地取材に基づくリポートをお届けする。標題は正式な名称
(現地では簡体字表記)を示す。運営を後押ししている組織はドイツ
ッセで上海に現地法人がある。ショーの性格としてはビジネス主体
B2Bであった。4日間の来場者は合計で3万人(主催者発表)。
中国国際商用車展覧会
CCVS2017
@武漢
(第1回)
西襄二
TheTRUCK2018年1月号68

会期前日に交通機関のリハーサル実行。会場の裏手は搬入出口に通
じたテラスになっており、搬入を待つ出展車などが整然と待機していた。
背後は住宅高層ビル群
会場の武漢エキスポセンターB館入り口風景。大きなパネルに東風汽
車集団はB3館に展示、とトップメーカーらく表示があった
し、二輪車や部品、架装メーカー
の姿は無い。ショーの趣きはパブリッ
クショーで乗用車が主体であり、性
格は消費者向けB2Cである。商用
車は脇役に回る傾向にある。
 上に紹介した二つの大きなショー
は首都・北京、及び沿海部・上海と
いった人口密集地域で開催され発展
しているが、中国政府は内陸部の
発展も視野に本格的な商用車ショー
の育成も継続している。それが湖
北省の首都武漢(中国語の発音では
Wuhan)を会場とする「中国国際商
用車展覧会ChinaCommercial
VehiclesShow:CCVS」(以下、
CCVSと表記)である。こちらは最
初が2012年に開催され、その後
は2013年、2015年、そして昨
2017年が第4回目だった。会期は
11月4日〜7日の4日間。第1
回より商用車ショーの企画運営で世
界的に評価されているドイツ・メッセ(世界最大級
の商用車ショーIAA商用車展のオーガナイザー
として著名)が関与して上海にある現地法人ハ
ノーファーミラノフェアーズ上海有限公司がオー
ガナイザーの中心的役割を果たしている。ショー
の性格はビジネスショーB2Bである。
 なお、IAA方式(商用車シャシ、架装、関連
部品の総合ショー)は昨2017年にアメリカに上
陸し、初のショーが「北米商用車展NACV(@ア
TheTRUCK2018年1月号69
(表1)自動車展示会開催都市の規模
(表3)三大商用車展出展者数比較
(表2)商用車展会場規模比較
国名
都市名
(所属地域・州・省)
人口(人) 国内順位
日本
東京
(特別区部)
9,467,490 1
アメリカ
トラ
(ジージア州
420,000 40
中国
武漢/
(湖北省)
4,488,892 5
出所:Wikipedia日本語版(東京は推計値)
国名 展示会名称 出展者数
日本 TMS2017
199 内、
商用車関係 26
アメリカ NACV2017 439
中国 CCVS2017 133
出典:主催者公式資料又はHP記載値。TMSの商用車関係はシャシメーカー10、架装メーカー15
   の実績記録から
   筆者カウント(部品メーカーは除外)
国名 展示会名称 会場名称 会場面積(㎡)
日本 TMS2017 東京ビッグサイト
97,420 内、
商用車展示場面積
12,000
アメリカ NACV2017
ジョージア・ワールド・
コングレス・センター
34,400
中国 CCVS2017 武漢国際博覧中心 60,000
備考1) 東京ビッグサイトは拡張された東7号館を含む全館面積を表示なお、
    屋内外の商用車展示場面積は実態に照らし筆者推定
備考2) アメリカ及び中国の会場は主催者公式HP記載面積を表示

世界のトラックショー研究
B1館の入り口風景。B1〜6各館の夫々にこしたエントランスがある。
内部に仕切りは無く一体感がある
トランタ)として開催された(本誌増刊号[トラックガ
イド2018]P.23〜参照)。そして今回のCCVSだ
から、商用車展の型式がIAA方式で世界に拡散する
動きである。
CCVS、政府が後押し
 何事も基本方針は政府が打ち出し、関係組織がこ
れに従うのが中国式のやり方である。CCVSは中華
人民共和国工業情報部の指導のもとに、国際貿易促
進評議会自動車分会が主催するかたちで関係組織が
広く関与する。その中には、中国自動車工業会特装
車分科会、中国自動車技術者協会商用車分科会、
商用車誌媒体団体、主催地湖北省及び武漢の貿易
促進協会などが網羅されている。
 会場は湖北省の省都・武漢市の国際展示場のB1
〜B6館を一体的に利用した。因みに、武漢市の人
口は約450万人。都市の規模では中国国内で上海
(約950万人)、北京(約730万人)、香港(約
780万人)天津(約500万人)に次いで第5位で
ある。武漢市には中国で最大級の自動車メーカー・
東風汽車集団の本拠があることでも知られており、
CCVSの開催地がここであることにも影響があったの
は想像に難くない。
TheTRUCK2018年1月号70
(表4)世界の四輪車販売推移(上位10か国/2016年基準)
(単位:万台)
順位 国名
販売台数(上段 = 合計、下段 = トラック&バス)
2014 2015 2016
1 中国
2,350 2,466 2,803
379 345 365
2 アメリカ
1,684 1,785 1,787
915 1,032 1,099
トラック るピッアップ
3 日本
556 505 497
86 83 82 
4 ドイ
336 354 371
32 33 36
5 イン
318 342 367
61 65 70 
6 イギリス
284 306 312
37 43 43
7 フランス
221 235 248
42 43 46
8 ブラジ
350 257 205
70 45 37
9 イタ
149 173 205
13 15 23
10 カナ
189 194 198
113 123 132
トラック るピッアップ
出典:日本自動車工業会(JAMA)統計を参照して筆者作表

B3号館の東風商用車のブースを利用して行われた開会セレモニー。
冒頭の挨拶をする東風汽車公司総経理助理羅元紅氏
現在の中国商用車業界を担う重鎮の面々。中央:東風汽車集団公司
董事長竺延風氏
中国商用車業界の当面の課題と将来方向を示したプレゼンパネル。大
く鮮明な映写でパワーポイント画面を次々に紹介した。読者の皆さん
で解読して頂きたい
東風汽車(自動車)のブースの一角。車格、用途、技術区分などに分
けて分社化されて全体として東風汽車集団をなしている。武漢は東風汽
車の本社が立地しており当社にとっては“地元”でもある
東風汽車集団股扮有限公司の本社外観。地下鉄4号線の南の終点
が“東風汽車”の名称になっている
 かつて乗用車、農耕車などを含めると100社超の
メーカーが存在するといわれてなお実態が掴めなかっ
た10年程度以前の状態から見れば整理されてきた
状況ではあるが、なお乱立状態といえよう。こうした
事態に政府が大鉈を振るって、2位以下の上位3社の
統合を図る動きが最近伝えられるなど再編の動きはな
お続くことが予想される。
 会場のB4号館、B5号館、B6号館には架装メー
カーと装置・部品サプライヤーが合計で105社も出
展していたことを紹介しておく。この中には、わが国
の架装メーカーとの合弁企業も含まれており、伸びの
大きい新天地への進出で発展に前向きな姿勢を訴求
していた。
なおも乱立の状態
自動車メーカー数
 世界一の生産・販売数を誇る中国自動車業界のも
う一つの特徴は、シャシメーカーの数が多いというこ
とだ。今回のCCVSの会場では、B1号館に7社、
B2号館に7社、B3号館に東風汽車集団1グルー
プ(7社)、その他として3社、計14社1グループ
が出展していた。ここで、開会式も行われた。東風
汽車が、現代中国を代表する自動車メーカーの頂点
にあることを明白に意識したものであることが感じら
れた。
TheTRUCK2018年1月号71

世界のトラックショー研究
熱心なエンジニアは何処にでも・・8×4のダンプ。“東風商用車”の出展と表示されている
東風汽車のフラグシップ・大型セミトラクタ。背後のスクリーンにVOLVOのヨッ
レース映像を紹介して、VOLVOと提携関係にあることをさりげなく紹介
この車のキャブ内部。2段ベッドも天井ライトも欧州
の最新型と遜色はない
に亘って正常に機能しないことが「国5(EURO5相
当)」で足踏みしている主要な要因とされている。
 一方、都市部の大気汚染は深刻で健康被害も看
過できないことから、中国政府は新エネルギー車(以
下、NEVと表記)の普及へ大きく舵を切っている。
NEVに区分される自動車の種類としては、プラグイ
ンハイブリッド車(PHV)、電動車(EV)、燃料電池車
(FCV)、天然ガス車(NGV)などが現実的として、
各メーカーに対して規模に応じて販売台数の一定割合
をNEVに切り替えることを義務づけ2018年から実
施する。
 この為、最も現実的なEVの製品化が急務として
今回のCCVSでは多数のEV出展車が見られた。
多数はディーゼル
目に付いた電動車EV
 中国の商用車(ここでは中・大型車)は、ディーゼ
ルエンジン搭載車が多数を占めているのは世界の多く
の国と同じ状況にある。現在、世界の先進地域・国
の排出ガス基準は「EURO6」に代表される現時点で
最も進んだレベルが適用されているが、中国の場合は
「国5(EURO5相当)」のレベルにある。燃料の軽
油中に含まれる硫黄分が先進地域・国のレベルより高
濃度であり、「EURO6」相当の基準で組み上がってい
る車を仮に持ち込んでも排出ガス浄化システムが長期
TheTRUCK2018年1月号72

同じ東風集団に属していても企業名を異にすると完成した車のヘッドマークは区別されるのが当地の慣習。左がパネル
バン、右が車載車
鋼板で組み上げたパネルバン。キャブルーフ上のディフレクター
も標準装備だが、4×2でこの造りでも最大積載量は9200㎏
(18000−8800㎏)とある
TheTRUCK2018年1月号73

世界のトラックショー研究
筆者がポケットに忍ばせていた磁石(ホワイトボードなどに紙を保持するアレ)は吸着しなかったから(室内から確認出来な
かったが)アルミか、FRPか。仕上げの綺麗なこした塗装は展示用とか
車載車のシャシは前2軸の6×2。ホィールが小さく見えるがタイヤは275/70R22.5
B3号館の配置図から東風集団所属の企
業名が参照できる。ヘッドマークとの関係は
未解明・・
キャブはルーフの低い専用キャブ。わが国で普及
している複雑な昇降機能のついた車体構造は未
だ見られなかった
TheTRUCK2018年1月号
74

この展示区画も東風集団の一角だ。手前の大型車はCNGセミトラクタ。CNG車で航続距離を確保しよとするフレーム脇では足らず、キャブバックにタ
ンクの為の一定の区画が必要。アルミホィールの採用も増える傾向とか
その隣にはなんと燃料電池車が!ドライバンの前部に水素タンクと燃料電池の区画を設けてある。水素充填用接続口も見える。諸元表(少々見難い・ご免)
によれば燃料電池出力は30kW、変速機は“AMT”とある。先進技術は何でも採り入れる貪欲な姿勢だ
TheTRUCK2018年1月号75

世界のトラックショー研究
こちらのダンプは後部を覗いている人の
影で写真では見えないが4×2のシャ
シで最大積載量は8000㎏。しかも、
LNGエンジン(火花点火式)搭載車だ
その隣の小トラはEV温度管理車で温度管理機も電動だ。近距離配送用途を想定して床下フレームの左右側面に夫々
バッテリーケースが見える
普及世界一の天然ガス車
 知る人ぞ知る、の事実として中国の天然ガス車
(NGV)の普及状況を参照しておこう。最近の統計
(NGVGlobalhttp://www.iangv.org/current-
ngv-stats/)によれば、中国が普及台数で世界一、
次いでイラン、インドなどアジア勢が続いている。因
みに、日本は第24位である。こうした状況を背景に
CCVSではCNG車の出展も見られた。普及の背景
には、国内で天然ガス(NG)の産出があることが共通
している。この点、エネルギー面で天然資源に恵ま
れないわが国と事情は異なる。
TheTRUCK2018年1月号76
(表5)天然ガス自動車世界の普及状況
順位 国名 台数(千台)
1 中国 5,000
2 イラン 4,000
3 インド 3,045
4 パキスタン 3,000
5 アルゼンチン 2,295
6 ブラジル 1,181
7 コロンビア 565
8 タイ 474
9 ウズベキスタン 450
10 ボリビア 360
24 日本 46
(出典:NGVGlobalhttp://www.iangv.org/current-ngv-stats/2017.12.21統計
値を元に筆者作表)

こちらのダンプは後部を覗いている人の影で
写真では見えないが4×2のシャシで最大積
載量は8000㎏。しかも、LNGエンジン(火
花点火式)搭載車だ
B4号館に歩を進めると、中国重機HOWOの“専用車”ブースがあった。ウィングボディ(当地の表記は“半翼設計”)が出展されていた。中間板柱など
良く勉強されている
用途別架装製品
 計画経済の下で中国の国内総生産GDPの伸びは
このところ6%台で推移している。商用車が係わる分
野も、日常生活により近い分野で物流の質の向上と
効率化が提案される動きに移行しつつあるようだ。こ
れは特装車の出番が増えることに繋がる。
TheTRUCK2018年1月号77

世界のトラックショー研究
別のメーカー製だがYUEJINブランドの小トラ。リヤボディは板厚15㎜のハニカム板で簡易断熱構造とある。後部にボディ組込式垂直テールゲートが組み
込まれているのが見える。いすゞのエルフ車の外観に極似しているが特段の関係は無い模様。総じて中国の小トラはエルフ車のデザインに影響を受けている
うに見受ける
その隣にはディマウンタブルボディ脱着ボディ(当地の表記は“交換箱”)
の出展も見られた
脱着方式の実演は見られなかったが、上下作動の油圧シンダーなどが見
られないこと、支柱の長さと形状から“梃子の原理を応用してシャシの前
後移動”により行う方式と推測された。箱(ボディ)が支柱込みで630kg
との重量表示だが、箱体材料表示が「蜂寞板」とありハニカム構造(厚さ
15㎜)の軽量パネルで実現したか
TheTRUCK2018年1月号78

街中の交差点際などにシェアサイクル(自転車)の溜まり場が至る所にあ
る。これは整理が良い方で、中には埃をかぶった車が折り重なる様な場
所もあった。過大投資が目立ち、破綻するものが出てきたとの報道を裏
付ける
近年に開通した地下鉄はどこの駅も近代的で清潔。全てホームには隔壁
がある
地下鉄の車輌は欧州仕様に準じて未だ新しい。一度ならず筆者に席を
譲ってれる若者あり
駅の自動券売機でこのよな1C入りトークンを購入し、改札機で確認す
る。入り口ではタッチ、出口では回収される。何処まで乗っても4元。安い、
早い、快適・・
バイクは全て電動式。繁華街では夜になると歩道上で充電する様子が各
所で見られた。あの排出ガスと騒音に溢れていた市街地道路は、今や静
かに整然と走る電動バイクが完全に取って代わった。車の電動化も意外
に早いペースで進むのかも知れない
武漢市雑感
[シェア・サイクル]
 目抜きの通りには各所にシェア・サイクルの溜まり場
がある。需要を遙かに超える投資が行われ、一部には
溜まり場で埃にまみれ錆が目立つものも少なかった。
[電動バイク]
 かつて上海・北京など都市部でも無数のエンジン
付バイクが庶民の足で、排出ガスと騒音、我が物顔
の走り振りに眉をひそめたものだが、今は全てが電動
バイクにとってかわり走行マナーも格段に大人になっ
た。夜間の歩道上は充電するバイクがあちこちに見ら
れる。
[地下鉄網]
 筆者の宿はCCVS会場から約10㎞の距離だった
が、毎日地下鉄で通った。途中の乗り換えも入れて
小一時間の行程だったが、清潔な駅・車両で快適で
あった。何よりも1回何処まで乗っても4元(約60円)
という乗車賃でおおいに便利した。
TheTRUCK2018年1月号79

世界のトラックショー研究
市街中心部から武漢の新飛行場まで外環高速道路で小一時間。この日
は非常に空いていた。タクシードライバーはエコ運転が習慣化しているよ
だった
庶民的な食堂で試した武漢の“焼き鳥”。長い竹串の先端に細く刺された
肉は美味ではあったがボューム感には欠けていた
スーパーマーケットの食料品売り場。実勢レート1元=15円として物価水準を想定して下さい
[スーパーマーケット]
 1〜2階は専門店街、3〜4階がスーパーマーケッ
ト、1棟全体が商業施設というビルがホテルの近くに
[エコ運転に励むタクシー・ドライバー]
 ホテルから武漢国際空港へ向かうタクシーのドライ
バーは、条件が良ければ緩やかに70㎞/Hくらいま
で加速したらギヤをニュートラルにして55㎞/H程度
迄コースティングし、また加速してコースティングする
ことを繰り返していた。燃費が良くなるか、と聞けば、
そうだ、との答であった。
あり足を運んでみた。生鮮食品売り場は豊富な品揃
えで来客を待っていた。実勢レート1元≒¥15とし
て値札を見て頂きたい。
[武漢の焼き鳥]
 夕食場所をホテル近くの繁華街で探すのも楽しみの
ひとつだった。ある日の庶民的な店で頼んだ焼き鳥は
長い串に子ども小指の先位の鶏肉がさしてあり20本
が一人前だった。確か24元(360円相当)。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
 このCCVSリポートは次号(第2回)に続く。
TheTRUCK2018年1月号80